滝川 J-WAVE「OTSUKA CORPORATION SAÚDE! SAUDADE..」。音楽家、川口大輔さんの、9月2日にリリースされたデビュー25周年アルバム「Elsewhere」から、川口さんのオリジナル曲「Summertime」をお送りしました。そしてスタジオには、川口大輔さんをお迎えしております。
川口 緊張しております。でも、すごく光栄です。J-WAVEが開局してから聴いている、大好きな番組なので、まさかここにお邪魔できるとは、という感じでございます。
滝川 ありがとうございます。それでは最初に、川口大輔さんのプロフィールを紹介していきたいと思います。東京生まれですが、フィリピン、ロサンゼルスなど、海外でもお暮らしになっていました。少年時代からピアノを学ばれ、早稲田大学でラテンアメリカ協会に入部。そこで出会ったのが「SAÚDE! SAUDADE…」のオープニングテーマも担当しているSaigenjiさんで、 2人でユニットを組んで、一緒にブラジル音楽を演奏しました。
そして卒業後の2001年、 chemistryに楽曲を提供して、川口さんは作曲家としてデビュー。シンガーソングライター、ピアニストとして活動しながら、ケミストリーのほか、中島美嘉さん、 Jujuさん、今井美樹さん、平井堅さん、小学校の同級生、土岐麻子さんなど、大勢のシンガーに曲を提供されてきました。さらに、プロデューサー、アレンジャーとしても活躍されていて、久保田利伸さんのボサノヴァ・プロジェクトのライブで音楽監督を、由紀さおりさんのコンサートの音楽監督、バンドリーダーもつとめていらっしゃいます。
ということで、大活躍されている川口大輔さんですが、実はブラジルの音楽ともすごく縁が深いということで、その辺を掘っていきたいと今日は思っております。ということで、ブラジル音楽との出会い、これはいつ頃で、誰の音楽から始まったんでしょう?
川口 はい。ちっちゃい時から、うちの母親がボサノヴァを聴いてたんですよ。で、フィリピンに住んでまして。フィリピンってラテン圏と申しますか、もともとスペイン領だったこともあって、フィリピンの音楽もちょっとボサノヴァや、ゆっくりしたボレロみたいな音楽がすごく流れてる国なので、なんか僕も「ああ、今日のこの天気とボサノヴァはピッタリだな」みたいな感じで。有名なアルバム「ゲッツ/ジルベルト」を聴いたりしてたので、最初はおそらくアストラッド・ジルベルト、ジョアン・ジルベルト、アントニオ・カルロス・ジョビンみたいな流れでブラジル音楽を聴き始めて。
その後、僕、クラシックのピアノを習ってたんですね。で、バッハやモーツァルトを弾いたりしてた中で、あ、これ俺すごい好きって思ったのが、ドビュッシー、フランス近代の音楽で、あ、こういうのがやっぱり好きなんだと思った後で、坂本龍一さんを聴き出したりとか。あ、全部なんか繋がってるというか、僕の好きなものこういう感じなんだなみたいな。感じで繋がっていって。
その後、高校生の時に、クラブ・ミュージックでブラジル音楽を再評価するみたいな。ありましたよね。その頃はブラック・ミュージックのヒット曲をリアルタイムで聞いていて。で、同時進行で急に横からブラジルに殴られるみたいな。なので、その後も両方大好きなんですけれど、ちょっとジャズ的なものとか、フランス近代の音楽っぽいコード感のものが僕は好きみたいで。
滝川 それで大学時代にSaigenjiさんとユニットを組んで、どんな音楽を演奏されてたんですか?
川口 その時は、ミルトン・ナシメントをSaigenjiも僕もすごく好きで、あと同じくミナス・ジェライスのトニーニョ・オルタとか。あとはジョアン・ボスコ、エドゥ・ロボとか、いわゆるボサノヴァ的な洗練されているブラジルというよりは、もうちょっと土臭い匂いがしたり。サンバやボサノヴァのリズム以外の音楽が、いろんな音楽の解釈があるんだっていうのを。リズムも、特にミルトン・ナシメントに関しては、四拍子の音楽じゃない、不思議な七拍子がやってきたりとか。それが素敵なんですけどね。そういうものもちゃんとあった上で、僕はこういうことも好きなんだとか、こういうこともやるんだっていうような真逆軸を、さらに小難しく演奏してました。「地獄」っていう名前のユニットで。
滝川 卒業後にプロの音楽家となってから、J-POPのフィールドで活動されてきたんですが、先ほどおかけした曲「Summertime」では後半、サンバのリズムも聞こえてきました。川口さんが、さまざまなシンガーに影響してきたオリジナルのポップスの中に、ブラジル音楽の要素を持ち込んだ曲もありましたか?
川口 直接、取り入れたというよりかは、なんか不思議なんですけれど、僕が一番最初に中島美嘉さんに提供したバラードで「Stars」っていう曲を聴いた方に「川口くん、ブラジル音楽好きでしょう」と言われて。すごく間接的な形だと思うんですけれど、和声とか進行とかに、無意識に出てるってことですね。つまり、おそらく潜在意識の中で、自分の思う切なさとか、なんかポップスを作りながら、ここで自分が泣きたいなっていう気持ちの時とかに、おそらく一瞬だと思うんですけど、ブラジルの粉がフワっと出てくる、かかるのかなというイメージではおります。
滝川 それに気づく方もいらっしゃるってすごいですね。ちゃんと聞いてらっしゃるファンの方ですか?それと周りの・・。
川口 それは。プロの方です。沼澤尚さんというドラマーの方がいらっしゃるんですけど、初めてお会いした日に「川口くん、ブラジル音楽好きでしょう」みたいな。見抜くわけですね。面白いですね。ドラマーの方にコードや和声を見抜かれると、なんか不思議なみたいな感じはありましたね。
滝川 ここで川口さんに、大好きなブラジルの曲を一曲選んでいただきたいと思います。 川口 はい。先ほどもお話しましたミルトン・ナシメント。「カイス」。 滝川 ミルトン・ナシメント、いいですよね。 川口 いいですよね。ちょっとダークな感じもあって。 滝川 息子にいつも聴かせてます。ミルトン・ナシメントを今から。 川口 英才教育! 滝川 さっきおっしゃったように。親が聴いてると子供も将来ね、っていうふうに今、思ってってます。 川口 お子さんも「地獄」みたいな。(大爆笑)
滝川 川口さんは現在、東京のほか沖縄にも活動の拠点を設けられておりまして。HY、Kiroroの玉城千春さんなど、沖縄の音楽家のプロデュースも行ってらっしゃいます。昨年の8月には。玉城千春さんのブラジル・サンパウロでのコンサートに、バンドマスターとして同行されました。ブラジルには、沖縄からの移民と、その方々の子孫が、たくさんいらっしゃるわけですよね。そういった人たちと出会って、何かこう改めて感じたこととかありましたか。
川口 あのすごく、沖縄の方も他の県の方も、自分の故郷を誇りに思っていて、そのことがすごく印象的でした。同時に沖縄の方が「私、日本語はしゃべれないけど、ウチナーグチ(沖縄の方言)だったらしゃべれるよ」みたいなことをポルトガル語でおっしゃったりして。それはちょっと僕も衝撃で。僕は沖縄の言葉を勉強せず、に沖縄のアーティストさんと一緒についてきちゃって。なんか本当すみません、みたいな気持ちにもなったりしたので、次行くときはちょっと勉強してから行こうかなっていうことも思いました。
滝川 ここで川口さんにスタジオライブで生演奏していただくんですが、あの、実は川口さん、デビュー25周年アルバムで「Elsewhere」に入っているオリジナル曲をポルトガル語で歌っていただけるということなんですね。
川口 はい、そうなんです。今日は。ちょっとチャレンジングではあるんですが、本当ですか?これはマルセロ木村さんが作詞をしてくださって。最初は日本語で歌詞を書こうかなと思った曲だったんですけれど、ああ、違う国の言葉でこの曲をやった方がいいんじゃないかということを思いついてしまったので。言葉が持ってるリズム感、フランス語はフランス語とか、ポルトガル語にはポルトガル語特有のっていう、直感的なものがあったので、覚悟を決めてポルトガル語で挑戦しようと思っております。「Depois da Chuva(雨のあと)」。
滝川 ありがとうございました。川口大輔さんのキーボードとボーカルで「デポイス・ダ・シューヴァ」。作曲は川口さん、そして作詞は「サウージ!サウダージ」のボイスを担当しています、マルセロ木村さんでした。ああ、なんか本当に優しいお声なので、本当にポルトガル語と空気が合ってるんでしょうかね。なんかこう。すっと力が抜けて。
川口 ありがとうございます。確かにちっちゃい時から、こういう音楽ばっかり聴いていたというのはあるかもしれないですね。
滝川 ご自身も安心する感じってあります?
川口 そうなんです。ああ、あの、張って歌うより、なんかこのぐらいの感じで、しゃべってるみたいに歌えると、すごく気持ちは楽なんですよね。
滝川 なるほどはい、なんか自分のルーツっていうかね、ありますよね。なんか体の中に根づいているものっていうのがね。
川口 そうですね、全く喋れるわけではないんですけれど、でもなんかすごく馴染みの響きだったりっていうのは、あるかもしれないですね。
滝川 はい、それがよく伝わってきました。ありがとうございました。
「Elsewhere」川口大輔
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ON AIR SONGLIST
PARTE CHELA / THIAGO MULLER, ZEBIDART, BELA(パルチ・シェイア / チアゴ・ミューレル、ゼビダルチ、ベラ)
SINGLE [PARTE CHELA]
ロサンゼルスで活動しているブラジル人のシンガー・ソングライター、チアゴ・ミューレルのニューシングル。女性シンガー、ベラ、ギタリスト、ゼビダルチとの共演。
ÁGUAS DE MARÇO / ANTONIO CARLOS JOBIM(アグアス・ヂ・マルソ=三月の雨 / アントニオ・カルロス・ジョビン)
CD [INEDITO]
1972年に発表した名曲、97年録音のヴァージョン。ブラジルでは3月に降る雨が夏の終わりを告げます。その風景をジョビンはこの曲の歌詞に描きました。ブラジルでは、8月にサンパウロで、9月にリオで「JOBIM-AÇU : MAESTRO DA NATUREZA(ジョビン・アスー。マエストロ・ダ・ナトゥレーザ)」というタイトルの、ジョビンと自然との関わりをテーマにした展覧会が開催されました。「ジョビン・アスー」の「アスー」は「大きい/偉大」という意味の先住民の言葉です。ブラジルとアルゼンチンとパラグアイにまたがる巨大な滝の名前は「イグアスー」。
QUERELAS DO BASIL / QUARTETO EM CY(ケレーラス・ド・ブラジル=ブラジルの嘆き / クアルテート・エン・シー)
CD [QUERELAS DO BRASIL]
詩人のアルヂール・ブランキが「JOBIM-AÇU」という言葉を初めて歌詞にして「ジョビン・アスーの手のひらで」と歌いこんた曲。クアルテート・エン・シーの1979年盤から。
ZUMZUM / THOMÉ, MARI JASCA(ズンズン / トメー、マリ・ジャスカ)
ALBUM [QUERO SER TUDO]
シンガー・ソングライター、トメーのニューアルバムから、マリ・ジャスカとの共演。
CHORA TUA TRISTEZA / GAL COSTA(ショーラ・トゥア・トリステーザ / ガル・コスタ)
CD [TODAS AS COISAS E EU]
歌詞をご紹介しながらブラジルの名曲の世界にご案内する「ポエジーア・ブラジレイラ」のコーナー。作曲は、9月27日が命日のオスカー・カストロネヴィス。作詞は、ルヴェルシー・フィオリーニ。「あなたの悲しみが泣く」という意味の、1959年にヒットしたボサノヴァ初期の名曲を、9月26日、生誕81年を迎えた故ガル・コスタの2004年盤から。
FELICIA AND BIANCA / TOOTS THIELEMANS(フェリシア・アンド・ビアンカ / トゥーツ・シールマンス)
CD [BRASIL PROJECT]
オスカー・カストロ・ネヴィスがプロデュース、ブラジル音楽が大好きなベルギー出身のハーモニカ奏者、故トゥーツ・シールマンスがブラジル音楽のスターたちと曲ごとに共演した1992年盤から、オスカーが作曲したインストゥルメンタル曲。
SUMMERTIME / DAISUKE KAWAGUCHI(サマータイム / 川口大輔)
CD [ELSEWHARE]
ゲスト、川口大輔の、9月2日にリリースされたデビュー25周年アルバム「Elsewhere」からのオリジナル曲。後半にサンバのリズムも。
CAIS / MILTON NASCIMENTO(カイス / ミルトン・ナシメント)
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CD [CLUBE DA ESQUINA]
川口大輔が選曲したブラジルの曲。ミルトン・ナシメントの1972年の名盤から。川口大輔は「サウージ!サウダージ」のオープニングテーマ曲を担当しているSaigenjiと、早稲田大学ラテンアメリカ協会の同級生で、学生時代に「地獄」と名乗るユニットを組んでミルトンの曲を演奏していました。
DEPOIS DA CHUVA / DAISUKE KAWAGUCHI(デポイス・ダ・シューヴァ / 川口大輔)
[STUDIO LIVE @ J-WAVE]
ニューアルバムで録音、初めてポルトガル語で歌った曲をスタジオライヴ生演奏。作曲は川口大輔、て作詞は「サウージ!サウダージ」のボイスも担当しているマルセロ木村。