ONAIR: 2006/09/10「中華街の秘密を教えてください」
山下清海(やました きよみ)さん

筑波大学大学院生命科学研究科教授
専攻は人文地理学、中国・東南アジア地域研究。
特に日本と世界各地の華人社会、チャイナタウンをフィールドワーク重視で調査・研究をしている。
中華街研究の第一人者。
「チャイナタウン〜世界に広がる華人ネットワーク」(丸善)

「華人社会がわかる本〜中国から世界へ広がる華人ネットワークの歴史、社会、文化」(明石書店)


今週のテーマ「中華街の秘密を教えてください」

岡田「横浜中華街はいつ頃から出来たんですか?」
山下「今から150年くらい前ですね。1859年に横浜の港が開港されて、外国人居留地といって外国人が住む場所、また商売をする場所を決めたんです。そこに欧米人がやってくるんですが、大抵の人が日本に直接来るんじゃなくて、中国を経由してきてるんです。それで、中国にオフィスを持ってたりする貿易商人たちが横浜にやってくる時に中国人も連れてきた。それが横浜の華僑の始まりなんです」
岡田「昔から大きな街だったわけじゃないですよね?」
山下「そうですね。戦後、闇市になって徐々に発展していくんですけど、一番大きなきっかけとなってるのは、1972年の日中国交正常化です。それで日本中が中国ブームになって、多くの人が横浜中華街に行くようになった。それ以前は結構危ない感じで、中華料理店よりもバーなどの飲み屋が多かったんです。売春とか密輸とか、そんな危ないイメージが強かったですね。ただ、その国交正常化によって人が集まり、それによってお土産屋とか中華料理店とかが増えて明るいイメージになっていったんです」

岡田「横浜中華街をディープに楽しむにはどんなことを知っておくといいですか?」
山下「やっぱり、皆さんは中華料理店とお土産で終わってしまいそうですけど、せっかく行ってるので、そこにいる中国人の生活や文化を知ってほしいですね。横浜中華街には関帝廟と媽祖廟という二つの寺院みたいなものがあるので、そういうところに行けば、中華街に住む一般の人々の生活とかが見えてくると思います。あと、国慶節と双十節という二つの大きなお祭りがあるんです。10月1日の国慶節は中華人民共和国の誕生日。そして、双十節というのは10月10月。この二つのお祭りに行くと、パレードとか色々ありますので、それに行くと中国の世界が実感できると思いますね」
岡田「10月1日と10日では違う雰囲気なんですか?」
山下「10月1日は中華人民共和国支持派というか…誕生日で、10日は台湾系というか、辛亥革命が成功した記念日なので、政治的な面からも両方を楽しめます。以前は対立も激しかったんですけど、今はケンカせずに住み分けていますから」

岡田「日本には、神戸・長崎・横浜とあるんですが、他にはないんですか?」
山下「新しく中国から出稼ぎに来る人も多いんですけど、最も多くの中国人が住んでいるのは横浜ではなく、やっぱり東京です。それで以前は分散してたんですけど、最近は集中してきたんです。それが池袋駅の北口。特に夜行くと北京語や福建語などが飛び交っていて、中国料理店も沢山ありますし、中国人向けのスーパーマーケットやネットカフェなども集中してきてるんです。それで面白いのは、現在の中国がそのままそこにあるような場所なんです。横浜中華街の場合は、やっぱり日本人のお客さんが多いので、味も日本人向けに変えているところがありますが、池袋だとラー油たっぷりの麻婆豆腐が出てきたりしますからね。中国といっても色んなところがありますが、最近は東北地区(旧満州)の朝鮮族が多いんです。だから、その地方の料理店も多くて、最大の特色は犬肉料理も食べられるところ。私もよく大学院生連れていくんですけど、学生達も最初は恐る恐るといった感じでしたが、今では殆どの学生が気に入ってますよ」

岡田「世界中にチャイナタウンがあると思うんですが、中国人は世界を目指す人が多いんですか?」
山下「日本人に比べると、成功の機会を求めて海外に出ていくという意識は、中国人は非常に高いですね。中国といっても沢山の民族がいて言葉も全く違うんです。だから、国境の意識というものが、我々日本人と比べると障害になってないと思うんです。例えば、日本人だと海外に行ってもそこに骨を埋めようって人はあまりいないですよね、結果的にそうなった人は別にして。また、自分の子供がアメリカに行って、『こっちで一緒に住もう』って言われても、家族は行かないですよね。でも中国人だったら、家族全員を呼び寄せようとか、家族もそれを期待してたりするんです。どこであろうと家族が一緒に生活できるってことが、幸せだっていう意識が強いみたいですね」

岡田「今、日中関係で色々な問題が出てると思うんですけど、そういった政治的な問題が中華街に与える影響ってあるんですか?」
山下「それはありますよね。横浜中華街がこれまで発展したのも、日中国交正常化の影響が大きいですしね」
岡田「先生はどうすればいいとお考えですか?」
山下「やっぱり基本的には、日本人は中国文化に対して非常に関心があって、中国から学んだものもあり親近感も持ってると思うんです。だから、中華街が観光資源になりえたと思うんで、今の段階で日中関係がギクシャクしてても、やっぱり中華街というのは発展していくんじゃないかと思います。ただその時に、段々日本化された中華街に飽きてくると思うんです。旅行などで実際に中国に行ってる人もいますし。すると、日本の中華街は本場と違うなぁってことになる。我々日本人がリトル東京に行って、何か違うなぁと思うようにね。すると、先ほど言ったような池袋のチャイナタウンが魅力的なものになってくる可能性はあるなぁと思いますね」

中華街についてお聞きしたんですが・・・、かなり昔からあったんですね〜。1859年の開港からですよ。
家族や親戚を呼び寄せて、その土地の生活にあわせずに自分達の生活をする・・・、そこで中国の文化を広げて、もう一つの中国を作ってしまう、と。自分達で独自の色を作っていって、その土地の人達に認められていくんですね。日本のそういうものが世界にあってもいいかなぁって、思ったりもするんですけどね。

でも、先生も言ってたけど、日本人は合わせますからね〜。もしそういうものを作ったら、どういう街になるのかなって考えると・・・、分からないんですよね。中華街って、カラフルなカラーの壁だったり、レンガとか、独自の文化が見えるんだけど、日本に住んでるからか、日本の文化っていうものがよくわかってなかったりするじゃないですか。だから、向こうに持ってくのって和食しかねえのかなぁ、とかね。

でも、日本もその土地その土地に好かれる様な、ジャパンタウンみたいなものがあれば行ってみたいなって気もしますけどね。
ジャパンタウンが出来ることで日本のことを理解してもらえて、国際交流としてアピールの場になるかもしれないですし・・・。もしかしたらジャパンタウンは、大事なのかもしれないって思いました。

1.CHINA GIRL
DAVID BOWIE

2.SHALL WE DANCE
EN RAY

3.HOW CAN YOU LET ME BE SAD
BEI XU

4.光陰
FAYE WONG

5.SOMETHING GOOD
BIC RUNGA


「私が思うに、日本の人たちが思う『中華街』のイメージと、実際のチャイナタウンは違う。そしてその背景にあることを今回の放送でいろいろ学べたように思う。フランスに住んでいたとき、日本食材をチャイナタウンに買いに行く度、『は!チャイナタウンって本気だ』と思っていた。彼らが本当にそこに‘暮らしている感’があったから。それまで日本にいた時は‘遊びに行く’という感覚で横浜の中華街に行っていたが、それからは変わった。先生がおっしゃっていたように彼らの生活に興味を持つようになったし、‘お邪魔します’という感覚で行くようになった。とは言っても最終的に大きな目的はマーボー豆腐なんだけど・・・」(yasukoringoさん)

「中華街に行くと、いろんなお店に入っていろんな物を少しづつ食べたくなります!やっぱり日本で店をひらいて日本人のお客さんを意識すると、日本人好みの味になってしまうんですね。ハワイなんかでは一風変わったおすしが食されてますもんね。その土地土地のニーズもかねそろえていくのも大切だし、本物思考が強くなってきているのもあるし、これからまた中華街にいくのが楽しみになります」(1980さん)

「中華街は、最近地図なしでも路地の小さなお店が分かるようになった場所なので楽しみにしていたテーマ。話を聞きながら7月に中華街に行ったときに賑やかだったのを思い出しました。あれはお祭り(関帝誕)の練習だったんですね。成り立ちや歴史を知っていればもっと楽しめたのに、と食事と買い物ばかりを目的に行っていた事を反省。今度、遊びに行った時はお店の人に色々話を聞いて見たいと思います。池袋の中華料理屋にも挑戦したいです!身近な街の新しい一面を知る事ができて楽しい一時間でした」(どんぐりさん)

「私は中華学校卒業です、このラジオを通じて色んな人に中華のことを知ってもらえることは感謝してます!!また機会あったら紹介してください!!」(もぅかさん)

「母国にプライドを持って、外国でも母国での生活を貫くことって、すごい事だし、かっこいいと思いました。かといって、外国の文化を否定するわけではなく、逆に興味を持って受け入れようとする姿勢はなかなか簡単にはまねできないと思います。簡単なことではないけど、お互いが自分たちの国に誇りをもったうえで、お互いを認め合えれば、日中関係も良くなっていくだろうな・・・と思いました」(准くん見てちょさん)

「今日のラジオを聴いていて、中華街・・・って言っても奥が深いんだなぁと思いました。私は自分で料理をしているため、あまり外食しないんですが・・・外食をする時に、あまり歴史とかを気にしたことがなかったので、知的好奇心が刺激されました。何気なく建っているお店一つとっても、いろんな人達の想いが込められていて、歴史があって・・・一件一件のお店の想いや歴史が一つになって中華街なんだって考えると、何だか素敵だなぁ・・・と。「歴史を知って食べ歩き」もいいかなぁ・・・と思いました。こうなったら、私の住んでいる家の近所にある商店街の歴史も調べてみようかなぁと思います」(ミッキーさん)