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STORY

2019.08.31

アニメーション監督の幾原邦彦さん

++ Introduction ++

「少女革命ウテナ」「輪るピングドラム」「ユリ熊嵐」などのヒット作で
お馴染みのアニメーション監督、幾原邦彦さんが手がけた最新作で
6月に最終回を迎えた「さらざんまい」は3人の少年が謎の河童と出会い、
無理やり抜かれた尻子玉を探していく様を描いたもの。

『「さらざんまい」での“繋がり”“欲望”といったテーマはあと付けで、
最初は河童ありきで水が出てくる作品を作りたいと思いました。
東日本大震災で水の映像を見た記憶があって水に対して畏敬の念というか、
命は水と繋がっているというイメージが自分の中にできてしまって、
恐らく多くの日本の人たちもそうだったのではないかと。
そこで、生きている人たちと死者の間に立っている妖怪のひとつである
河童の話を手がけてみたいと思ったんですよね』。

東日本大震災を経験したことによる人々の変化について幾原さんは・・・

『世代にもよると思いますが、“戦後世代”と呼ばれている僕たちは
物質にとらわれていて、それがあれほど多くの人たちが傷ついたり
亡くなられるのを目の当たりにしたことで物に対する執着が急に無くなった
というのかな。そういう体感は日本の多くの方にあったのではと思いました。
じゃあ物が無くなった時に“一体何なんだ?”と考えるようになって
そのことを語れたらいいなと思い、「さらざんまい」を企画しました』。

死者の世界との“繋がり”をテーマにしたことについて・・・

『“逆説的に生きる”ということを実感しにくいと思っていたんですよね。
僕が子供の頃はまだ葬儀は自宅でやっていたので学校の帰り道などに
どこかで葬儀があるというのは歩いていると分かったんですよ。
でも今は、人は大抵が病院で亡くなって、葬式は葬儀場で執り行われるので
死が見えないというのかな… でも、人は死ぬんですよね。
その死が隠されていることであまり実感できないというのかな。
ですからメディアを通して大勢の方が不幸に遭ったというニュースを
耳にした時にダイレクトに感じる酷いダメージみたいなものがあって、
死に対する距離感が非常に近くなっているという印象があります。
そういったことと物質ではなくなったことに何か意味があるような気がして、
その意味が何なのか? 僕たちの感性がどこに向かっているのか?
ということを確認したいと思いました』。


++ Until now ++

京都の芸術大学を卒業後に幾原さんが就職したのがアニメ制作会社の
「東映動画(現・東映アニメーション)」・・・

『運が良かったですね。もともとはメディアの仕事を志望していましたが、
たまたまそれがアニメだったんです。東京に出たいなと漠然と思っていて
その中で「東映動画」の就職試験を受験したら受かったので・・・
どちらかと言えば半分は東京に出る口実だったんですよね』。

たまたま入社したという「東映動画」について幾原さんは・・・

『東映で良かったですね。僕が入った頃と今ではアニメ業界は違っていて、
昔はアニメ制作の“元請け”ができるのは業界で5社くらいで
他は所謂“下請け”という作業をしている会社でした。
企画を立案したり作品の脚本を作ったり映像編集するといった
プリプロまで関われる会社は5社くらいだけだったので、
それ以外のアニメ制作スタジオではクリエイティブの根幹に関わることが
難しい時代でしたから、
5社のうちの一つに入れたことがラッキーでしたね』。

幾原さんは「東映動画」での社会人経験を経て、独立。

『もともとアニメは玩具会社や製菓会社などをスポンサーにつけることで
成立していましたが、90年代に入って「製作委員会方式」という
新しい資金集めのスタイルが登場して、自分の企画を受け入れてくれる
プロデューサーが業界に現れ始めたんですよね。
それまでは自分と世代が違うおじさん達に企画の話をしていましたが、
彼らとの間にジェネレーション・ギャップを感じるようになって
自分の企画を通すためには会社を辞めるしかないと。
時代がそういう動きになった時に、たまたま自分のキャリアもそこにあって
やりたい企画を実現できるタイミングでしたね』。

++ Right now ++

幾原作品の真骨頂の一つと言われているのが複数回ある作品の中で
同じシチュエーションのシーンを流用する「バンクシーン」という手法であり
音楽の使い方にも個性が際立っていますが、その点について・・・

『音楽は直感ですね。「少女革命ウテナ」に関しては僕が寺山修司さんを
好きだったことが繋がっていますね。学生時代から寺山さんは僕の憧れで
寺山さんと何か重なることがどこか心の中にあったんでしょうね。
それが現実になるとは思っていませんでしたが、
「ウテナ」の企画を立てた時に突然、“そうだ今だ!”と思ったんですね。
たぶん「ウテナ」のビジュアルのルックスが宝塚風だったので、
ちょっとあり得ないミスマッチ感を出したいと思いついて、
その時にたまたま連絡を取っていたJ・A・シーザーさんという
寺山さんの共同演出者であり音楽を作っている方の音楽を使いたいと思って。
それもインプットの時期があったんですよ。
久しぶりに観たシーザーさんの作品「万有引力」で流れてきた
「絶対運命黙示録」が耳に残って頭の中を反芻していて、
ある時突然、頭の中をグルグル回っているものがこれだと思ったんですね。
これがアニメの中でかかったら皆んなが僕と同じように反芻するだろうと』。



++ From now on ++

今後のアニメ業界について幾原さんは・・・

『アニメの歴史はいろいろな捉え方ができると思うんですけど、
テレビと歩みを同じにしたというところは大きかったと思います。
「鉄腕アトム」が始まって30分番組というテレビのフォーマットを作って、
そのフォーマットが今日まで継続されていることを考えると、
仮にテレビの時代が終わるのであればフォーマット自体が変容する
ということですから今後は何か変わっていくかなという気はしますね。
受け手側の映像に対する感性は変わってくるので、
それに対して自分も向き合わざるをえなくなるだろうと思いますが
そこに自分が上手く入れるかどうか分からないなと。
デバイスはどんどん変化していくし自分ではコントロールできないので
僕たち作り手が対応していくしかないですね』。

幾原さんがアニメ制作に込め続けている思いとは・・・

『アニメはエンタメのコンテンツではありますが
フィクションの作り物でしかないので、その作り事が今生きている自分に
どう関わりがあるんだろうかということが分かるほうが
ときめくだろうし、嬉しいと思いますね。そのことに意味があると。
エンタメの意味がそこにあると思うのでやる意義はあると思います』。

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