藤代: 日本企業が現金を溜め込んでいるという話と、数字を見るときの注意点です

J.K.: 先ずは日本企業の現金保有についてですが、現状はどうですか?

藤代: 今年の3月末時点で企業が保有する現金は223兆円と過去最高となりました。これは毎年恒例の法人企業統計という経済指標が発表され、企業のバランスシートの中身が明らかになったことでわかりました。これに対して「企業が稼いだお金を使わないから溜まってしまっている」という解釈が一般的ですが、その前に一つ事実確認をしなくてはいけません。

J.K.: どういった点ですか?

藤代: ここで抜け落ちてしまっているのは、「比率」「割合」の議論です。日本企業が現金を溜め込んでいると言いますが、そこで考えなくてはいけないのは、企業が保有する総資産との割合で増えているか、どうかをみなくてはいけません。

現金と一緒に設備、あるいは無形資産などその他の資産が増えていれば、それは企業が現金を溜め込んでいるとは言えなくなります。

そこで企業が保有する総資産に占める現金の割合をみると、過去20年程度、ほとんど横ばいです。

つまり現金だけが積み上がっているという批判には違和感を覚えます。ちなみにアメリカ企業と日本企業の総資産と現金の比率は同じです。

J.K.: 確かに報道ではひとつの数字のみに着目していることがありますよね

藤代: 特に国全体の数字を取扱う際には、比率、割合を特に重要視すべきです。個人的によく気になるのは国の財政に絡んだ話です。

例えば単純な予算(歳出)の額だけに注目して、日本の経済規模との対比でみるという視点に欠けている印象を持ちます。

きのう発表された来年度予算の数値も「過去最高」と報道されていましたが、経済成長すれば、それに応じて予算も増えるのは、ある意味自然なことなので、数字の解釈は注意です。

こうした「比率」で見るクセをつけるのは、自分の会社で扱う数値など色々なところで、重要な視点になると思います。