STORY
清澄白河にあるチョコレート専門店「Artichoke chocolate」の オーナーショコラティエ、宮下雄樹さん
++ Introduction ++
清澄白河にあるチョコレート専門店「Artichoke chocolate」の
オーナーショコラティエ、宮下雄樹さんにお持ちいただいたのは
「土用の丑の日」に因んで作られたという鰻の蒲焼型「うなぎチョコレート」。
食品サンプルをシリコンで型取ってチョコレートを流して作っているそうで、
食感がパリっとした中に柔らかい生チョコが入っていて風味は山椒、
実は山椒とチョコレートは相性がいいとか。
このチョコレートに込められた思いについて宮下さんは・・・
『社会的な部分も要素に含まれていて、
それを表現したかったというのがあります。
鰻は絶滅に瀕している危険性があると言われていますが、
土用の丑の日には大量に消費されるということに対して本当にこれで正しいのか
ということをメッセージとして伝えたいなと思ってこの形を作りました。
鰻を食べるのも文化ですし、それを無くす必要はありませんが文化だからこそ
しっかり考えた上で消費していけたらということを考えるきっかけになれば
いいなと思っています。
チョコレート自体が抱えるもっと根深い問題もありますし』。
社会的なメッセージを込める一方で宮下さんはチョコレートの本質は美味しさで
食べた人誰もが幸せになることが美味しい条件だと考えているそうです。
『今は暑い時期でもチョコレートを美味しく食べていただけるように作っている
イートイン限定のパフェが人気です。
チョコレートと別の素材を合わせたパフェを
月替りで出しています。あとは季節の素材を使ったボンボンショコラもお薦め…
今は奄美大島産の完熟したパッションフルーツをチョコレートと合わせたもので
種ごと丸々入れているのでフルーツ感が強くなっています』。
++ Until now ++
子供の頃からもの作りが好きで料理やお菓子を作っていたという宮下さんは
高校生の時、自宅の近所にオープンしたケーキ屋さんで食べた“なめらかプリン”に
衝撃を受けてお菓子の道に進むことを決心したそうで、
中でもチョコレートに特化したことについては・・・
『チョコレートは単純に素材でもありますが、
一つのお菓子としても成立するくらい
懐の深さがあると言いますか。単に甘いだけというイメージでしたが調べていくと
チョコレートの深い歴史や華やかな部分だけではなくて裏側には問題を抱えている
という一面もありまして、より一層引き込まれた感じがありますね。
一般的に言われているのは児童労働の問題ですがそれだけではなくて
非常に重労働で兼業できない割には収入がとても少ないという問題があって
解決できていない状態が続いていますね』。
宮下さんのお店「Artichoke chocolate」で取り組んでいる「Bean to Bar」の
Beanはカカオ豆、Barは板チョコのことで原料からチョコレートの完成に至るまで
全ての工程を自分で加工する工程を「Bean to Bar」と呼ぶとか。
ただ第一に手間がかかり、大きな工場でまとめて作るほうがコストを押さえられ、
特に日本はカカオ豆の入手経路が無いというのが次の問題だったそうですが、
「Bean to Bar」というワードとともにここ数年は日本にもカカオ豆が入ってきて
ムーブメントが大きくなっているということです。
「Bean to Bar」のメリットについて宮下さんは・・・
『作り手が自分のゴール地点までコントロールできるところですかね。
豆の選定から始めますがカカオもコーヒー同様にいろいろな品種があるので
どの産地の何の品種にしようかを選んで、それを焙煎する具合やペースト状にする
機械によっても味が変わってきます。それを全部自分で選んで最終的な形を
自分でコントロールするというのが醍醐味で、ワインやコーヒーと同様に
産地や生産者のことまで考えてくれたらいいなと思っています』。
宮下さんが「Bean to Bar」を掘り下げる中で辿り着いたのは・・・
『カカオ産地の一つであるコロンビアにしてもとても広くて、
各地方に農家さんは何人いるんだろうと思いながらも、
カカオの場合はワインのように農園の名前で
出荷するところまでは進んでなくて地域で一括りにされているので、
もっと農家さんにフォーカスしたチョコレートがあってもいいんじゃないかな
という願いから、「Farmer to Bar」という動きをしていこうと思っています。
農園によって品種が違ったりブレンドが違ったりするので同じ地域だからといって
必ず同じものができるとは限らないですし』。
++ Right now ++
もともと旅をするのが好きでバックパックを背負って世界各地を巡ってきた
という宮下さんが最近、足繁く訪れているのはアジア諸国とか。
『世界中どこでも行きたいですね。
カカオ豆という点では中南米が気になっていますし、
最先端のものがあるニューヨークにも行きたいなと思っています。
チョコレートもブルックリンにある「マスト・ブラザーズ」というお店が
「Bean to Bar」の世界的なムーブメントの先駆けになっていると思います』。
++ From now on ++
ショコラティエとして宮下さんが考えている近い将来について・・・
『まずはシンプルにチョコレート職人として
もっともっとお美味しいチョコレートを
追求したいという思いがありますね。
あとは「チャリティチョコレート」という企画を
継続していきたいと思っています。チョコレートの売上の一部を清澄白河にある
「こども食堂」などに寄付していますが、そういう活動をもっと広げていければと。
もちろんカカオ農家さんも助けていきたいですね』。
以前、親しくしている台湾の農家に一週間ほど住み込んでカカオ作りを
体験したという宮下さんによれば・・・
『思った以上に重労働で。まずは気候ですね。カカオは熱帯地域で穫れる植物で
平均気温30度くらいで湿気がある場所を好みます。その環境の中でカカオを
収穫するのですがカカオの実が入っている「カカオポッド」という大きな実が一つで
500グラムから1キロくらいあって、それがカカオの木から幾つも穫れるので
それを背負って山を下ってまた登ってというのを繰り返します。
そして今度は持って帰ったカカオを一個ずつハンマーや石のブロックで
硬い殻を割って中のカカオの豆を果肉ごと取り出します。
で、その掘り出したものを一週間発酵させますね。かき混ぜながら毎日面倒をみる
という時期が続いて、そのあとに今度は一週間ほど乾燥させるんですけど
雨が降ったら室内に入れて晴れたら外に干してというのを繰り返して
やっと流通しているカカオ豆の状態になるんです。その作業がとても大変でして。
でも、収入が少ないという現実にとてもびっくりしましたね。
農家さんの顔だけでなく性格や生活も含めてどういう人が作っているのかを
身近に感じながら食べられるチョコレートを作っていきたいなと考えています』。
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DOOR / コブクロ
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COULD I LOVE YOU ANY MORE / RENEE DOMINIQUE FEAT. JASON MRAZ