STORY
小説家で劇作家の戌井昭人さん
++ Introduction ++
今年10月に出版された3年ぶりとなる新刊、
「壺の中にはなにもない」の主人公のモチーフになったのは
以前、仕事でご一緒された美術館の一風変わった方だそう。
『焼肉を食べに行ったら他の人のことを考えないで
自分の分だけ焼いてバクバク食べているのを見ていたら
“なんか良いな、この人!”と思って…。
いつも髪の毛に寝癖がついていて、
マイペースで仕事をしているけど、していない感じの人で。
その人にインタビューしたところ良家の出身で
“これだ!”と思って書き出した感じですかね』。
実在する人物の“だらしない部分”に接することで
インスピレーションを受けて小説を書くことが多いそうです。
そして今作の特徴は帯に寄せられた推薦コメント。
ご自身が主宰するパフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」の
舞台上での戌井昭人氏のイメージと本のタイトル、あら筋をヒントに
作品を読まずに自由に物語を想像して書いてもらったとか。
++ Until now ++
実は戌井さん、90年代後半にJ-WAVEで放送していた
ロバート・ハリスさんのポエトリー・リーディングの番組、
「ポエトリー・カフェ」に出演されていたとのこと。
中学生の頃から映画の脚本家を目指し、
大学では演劇を専攻して、卒業後は芝居の道へ。
今でも映画の脚本には興味があって、
「田舎のサイケ野郎」というタイトルで構想は練っているそうです。
戌井さんは小説家になる以前から
パフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」の主宰として
脚本を手掛けてきました。
『田舎のお祭り会場で頑張ってお芝居していて、
おじさんだけど“何だこれ!”というのを演りたいんですよ』。
普段は芝居を専門としていない人たちを中心に
ネギで叩き合ったり、寸劇から落語まで披露する
独特なパフォーマンスになっています。
++ Right now ++
旅が好きで、若い頃はリュックにテントを背負って
富山や四国までヒッチハイクしたり、
海外でバックパッカーだったこともあるとか。
『どんどん移動していく感じが好きで、
インドやネパールに行ってみたりもして…。
移動でバスに乗っている時にぼーっとするのが好きです。
学生時代にビートニクスが好きで
勝手に“一人ビート活動”みたいなことをしていました。
ヒッピーはバックパックでリュックだけど
ビートは肩掛け鞄にジャケットを着ている感じだったので、
自分でも何を気取っていたのか分からないけど
インドに行ってもちゃんとした格好をして、
だらしなくなって服が汚れていくのが好きでした。
コスプレだったのかなぁ』。
その流れでビートニクスの人たちが訪れていた
モロッコのタンジェに5〜6年前に行ったところ、
ヨーロッパとアフリカの文化が混じった感じが面白くて、
それ以降、昨年までは毎年足を運んでいたとのこと。
++ From now on ++
コロナ禍の影響により「鉄割アルバトロスケット」の
毎年恒例となっている夏公演は中止となりましたが、
改めて来年8月に予定しているとのこと。
『毎年、みんなで集まって演っていたのでちょっと…
大きな声を出すことってあまり無いじゃないですか。
舞台上ではおかしくないので、無駄に大きな声を出すのが
良かったのではないかと、今にして思います』。
今後、劇作家としては長編も手がけたいということで、
ソリッドで前衛的な内容ではなく
普通の話を普通に書きたいとか。
小説家としては新潮社の「波」で連載していた
「さのよいよい」が12月に出版される予定です。
『うだつの上がらないような男の身の回りのことで、
徐々に衰えてきたお祖母ちゃんをお寺に連れて行ったり
お祖母ちゃんが通っていたお寺が火事になってしまって、
何で燃えたのかを探ったりとか…
身の回りの近辺をウロウロしている男の話です。
何かが起きるような起きないような感じになります』。
過去5回、芥川賞にノミネートされていることについて・・・
『初めての時は自分の書いたものが候補になるんだと驚いて、
獲れる気がしたけど、結局は獲れなくて…。
後は多分獲れないんじゃないかなと思う感じです。
受賞作の発表まで編集担当の方と待つじゃないですか。
みんなは気を使って“獲れます!大丈夫!”となるけど、
落ちた電話がかかってくるんですね。
それを伝えるのが気を使って嫌だなということは覚えています(笑)』。
ON AIR LIST
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SON OF SAM / ELLIOTT SMITH
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THAT OLD PAIR OF JEANS / FATBOY SLIM
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いとしのフィート / サザンオールスターズ
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MY HAIR / ARIANA GRANDE