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STORY

2018.01.13

「廣瀬染工場」の4代目、廣瀬雄一さん

++ Introduction ++
廣瀬さんは、1978年新宿区生まれ。
1919年創業の廣瀬染工場4代目で、伝統工芸・江戸小紋を作っています。
また、昔ながらの着物地を染める一方、
新たなデザインや、ストールのブランド「comment?」を立ち上げるなど、
海外も含め幅広くその魅力を伝えています。

反物の柄のことを「小紋」と言い、型で染める染色技法を「江戸小紋」といい、
江戸小紋の代表的な文様のひとつが「鮫小紋」。
それ以外にも、廣瀬染工場では2000柄ほどあるそう。
江戸小紋は、伊勢型紙という柿渋で作られた和紙に、
職人さんが一穴一穴掘り上げていく型紙を使います。
その型紙を使って、廣瀬染工場のような染物屋さんが染めていくのが、
江戸小紋のプロセスになるとのこと。
小紋というと植物の文様などが多いそうですが、廣瀬染工場は、
ドクロの柄など珍しい柄が掘られています。
一見、遠くから見ると何かわからないけど、
近寄ると柄の細かさが鮮明に出てくるのが魅力とのこと。
元々、江戸小紋が生まれたいきさつは、江戸時代、派手なものを禁止した時代に、
それでも自分たちが表現するオシャレを競い合ったり、
着るものの質で競い合っていった、江戸の粋が落とし込まれた染物なんだそう。
江戸小紋は、「いわれ小紋」というものがあり、
言われ伝えてきている文様があるのだとか。
それには、願掛けだったり、厄払いなどの思いが込められているそう。

廣瀬さんは今、江戸小紋の技法を着物市場以外のストールなどに広げ、
「comment?」というブランドを立ち上げています。
7年前にブランドを立ち上げ、着物を着ない市場にも江戸小紋を知ってもらおう!
という思いから立ち上げたとのこと。
大判のストールに小紋の柄を色々乗せて、
大きい柄と小さい柄を組み合わせて染めているのが特徴となっているそうです。


++ Until now ++
廣瀬染工場は来年で100周年。代々続く職人の家に生まれたというのは、
小さい頃からなんとなく気づいていて、
子どもの頃の廣瀬さんにとって、工場は遊び場でもあったので、
職人さんたちが朝から夜まで働いている姿は、自然の光景だったそう。
また、子供の頃から職人に対して憧れがあったので、
そういう風に自分もなりたいという思いがあったのだとか。
でも、“家業を継ぐ”決断をするタイミングは自分の人生設計の中で
勝手に組み立てていたという廣瀬さん。
小さい頃からウインドサーフィンをずっとやっていて、
競技として頑張っていた時代もあって、30歳ぐらいまで
ウインドサーフィンを続けて、それから家業を継ごう!
といった計画をしていましたが、そんな甘くはなく、大学を卒業するとき祖父に
「今ここで、江戸小紋の職人になりなさい」と言われたのが大きいタイミングで、
職人として今この旬にやることがすごく良いと言われたそう。
その頃はわからなかったけど、早い方が職人さんは良いということを
先代たちは言っていたんだろうなと思った…とおっしゃっていました。

廣瀬染工場が現代っぽいものを入れるキッカケは、廣瀬さんが染物屋に入った時に、
「自分は日本一の腕の良い職人になりたい!」という思いでこの道に入ってきて、
何年かすると仕事が減っていったそう。
先が見えなくなってきたときに、悲しくなり、
職人は仕事がないと存在価値がないことに気づき、
試行錯誤して、“今、自分たちが染められるものを染めていこう!”
みたいな思いからブランドを立ち上げたといいます。
先代たちは、その時代にあったものを作ってきたため、
ストールを作った時は応援してくれたのだそう。
でも、中にいた古い職人さんは新しいことをやるということは
受け入れたくない部分があったそう。

++ Right now ++
2000年、大学4年生の時に
ウインドサーフィンシドニーオリンピック強化選手だったという廣瀬さん。
10歳からウインドサーフィンを始めて、
それまでずっと海に入っている生活をしていたそう。
小さい頃から千葉の勝浦に毎年夏休みに遊びに行っていて、
そこで知り合った地元のお兄さんが、たまたまウインドサーフィンをやっていて、
そのお兄さんに教えてもらったのがウインドサーフィンを始めるキッカケ。
ウインドサーフィンの魅力は、自然が相手なので、
身体全身で自然を感じることが出来ること。
風や波、あとは海の自然の恐ろしさみたいなものを一緒に教わる、
そういうスポーツだといいます。

『意外にウインドサーフィンってボードがあって、帆があって、セールがあって、
江戸小紋も、型紙があって、板があって、そこにヘラを滑らせるような、
それがフィンがそのヘラの役目をしていたりして、
なんかそういうのはたまにリンクするところがあります。
色んな海の青さが小紋で表現できたらなとか、
海から受けるインスピレーションも意外に自分の中であるんじゃないかな?
だからすごく「廣瀬さん、青ばっかり染めてるね!」と
結構言われることがあったりするんですけど。』

いずれは、ウインドサーフィンのセールが小紋の小さい鮫小紋だったらいいな、
ウエットスーツのワンポイントに小紋が入ってたらいいな、など
考えているそうです。


++ From now on ++
マーケットについて思い悩んでいることは、
伝統工芸は技法を重んじたりするため、どうしても値段が高くなってしまこと。
でもそれは守らなくてはいけないところ。
なので、若い世代にもっと知ってもらうためにも、着物にいくまでに、
もうワンランク手に取りやすいアイテムの開発をしているとのこと。
江戸小紋が一番美しい世界は「着物」だと思うので、
そこまでにたどり着くまでにアイテムを広げて行くことは大切なことなんだそう。

来年、工房が100周年で、今、計画しているプロジェクトは、
今までの100年を振り返ることと、
100年後を見据えていく、という2つをしていきたいのだとか。
展覧会を考えていたり、
日本だけでなく海外に江戸小紋の魅力を発信していくために、
フランスに毎年行っていますが、そこで大学に行って
江戸小紋のワークショップをしたり、
日本の伝統に違う風を入れ込んでいって、またそこに日本人が築いていけるような、
そういうものが大切なのではと思い、果敢に海外に行っているとのこと。

横のつながりは、
江戸は伝統工芸がすごく多い街で、
そういう中に、江戸切子の職人さんや江戸組紐の職人さんなど
同じ若い世代がいるので、そういう方たちと色々交流して、
東京の伝統工芸を一緒に盛り上げていけたらと思い、集まったりしているそう。
同じ志を持った人たちのエネルギーは楽しいとおっしゃっていました。

そして一番の課題は、作ったものの販路の開拓。
作ることはスペシャリストだけど、それをどういう風に市場に落とし込むのか、
というのが難しいのだといいます。

今後の目標は明確で、
江戸小紋の職人として人生掛けて技を極めていくのが廣瀬さんの目標でもあり、
江戸小紋の可能性を伝えていく、広げていく2つをやれたらいいなと思うのと、
伝統文化、伝統工芸は自分たちのルーツだと思うので、
そのルーツを次の世代に繋いでいくことは
廣瀬さんたちに課せられたミッションだと思う…とおっしゃっていました。

ON AIR LIST

  • THE HEART IS A MUSCLE / GANG OF YOUTHS
  • MER DU JAPON / AIR
  • I’M YOURS / JASON MRAZ
  • SORRY / NOTHING BUT THIEVES

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