橋本さんは1966年生まれ、東京都出身。
大手出版社に勤務後、フリーランスとなり、
選曲家、プロデューサーとしての
キャリアをスタートしました。
1994年から人気コンピレーションシリーズ
『Free Soul』を手がけ、
1999年には渋谷にカフェ・アプレミディを
オープンするなど、音楽のみならず、
渋谷のカフェカルチャーにも
大きな影響を与えてきました。
タワーレコードのフリーマガジン、
『bounce』の編集長も務めていたということで、
渋谷とはとても縁が深い人生を歩んできました。
育ちは渋谷から近い駒沢ということで、
遊ぶ場所も渋谷、音楽が好きになると、
レコードを買いに行くのも渋谷だったそうです。
そんな橋本さんが初めて買ったレコードは
キャンディーズの『微笑がえし』。
「最初はキャンディーズというより、
曲が好きだったんです。親戚が名古屋にいて、
東名高速に乗って会いに行くんですけど、
その前に寄ったガソリンスタンドで、
オムニバスのカセットとか売っていて、
その中に入っていたんです。
いいなって思って、東京に戻ったら
レコードを買いに行こうっていう感じでした。
きっかけは曲だったんですが、
やっぱりキャンディーズにも好感を抱いていて、
実は母親が蘭ちゃんに似てるって言われていたんで、
強いて言えば蘭ちゃんを贔屓していたかもしれません」
高校の頃に音楽が好きになり、
大学に進んでから、レコードを
本格的に買うようになったという橋本さん。
「高校生の頃、ちょうど80年代の前半で、
イギリスはニューウェーブの時代だったんですけど、
そのムーブメントの中で、
いわゆる「ネオアコースティック」と言われる
アーティストが出てきたんですね。
それが多感な時期の僕にフィットしたんです。
アズテック・カメラ、ペイル・ファウンテンズ。
あるいは同時期のポール・ウェラーが率いていた、
ザ・スタイル・カウンシルとか、
新しい風が吹いた感じはありましたね」
高校生の頃は、野球部で活動していたため、
バンドを組む機会がなかったそう。
「楽器は通らなくて、聴く専門ですね。
楽器を弾けたらいいな、
っていう気持ちもあるんですけど、
根っからのリスナー気質なんで、
もし自分がミュージシャンだったら、
自分の演奏スキルに
満足できないんじゃないかなっていう気もします。」
他にもベン・ワットの『North Marine Drive』、
ケニー・ランキンの『Silver Morning』などを
好んでいたと話した橋本さんですが、
ご自身が好きなサウンドの共通点はあるのでしょうか?
「どこかちょっと、
内省感みたいなものがあるのかなっていう気がします。
もちろんダンスミュージックとかも
大好きなんですけど、自分が一人で、特に、
真夜中に家で聴く音楽は、
少し内省感があるというのが、
共通点なのかなっていう気がします」
30代になるとジョアン・ジルベルトにもハマり、
特にアルバム『João Gilberto』は、
30代で一番聴いたアルバムかもしれない、
と述べました。
レコードは一時期、
2万枚も所有していたとも明かしました。
「でも、もう6、7年前かな、
僕は50代までずっと独身だったんですけど、
結婚することになって、
この量のレコードを抱えながら、
まともな人生を送っていける自信がないと思って、
友人に来てもらって、
どんなレア盤でも250円でいいよ、って
持って行ってもらいました。
50枚くらいは残しておいたんですが、
この東京で生活空間を生み出すには、
仕方がないなと。昔はマンションの
1室をレコード置き場にしていましたね」
と振り返りました。
橋本さんは、レコード店での
偶然の出会いを大切にしてきたそう。
「当時は今みたいに、インターネットで
検索する習慣もない時代だったので、
レコード屋さんでの出会いを大切にして、
ジャケットとかクレジットを見ながら、
これは自分が好きなんじゃないか?とか、
いろいろ想像しながら買っていました。
渋谷にはWAVEが2店舗、HMV、タワレコ、
宇田川町界隈には個人店がたくさんありましたよね。
毎日、お昼ご飯を食べに行くついでに、
あらゆるレコード屋さんを回って帰ってましたね」
と90年代の思い出についても語りました。
そんな橋本さんが初めて
1人で観に行ったライブもやはり会場は渋谷。
「本当によく覚えてるんですけど、
自分が音楽を好きになって、
1人で初めて行ったのは、高3の6月、
エルヴィス・コステロ & ジ・アトラクションズでした。
これは渋谷の東横劇場でしたね。
そこは普段、それこそ演劇や舞台を
やることが多い箱ではあったんですけど、
1000人ぐらい入るとこでしたねえ。
僕、佐野元春さんの「サウンドストリート」を
聴いていて、それでエルヴィス・コステロが
好きになって、これはもう行くしかない!
っていう感じでした」
他にもイアン・デューリー&ザ・ブロックヘッズの
初来日公演やロニ・サイズ/レプラゼントのライブも
印象深いと述べました。
橋本さんにはご自身が思う
10点満点のアルバムも挙げていただきました。
「まずは、マーヴィン・ゲイの
『What's Going On』ですね。
自分をソウルミュージックや、
その後のフリー・ソウル・ムーブメントに
導いてくれたきっかけのアルバム。
あとは大学生の頃大好きだったプリンスの『Parade』。
それから、90年代だとやっぱりヒップホップで、
ア・トライブ・コールド・クエストの
『Midnight Marauders』、
これは忘れられないですね。
『What's Going On』は、
タイトル曲が始まってから最後まで、
自分の好みではあるんですけども、
最近歳を重ねて、歌詞の部分でも
共感できるところが多く、
1周回って、再び10点満点だと感じています」
最近注目しているバンドは、
イギリスのコレクティブ、SAULT(ソー)でした。
「彼らは、イン・フローという天才が率いていて、
ボーカルはパートナーでもある、
僕の大好きな女性シンガーソングライター、
クレオ・ソルも在籍してるんですが、
ジャズとソウルとファンクの要素が融合された、
僕が80年代後半UKソウルとかの時代から
好きだった音楽の現在進行形として、
注目してるし、愛聴していました。
音楽の密度の濃さとメッセージ性で、
ファンをオルグできるような存在で、
一言で言うと、
“強くて美しい音楽”だなって思います」
さて、この番組では、
「大人の☆生 サッポロ生ビール黒ラベル」
を飲みながら音楽トークをしていることにちなんで、
ゲストの皆さんに「大人になった1曲」を伺っています。
この質問で橋本さんが選んだ1曲は、
スティーリー・ダンの「Gaucho」でした。
「僕は大学生になってすぐの頃に、
車の免許を取ったんですけども、
親のファミリーカーで最初にドライブに行く時に、
作った選曲カセットの1曲目だったんです。
まろやかな音楽で、
自分も大人になっていくんだなっていう、
不思議な感慨に包まれたんですよね」と語りました。
橋本さんに関する本が出版されました。
タイトルは
『渋谷カルチャー考現学
稀代の編集家・橋本徹(SUBURBIA)
ライフ・ヒストリー』
文化人類学者の原知章さんが
橋本さんにおこなった、
30時間超のロング・インタヴューを掲載し、
橋本さんのライフヒストリーや
渋谷発“シティ・カルチャー”の
魅力と秘密を解き明かす決定版となっています。
「子供の頃、親に連れられて、
初めて渋谷に遊びに行った頃の話から、
青春時代にレコードを買うようになった頃、
出版社から独立して、
これまで400枚近くコンピレーションCDの
監修・選曲をしてたりするんですけども、
渋谷を背景に、そんな話を
かなり細かく追ってくれていています」
巻末付録にはこれまで橋本さんが手がけた
コンピレーションCDのジャケットが
カラーで掲載されています。
そして、最新のコンピレーションCD
『カフェ・アプレミディ・ミーツ・スタジオジブリ』
もリリースされたということで、
橋本さん監修の作品は今後も増えていきそうです。
「自分の好きな音楽や、
自分の好きな世界観を
表現させてもらえるっていうこと、
しかもそれを、30年以上にわたって
続けてこられたっていうことに対する
感謝の気持ちは深く感じています。
だから1枚1枚のコンピレーションを、
より大切にしていきたいなっていう気持ちは
強まってますね」と述べ、
この日のトークを締め括りました。
橋本徹さんの情報はこちらから
次回6月27日は、
シンガーソングライターの
Hana Hopeさんをお迎えします。
2006年生まれ、2月に20歳になったHanaさん。
これまでどんな音楽を聴いてきたのでしょうか?
ぜひ、お聴きください!

サバ缶
『サバ缶を食べながら
ビールを飲むのが好きなんですよね。
サバービアということで
”サバ”缶を選んだという部分も
あるんですけどね(笑)』(橋本さん)

微笑がえし / キャンディーズ
My Ever Changing Moods
/ The Style Council
North Marine Drive / Ben Watt
Haven't We Met? / Kenny Rankin
Falsa Baiana / João Gilberto
The Only Flame In Town
/ Elvis Costello & The Attractions
Hit Me With Your Rhythm Stick
/ Ian Dury and the Blockheads
Brown Paper Bag / Roni Size, Reprazent
What’s Going On / Marvin Gaye
K.T.Y.W.S. / Sault
Gaucho / Steely Dan
やさしさに包まれたなら / 曽我部恵一
ひとりぼっちはやめた / bird
A Horse With No Name / America
橋本さんとのトークを受けて、
クリス・ペプラーが
選んだ1曲はこちら!