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STORY

2020.04.04

ブック&ギャラリー「6次元」の店主、ナカムラクニオさん

++ Introduction ++

店の看板は小さくて分かりづらく、固定電話も設置していないという
ユニークな経営スタイルのブック&ギャラリー「6次元」は
イベントを開催するなどフレキシブルに営業しています。

『今、世界のトレンドは小さい看板と謎めいた部分だと思います。
スマホ一つあれば世界中の人とダイレクトにつながって
いろいろな情報を共有できるようになってくると、
そもそも店が店でなくてもいいのかなと思ったりします。
今後はそういった進化系の店がもっと増えていくという気がします』。

10年ほど前に趣味の延長で始めた「金継ぎ」。
徐々に需要が増えて、現在は海外からの依頼のほうが多いとか。

『壊れている物を修理するだけでなく、より美しくなるわけです。
皆さんが持って来るのはただ直したいというだけではないんですよ。
子供の頃から使っているマグカップや初めて親に買ってもらった
カフェオレボウルといった物を持って来る人が圧倒的に多くて、
実際には物を直すというよりも誰かとの関係性や思い出を直したい
といったようことなんですよね。

人間のことを器と言ったりするじゃないですか。
だから器そのものも自分の鏡みたいにして見立てていると思います。
器が傷つくと自分も傷ついているような気になるし、
器が直ると自分も治ったような気になるという効果があるのかなと
最近、金継ぎをやっていて感じますね』。



++ Until now ++

15歳の時にオノヨーコの作品を初めて観て衝撃を受けたことがきっかけで
芸術家になる夢を抱いて油絵の画家として活動を始めたナカムラさん。
高校在学中にとあるデザインのコンペに出品したところ
審査員の横尾忠則さんに絶賛されて大賞を受賞。
その賞金10万円を投じてギャラリーを借りて17歳の時に初の個展を
開催されました。

大学時代は美術の研究も兼ねて海外に出かけて美術書などを購入して
東京で販売するという生活を送っており、
卒業後は芸術的なことを続けられるのではという思いから
映像ディレクターの道を選んで制作会社に入社したということです。

『海外のいろいろな所に行けて、いろいろな人たちに会えることが
とても面白くて、テレビの旅番組や美術番組を15年くらいやりました。
一番長かったのは「開運!なんでも鑑定団」で、
5年ほど担当していたので勉強になって専門家並みに詳しくなりました。
今はその経歴を活かして器の修復に役立てている部分もありますね』。

体力的なことや将来を考えて30代後半に独立し、
ゼロから始めたのがブック&ギャラリー「6次元」。

『最初はカフェを営業していましたが売上が伸びなかったり
本も思ったより売れなかったのでイベントを始めるようになりました。
読書会、朗読会、演劇などを何千回も開催して来ましたが
意外とそちら方が面白いと思ってイベント型スペースに移行しました。
試行錯誤しながら現在の形になったという感じです。

本当にお金が無くなった時にただ電気を消すだけで何も出さない
「暗闇カフェ」というイベントを開いたところ、
入場料を払って多くの人が来店したんですよ。
お客さんが求めているのは意外に物だけではなくて
豊かな時間を過ごしたいみたいなことなのかなと思いました。
価値感が変わってきたかなという感じはしますね』。

++ Right now ++

“極める”に精力を注いでいるというナカムラさんは
ここ最近は器を直すだけではなく、陶片の研究もされているとか。

『ありとあらゆる国の工房や窯に行って
見学して買い付けもしています。
僕は工芸だけを専門にしてきたわけでは無いので
未だに知識的に負けてしまう部分もありますが、
これだけ世界中に足を運んで極めておけば
誰にも文句を言われないかなと』。

最近訪れた土地で印象に残っているのはミャンマーのバガン。

『未だに古いスタイルの漆器を作っているんですよね。
山から漆を採ってきて手で塗ってという最も古典的なスタイルで
器を作っている場所があって、そこが素晴らしくて感動しましたね。
作っていくプロセスを見せていくと人は価値を感じてくれるから、
器も作り手のこだわりを見せていくのが大事だと感じました』。

ナカムラさんの最近の趣味は「欠片」。

『古い唐津を研究していますが唐津はもともと韓国から来た伝統の
名残みたいなものを一番感じられて、骨董をやっている人は最終的に
唐津に行きついて、古唐津の欠片だけでも価値を感じるんですよね。
欠片だけで売っていて、それを眺めながらお酒を飲んだりして。
欠けている部分を想像して楽しむと
妄想の芸術みたいになるんですよね。

縄文土器も集めていて、洗うと縄文時代の匂いがするんですよ。
どんぐり臭いな〜とか。不思議なもので匂いが残っていて、
偽物は匂いがしないから直ぐに分かるんですよ。
そんなことをして楽しんでいるのが僕の最近の趣味ですね』。



++ From now on ++

新社会人に向けてナカムラさんは・・・

『入社した時に3年間は辞めては駄目だと言われたんですよ。
結局は会社員として15年間も働きましたが、意外にそうでななくて、
本当に勝負する時だと思ったら
自由に仕事を選んでもいいと思います。
時間の使い方をコントロールすることは大事だと思っているので、
早いうちに気付いたら思い切って飛び込んだほうが
最終的には上手く行くんじゃないかなと思います』。

これまで実践して成果があった「好き好きマーケティング」。

『人は一つのことに1万時間くらいを費やすと詳しくなると言われて…
もともと僕は美術オタクでしたが10年くらいやってきて
今では美術館の解説など専門家のような仕事も増えました。
やはり何か一つのことを極めると仕事になるのではという気がします。
僕は「好き好きマーケティング」と言っているんですが、
好きなものを好きと言い続けると相手も好きになってくるから
必ずいい話が来るという法則があります。
恥ずかしがらずに大好きですと言うのがポイントですね』。

アメリカに「金継ぎアカデミー」という学校を作って
普及活動を始めたところで、当面はアメリカをベースにして
ヨーロッパやアジアに伝統工芸を伝える仕事を手がけるとのこと。

『寅さんみたいな働き方に憧れているんですよね。
現地で仕事を回せば金継ぎの材料だけをトランク一個に入れて
一年くらいは働きながら移動できるということに最近気付きました。
これのスタイルを進化させれば
旅を続けられるという最終的な作戦ですね』。

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