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STORY

2020.10.17

アーティスト、大山エンリコイサムさん

++ Introduction ++

※コロナウイルスの感染拡大予防のためリモートで出演いただきました。

エアロゾル・ライティングのヴィジュアルを再解釈したモチーフ、
「クイックターン・ストラクチャー」が話題のアーティスト、
大山エンリコイサムさん。
このクイックターン・ストラクチャーとは?

『普通のストリートアートは
自分の名前をスプレーやマーカーで描く表現なので
文字を書くのが基本となっていますが、
文字の形を取り除いて線の動きを抽出して
それを反復して純粋な抽象の形に再構成するが
クイックターン・ストラクチャーになります』。

ストリートアートはニューヨークで始まったもので、
当時は地下鉄の車体や路上に描くことが主でしたが、
大山さんは絵画としてキャンバスに描いたり
企業やブランドとコラボレーションするなど
メディアに囚われずに色々な表現をされています。

基本的にライティングとグラフィティは
ほぼ同じ意味を指すということですが、
この二つの言葉の違いについて・・・

『グラフィティは日本語だと「落書き」ということです。
ライティングはもう少しニュートラルに描く行為なので
良し悪しは含まずに実際、名前を書いているので
そのままの描くという意味でライティングですけど、
グラフィティは迷惑行為や違法行為など
ネガティブなニュアンスが含まれてきてしまう。
元々、70年代にこの文化が始まった最初の時に
当事者の人たちはライティングと言っていましたが、
新聞や行政は迷惑行為であってアートではない
という意味でグラフィティと呼んだという経緯があります』。

現在、ニューヨークで開催されている過去最大規模の個展、
「INSIDE OUT」は今年の8月に終わる予定でしたが、
新型コロナウィルスの影響により2021年1月まで延長になりました。

『マンハッタンで最大のオフィス街ミッドタウンにある
オフィスビルのロビーを使った展覧会で、
不特定多数のビルの関係者はもちろん通行人もいるので
パブリック性の高いエリアなんですね。
ですから、結構いろいろな人の目に触れる
パブリックアートの要素が強い展覧会だと思います』。

今年1月にはニューヨークを中心とした
アメリカのストリートアーティストを論じた本、
『ストリートアートの素顔 -ニューヨーク・ライティング文化-』を上梓。
ニューヨークに縁のある12人のアーティストを取材し、
エッセイの中でバイオグラフィーから作品分析まで著しています。



++ Until now ++

幼少期から20年以上、お父様の故郷である
イタリア・ヴェネト地方で夏を過ごされた大山さん。
今、改めて考えれば東京という大都市と
北イタリアの田舎を行き来した経験が
現在の作品の中にも現れているとか。

『無駄を削ぎ落としていく感じと
東京のコンクリートが複雑に入り組んだ都市空間みたいな部分…
その両面にインスパイアされているところもあって
無意識に影響はあるのかなと思います』。

子供の頃から絵を描くことが好きで
高校生の時にブレイクダンスやスケートボードなど
ストリートブームだったこともあり、
他の人とちょっと違うことをしたいという思いから
エアロゾル・ライティングに興味を持ったとか。
最初は雑誌などで見たものを紙に模写することに留まり、
実際に街中で描くという行動は起こさなかったそうです。

『法を踏み越えてまで街に自分の名前を描いて
自己主張する必然性みたいなものは本当にあるのかなと
当時、高校生なりに考えてしまって…。
その中で紙に描いているだけでは表層をコピーしているだけだから
自分だけの表現に昇華させないと意味が無いと思って
模索しながら徐々にクイックターン・ストラクチャーという
スタイルができて来ました』。

70年代にニューヨークの街中で行われていた文化と
2000年代に日本で育ったという社会状況が異なる中で、
エアロゾル・ライティングという文化について
自身の立ち位置を考えるようになり、
その“歴史”を掘り下げるようになったそうです。

『サブカルチャーなのでジャンル自体が
未だきっちりと歴史化されてないんですよね。
だけど誕生から50年くらい経って、
ストリートアートを歴史的にどう語るかというのは
今まさに誰もが意識し始めていると思っています。
そこはある意味、僕個人の最初はどうだったということを超えて
時代の必然と言える良いタイミングだと感じますね』。

++ Right now ++

通常はニューヨークと東京の双方のスタジオで
制作活動を行っているということですが、
今年はコロナの影響を受けて年明けまでは
日本に滞在する予定とのこと。

評論家の粉川哲夫さんとの往復書簡をまとめた共著、
『エアロゾルの意味論:ポストパンデミックの思想と芸術
粉川哲夫との対話』について・・・

『まだこのウイルスについては分からないことが
いっぱいあると思いますが、それは専門家に任せるとして
自分はアーティストとしてこれまで考えてきたことと、
今回のウイルスを切り口にその先にある思想や地球の問題が
元々考えていたテーマとして結びついたところがあったので
そういうことを粉川さんと一緒に、
一つのテーマというよりは即興的に
いろいろなところに飛び火はしているんですけど…
そういう形で作った本です』。



++ From now on ++

今年12月14日から2021年1月23日まで
神奈川県民ホールギャラリーで個展「夜光雲」が開催。

『ストリートの文脈を受けつつ
さらにそれをもっと広い意味で
芸術のいろいろな要素に結び付けて、
今の自分の現在位置みたいなところを示すような
展覧会にしたいと思っています』。

東京オリンピックの影響もあって高層化が進む東京の街ですが、
ストリートにはどのような影響を及ぼすのでしょうか?

『当然、時代とか場所の環境によって変化もして行くので
70年代のニューヨークと2000年代の東京が異なったように
2020年代の東京もまた違うと思っています。
SNSに作品を載せるアーティストも増えている中で
ストリートで始めた表現が美術館に入ったり、
ネット上で見られてもっと違う仕事に繋がることも増えました。
ただ、だからと言ってストリートでやっていた元のものが
全く無くなるわけではないので、
元々あるものと新しいものを形を変えながら
これからも共存していくのかなと思います』。

今後はニューヨークのストリートに限らずに
もっと幅広い芸術のエッセンスを取り入れながら、
様々な領域を横断しながら表現していきたいということです。

ON AIR LIST

  • BE KIND / MARSHMELLO & HALSEY
  • I CAN / NAS
  • YOUR NOSTALGIC HEART AND LUNG / RJD2
  • BETTER THAN I IMAGINED / ROBERT GLASPER

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