2005.06.26

今日はスペシャルバージョン!
今年で9回目を迎える日本最大級の野外ロックフェスティバル「FUJI ROCK」のブッキングからなにからなにまで仕切る男、”日高正博さん”に登場してもらいました。
(【H】日高さん、【C】クリスさん)

【C】フジロックは毎年行かせて頂いているんですが、9回目になるんですね!
あっという間でしたよね。

【H】そうですね。光陰矢の如ですね。

【C】毎年10万人以上を苗場に集める夏の風物詩になったこのフジロックですが、このフジロックの最新情報から普通じゃ聞けないアーティスト裏話など、たっぷりと聞かせて頂きたいと思います。
そもそも日高さん、このフジロックを初めたきっかけっていうのは?

【H】イギリスでも今ちょうど開催されている”グラストンベリー・フェスティバル”を1985年頃に見て、「こういうものが出来ればいいな」と思ったんですが、その時は夢みたいな話で、まさか出来るとは思いませんでした。

【C】85年ということは今から20年前ですね。
最初は富士山のふもとで開催されましたが、3回目から苗場に場所を移したわけですよね。
毎回どんどんレベルアップして、拡大しているような感じがするわけなんですが。
お客さんの傾向も変わってきたんじゃないですか?

【H】やっぱりアウトドア型のイベントなんで3日間、山の中にいるってことに対しての環境適応力と言うんでしょうか、お客さんなりに雨が降ろうが、かんかん照りになろうが、それぞれが楽しんでやっていけるようになっていると思います。

【C】最初はみんな野外フェスなのにハイヒールで来る人たちもいましたもんね。
びっくりしましたよ。

【H】今はもうちゃんと着替えとか、雨が降ったらどうしようとか、そういう風にちゃんと対応できるようになったと思います。

【C】僕が前にやっていた番組にその頃によく日高さんによくゲストでいらっしゃってもらっていたんですが、その時に「どうやってコンサートを楽しめば良いのか」ってことを教えてましたもんね。
でも、もうみなさんそこら辺はちゃんとわかっているようですね。
日高さん的にはみなさんに「こういう風に楽しんでもらいたい」っていうのはあります?

【H】やはり音楽中心だから、好きな音楽を楽しんで欲しいっていうのと、もうひとつは「別にみなくてもいいや」って環境を作っているつもりだし、3日間いたけどどのバンドも見ていないとかね。
原っぱに寝そべって、あちらこちらから聴こえてくる音楽を楽しむとか、人それぞれでに楽しんでもらえればなと思っています。

【C】僕もコンサートに行く時って「このアーティストが出るから!」って行くじゃないですか、最初はそうだったんですけれど2年位まえから良い意味で「どうでもいいや」って気分になっているんです。
Orange CourtやField of Heavenに行って、聴いたことのないバンドが楽しかったりするんですよ。
空間をエンジョイするというか、海外アーティストがよく言うのはヴァイヴがすごく良いって言ってますし、集まるお客さんもマナーを心得ていてあんなキレイなフェスは見た事がないとも言っていますね。
全体的にとても楽しく、歩いている人も笑みを浮かべているというのがフジロックの印象です。
で、今年のラインナップですが素晴らしいアーティストが名を連ねているわけですが、今回、日高さん的に思い入れがあるグループは誰ですか?

【H】これは新しいバンドから、中堅どころ、ベテラン勢まで幅広いんですが、金曜日のWhite Stageにでる20年選手の大好きな”Steel Pulse”、あと”The Pogues”。

【C】今日はポーグスのTシャツを着ていらっしゃいますが。

【H】これはね、ジョー・ストラマーが死んだあとに家族が見つけた、90年代にポーグスに加わった時、レディングでジョーが着ていたTシャツです。
20代の人達はThe PoguesやSteel Pulseは知らないと思うけど、そのポーグスにシェインがカムバックしてスパイダーも元気になって、是非見てもらいたいと思うし、あとはOrange Courtのキングトーンズですね。

【C】キングトーンズっていうのもシブいですね。

【H】日本のドゥーワップの先駆けなんで、是非若い人達に見てもらいたいなと思ってます。

【C】キングトーンズというと「イギリスの新しいスカのバンド??」って重いそうですが、日本のドゥーワップなんだけど、独特のちょっと演歌っぽい雰囲気を持つグループなんですけれどね。
あとブッキングで今回苦労した事とかはありますか?

【H】まぁこういう100アーティストぐらい出るイベントなんで、いろんなことがあるんだけど、実は日曜日はボブ・ディランを予定していて、電話でもOKが来ていたんだけれども、1回だけじゃ来たくないって言っていたんで、ソウルやバンコクをブッキングしたんです。
それが突然「や〜めた」って。
いかにもボブ・ディランらしいんだけど(笑)。
直前2ヶ月前切ってからのの変更だったらキビしかったかな。
その時に考えたのが、日曜日のヘッドライナーは”New Order”なんだけれど、確かに日本ではビッグではないけれど、ヘッドライナーとしてはあらゆる海外のイベントでヘッドライナーをやっているし、俺たちが大好きなバンドだし、ってことで”New Order’に決定しました。
その時に考えたことはいつも日曜日の夜にクロージング・バンドということで、ヘッドライナーが終わった夜の10時位からしめてもらうんだけど、それを今年はもっと大きなバンドにやってもらおうということで、”PRAIMAL SCREAM”に決定しました。
で、もう一つ考えたのは”Happy Mondays”はどうだろう?マンチェスター・シーンで行こうかって考えたんですが、スケジュールが合わなかったんです。
だから結構、日曜日は大変だったかな。

【C】”New Order”もそうですが、今年の音楽の傾向って80年代のUKロックが盛り上がりを見せていて、若手のバンドも80年代初頭のサウンドをやっていてとてもタイムリーなキャスティングなんじゃなかなと思いました。
そして今回は”Coldplay”がGreen stageに出ますが、これは彼らから直に日高さんへ出演したい意思が伝えられたらしいですね。

【H】彼らはプロモーションで来日していた時に、ビジネスランチをする機会があって、その時は来年のツアーの話をしていたんだけど、突然「フジロック出れないかな?」って話になったんですよ。
あまりにも突然で「えっ!?」って感じで、「もう場所がないよ!!」という状況だったんですが、日曜日の空きがあったので、「日曜日は?」って聴いたところ”日曜日だったら月曜日にNYに行って、水曜日からマジソンスクエアーガーデン”というスケジュールだったんで、無理矢理、金曜日のFoo Fightersの前に出てもらうことになったんです。

【C】でも世界的に集客できる率が高いのって”Coldplay”かもしれませんね。
アメリカでアルバムが出た時に1位でしょ。
これはビートルズも成し遂げなかったって偉業を成し遂げた超ビッグネームですもんね。

【H】日本では3rdアルバムでがんばってますね。

【C】サウンドも大きくなってきているので、野外にはぴったりだなと思います。
あと、僕が注目しているのは、海外のアーティストはもちろんですが、日本のロックでもすごく良いグループが沢山でてきますね。
”ROSSO”とか”LOSALIOS”、”PEALOUT”とかが気になってます。
あと”Adrian Belew”が出るっているのがシブいですね。

【H】これも向うの方からオファーがあって、大好きだったから。
たまたま”The California Guitar Trio”が出るので、同じ日に同じステージに出来ればなと思って。

【C】キングクリムゾンでギターを弾いていましたし、”The California Guitar Trio”というと、ロバート・フィリップの弟子みたいなもんですね。
ロバート・フィリップの仙人のようなギター技巧をこの3人がやるわけですが。
もしかして、キングクリムゾンもあるのかな?思っていたんですよ。

【H】今回はないですね。

【C】でも、クリムゾンってハマりそうな気がするんですよ。

【H】実は去年の日曜日はプログレをやってたりしたんで、White Stageのヘッドライナーで考えていたんですが、折り合いがつかないでちょっと残念だったんですが。

【C】結構過去にもオジー・オズボーンをけっちゃったり、オファーがあっても断っちゃったりするんですが(笑)。
日高さんの基準っていうものはどこにあるんですか?

【H】口で言うのはものすごく難しいよね。
まず、産業ロックとか”こうすれば売れますよ”っていうのは聴いた瞬間ダメだね。
こういう言い方は変なんだけど、あまりラジオ局に行くのは好きじゃないのね。
なぜかって言うと、入ったとたん聴きたくない曲が流れてたりするのね。
自分の車や家だったら切ってしまえばいいんだけど…。
J-WAVEの選曲が悪いとかそういうことではなく、一般論としてね。
そういう我がままさがるんだけど、こういうイベントなんで我がままを貫きたいなと思ってます。
自分たちで良いとおもって好きな人たちに出て欲しいし、そういう音楽をお客さんに楽しんでもらいたいと思っているから。

【C】毎年、日高さんをはじめスタッフのみなさんが力をあわせて作り上げているわけですが、やっぱり日高's worldって独特の世界がありますよね。
そういう意味では濃厚な3日間だと思う訳なんですが。
ちなみに追加で何か情報は入りました?

【H】土曜日のWhite Stageに”Queen Of The Stone Age”が出る事になっていたんですが、ギターが怪我をしてキャンセルになったんです。
土曜日のWhite Stageの核として考えていただんですよ。
なかなかこの時期に探すのは難しかったんですが、”Gang Of Four”というグループが出ます。
結構前のグループで現在も活動していて9月にニューアルバムが出るということなんで、急遽ブッキングしました。

【C】80年代初頭に活躍したグループですよね。
あとは今回ボードウォークを延ばしているとか?

【H】もっと延ばしているし、Greenまで道ができて、ボードウォークは途中までしか行かないんだけど、その後は山道をきって川のそばを通して、Greenの手前まで作ってます。

【C】あれ歩くと全部で何キロぐらいありますか?

【H】4キロぐらいあるかな?

【C】私にとってお正月のようなイベントなんで、また今年も本当に楽しみにしています。
今日はお忙しい中ありがとうございました。

日高正博(ひだか まさひろ)

1949年生まれ。株式会社スマッシュ 代表取締役。
海外アーティストの招聘や数々の音楽イベントの制作を手掛け、'97年に富士天神山スキー場にて第一回の「FUJI ROCK FESTIVAL」を開催。
今年で9回目を迎えるフジロックは出演アーティストからも、世界でベストの野外フェスティバルと評価されている。
フジロックフェスティバル公式サイト