松武さんは1951年横浜生まれ。
20歳の時に冨田勲さんに弟子入りされ、
独立後はYMOメンバーとの交流が始まり、
シンセサイザー・プログラマーとして
レコーディングに参加。
ワールドツアーにも同行されました。
昨年はMUSIC AWARDS JAPAN主催で開催された、
YMOのトリビュートコンサートに、
トリのゲストで演奏に参加されました。
“YMO第4の男”とも言われた松武さん。
どのような流れでYMOのメンバーと
関わりを持ったのか伺いました。
「最初にYMOの関係者とレコーディングしたのは、
坂本龍一さんの『千のナイフ』なんです。
その時に、いわゆる自動演奏機、
シーケンサーを使ったんですけども、
実はその前にシーケンサーを使ったアルバムは、
矢野顕子さんの『ト・キ・メ・キ』という
アルバムの中にある楽曲なんです。
それを坂本さんが聴いて、
自分のアルバムにも使いたい、
ということになったのがきっかけです。
その後、細野さんがシンセサイザーで
アルバムを作りたいという話をしていて、
それがイエロー・マジック・オーケストラ
だったっていうことなんですよね。」と語りました。
そんな松武さんが最初に買ったレコードは、
ペレス・プラードの『マンボNo.5』。
「こういうラテン、カントリーの曲は、
今の音楽の中枢をなしていて、
リズムパターンなんかも、
クラブミュージックもそうですし、
みんな影響されていると感じているんです。
幼少の時に聴いて、浮かれちゃったというか、
身体が動いて、『これいいな!』と思っていました。」
父がジャズミュージシャンだったということで、
昔から海外のレコードが手に入る環境にあり、
他にもパーシー・フェイスや
リカルド・サントスといったアーティストの
音楽にも触れていたとのこと。
「父はシャープス&フラッツという
バンドで初期にテナーサックスを吹いていたんです。
その影響で中学生の時にブラスバンドに入って、
『トランペットを吹きたい!』って言ったら
買ってくれましたね。生楽器をやったのは
トランペットだけ。今でも吹くんですけど、
肺活量がなくなってきて、
音が出なくなっちゃったかな。」
1970年、高校生の時に大阪万博へ行き、
夜にレコード店で『Switched on Bach』という、
バッハの作品をシンセサイザー音楽に
置き換えたレコードに出会った松武さん。
「レコードジャケットを見て、
『これは楽器なんですか?』ってお店の方に訊いたら、
『たぶん、そうだ』って言っていました。
よく分かってなかったのかな。
それで東京に戻って、渋谷のヤマハの
レコードショップで訊いたら、
『君が聴いてきたのは、
シンセサイザーっていう楽器だ!』
って教えてくれました。その時に初めて、
“将来こういう楽器で、
生計が立てられたらいいな”って思ったんです。」
その後、父親の紹介で冨田勲さんに弟子入り。
「うちの親父が冨田先生の
事務所の社長にお願いして、入れていただいて。
なんと、その時に冨田先生が
「モーグ・III」っていうシンセを輸入する
直前だったんです。
「え、まさか、『Switched on Bach』のあの音、
あのシンセじゃないですよね?」って訊いたら、
「いや、それだ!」って。「えーっ!」ってなりましたね。
冨田先生は、
『僕は24時間触るわけじゃないから、
松武くんは、私が寝てる時に触っていいよ。」って。
その代わり、何も教えてくれなかったですね。
自分でやっていくしかなかったです。』
そんな松武さんにとって、
『10点満点のアルバム』とは。
「ベンチャーズの『Live in Japan '65』ですね。
ベンチャーズの曲はどれをとっても、
ラテンとジャズが重なっている。
横浜にベンチャーズが来るたびに観に行っていて、
数えたら合計9回くらい行っていました。
ドラムのメル・テイラーが大好きで、
あの人、シンバルがバスドラムの上に
一本だけ立っているだけなんです。
それで叩き分けて演奏する、
あの技量はすごいなと思います。」
松武さんがこれまでに観て、
特に印象に残っているライブは、
1978年のウェザー・リポートの来日公演でした。
「新宿厚生年金ですね。
ジョー・ザヴィヌルのローズピアノの上に、
平たいシンセが乗ってたんです。
よく見たら、「Prophet-5」って書いてあって、
「僕も欲しい!」と思ったのを覚えています。
当時170万円もしましたが、それを買ったことが、
イエロー・マジック・オーケストラに繋がったんです。
初めて持って行った時、
坂本さんは驚いていましたね。
和音が5つも出るし、音が太い。
ポリモジュレーションっていう機能が付いていて、
金属系の倍音が効いた音が作れるんです。
坂本さんが好きだった理由のひとつですね。」
と振り返りました。
番組後半では、松武さんが
最近注目しているミュージシャンの話題に。
名前を挙げたのは、
YMOのトリビュートコンサートでも
共演した原口沙輔さん。
「昔のことも勉強していて、
今の新しいエレクトロミュージックというか
ポップスというか、それを自分なりの
考え方でやっている方なんですよ。
22歳なんですよね。
僕が刺激されて、
”こういう考え方でシンセサイザーに
接しているんだな”っていうのはすごく感じます。
ボーカロイドも絶妙なプログラムを作りますし、
アレンジも僕らが考えつかないような
やり方っていうか、
録音の方式もすごく斬新なんです。」と語りました。
映画からも強く影響を受けた松武さん。
「やっぱり決定的だったのは、
『スターウォーズ』でした。
ジョン・ウィリアムズの素晴らしい作曲と
オーケストレーション、そしてR2-D2とかの音、
あれ全部シンセで音を作っていたらしいんですけども、
ああいうものを聴いた時に、
”シンセでこういう効果音を作る職業もいいな”
って思ったこともあります。」
加えて、大瀧詠一さんと仕事をされた際に、
効果音を試行錯誤して
作ったというエピソードも話しました。
この番組では、
「大人の☆生 サッポロ生ビール黒ラベル」
を飲みながら音楽トークをしていることにちなんで、
ゲストの皆さんに「大人になった1曲」を伺っています。
この質問で松武さんが選んだ1曲は、
マイルス・デイヴィスの「So What」でした。
「僕もトランペットを吹いていたのでね。
最初にマイルスを聴いたのは
1964年の日本のライブ盤で、
「So What」っていう曲だったんですけど、
ものすごい早いリズムだったんです。
その元は何だったのか調べていくと、
『Kind of Blue』っていうアルバムに入っていて、
大人のゆったり感というか、
音数もそんなたくさん吹かない感じですかね。
ジャズは物語を語るものだと思うんで、
やっぱりマイルスはそこらへんが
一番上手かったのかなっていう風に思いました。」
と語りました。
さて、そんな松武秀樹さんが全体監修を手がけた、
シンセサイザー音楽のリイシュー4作品が、
3月18日に発売されます。冨田勲さんの
『スイッチト・オン・ヒット&ロック』(1972年)、
ザ・エレクトロ・サンタクロースの
『シンセサイザーによる
子供のための楽しいクリスマス』(1976年)、
マコト・ハイランド・バンドの『INJECTION』(1979年)、
そして松武秀樹さんのカップリング作品、
『デジタル・ムーン+謎の無限音階』
(1979年、1978年)、というラインナップになっています。
「冨田勲さんの作品は画期的な作品で、
レコードだけでCDが出ていなかったので、
ぜひとも、ということで選びました。
この後に発表した『月の光』で使われた音が
この中にほとんど入っているんです。
『INJECTION』は高橋幸宏さんが
ドラムを叩いているんです。そして、僕のには
『謎の無限音階』というのがついているんですが、
これを当時、細野晴臣さんが聴きに来て、
後日お声がけいただいたのが
YMOのスタートでした。」
最後にシンセサイザーの未来についてのお話も。
「シンセサイザーはまだ未完成の楽器ですから、
完成形はたぶん、
僕らが生きている間には作られない。
ピアノはピアノ、トランペットはトランペットで、
あれ以上、改良のしようがないじゃないですか。
でも、シンセサイザーは毎年毎年
違う技術がその中に入ってきています。
ただ一つ言えることは、
AIを使ってもシンセサイザーの進化は
絶対にないと思います。未来を予測する音は、
自分自身でしか作れないからですね。
次に何をしたら新しいことになるかは、
自分が試さない限りわからない。
AIを否定している訳ではないですが、
シンセサイザーは生楽器とは違う音を
無限に作ることができる。存在しない音を
自分の頭の中で考えるっていうことですね。」と語り、
この日のトークを締め括りました。
松武秀樹さんの情報はこちらから
さて、次回3月21日は、
Novelbrightからベーシスト、
圭吾さんをゲストにお迎えします。
もともと別のバンドでドラムを担当し、
Novelbrightに入って、
初めてベースを演奏したという圭吾さん。
どんな音楽ヒストリーをお持ちなんでしょうか?
詳しくお話を伺います。
次回もぜひ、お聴きください!

オイルサーディン
地元・横浜のバーで港を見ながら
ビールとオイルサーディンを楽しむのが
若い頃からの決まり事だったという
松武さんチョイスの1品。
まさに"大人"の組み合わせ!

東風 / YMO
Mambo No.5 / Perez Prado
アラベスク第1番 / 冨田勲
Pipeline / The Ventures (『Live In Japan '65』)
Teen Town (Live: Shinjuku Kouseinenkin Hall, Tokyo,
Japan (28 June 1978))
/ Weather Report
千のナイフ / YMO
重ねトマト缶 / 原口沙輔
Main Title / John Williams(『Star Wars: A New Hope』から)
恋のナックルボール / 大滝詠一
So What (Live at Kohseinenken Hall,
Tokyo, Japan - July 1964)
/ Miles Davis(『Miles In Tokyo』から)
So What / Miles Davis
監獄ロック / 冨田勲
宇宙への出発(上昇音階)
007は二度死ぬ
ダイヤモンドは永遠に / 松武秀樹
月の光 / 冨田勲
松武さんとのトークを受けて、
クリス・ペプラーが
選んだ1曲はこちら!