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STORY

2019.02.23

ロサンゼルス在住の映画ライター/映画監督、小西未来さん

++ Introduction ++

映画ライターで映画監督の小西未来さんはロサンゼルス在住。
「ハリウッド外国人映画記者協会」の会員として“アカデミー賞の前哨戦”
ともいわれる「ゴールデン・グローブ賞」の選考に関わっています。
この賞は映画だけでなくドラマ部門もあるので選考に当たり
年間300本以上の作品を観ているそうで、例年、賞レースが盛り上がってくる
秋になると1日に3本は鑑賞する日々が続くとか。

『ドラマは新作が出てきたら1話目を観て気に入らなければ止めますし、
映画も合わないと思ったら冒頭の10分、15分で観るのを止めます。
つかみがあって鑑賞のために時間を割く価値があるかを判断しますが、
製作側もそこは考えて作品を作っていると思いますよ。

次々に観るという経験をして、それでも自分の中に残っている作品は
やはり良いものなんですよ。ですから、あえてメモも取らないですし、
次の作品を観て忘れてしまうようであれば自分にとって大事な映画では
ないので・・・そうやってこなしていきます』。

「第91回 アカデミー賞」の賞レースについてこれまでの流れから
小西さんが本命と見ているのはNetflixが配信している映画「ローマ」。
メキシコで撮影された全編スペイン語の作品で、中産家庭のリアリズムを極め
同時に今アメリカでは移民問題でトランプ大統領が酷く見下したような
発言をしているメキシコの人たちを美しく描いているところも含めて
有利ということですが、外国語映画部門にもノミネートされているため
票が割れる可能性もあるのではとのこと。

2番手で受賞の可能性が高いのが「グリーンブック」。
アカデミー賞の選考員が好む傾向にある“実話を基にした人種差別”を
テーマにしながらも結構笑えるロードムービーですが、こちらは脚本家が
過去に人種差別発言をしたというネガティブキャンペーンで叩かれているので、
最終的にどの作品が受賞するかは分からない状態だということです。

Netflixに代表される配信サービスの席捲による現場の変化について
小西さんは・・・

『今のハリウッドは思いっきりお金をかけてシリーズ化できるような
作品のほうが世界でもヒットするので、制作本数を減らして大作ばかりを
作るようになっていて、それが実際にヒットしていることもあり
大人向けの普通の映画が作れない状態になっています。

実は当初、「ローマ」は監督がユニバーサルなどのメジャースタジオに
持ち込みましたが、地味なわりに予算が高すぎでアクションが無いという
理由で全てノーと言われて・・・そこで手を挙げたのがNetflixでした。
打ち上げ花火の大作はメジャースタジオ、もう少し小規模のアート系は
Netflixなどの配信サービスという流れになっています。

ただ一方で現在Netflixが製作しているマーティン・スコセッシ監督、
ロバート・デ・ニーロ主演による作品はバジェットが2億ドル!
マーベルと同じくらいのバジェットをかけた映画をNetflixが手がけるという
必ずしも小規模な作品だけでなく大作もやっていく感じもあります』。


++ Until now ++

ご両親が映画好きで、気付いたら映画に連れて行ってもらうのが
日常だったという小西さんが最初にインパクトを受けたのが
小学1年生の時に観た「2001年宇宙の旅」。
当時は作品自体の内容は全く分からなかったそうですが、
とにかく強烈な体験で本当に宇宙にいるような感じで映画の可能性や
素晴らしさを言葉ではなく映像で見せられた印象があったとか。

これまでに数えきれないほどの作品を鑑賞されている小西さんが
一番に挙げるのが1991年公開のベルギー映画「トト・ザ・ヒーロー」。
赤ちゃんの時に病院で火事があり取り違いがあったと思い込んでいる
主人公の物語で、自分は普通の家庭で育てられたけど、
本来生まれ育つはずだと思っている家はとても裕福な暮らしだったことから
悔しい思いを持ち続けて老人になったら復讐しようというストーリー。
子供時代と老人時代がパラレルで進むノンリニア構成も大のお気に入りで、
この作品のジャコ・ヴァン・ドルマン監督を尊敬しているそうです。

ロサンゼルスを拠点に活動されていることについて小西さんは・・・

『単純に映画を作ってみたいと思っていて、当時はスピルバーグやルーカスが
売れ出してきた頃でどうすればそういう人になれるのかと思ったら、
みんな有名な映画学校を出たらしいと知って僕もそこに行ったんです。
映画監督になるのが夢だったわけではなくて、映画学校に行くのが夢でした。
自分は映画を作ったことが無かったから作れる才能があるかどうかも
分からないけれど、周りの人たちも作ってないし、そういった人から
お前は駄目だと言われても納得が行かないので・・・。
映画学校に行って自分がギャフンという思いをして帰って来るのが
僕の人生の目的だったんです。
結局、映画学科が有名な南カリフォルニア大学に入学することになって
そこから現在に至っています』。

++ Right now ++

ここ最近の映像作品について小西さんは・・・

『面白い映画が無いと思っている方はドラマを観たほうが良いと思います。
最近はハリウッドが大作映画しか作らないので、
優秀なクリエーターがドラマを
作るケースが多く、
今のアメリカは野心的なコンテンツも許されているので
同じ1時間を費やすのであれば映画よりもドラマを観た方が当たりを引く
可能性がはるかに高いと思っています』。

最近のお薦めはNetflixが配信している「ボディガード」。
イギリス製作のドラマでやり手の女性政治家を守ることになった
ロンドン市警の刑事の物語で手に汗握る予想外の展開があり、
6話完結とコンパクトにまとまっている良質なドラマとか。
スリリングな作品を求めている人にお薦めということです。

そして、amazonの「マーベラス・ミセス・メイゼル」。
1950年代を舞台に良き母、
良き妻を真面目にやっていたにもかかわらず
夫に捨てられてしまう女性が主人公ですが、悲惨な苦労話ではなくて
コメディアンとして成長していくという不思議なストーリーで、
テンポが良くて当時の世界観が可愛いので特に女性にお薦めとか。


++ From now on ++

小西さんによれば今後のアメリカ映画業界はNetflixの台頭が原動力となり
数ある映画会社のスタジオが統合されて、
それぞれが配信サービスを運得する
流れになるとのこと。

『アメリカでは「ディズニー・プラス」が立ち上がる予定で
既にオリジナルのコンテンツを製作しています。
昨年、ディズニーが21世紀フォックスを買収したのはコンテンツを
数多く手がけるためで、ほかにも同じことを考えている会社があるので
数が少なくなって強いところが生まれてくる感じでしょうか。
利用者としては配信サービス会社が増えるとそれぞれに課金が必要で
作業も煩わしくなりますが、一方で一社だけが強くなるとつまらない・・・
そういった意味で今は過渡期にあると思います』。

映画監督として2015年に「カンパイ! 世界が恋する日本酒」という
長編のドキュメンタリーを初めて手がけた小西さん。
その続編となる映画「カンパイ! 日本酒に恋した女たち」が
4月下旬に東京で公開されます。

『日本酒業界に携わる3人の女性にフォーカスを当てた作品です。
この業界は歴史があるので未だに女性がアウトサイザーだったりして。
でも、最近は女性だからこそ新しい商品を開発したり、新しいアプローチを
見つけたりと女性の活躍が目立っているんですよ。
ですから日本酒を知りたい人だけでなく、
ハンデのあるマーケットで活躍する
女性たちを見て元気になってもらいたいと思って作った映画です』。

そもそも映画を作りたいという思いで映画学校に行った小西さんですが、
現在の仕事のバランスはライター9に対して映画製作は1。
これを5対5にすることが今後の展望であり目標とのことで、
次はドキュメンタリーではなくフィクションの作品を作りたいそうです。

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  • MR.BLUE SKY / E.L.O.
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