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STORY

2017.12.02

照明デザイナーの戸恒浩人さん

++ Introduction ++
戸恒さんの肩書き「照明デザイナー」という職種は、30年ぐらいの歴史。
それまで、照明というとシャンデリアなどのプロダクトデザインが主体で、
30年ぐらい前から空間や都市などの光りが作られるようになったといいます。
今、照明デザインの仕事は、建物の中や外、街並み、最近では
イルミネーションも含まれています。
照明デザイナーで多いのは、戸恒さんのように建築デザインを学んで来た人、
また空間デザインを学んできた人が6、7割なんだとか。
作る工程としてはアーティストではないので、どちらかというと
「こういうものを作って欲しい」という依頼があり、それに対して
期待以上に答えるのが仕事。
戸恒さんの場合は、その人が求めているものを想像して、
それに答えるために、まずはストーリーを作るといいます。
例えば、その土地の歴史から紐付いて、こういう光りがあったら、
昔から現代まで繋がるひとつのイメージが作れる…とか、
あとは場所によってはこういう光りを用意すると、この街の雰囲気に合う…など、
何かしらそのデザインが「正しい」と思ってもらえるような話をするそう。

『例えば、私の仕事で音楽ホールがあって、お客さんを入れている時は、
木漏れ日が入っているようにゆらゆらする光りで迎えてあげて、
演奏しているときは、もっと光りも落ちて穏やかになる…
そういうことっていうのは光りができることの一つですよね。』

ちなみに一番ダメな光りは、ストレスを感じさせる光り。
「まぶしい」など否定的な言葉がついてしまうのは光りについて一番良くないとのこと。
でも逆に良い光りを見つけることは難しく、
昼間の太陽の光などをヒントにして良い光りを見つけていくとおっしゃっていました。


++ Until now ++
元々建築を学んでいた戸恒さん。照明デザインの道に進んだ経緯は、
建築学科に進んで空間をつくる勉強をしている中で、
自分の興味が形や行動的美学などより、たまたま模型を作っていて
偶然入ってきた光がパッとつくる美しさなどの「現象」に興味を持ったそう。
形よりも現象をやりたいと思って、色々探していたら照明デザインがあるということに
気づいたことがキッカケだったとのこと。
隙間の割れ目からスッと光りが入った瞬間、
中の空間にふわっと陰影が出てくるその刹那に心を奪われたんだとか。
ライトだけでなく、建築家はどちらかというと自然光を入れることを考えて作るので、
建築家と共同して、こう入れた方がいいよとか、昼と夜の光りの対比といった
2つの顔を持つ演出などを意識しているんだとか。

そして戸恒さんといえば、東京スカイツリーの照明を手がけたことで有名ですが、
手がけることになった経緯は、当時はあまり実績がなく、
たまたま若手の照明デザイン賞みたいなものがあり、
その一等をとっていたことにより、「ちょっとやってみない?」と言われ、
楽しんで応募してみたら通ってしまったとのこと。
今まで都内にあった一番高い建物は東京タワーで、それより倍近い大きさがあり、
日本一高い建物の東京スカイツリー。あまりの大きさに東京タワーのように
煌々と光ったら目立つけど、
ある意味象徴性が強すぎるんじゃないかと思ったといいます。

元々、日本人らしさってもうちょっと抑制した美しさじゃないかと思い、
且つ、下町に立つので日本的なイメージで、
優しく夜空に浮かび上がっているというものを目指したとのこと。
一つは、「月の色」。
ちょっと黄色っぽいけど白っぽさもあるような色を使ったのと、
ライトアップではなく、ライトダウンという手法を使ったそう。
普通、ライトアップという床に照明器具を置いて上に向けて照らすことで
自然と下が明るくて上に行くほど暗くなり、非日常的な雰囲気を出しますが、
それだと印象が強すぎるので、逆に上から下に向けてライトを照らす
ライトダウンを使用。下に向かって消えていく感じは、隠れコンセプトで
「富士山」を表現していて、富士山が見えたとき、
末広がりで地面に溶け込んでいる感じのイメージを
東京スカイツリーでも作ってあげると、
夜になっても東京の街を見守る富士山のようにいられるのでは?
と思って作ったとおっしゃっていました。

++ Right now ++
オフシーンは街を歩くと照明だらけで、仕事から離れられることはできず、
常にアンテナを光らせているとのこと。
最近は、どこもイルミネーションはキレイだと思うけど、
ただ一色といった深さがないイルミネーションは嫌なんだそう。
光りは奥行き感がないものなので、
キラキラしているものを立体的に見えるように作らないと、
浅いなぁと思ってしまうそう。

幼少期、小学5年生から中学2年生まで
ベルギーのブリュッセルで過ごしていた戸恒さん。
ヨーロッパのイルミネーションはメリハリがきいていて、
教会や広場といった中心が必ずあって、そこの周りは華やかだけど、
一歩離れると暗いんだそう。
でも、時々、コーナーコーナーがキレイに照らされていたり、
メリハリがきいていて歩いていても抑揚が楽しいんだとか。
それを自分の作品にも反映することもあるそうです。

『大事にしていることは、嫌だなって思ったこともいいなって思ったことも、
光りについてなんですけど、必ずやり過ごさないっていうかな。
なんでこの光り自分いいって思ったんだろう?っていうのを説明できるように覚える。
嫌だなって思った時はなんで嫌だと思ったんだろう?っていうのをちゃんと
自分で解説して自分に覚え込ませる。
それを繰り返すことによって、なにかデザインを表現して、
人にプレゼンテーションするときに共感を得られる説明が出来るようになるんですね。
右脳で捉えて左脳で覚えるっていう感じ。』

そして、戸恒さんは相撲が好き!
小さい頃は、ずっと相撲雑誌を読んでいて、勝ち負けの白丸と黒丸が大好きで、
あと四股名が好きだったそう。
相撲から照明へのヒントも得ていて、東京スカイツリーがまさにそれ。
東京スカイツリーは普段、水色のライティングと紫のライティングの2つが
使われているデザインで、水色を「粋」紫を「雅」と名前がついています。
それは、ずっと番付とか見ていて、漢字に興味をもって、
相撲では漢字に色んな意味を込められることにあやかって、
コンセプトを漢字に封じ込めたそう。
色も締め込みでよく使われる色を採用したとのこと。


++ From now on ++
フィールドとしては、空間系の照明デザインと、
メディアアートやプロジェクションマッピングは別ジャンルとなっていますが、
今、予言しているのが、
将来すべての光源が映像の光りになっていくと思っているそう。
技術的には可能な時代になってきた時に、
普段は、明るくするだけで付いているだけのものも、
時間に合わせて映像になったりすることも。
そうなったときに、普段の生活から動きを取り入れた光りにすることで、
今まで以上に快適になるかもしれないし、映像だと光りに影を作ることができるので、
例えば寝ているときに顔に光りをあてず、周りだけあててまぶしくなく
本を読めるなど、アイディアひとつで今までは使っていないフィールドの光源でさえ
ツールになりえるんだとか。
あとは、人の動きに連動するセンサリングも、
5年以内ぐらいには我々の元にやってくるとのこと。
なので、結構先を見据えてやらなくてはいけいない仕事ともおっしゃっていました。

『やっぱりより一般の方が目にするような街中の建物や空間を
より多くやらせていただきたいなと思っています。
で、その中で自分が今まで感じてきて「こういうのあったらいいな」を表現して、
それが少しでも多くの人に伝わって、
全体の文化レベルが上がるといいなっていうのがデザイナーとしての
大きな目標になるんですよね。
なんでもデザインってちょっと先を表現して、良い未来を表現して、
それにみんながついていって、みんなが出来るようになる、、、
そういうものだと思うんですよね。』


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