藤代: コロナ危機のなかで経済政策を予想するポイントについて

J.K.: 経済対策に頼らざるを得ない方も多いと思います。どうでしょう?

藤代: 飲食、宿泊を中心に打撃を被った方については経済対策が不十分というケースも多いと思います。最近の経済指標をみれば一目瞭然ですし、肌感覚にも一致します。他方、経済対策の規模としては過去にないかなり大規模なものでした。パッケージ全体でみれば、今回の対応を評価する声がそれなりにある印象です。例えば全国民への10万円給付は予算ベースで13兆円。これは消費税を1年間5%カットするのと同じくらいの効果です。

J.K.: 色々な評価がありますが、気になるのは今後です。どうなりそうですか?

藤代: 個人的には当分の間、強力な財政出動と金融緩和が必要だと思います。この点、金融政策を担当する日銀は政策手段を総動員していますので、これ以上はありません。他方、政府の財政政策については先行きについて少し気がかりなサインがあります。それは今日にも政府、内閣府による月例経済報告という発表で、景気判断を上方修正するという動きです。景気判断の引き上げ自体は6月に入って日本経済が正常化に向けた一歩を踏み出したことを反映するに過ぎないのですが、タイミングとしては少し早い、楽観的過ぎるのでは?と思います。

J.K.: 政府が楽観的ということが、経済政策にどう関係します?

藤代: 政府が警戒姿勢を和らげるというのは「景気は悪くないんだから、景気対策は必要ない」という暗黙のメッセージを含むことがあります。政府が景気を過度に楽観視してしまうと、コロナ危機以前の状態を回復する前に、景気対策の手を緩めてしまう恐れがあります。もちろん、景気が悪いことを誇張して人々の気持ちが暗くなり、実際に景気が悪くなるのも問題ですが、今回に関しては、コロナとの闘いが長期化する可能性あるので、もう少し慎重姿勢を貫いた方が良いのではと、思います。