2006.10.29

BLUE DAISY / 沼田壮平

今回は『声の持つ力』ということをお話したくて、本日ご紹介したいのは沼田壮平さんというアーティストです。
この春、審査員として参加したオーディションで2500本近くのデモテープが集まった中でダントツ僕の心を掴んだ一本なんです。
彼はアコギ一本の弾き語りをICレコーダーみたいなもので録音しただけの、非常にチープなデモテープだったんですけども、その声の素晴らしさに僕はもう惹かれましてですね、彼をダントツの一番で選んでしまいました。
声を聞くと「えっ、女の子!?」と思う方が多いと思うんですが、れっきとした男の方です。
一緒に男子トイレも入りましたし(笑)
本当独特の声で、箸を持つ手が止まるというか…「誰これ!?」ってなるんですよ。
よく音楽談義をしてる時に「私は断然、歌詞派!だからJ-POPが好き!!」とか「俺はサウンド派だから洋楽が好きだ!!」なんて話になりますけど、本当は音楽を聞く時ってそのどちらでもなく僕は全てのリスナーが「声派」だと思ってるんです。
人間が音を聞くという動作はですね、音や声という空気振動を伝わってまず鼓膜が振動するわけですよ。
ということは第一初期波動として声や音という成分が入ってきて、そのあと第二波動として歌詞やメロディが入ってくると思うんです。
人間の五感の中で耳で聞く時というのは、まずは声や音を聞いてるんだと。
だから歌詞派でもメロディ派でもなく声派なんじゃないかというのが僕の論理なんです。
というわけで、声に特色のあるアーティストというのは生まれながらにしてブレイクへの切符を手にしたものだと思っていて、例えば数々の大ブレイクして長続きしているアーティストの方を思い出してみると、Mr.Childrenの桜井さんとかもそうだし、スピッツの草野さん、奥田民生さんもそうですよね。
宇多田ヒカルちゃんもそう、椎名林檎もそうかもしれません。
その人でしかありえないオンリー1の声を持っていると思うんですよ。
その声の初期波動がまず人の心に刺さるというのが僕は一番大事だと思っていて、沼田さんはコード感といい、この英語詞といい、J-POPの概念を打ち破る感じなんですが…でもやはり何よりもこの声に特色があるという、とにかく要注目です!
まだデビュー前の原石なので、どうダイヤモンドに変わっていくか楽しみですね。
近いうちまたプロデュースなどでご一緒出来ればと思っています!


亀田誠治(かめだせいじ)

日本音楽界稀代のプロデューサー、椎名林檎、スピッツ、平井堅、アンジェラ・アキ、Chara、SOPHIA、175R、松千など、手掛けたアーティストは数知れず。
2004年夏から椎名林檎らと「東京事変」を結成。
アーティストとしても活動中。
makotoya : SEIJI KAMEDA Official Website