J.K.: スマホでのQRコード決済については、各社でキャンペーンなど熾烈なシェア争いが繰り広げられましたね。

加谷: どこでも払えてポイントが貯まる、というのが従来のペイ払いの利点。しかしここにきて真逆の発想の、その店舗でしか使えない「独自ペイ」が増えています。ユニクロ、無印良品、ファッションセンターしまむらなどがその先駆けとして注目されています。

J.K.: 何が従来の○○ペイと違うのでしょうか。

加谷: 従来の決済手段は、カード会社や決済アプリの会社がお店に代わって決済を行うというもので、必要な機器も決済会社が提供していました。ラジオを聞いている皆さんも、コンビニでは、何で決済するのかレジで選択していると思います。一方、店独自の決済の場合には、決済についても自社のシステムで行います。つまり、その決済手段はそのお店でしか使えません。

J.K.: お客さんにとっては、その店でしか使えないとなる不便ではないかとも思えますが、なぜこうしたサービスが広がっているのでしょうか

加谷: 顧客にとっては、どの店でも同じ決済手段の方が一般的には便利なわけですが、お店にとっては、店独自の決済手段があった方が、顧客を囲い込むことができます。また、何度もその店に行くという利用者であれば、会員証の提示、決済手段の提示など、いくつかのステップが必要となります。独自アプリであれば、会員証の提示と決済、ポイント付与が同時にできますから、利用者にとっては手間が省けます。こうしたことから独自の決済手段を提供する店舗が増えていると思われます。

J.K.: お店にとっては負担が大きくならないですか?

加谷: 既存の決済サービスは店舗側が利用料を払って、機器を導入するだけですから簡単ですが、独自決済の場合にはシステムを構築する必要がありますし、アプリの開発費用もかかりますから、かなりの初期投資となります。

J.K.: では、なぜ、コストがかかっても独自決済を進めるのでしょうか

加谷: やはり優良顧客にもっと利用して欲しいという意向が大きいと思われます。スムーズに決済ができれば、利用者にとっては便利になり、さらに店舗に足が向かうことでしょう。ポイントなどを加えれば、他の店に流れることを防げます。ただし、こうしたサービスが提供できるのは、ある程度、根強いファンがいる事業者に限られます。こうしたサービスが提供できる事業者とそうでない事業者の差は今後、拡大していくかもしれません。