藤代 アメリカの失業と、意外なデータについてです

TARO 相次いでいる暴動の背景には経済不安もあると言いますね。

藤代 アメリカでは3月と4月に、2000万人規模の失業が発生していて、今晩発表される5月の雇用統計では更に追加で800万人の失業が発生し、失業率は20%まで跳ね上がることが予想されています。2月の失業率は3%台前半で人手不足が問題になる状況でしたから、世界が変わってしまいました。こうした失業問題がアメリカの混乱の一因になっているのは事実でしょう。

TARO これだけ失業が増えると、景気回復は遠くなりますよね?

藤代 通常の景気後退局面では、失業、すなわち賃金の減少は、消費の減少に直結しますから、失業率が高い間は景気の回復はあり得ません。ところが、今回は違うパターンで、超大規模な失業の発生にもかかわらず、家計全体の収入は増加しています。最近発表された4月のデータをみると、意外なことにも家計の収入は3月との比較で10%も増加していました。

TARO 失業が発生して賃金はもらえないのに、なぜ、収入が増えるのですか。

藤代 アメリカ政府が実施した、超大規模経済対策の効果です。現金給付、中小企業の給与支援補償プログラム、そして失業保険の上乗せ給付を実施していますので、それが失業などによる賃金の減少を埋めてもなお余りある貢献を果たした形です。もちろん、こうした政府からの支援措置は永遠に続くわけではないのですが、少なくとも現時点においてアメリカの国民全体で見た場合の所得環境は、数字の上で悪くなっていないどころか寧ろ改善し、貯金が増えています。コロナ危機が落ち着けば、思いのほか景気が早く回復する可能性もあります。アメリカの景気回復は、多かれ少なかれ必ず日本に波及してきますので、期待したいです。