藤代: イランとアメリカの緊張が高まったことについて経済的な視点からお話します

J.K.: 1月3日にアメリカがイランのスレイマニ司令官を殺害したことに対して、8日イランは、イラクにある米軍基地をミサイル攻撃。その後のトランプ大統領の声明で全面戦争の恐れは後退しましたが、株式は乱高下しましたね。

藤代: こうした地政学的な緊張感の高まりを受けて金融市場は大きく動揺しました。日経平均株価は一時600円ほど上下して、安全資産とされる金(ゴールド)も上昇しました。そして中東情勢の緊迫化で最も強い影響を受ける原油は一時65ドル程度まで上昇しました。この水準は昨年後半に比べて15%くらい高い水準です。中でも原油価格の上昇については、ほぼ全ての日本人の生活に影響を与えますので、中東情勢の緊迫化は、日本経済に悪影響を与えます。

J.K.: 原油価格が上がると、ガソリン、灯油などの影響は大きいですよね。

藤代: 世界的に景気が良くてエネルギー消費量が増えるケースですと、企業の業績が回復しているので、さほど大きな問題にはならないのですが、今回のように中東情勢が緊迫化を原因とする場合は、単に原油の輸入代金が増える、というだけなので、基本的にデメリットしかありません。

J.K.: 原油価格の見通しはどうですか?

藤代: 個人的には原油価格が持続的に上昇する可能性は低いと思います。というのも原油といえば「石油王」といった具合に中東のイメージが強いのですが、ここで思い出すべきはアメリカの原油採掘量がこの10年くらいで爆発的に増加していることです。シェール革命と呼ばれるものです。この結果、過去数年は、世界的に原油が供給過剰になっていて、原油価格が上がりにくくなっています。原油価格が上がると、すぐに原油採掘業者が原油の生産を増やすので、また原油が供給過剰になって、原油価格が下がるということを繰り返しています。今回、原油価格は一時的に上昇しましたが、こうした事情を考えると、原油価格が急上昇して日本を直撃する可能性は低いと思います。