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STORY

2020.09.19

民俗学者で作家、編集者の畑中章宏さん

++ Introduction ++

※コロナウイルスの感染拡大予防のためリモート出演頂きました。

時間的には過去、空間的には農産層のようなところを示す
”伝統的社会”ではお祭り、妖怪、おまじない、しきたりが
普通の人々の中で伝承されています。
そういったものの習俗や信仰と、それに伴う所作や感情は
どのようなものかを研究するのが民俗学。

『人を驚かせたり不気味に感じる妖怪のような存在は
昔の誰かが何かしら理由があって生み出してきたもので、
そういう妖怪に遭遇した時の感情というものを
伝えようとしたわけです。
なんでそんな怖いものや不気味なものを生み出して来たかを
現代の目から考えるのが民俗学と言って良いと思います』。

民俗学を通して私たちが学べることについて畑中さんは・・・

『民俗学の対象は歴史に名を残す武士や貴族の方ではなくて
お百姓さんや漁師さんとか普通の町人が伝えてきたものです。
僕たちと同じ身分や階級の人が何を考えてきたかということで、
その部分では変化したこともあるし、危機、災害、戦争であったり
あるいは日常の中で困難や困ったことがあった時に
自分たちが抱く感情が昔の人と繋がっているのか。
潜在的に近代化や都市化したとしても通底する部分があって、
それに伴って行う行動にも共通点があるのではと仮説して
いろいろなことを考えていくことをしています。』

昔の人々の間にも流行があって、そこから伝承されたのが
妖怪やお祭りであったりしますが、
今の私たちも流行や現象などのブームを生み出して
それを楽しんで日々暮らしているという点では変わらないとのこと。
現代の最新流行や先端現象も実は過去から脈々と繋がってきた
感情の発露であったりするのではという考え方から
最先端と過去を行き来するのが畑中スタイル。
「民俗学2.0」「21世紀の民俗学」という形で
アップデートされた民俗学を提唱されています。



++ Until now ++

大学時代は政治思想史、精神史を専攻され
編集者としては主に日本の文化や美術を紹介する
カルチャー誌を担当されていた畑中さん。
編集の仕事を続ける中で2011年3月11日に
東日本大震災が起こりました。

『あれだけ多くの方が亡くなられて、
その方たちの霊魂はこれからどのようになるのか。
亡くなった方を送った多くの人々がどのような感情をもって
故人の魂とどのように付き合っていこうとするのか
といったことを自分で書くのが一番目的に適っているので、
「柳田国男と今和次郎」という本を書いたんですね』。

この作品が好評だったこともあり、
これまで民族学者が災害に対してどのように取り組んできたのか
といったことの応用編として「災害と妖怪」では
妖怪やお祭りとの結びつきについて書かれています。
そして、それ以降はご自身で課題を見つけ、宿題を課し、
解決していくことを現在まで続けてられています。

自然と人の繋がりについて多くの本を書かれていますが、
常にベースにあるのは人と自然は対等であるという
柳田国男さんの考え方とのこと。

『生き物にはそれぞれの事情や世界があって、
人間と合わない時には彼らは自らの社会を営んでいるよ、みたいな。
あるいは生き物だけではなくて気象現象や自然そのものにも
彼らの主体性があるみたいな考え方をする。
それがたまたま人間と合った時に、災難や水難であったり
獣に襲われたりということであって、
その時に私たちが軟着陸するためには合わない時の自然の事情を
常に考えておかなければいけないのが
民俗学の胎土だと考えています。』

何かが起きる前に自然を考えるという民俗学の考え方は
今回の新型コロナのような疫病にも当てはまるとのこと。

『ただただ怯えているだけではなくて、
これから長い付き合いになるなら
そこから何か新しいものを生み出していくというような
どこかで前向きな風に考えていかないと
いつ終わるか分からないですから・・・』。

++ Right now ++

平日は奥様が外で仕事をされているので夕飯作りは畑中さんの担当で、
最近は出汁をとったり灰汁をすくっているのが好きで楽しいとか。

『食も民俗学の中では大きなテーマで領域です。
昔は実際に食べるものと商品として売るものが微妙に違っていたり、
日常的に食べるものとお祭りや晴れの日に食べるものが違うように
結構、節目を持っています。
そういう時に食べるとすごい美味しく感じられるみたいなことで
生活に変化をもたらしてきたところもありますし、
現在も同じ県の中であっても一括りにできなくて
山の方、川の方など地域のオリジナリティーが
料理というものは非常に顕著に出ると思いますね。』



++ From now on ++

現在は日本列島で起きた様々な災害にまつわる伝承、
そして今回の新型コロナのこともあり疫病に関する伝承を
継続して調査、研究されています。

『コロナになってから気分的には自粛になっていますが、
文化現象として今だから流行っていることは
あまり無いじゃないですか。
何か新しいカルチャーが生み出されてきてほしいという
期待の方が大きいですね』。

最新刊「五輪と万博 - 開発の夢 翻弄の歴史」では、
来年開催予定のオリンピックと
2025年開催の万博をテーマに執筆されています。
オリンピックは各種目の選手や記録、
万博はパビリオンについては歴史的に残り語り継がれますが、
今作ではイベントの裏側を民俗学的に掘り下げたとか。

『土地の事情がどのようなものだったのかということから
開催予定地や開催されたことで変化した風景を追っていくのは
追体験や歴史になって、これから先に開催される五輪と万博でも
そういった見方で楽しむというか経験する方法もあるのでは
ということを示唆したい気持ちで書いています』。

最後に畑中さんの展望について伺いました。

『これから先、何冊か本の準備もしていますけど、
それを読んだ方が感動して情報が入っただけではなくて
行動を起こしてみるとか何かのきっかけになるような本を
これからも書いていきたいかなという風に思います』。

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