藤代: 今朝は新型肺炎と経済の関係についてお話します。

J.K.: 感染が拡大すると、経済への影響も大きいでしょうね。

藤代: 目下の中国経済にマイナスの影響を与えているのは、言うまでもありません。ただし経済の分析という点においては、客観的かつ冷静な判断が求められます。結論を先取りすると、こうした深刻な状況が数ヵ月で収束するのであれば、その後は先送りされた消費が復活し、挽回生産といって、企業も過去の落ち込みを取り戻す動きが活発化すると思いますので、中国はもちろん、日本やアメリカ経済に年間を通じて深刻な影響を与える可能性は低いと判断しています。

J.K.: 現時点で、日本経済に悪影響はでていますか?

藤代: 直接的な影響としてインバウンド産業です。春節の時期に中国からの観光客が減少すれば、当然マイナスです。それを除くと、現時点で生産・営業活動をストップしている日本企業は極めて限定的です。中国との取引が多い企業は今後、何らかの影響が出てくるとは思いますが、これも年間を通じてみれば影響は限定的と思われます。

J.K.: 長い目でみる、「年間を通じて」というのがポイントでしょうか?

藤代: こうした特殊要因が経済に与える影響を議論する際に重要なのは、それが一時的なのかということです。通常、災害等は被害の後に復興需要、あるいは先送りされた需要がでてくるので年間を通じてみれば、影響は±ゼロになると考えます。ただ、最近、政府・日銀が景気の弱い理由を説明する際に、何かと天候・災害要因を多く挙げます。これはフェアではありません。昨年10月の消費増税後の足取りが極めて鈍いにもかかわらず、台風19号の影響と説明しています。政策当局としては客観的に景気の弱さを認めるべきと思うのです。こうして考えると、政府・日銀は、今回の新型肺炎を1月と2月の景気減速要因として使いそうです。それはご法度だと思います。