STORY
大阪大学准教授で音楽学の研究者、輪島裕介さん
++ Introduction ++
※コロナウイルスの感染拡大予防のためリモート出演頂きました。
音楽学の中でも演歌、歌謡曲、流行歌、J-POP、
今だとシティポップも含めて日本の大衆音楽の歴史を
研究されている輪島さん。
欧米音楽に比べ、最近まで重視されていなかった
日本の大衆音楽に注目するきっかけになったのは
もともと興味があったブラジルのアフリカ系音楽だったとか。
『例えばサンバはブラジルの国民的な音楽
というイメージを誰もが抱いていますよね。
アルゼンチンはタンゴ、キューバではソンというように
独特でポピュラーな音楽スタイルが
ある特定の国や地域とか社会と特別な結びつきを持つ
というプロセスを日本に当てはめてみようと思いました。
それで演歌かなって安直に思ったところがあるんですけど』。
今、「演歌」とジャンル分けしているスタイルを
「演歌」と呼ぶようになったのは1970年くらいで、
それ以前は一般的な名称ではなかったそう。
『演歌は明治時代の“演説の歌”から始まっていて、
昭和に入ると流しが現れて飲み屋で彼らの歌を聴いたり
一緒に合わせて歌う人たちの魂の歌だという感じですよね。
あとはもう一つはより若者向けの洋風の音楽が
1960年代半ばくらいから流行り出して、
昭和の初め頃にできたレコード会社が作る
流行歌、歌謡曲のスタイルというのが
新しいタイプの若者の音楽と比べるとやや古臭かったり、
洋風ではないという意味で日本ぽいと思われて
その二つの分かれ方が何となく見えるようになってきた時に
以前からあったタイプの音楽を含めて演歌と言い換えた』
と分析されています。
++ Until now ++
大学でラテンアメリカ音楽のサークルに入り
ブラジル北東部バイーアのカーニバルに行って、
そこでの音楽と街の雰囲気に魅了されたことが
音楽学の研究者を目指すきっかけになったとか。
『サークルでは太鼓をやっていましたが、
演奏家では食べていけないことを早々と思い知るみたいな。
でも、何らかの形で音楽に関わりたいという思いがあって、
音楽が生み出される場所や人々であったり
歴史的な変化を知ることも面白いと感じるようになりました。
音楽やパレードとかを通じて自分たちのアイデンティティを
新たに作って主張するというあり方にもすごく感銘を受けて
それを知りたい、知ってもらいたいというのがありました』。
大学院で音楽を研究する中で、
なぜ日本人がブラジルのアフリカ系音楽に惹かれるのかを
考え始めるように。
『日本の中で欧米以外、特にラテンアメリカの音楽や
有色人種の音楽を受け容れる時には、
そういうものを通じて自分たちの音楽や文化のあり方を
反省的に捉えるべきなんじゃないかなと。
非西洋のある特定の場所や人と結びついた音楽が
日本でどのように受け止められてきたかを調べていくと、
自分たちの民族的な音楽をどうやって立ち上げたらいいのか
という問題意識や悩みみたいなものが結びついてきます。
そこに引っかかるように出てくるんですよ、演歌は』。
++ Right now ++
最近は人生の楽しみ方として
“薪割り”を発見したという輪島さん。
『やっていることは単純ですけど、
結果が目に見えて分かるじゃないですか。
パ〜ンと割れた時の快感はすごい達成感があるし、
曲りくねった木目のものを攻略していくみたいな
楽しみもあったりして・・・』。
割った薪は自宅の薪ストーブに使って暖をとったり
煮込み料理をして活用されているそうです。
田舎暮らしを始めてからは生活の中で
常にBGM的に音楽を流すことはあまり無いそうで、
お子さんが小さいこともあって
今は家庭内でいろいろな音が発されているとか。
++ From now on ++
コロナ禍により生で音楽を聴く機会が激減している
現状について研究者という立場から輪島さんは・・・
『日本は元から街中に音が溢れているという感じは
あまりないじゃないですか。
生演奏でもDJがプレイする音楽でも、
ここに行けば大体良い音が鳴っているよねという場所が
もっとあってもいいんじゃないかと以前から思っていて、
そういう流れがこの後どうなっていくのかなと。
出来上がった完成品の音楽よりも、
その場で下手くそなオジさんが演奏している音楽のほうが
いいと思う人がもう少し増えてもいいなと思っています』。
今後の活動としては日本のディスコの歴史や文化などの
研究を視野に入れているそうです。
『ディスコは70〜80年代のものだと思いますが
そこからクラブに移行したと言われた時に
音楽をよりストイックにシリアスに楽しむバーに
変化していった部分があるじゃないですか。
音楽がある社交場のような場所にすごく興味があるし、
自分がそういう世代ではないからこそ
日本でディスコ文化がどういうものだったのかなとか、
すごく気になっているんですよね』。
ON AIR LIST
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DOUHA(MALI MALI) / DISCLOSURE, FATOUMATA DIAWARA
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MY BABY JUST CARES FOR ME / NINA SIMONE
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NO TABULEIRO DA BAIANA / João Gilberto, Maria Bethânia, Caetano Veloso, Gilberto Gil,
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WATER ME DOWN / VAGABON