藤代: この1ヶ月くらい日本の株価が上昇していることについてです。

J.K.: 日経平均株価が22000円を回復したというニュースもありましたね。

藤代:日経平均株価は今週の水曜日まで10日連続上昇しました。8月下旬に2万円を割れそうなところまで下がったのですが、そこからはほぼ一本調子で上昇し、現在も22000円程度で推移しています。上昇の背景には、米中貿易戦争が落ち着いていること、アメリカ、ヨーロッパの金融緩和が効いている、という事情があると思います。

JK: 日本は消費税を控えていますが、投資家はどう見ているのでしょうか?

藤代:正直なところ国内消費は心配です。失業率が低水準とは言え、賃金が伸び悩む中での増税ですから、それなりに大きな影響が出ると覚悟しておいた方が良いと思います。ただし、それで日本株が下がるかというと話は別です。今の日本株、特に個人消費に関連の強い企業の株価には、消費増税による影響がかなり織り込まれていますから、予想を超える悪影響が出ない限り、これ以上の下落の可能性、ダウンサイドリスクは小さいと判断しています。むしろ、注目すべきは、ここへきて製造業を中心に改善の兆候がでていることです。

J.K.: 製造業といっても、どんなモノの生産が増えるのですか?

藤代: キーワードは5G、次世代型通信規格が来年にもスタートすることです。5Gに対応するためには、高性能の半導体を中心に莫大なIT関連財とそれを作るための機械が必要になります。日本企業の得意分野です。そこで最近発表された日本の製造業の経済指標を、かなり細かく見ると、今まで積み上がっていたIT関連財の過剰な在庫が減る一方、一部の製品では新規の受注が増える、という明るい動きがあります。中でも半導体などの電子部品を作るための装置、機械の受注が回復しているデータがあることです。5Gに関連する生産が動き出した可能性があります。株価が上昇しているのは、こうした製造業の明るい兆しを一部の投資家が嗅ぎ取った可能性があります。