SAPPORO BEER OTOAJITO

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SAPPORO BEER OTOAJITO SATURDAY 18:00-18:54 ON AIR クリス・ペプラーがミュージシャンをゲストに迎え、おいしいお酒を片手に音楽ヒストリーを紐解く54分!!

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2025.08.16 ON AIR
今週は音楽家・
原摩利彦さんをお迎えしました。
たくさんの映像作品で音楽を担当している原さん。
ご自身が関わった作品以外で
感銘を受けたものは...

原さんは大阪府出身。
京都大学教育学部を卒業し、
現在は京都を拠点に活動されています。
活動拠点の京都については、
「時間の流れが気持ち良い場所です。
 全然せかせかしていない。
 その反面、自分を鼓舞していかないと、
 だらだらしてしまう。
 ローマの昔の言葉に
『ゆっくり急げ』というものがありますが、
 それにぴったりなところですね。」と語りました。

音楽大学を目指したものの、
作曲を学び始めたのが遅かったことや、
当時のレッスンが肌に合わなかったこともあり、
京都大学へ進学されました。
そんな原さんが初めて買ったCDは、
イギリスの女性デュオ、シャンプーの
『We Are Shampoo』と、
ロッド・スチュワートの
『A Spanner in the Works』の2枚。
「中学1年生の頃でしたかね、
 この2枚をセットで買いました。
 ロッド・スチュワートは
 ドラマの主題歌に使われていたんですよ。
 シャンプーはジャケ買いかもしれないです。
 ロシアのt.A.T.u.っていたじゃないですか?
 あんな感じの2人組でしたね。」
と当時を振り返りました。
ちなみに、原さんが海外の音楽を
聴くようになったのは、母親が
スコット・ウォーカーを
好きだったことがきっかけだそうです。

原さんが音楽家を志すきっかけとなったのが、
坂本龍一さんのコンサートでした。
「『1996』というアルバムのコンサートで、
 母の友人から
『チケットが1枚空いたから行かない?』
 と誘われ、連れて行ってもらったんです。
 坂本さんの音楽は、強いというか、
 なんかこう迫ってくるものがあったんですね。
 それまで洋楽やクラシックも聴いていましたが、
 自分が好きな響きやメロディーが
 何度も出てくる。
 そんな魅力にやられました」。

アルバム『1996』の楽曲は高校の文化祭で
ほぼ全て演奏したというほど、
坂本さんの音楽に魅了されていった原さん。
「サビのようなメインテーマがあり、
 その後の中間部に当たるところが
 すごくビターなんです。
 半音ずつ下がったり、ベースが上がったりと、
 そのような展開は、音楽家として
 活動するようになると、
 少しずつ深さが分かってきました。
 でも、未だに分からないことも多いですね。」
と、その奥深さについて語りました。

坂本さん以外に尊敬するアーティストを伺うと、
マシュー・ハーバートの名前が挙がりました。
「コンセプトがはっきりした方で、
 馬をテーマにしたり、
 豚の一生の音をサンプリングしたりして
 作品を作っているかと思えば、
 すごくキャッチーな音楽も作っているんです。
 映画音楽も手掛けていて、
 他の音楽家とは違うアプローチで作られている。
 本当にセンスがいいんですよ。」

坂本さんのコンサートをきっかけに
音楽家の道を選んだ原さん。
人生で初めて観に行ったライブは、
松平健さんのステージでした。
「80年代、京都の南座か大阪の
 松竹座だったと思いますが、
 母に連れられて行きました。
 内容は覚えていないのですが、
 最後に、客席に投げられた
 手ぬぐいが足元に落ちてきて、
 持って帰ったんです。
 文字が書いてあって、
 母が寝かしつける時に読んでくれましたね。」
と当時を振り返りました。

これは「マツケンサンバ」が
リリースされる前のお話ですが、
原さんもクリス・ペプラーもこの曲が大好きで、
話が盛り上がりました。原さんは
「うちには5歳の息子がいて、数ヶ月に1回、
 元気がない日があるんです。
 どうしても辛い時はこれをかけて、
 踊るんですよ。前奏が長いので
 ちょっと大変なんですけどね(笑)」
というエピソードを話し、
トークの前半を締めくくりました。

番組後半は、原さんが好む
ヒップホップのサウンドの話から始まりました。
「実はヒップホップも結構好きで、
 特にグールーの『Jazzmatazz, Volume 1』に
 入っている『Le Bien, Le Mal』という曲。
 MCソラーというフランス人ラッパーの声が
 良いんですよね。たまらないです。
 僕は音の質感、声の質感が好きなんです。
 そうなんですが、ヒップホップって
 スネア一つとってもものすごくこだわって、
 ローファイにしたりするじゃないですか。
 そこがすごく気持ちいいですね。」
 他にもサウンド・プロヴァイダーズや
 ア・トライブ・コールド・クエストの名前も
 挙げていました。

たくさんの映像作品で音楽を担当している原さん。
ご自身が関わった作品以外で
感銘を受けたものについて伺いました。
「Netflix制作の映画『ROMA/ローマ』ですね。
 これは音楽がほとんどないんです。
 モノクロの映画で、後半の海のシーン、
 波の音が押し寄せてくる場面で
 涙があふれ、感情が高ぶるんですよ。
 僕は音楽家なので全編にわたって
 音楽を付けないことはないですが、
『波の音だけで人の感情は高ぶるのか!』
 という発見がありました。」
続けて、その感情が引き立つ要因を
「たくさん音楽が鳴っている映画だと、
 やはり耳が慣れてしまうんですね。
 最初から音楽があまりないと、
 だんだん耳が開いてきて、
 音に対してすごく感覚が鋭敏になってくる。
 そこで波の音などが『ガーッ』と来ると、
 ハッとするのかもしれません。」
と解説しました。

さて、番組では
「大人の☆生 サッポロ生ビール黒ラベル」
を飲みながら音楽トークをする企画にちなんで、
ゲストの皆さんに
「大人になったと感じる一曲」を伺っています。
この質問で原さんが選んだのは、
ヨハン・ヨハンソンの
『Flight from the City』でした。
「5年前に息子が生まれたのですが、
 生まれた当時はコロナ禍だったため
 面会もできず、毎日冷凍母乳を
 病院に届けるだけの日々だったんです。
 3週間後にようやく息子が帰ってきて、
 家の中で毎日同じことを繰り返す
 生活が始まったんですね。
 この曲はその頃によく聴いていました。
 同じフレーズを繰り返しながらも、
 奥で鳴っているストリングスなどが
 少しずつ変化していくんです。
 これまでルーティンを嫌って
 フリーランスとして活動してきたのですが、
 この時、繰り返すことの心地よさに
 気付き始めたんですよね。
 そして自分が父親になり、
『これでやっと大人になれたのかな』
 という気持ちが芽生えたので、
 この曲を選びました」。

原さんの息子さんは3歳の頃から
レコードに興味を持ち始め、
ヨハン・ヨハンソンや坂本龍一さんの音楽も
好んで聴いていたとのこと。最近では
「音楽を途切らせたくないから」と、
ターンテーブルをもう一台ねだってきたそうで、
そのエピソードに原さんは
感動したと話していました。

さて、そんな原さんが音楽を手がけた映画
『国宝』が大ヒット公開中です。
監督の李相日さんとは『流浪の月』に続き、
2度目のタッグとなりました。
『国宝』は主人公・喜久雄の人生、
そして周りの人々の人生を描いているため、
スケール感を求められたそうです。
原さんの中には、
一つのシナリオがあったとのこと。
「冒頭で喜久雄のお父さんが撃たれる場面に、
 グーンという効果音のような
 音があるんですけど、
 あれは中世の楽器ヴィオラ・ダ・ガンバの音を
 加工して作っています。その音は、
 最後、喜久雄が人間国宝になって
 『鷺娘』を踊る前、楽屋で立ち上がる時に
 もう一度鳴るんです。
 僕が勝手に作ったシナリオですが、
 喜久雄が九州で親を殺されたのは、
 実は劇場の魔物のような、
 得体の知れないものに既に呼ばれていた、
 という解釈です。
 いろんな場面に印象的な音を入れたり、
 伏線を張ったりして作りました。」

主題歌「Luminance」にもリュートといった
西洋の楽器が取り入れられていますが、
これは歌舞伎という
視覚的に和の要素が強い作品だからこそ、
あえて西洋のサウンドを取り入れたのだそうです。
「歌舞伎の映画ではありますが、
 これは喜久雄の人生の映画なので、
 歌舞伎ばかりに
 とらわれてはいけないと思いました。
 幸いなことに、僕は2017年に
 野田秀樹さんの新作歌舞伎で、
 家元のお囃子に自分の音を生で
 ミックスするという経験があったんです。
 伝統的なものなので
 決まりごとはたくさんありますが、
 同時にとても自由だと感じました。
 だから歌舞伎の演目の音に
 電子音楽などを重ねても、
 きっと成り立つと思ったんです。」
普段から歌舞伎に親しんでいる方々からも、
『国宝』の音楽について
「歌舞伎の音楽へのリスペクトが感じられた」
という言葉をもらったそうです。

李相日監督とは原さんのご自宅で
作曲合宿も行ったそうですが、
監督には迷いがなく、
とても作業がしやすかったと振り返ります。
作業の途中で主題歌
「Luminance」の制作も依頼され、
非常に嬉しかったと述べました。
主題歌は坂本美雨さんが作詞し、
ボーカルをKing Gnuの井口理さんが務めています。
「『国宝』の本編は叙事詩のようですが、
 エンディングは抒情詩のようにしたいと考えました。
 この曲には繰り返しがありません。
 前のメロディーを繰り返さず、
 そのまま最後まで進んでいくのですが、
 それは映画が終わってからも
 喜久雄が永遠に飛翔していくような、
 続いていくイメージを目指したからです。」

今後も映画音楽を担当する予定があり、
情報の解禁が待ち遠しいところですが、
9月には京都・醍醐寺での『OTOBUTAI』、
11月には韓国で国立現代舞踊団の
音楽を担当されるそうです。
ぜひ会場に足を運び、
原さんの音楽を生で楽しんでみてはいかがでしょうか。

原摩利彦さんの情報はこちらから

OMIYA

すぐき
京都を拠点に活動する原さん。
お持ちいただいたのは
京都三大漬物のひとつ「すぐき」
日本では数少ない乳酸発酵漬物で
夏に飲む黒ラベルにもピッタリです。

MUSIC

  • Trouble / Shampoo

  • Lady Luck
    / Rod Stewart

  • 1919
    Rain / 坂本龍一

  • The Horse Has A Voice (feat. Theon Cross)
    / Matthew Herbert,London Contemporary Orchestra

  • 暴れん坊将軍 オープニング曲
    /菊池俊輔

  • マツケンサンバ II / 松平健

  • Le Bien, Le Mal feat. MC Solaar
    / Guru

  • Can I Kick It? / A Tribe Called Quest

  • Flight From The City
    / Jóhann Jóhannsson

  • 国宝メインテーマ
    欲望
    新世界
    開花
    一対の宝玉 / 原摩利彦

  • Luminance / 原摩利彦 feat. 井口理

  • Super Bon Bon / Soul Coughing