藤代: 世界中の国債金利、長期金利が最近大幅に低下していることについて

J.K.: 大幅な低下、そしてそれが世界中に及んでいるということですか?

藤代: 市場で取引されている国債に買いが集まると金利は低下します。ここのところ、もの凄い勢いで長期金利が低下しています。数年ほど前までは、低金利といえば日本の国債くらいしかなかったのですが、今やヨーロッパを中心に国債の利回りがマイナスになっている国が多く存在しています。圧巻なのはドイツです。10年の国債金利はマイナス0.8%、そして30年金利はマイナスに突入しました。日本よりも低金利です。

J.K.: 国債金利がマイナスというのは、どういうことですか?

藤代: なかなか理解しにくい現象ですが、借金をする人が利息をもらえる、逆におカネを貸す人が利息を払うことになります。国債の場合、政府が発行する国債を買った人が政府に金利を払う。これがマイナス金利です。なぜそうなるか?というと、テクニカルな要素もあるのですが、背景は世界の中央銀行が金利を低水準(或いはマイナス)にコントロールしているためです。日本、ヨーロッパの中央銀行ECBに加え、スイス、スウェーデンがマイナス金利政策を実施しているほか、最近ではNZ、タイ、インドが金利を引き下げて、それに加えてアメリカが更に金利を下げると予想されているためです。

J.K.: ところで、金利が下がるのは、経済に良いことなのですか?

藤代: 経済学の基本理論では、金利が低くなると借金がしやすくなるので設備投資、住宅、自動車等にプラスの影響を与えて景気が良くなるとされています。それは今でも基本的には正しいと思います。ただし、実のところ伝統的な経済学ではマイナス金利を、そもそも想定されていないこともあって、いざマイナス金利になってみて初めて分かる副作用も目立っています。一つは、銀行のビジネスが立ち行かなくなること、もう一つは、年金など長期運用が難しくなること。これは人々におカネが増えなくなる心配を与えてしまいます。老後生活資金の2000万円問題もそうですが、極端な低金利はこうした弊害を生みます。金利を上げた方が景気にプラスでは? という議論もごく一部に出てきています。