藤代: ダイナミックプライシングが経済に与える影響を考えてみます。

J.K.: ダイナミックは日本では「大きい」とか「壮大」と意味で使われることが多いのですが、「動く」「力強い」という意味がありますよね。

藤代: そのとおり「動く価格」です。つまりダイナミックプライシングとは、その時々の需要と供給のバランスによって、価格が変動するという意味です。身近なところではインターネットの旅行サイトなどで取り入れられています。株価や為替のように商品の値段が瞬時に変動させることで企業は価格設定のミス、すなわち、売れ残りの発生、あるいは安すぎる値段で売って儲け損なってしまうという問題を回避できます。

J.K.: 最近ではテーマパーク(USJ)でも採用されているようですね。

藤代: レジャー施設は季節や曜日の影響をかなり強く受けますから、1年中同じ料金よりは変動型の方が需要に対応しやすいと思います。特にインターネットの取引では、消費者がどういった行動しているのか、その分析ツールが発達してきたもあり、今後、ますます広がっていくと思います。ただ、一方でこれに頭を悩ませている人もいます。それは政府と日銀、私を含めて経済を分析する人間です。

J.K.: 経済が活発になる分には、いいような気がしますが?

藤代 今政府が作成している経済統計に限らず、今までのデータの取り方だと、このダイナミックプライシングを上手く反映できないということです。特に経済の体温である物価のトレンドがどうなっているのか計測できないのが問題で、間違った経済政策をしてしまう可能性もあります。同様の問題はアメリカでもあって、アメリカ政府も少しずつ統計の作成手法を変えているのですが、そうすると、今度は過去との比較が難しくなって、現状把握が難しくなってしまいます。まとめとして、最近は統計の信頼性が揺らいでいることもあるので、政策に関係する人は、生身の人間の意見を聞くなどして景気を肌で感じるということが必要だと思います。統計に固執しないことが重要です。