2021.06.26 ON AIR
【ジョアン・ジルベルト】Port of Notes 畠山美由紀さん、 シンガーソングライターのSaigenjiさん登場!

今週のテーマは、今年生誕90周年!ボサノヴァの父:ジョアン・ジルベルト!
ゲストには、Port of Notes 畠山美由紀さん、シンガーソングライターのSaigenjiさんをお迎えしました。

■ジョアンとの出会い

グローバー:まずは畠山美由紀さんジョアン・ジルベルト最初に出会った時覚えてます?
畠山:ごめんなさい、実は本当は思い出せないけど「Besame Mucho」だったのかなぁっていう感じなんですけど。
グローバー:これを思い浮かべますか。
畠山:「Besame Mucho」って凄い有名な曲じゃないですか、それを“あ、この人も歌ってるんだ”みたいな感じで出会ったような気がするんですけどね。
グローバー:どうでした?ジョアンが歌う「Besame Mucho」を聴いて
どんな気持ちになったの覚えてます?
畠山:なんか朗々と歌い上げる感じではなくて、なんかこうちびちび(笑)
Saigenji:日本酒じゃないんだから(笑)
グローバー:確かに“ちびちび、ちびちび”ですね!
Saigenji:初めて聞いたよ、ジョアンをちびちびって言うの。
グローバー:お酒の飲み方で例えるとちびちび歌う人。
Saigenji:そうだね。お猪口で飲むような歌い方ってことか。
畠山:だったかなぁっていうような。ちょっと記憶が確かでないんですけどね。
グローバー:そこが他の好きなシンガーと違った。
畠山:全然違いましたね、なんかこういうのってアリなんだ?みたいな(笑)
グローバー:そこから色々他のジョアン・ジルベルトの楽曲も聴いていきましたか?
畠山:そうですね。“なんか心落ち着くなぁ”ってね。いろんなアコースティックな作品のものがすごい好きでしたし、だから“あれ!凄いいいじゃん、これ歌ってみようかなぁ”とかって思ってみたことはすごい覚えてますね。
グローバー:実際トリビュートアルバムとしてのレコーディングもそうですけど、ちょっとセッションで合わせたりとかそれこそ自分で歌ってみようかなあで歌ってみて気づいた魅力いかがでしたか?
畠山:すごく誰でも歌えるっていう風な印象だったんですけど絶対出来ないと思いました。これはねやっぱ録音技術とかそういうことにもよると思うんですけど、ちょっとしたリップノイズとか発音とかすごくねその弱音で歌うということの技術と、あともう声そのものの選び方とか言葉のちょっとした発音とかものすごい考えられていて
Saigenji:はいはい、わかります。
畠山:ね、誰にでもできそうなのに絶対にこの人にしかできないんだってことが分かって愕然としました。
Saigenji:究極だよね、ある意味ね。
畠山:そうだね、究極。

グローバー: Saigenjiさんはどの時期のジョアンと初めて出会いました?
Saigenji:えっとね、俺いちばん最初に聴いたのは中学生の時にラジオで「中学基礎英語」ってのずっと聞いてたんだけど、その中で1曲外国の曲を紹介するってコーナーがあったのよ。それで「イパネマの娘」があって、アストラッド・ジルベルトが英語で歌ってるからその英語の歌詞を取り上げるっていうので、アストラッドが歌った後にジョアンの歌が出てきて“うわっ”と思って。それが初めて。
グローバー:どんどん大好きになっていっていろんな曲を聴いていって自分でもコピーしてSaigenjiさんはやってみてまた気付いたこといかがですか?
Saigenji:もちろん歌もそうなんだけどとにかく重力。ちょっとマニアックな話になっちゃって恐縮なんだけど、ジョアン・ジルベルトって曲のキーの選び方が絶妙なんですよ。ちょっとだけ実践しますね。例えばコルコバードだとスタンダードなチューニングだとこれなんだけど♪♪〜〜〜ジョアンはこれを半音3つ分下げてF#マイナーで歌うんだけど♪〜〜〜みたいな感じで。
グローバー:あ、ほんとだ!重力!
Saigenji:全然違うでしょー重力なのよ。
グローバー:へぇー、すごい!
畠山:あ、でも決してなんか上に向かってバァーって歌うっていうイメージじゃないもんね。
Saigenji:そうそう、歌い上げるのではなくて、でも別にボサーっと歌ってるわけじゃないっていうか。
グローバー:日本で言うと義太夫とかねああ言う感じの。よくあちらの性格の人って脳天から出すとか眉間から天に向かって出すって言うけど、義太夫の名人ってお尻から地球の真ん中めがけて声出せみたいなことを聞いたことがあって。
Saigenji:えっとね日本のボサノバで大御所の方で中村善郎さんって方がいらっしゃるんだけど善郎さんがそういう義太夫とか日本の邦楽とかとジョアンの美学は通じるとおっしゃってましたね。だから本当にその通りだ。
畠山:へぇー!
Saigenji:だからこうちびちび歌うとか(笑)

■ボサノヴァの誕生

グローバー:ジョアン・ジルベルトはボサノヴァという音楽を最初に生み出した人っていう風な言われ方もします。いちばん最初のボサノヴァナンバー「想いあふれて(Chega de Saudade)?」という曲がありますけれども、お二人ともこの曲音楽史を変えた曲としてアンケートに書いてくれてます。畠山美由紀さんはこの楽曲の魅力どんなところに感じてますか?
畠山:そうだなぁ、あの滑らかなメロディとそこにぴったりと寄り添うあの歌詞の発音の美しさ。もちろんポルトガル語なんですけど、このマッチングの感じは歌ってると本当に気持ちいいですよね。
グローバー:なるほど、メロディと言葉の美しさ。こういう煌めきっていうのはなかなか他に無かったからはボサノヴァという新しい音楽の名前がついてたくさんの人へ風土も越えて広がっていったんでしょう。
Saigenji:そうだね、本当にね。
畠山:それまでに知ってるポップスとは全然違うんだなぁって感じはしましたよね。
Saigenji:あーそうね、そのジョアン・ジルベルトがどうこうって言うんでカエターノ・ヴェローゾっていうジョアンにすごい影響を受けたブラジルの大歌手がいるんだけど、息子のモレーノと対談をした時に“どうしてああいう風なボサノヴァの歌い方って生まれたの?”って言ったら“あれはねマイクの発達とともに生まれたんだよ”って言ってて、つまり昔マイクが発達してない時代は朗々と歌うしか人に届ける術がなかったわけ、今みたいにボソボソ喋っててもが遠くの人には伝わらないでしょう?でもマイクがあればこうやって小っちゃい声で喋っててもその声が遠くまで届く。そのマイクの技術の革新がジョアンジルベルトの存在を生んだとモレーノは言ってた。
グローバー:そうするとお二人ともレコーディングもしますけど、そのマイクに声を乗せる方法って言うかやり方ってのも凄いものがあるんですかね?
Saigenji:多分ジョアンはそこは考えてないと思う、多分だよ。だからねバスルームでボサノヴァを完成させたってすごい有名な逸話があるんだけど、ジョアン・ジルベルトは最初リオ・デ・ジャネイロに出て朗々と歌うコーラスグループで仕事をしてたらしいんだけどすっごい気まぐれで約束もすっぽかすしすぐ仕事干されちゃったんだって。それで失意のままバイーアってジョアンが生まれた土地に帰ってお姉さんの家のトイレでずっと籠って練習してそれでスタイルを完成させたっていう逸話があるんだけど。
畠山:なんかバスルームでって聞いたことある。
Saigenji:ね、それでその響きを自分で聞きながら完成させていったから。
グローバー:そうかバスルームって声が響くもんだから自分で大きい声出す必要ないし、響きが聞きたかったら声も演奏もちょっと抑えていきますね。
Saigenji:そうそう、だからそうやってスタイルを完成させていろんな人に聴かせたらしいのね。それで録音させようって話になって「Chega de Saudade」が生まれたって話らしい。
畠山:そうか、そうでしたかぁ。

■ソロシンガーとしてはもちろん、Port of Notes や、Double Famous のボーカリストとしても活躍する畠山美由紀セレクト
「歌いたくなるジョアン・ジルベルト・ソングTOP3」!!!


3位 Desde que o samba samba Album『Joao Voz E Violao』2000 年

畠山:最高だね、曲がいいからね。なんかね、情熱を掻き立てるものがありますね。 Saigenji:これカエターノの曲だよね。
畠山:そうそう。
グローバー:ここでちょっと情熱上がっちゃうなっていうフレーズはどの辺なんですか?
畠山:もう最初からかな(笑)これなんかほらみんなで一緒に歌ったりするじゃん観客の人たちが。感動動的なんだよねー。

2位 Eclipse Album『Joao Voz E Violao』2000 年

畠山:これは酷い失恋の歌なのかなぁー、欠けた月に掛けてるんだよね。人は皆そういう経験がきっとあるじゃないですかやっぱり。これ慰めてくれるなすごく。深みまで落ちちゃった人をこう一緒の経験をした人が優しく見守ってなんか肩を抱いて、でもまあ頑張っていこうよみたいな気持ちになるって言うかさ(笑)そういう物凄い説得力と素晴らしい詩ですよね。

1位 Estate Album『Amoroso』1977 年

畠山:これはクラウス・オガーマンっていうオーケストレーションのアレンジャーと一緒にやってる作品ですけれども。
グローバー:これは今までジョアン・ジルベルトが好きでパッとイメージするのってリズムが来てっていうものでしたけど、このリズムが無いオーケストレーションからグーッと来るというのも。
畠山:そんなんですよね。まあ一聴してちょっと素朴にも聞こえる歌い方とそれこそそのオーケストレーションの美しさは堪らないですね。
グローバー:これバッキングと言うか楽曲の背景がどうであってもこの歌い方というのはやっぱり言葉をトンと置くのは凄いなと思いますよ、聴いてると。 Saigenji:そして美由紀さんがチョイスした曲全部言語が違う。3位の「Desde que o samba samba?」がポルトガル語でしょ、「Eclipse」はスペイン語だよね。「Estate」はイタリア語なのよ。
畠山:あ、そうだ!本当だね。
グローバー:ラテンの世界旅行ですね。
Saigenji:「Estate」はね映画のサントラだったみたいでイタリア語で歌ってるすげえいい曲。
畠山:そうなの、それ知らなかった。
グローバー:それこそ楽曲の言葉含めた幅広さ奥深さキャリアを感じました。

まだまだ続くジョアン・ジルベルト。来週もお聴き逃しなく!

PLAYLIST

Besame Mucho / Joao Gilberto

Eu sambo mesmo / Joao Gilberto

Chega de Saudade / Joao Gilberto

Bahia com H / Joao Gilberto

風の轍 / Saigenji

Estate / Joao Gilberto


♪♪♪Spotifyにもプレイリストを掲載していますぜひお聴きください♪♪♪


■放送後1週間は右下のRadikoタイムフリーボタンでお聴きいただけます。
■畠山美由紀さんの詳しい情報はオフィシャルサイト
■Saigenjiさんの詳しい情報はオフィシャルサイト

来週は、ボサノヴァを生んだ、ジョアン・ジルベルト part2!ゲストには引き続き、Port of Notes 畠山美由紀さん、シンガーソングライターSaigenjiさんをお迎えします。お聴き逃しなく!