藤代 今週最大の関心事である米中貿易戦争について

J.K.: トランプ大統領が中国に挑発的な発言を連発していますね。

藤代: 過去数ヶ月、アメリカと中国の貿易交渉は和解の方向に向かっていて、今回の閣僚級会談で何らかの前向きな合意に達するとみられていました。しかしながら、直前の5月5日に突然トランプ大統領が関税の引き上げを発表しました。アメリカが輸入する中国製品は、これまでも一部が関税の対象になっていましたが、今回、その範囲は更に拡大する見込みです。

J.K.: そうすると、中国からアメリカへの輸出が減るということですか?

藤代: 教科書的な考えであれば、今までアメリカに100円で輸出できていたものに25%の関税がかかれば125円になるので、アメリカの消費者は中国製品を買わなくなるでしょう。しかし現実の世界では、すぐに中国以外の製品に切り替えできません。工場を作って人を雇って製品開発するわけですから、数ヶ月のうちに輸出が減るとは考えにくいです。

J.K.: なるほど、それでも関税が中国経済に打撃という見方が多いですよね?

藤代: ここで少し深掘りします。現実の世界では、関税だけでモノゴトは決まらないので、為替レートを考慮する必要があります。為替には貿易の力関係を調整する機能があります。つまり輸出競争力の弱い国の通貨は安くなり、輸出が有利になるように為替レートが動きます。具体的には中国企業が関税で不利を被ると、その分だけ中国の通貨人民元が安くなります。つまり関税の影響を為替レートが相殺する方向に動くと考えられ、実際に既にそうなっています。トランプ大統領は関税をかけることで、中国経済にダメージを与えることができる、と考えているようですけれども、そう簡単にはいかないが経済の面白いところでもあります。