藤代:今朝は最近のアメリカの不動産市場での異変について

J.K.:これまで住宅市場は好調と聞いてました。何かありましたか?

藤代: 住宅関連は2008年に住宅バブルが崩壊してから、その後は長い時間をかけて回復していましたが、ここへきて弱いデータが相次いでいます。取引量が新築住宅の10倍ある中古住宅の売行きが鈍くなっています。これは在庫、空き物件が極端に不足していること、住宅の上昇ペースが賃金上昇率以上に上がってしまったことが原因。日本の首都圏マンションと似ています。これは新築住宅も同じで、建築労働者の人件費が高騰した結果として、いわゆる中間層には手が届かなくなりつつあります。景気・需要が強すぎて、その結果として販売量が落ちるといういびつな現象になっています。

J.K.:回復の見込みはありそうですか?

藤代: 住宅の値段に賃金が追いつくのは時間がかかりますから、すぐに回復する可能性は低いです。また、ここへきて米国ではモーゲージ金利の上昇がかなり効いています。今、30年固定金利は5%ですが1年前は4%でした。たかだか1%と思うかもしれませんが、3000万円の30年ローンの場合、4から5%への金利上昇で返済する利息は640万円も増えます。これはとても大きな変化です。

J.K.:このまま住宅マーケットが冷えて、アメリカはじめ世界の景気は大丈夫?

藤代: 住宅市場が冷えたといっても、住宅の値段の上昇率が鈍化しただけで、値段が下落するには相当な距離がありますので、90年代後半以降の日本のように土地の値段が下落して、経済が逆回転する可能性は極めて低いです。飽くまで改善ペースが鈍る程度で、今後起きそうなこともその範囲内です。仮に一段と経済が住宅市場が落ち込んだ場合、今度は金利が下がることで住宅ローンが借りやすくなって、住宅市場が復活するというメカニズムが働くので景気が腰折れすることはないと思います。ただ、それでも住宅部門が経済を引っ張っていく姿は想像しにくくなってしまいましたので、そこは慎重に見ておく必要があります。