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STORY

2018.01.06

哲学者/津田塾大学教授の萱野稔人さん

++ Introduction ++
哲学者の萱野さん。
そもそも哲学が役に立ったり、実践するイメージがあまりありませんが、
哲学を研究しているほとんどの方も哲学は役に立たない、
でも役に立たないのが良いという言っているのだそう。
ただ、萱野さんはその意見に反対で、哲学は役に立つはずだし、
役に立つべきだと唱えているとのこと。
具体的にどうやって役に立つのかというと…

『例えば、激動の時代と言われて久しいじゃないですか。
何が起こるかわかりませんよって。で、もうアメリカでもヨーロッパでも
場合によっては日本でも、これまでのルールを壊すような人たちというか、
異議を唱える人たちがものすごい出てきているわけですよね。
ちょっと我々がこれまで予想しなかった動きが沢山出てきているわけじゃないですか。
これって要は、これまでの我々が思っていたグローバル化の流れに対して、
それとは違う、ルールとか価値観を提示する人が出てきましたよ
っていう流れですよね。
そういった時に、何が我々にとって選択すべきルールなのか、
価値観なのかっていうところを根拠づける作業って絶対必要になってくるんですよね。
新たにルールが問われているとか、価値観が問われている時代に、
じゃあどの価値観が本当に選択すべきものなのかといった時に、
それを根拠づける作業って必要なんですよ。
あとは別の価値観とかルールを唱える人と、
どういうルールを作っていくかといった時に説得できないといけないし、
そもそもグローバル化ってモノとか情報とかお金が
国境を越えて行き交うっていうことよりは、それが活発化したことによって、
共通のルールを作らなきゃいけませんよっていうのが、
グローバル化の本質じゃないですか。
まぁ、TPPにしようか、とか一帯一路にしようかっていうのはそれぞれの国によって
色々なルールが出ている訳ですけども、
国境を越えて新しいルールが出来るっていうのが、
グローバル化の本質だとするなら、どんなルールにするのかっていうことを、
価値観が異なる人の間で議論して選択していかなければいけない。
そのときに必要になるのが、説得なんですよね。
で、説得するときって、そもそもなんでこれが大事なの?
っていうことを言わなければいけないじゃないですか。
そこが私は哲学が必要になってくる場面かなと思うんですよね。
その根拠を提示するっていうことが、
まさに哲学的な考えとか思考が役に立つ場面かな。』

哲学は、人間の知性の根本的な働き…そういう点では哲学を勉強すると、
ちゃんと役に立つのでは?とのことです。


++ Until now ++
萱野さんは田舎育ちで、家も文化資本が全くなかったとのこと。
なので、高校までは「哲学」の「て」の字も意識したことなかったそう。
哲学に興味を持ったキッカケは、
大学に入った頃、ポストモダン思想が全盛期の時代で、
日頃、哲学や思想に興味ない人でも、ポストモダンをちょっとは勉強しないと
いけないような時代だったため、
大学入ってみると、みんながポストモダンの言葉を話している…という状態。
萱野さんは何のことか全然わからなかったけど、
みんながしゃべっていることで興味を持ち始めて少しずつ本を読み始めたのだとか。
大学は学生同士のマウンティングが激しい時代で、
それによって鍛えられたそうですが、やはり辛かったため、
1年ほどでそういった人間関係は絶ったそう。
それから、徐々に本を読むようになったとのことですが、
当時は、まさか自分が哲学研究者になるなんて思っていなかったといいます。
萱野さんが「哲学」について書く側になったキッカケは、偶然が重なったこと。
大学を出て、その時点で全く就職する気もなければ社会性もなく、
そのままフリーターになったそう。
そういう生活を1年ぐらいしていて、進路を変えようと思ったとのこと。
そこで、留学をして大学院に行くことを考え、パリに留学。
留学してから1年後に、パリ大学の大学院に進学して、哲学科に入ったそう。
で、大学院で勉強しているうちに、たまたま大学院の先輩が
当時、すでに日本で色んなところに文章を書いているような人で、
その人が「現代思想」という雑誌の編集長に
「萱野っていうやつが留学してるんだけど…」と話をしたら、
その編集長が興味を持ってくれて、原稿を依頼してくださり、
当時勉強していたことを書いてみたことがはじまりなのだそう。

++ Right now ++
高校と大学時代はバンドブームでバンド活動をされていたという萱野さん。
担当はドラムで、当時レッド・ツェッペリンが好きで
ドラマーのジョン・ボーナムがすごく好きで、カセットテープを聞きながら
よくコピーしていたとのこと。
今はもうやっておらず、スポーツなどで身体を動かすことが多いのだとか。
元々身体を動かすことが好きで、山を駆け回っているような子ども時代だったけど、
ジョン・ボーナムに憧れていた時代は、“不健康なことがかっこいい”ということに
ハマってて、その頃は、スポーツとは無縁の生活を送っていたそう。
今は、音楽は聴くだけになったとのこと。
そんな茅野さんは昭和歌謡が大好き!
カラオケが大好きで最近は一人で行っているのだそうです。


++ From now on ++
今後の哲学の役割については、
人口知能が発達すると「人間の仕事がなくなる」という話がありますが、
もちろん今後そういった変化があると思うけど、
萱野さんは人間に求められる能力はそんなに変わらない、と思っているそう。

『人工知能が増えていって人間の仕事をだいたいしてくれるとすると、
より人間に求められることって明確になるんですよね。
一番人間にしかできないことに人間が注力できるようになるってことですからね。
ですので、私はあんまり人工知能が広がって
「こんな大変な世の中になりますよ!!」って話は真に受けてないんですよ。
もっと人間ができることに人間が注力していくだけの
時代になるんだろうなと思うんですよね。
だから、例えば謝る仕事って絶対AIにやってほしくないじゃないですか。
やっぱり人間じゃないとできないっていうか、
そうじゃないと意味がなかったりするし、
責任を取るっていうことだってそうですよね。
結局、人間の組織の中で、いくら決定のためのデータはITが出してくれても、
最後「決定」を押して、これで行くぞ!という決定の責任をとるのは
人間しかできませんから、
まぁ、そんなに心配することないんだろうなと思っています。』

萱野さんが個人的に今年気になることは・・・

『やっぱり賃金上がってほしいなってすごく思います。
結局今、少子高齢化もあって、増税が2017年ものすごく
議論されたじゃないですか。ただ、増税だけじゃなくて、
社会保険料がものすごい上がってるんですよ。
でも社会保険料ってあんまり上がっても議論されないんですよね。
で、社会保険料が上がると企業も負担してますから、
そうすると給料をなるべく抑えようって話にどうしてもなってしまって、
今の現役世代ってそうとう一昔前の現役世代と比べて、
使えるお金がすごく少ないんですよね。
やっぱりそれは少子高齢化のしわ寄せが現役世代に来ちゃってる…。
これをね、私はなんとか給料があがることで、現役世代に
もっと豊かになってもらいたいなと思うし、
そうなることが日本経済の活性化に繋がるし、
最終的には日本が明るい社会になるんだろうなと思うんですよ。』

それを実現するには・・・

『今まで日本の企業って過剰サービス競争しすぎたところがあると思うんですよ。
タダで色んなサービスをくっつけたわけじゃないですか。
これをね、辞めてけばいいのかなと思うんですよ。
もっと必要な本質的な商品とかサービスだけに特化して、
不必要なこれまで労働者の頑張りに頼ってたサービスは全部削っていって、
で、効率化していけば、時間も増えるし、労働時間は縮小していくし、
それで縮小すれば賃金が同じでも結果的には
時間当たりの賃金は上がったことになりますから。
そういう工夫と、あとはマインドリセットですよね。
消費者の発想が変わっていけば、いい循環ができるのではと思いますけどね。』

これに伴って、他人に厳しくなってきている世の中も気になるそう・・・。

『哲学的に深くというよりは色んな人を観察していて思うのが、
生き生きしている人って意外と他人に期待していない人が多いなって
気がするんですよ。他人に期待しちゃうから他人のことが気になるし、
他人が言うことに一喜一憂しちゃうなっていうところがあるんですよね。
なので、あまり期待しなきゃいいんだろうなっていう気もするんですよ。
こちらも最低限のマナーだけ守って、あとそれ以上のことは期待もしないし、
でも一方で干渉もしないと。
でもその分、自分も気が楽に生きていけるっていうような姿勢が
ひとつ生きやすい姿勢だし、本当に生き生きしている人を観察していると
そういう人多いなと思うんですよね日本でも。』

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