日曜の深夜。全てのしがらみから離れて
本当に「独り」になっている特別な時間。
人は誰もが不安や悩みを持っているはず。
この番組は、自分の心と対話することの大切さを伝え、
明日への活力を求める人への応援メッセージを
発信するラジオ番組です。
EVERY SECOND SUNDAY
25:00-26:00 ON AIR
人は他人と比較してしまう生き物だと思います。
人より、恵まれていると喜んだり、
人より、うまくいかないと落ち込んだり、
SNSが生まれたことで、自分を誰かと比較する機会も増えてきました。
そんな今だからこそ自分の心と対話する時間を大切にしたいと思います。
何をしたいのか、何が悩みなのか、何に希望を持つのか。
その積み重ねが幸せを感じる近道なのではないかと思います。
幸せは、自分の心の中にある。
茂木健一郎さんと
志村季世恵さん
第3回は
9月9日(日)
25:00から放送
ゲストは広末涼子さん
みきティ(アテンド):はい、扉を開けましたので、どうぞ、お入りください。
茂木:空気がふぁ〜って変わる感じでなんかね。
みきティ:あ、分かります?
茂木:空間がね。
みきティ:そうなんですよね、空間の様子も、肌に感じる感覚でお分かりいただけるかと思います。
茂木:はい、この白杖というか。
みきティ:はい。それでは季世恵さんがいらっしゃる所まで、季世恵さんの声を頼りに進んで行っていただきまして、それでテーブルとかイスなども置いてありますので、杖で確認して避けながら季世恵さんの方へ進んでください。
茂木:あ、僕が?
みきティ:はい、季世恵さーん!
志村:はーい!ここですよー!この辺ですから。歩いて来て〜。
茂木:え、全然分かんない。
志村:白杖を。
茂木:みきティ分かるの?今の声で。
みきティ:はい、分かります!
茂木:え、なんで?
みきティ:茂木さん今日は杖つかれながら季世恵さんを目指して進んできたんですけど。
志村:だんだん、だんだん、近付いて来てません?私の方に。声なんとなく…
茂木:なんとなく、方向は分かるんだけど、ただやっぱり…だってさ、この部屋の様子も分かんないしね。
志村:そうですよね。
茂木:今ね、杖をこうやって、床を、みきティに教わったように。あ、なんかに当たった!
志村:なんかありました?
茂木:なんだこれ?ちょっと待って、あ、なんかイスみたいなのに。
志村:あ、イスありましたか。
茂木:(コン、コン)はは、慌てない、慌てない〜。お?
志村:あ、なんか。
茂木:近付いて来た!ぶつかったらごめん。
志村:大丈夫そうです、手を出してますよ私。今…
茂木:あ、いた!
志村:あったー!
茂木:ね!え、今座ってます?
志村:あ、立ってます。立ってますよ。
みきティ:あの、茂木さん、お手を失礼しますね?
茂木:はい、はい、はい。
みきティ:はい、失礼します。じゃあ茂木さんのお席は、来ていただきまして、私はこちらに左から回り込んでます。手をこのまましゃがんで下げてください。その辺にイスがあります。で、テーブルがこちらにあります。
茂木:あ、ほんとだテーブルがあった!
みきティ:はい、どうぞおかけください。
茂木:はーい。
みきティ:そして、季世恵さーん、失礼しまーす。
志村:はい。
みきティ:はい、お手をよろしいですか?
茂木:うわ、座れた座れた。
志村:あ、ありました!
みきティ:はい、こちらにイス、ここにテーブルがあります。どうぞおかけください。
志村:座りまーす。
茂木:ふしぎふしぎ。あ、これテーブルがあった。ちゃんとしたテーブル。長い、ほんとBarみたいなテーブルがあった。あれ?なんかある。
志村:あります?
茂木:(ゴソゴソ)…あ、マイク触っちゃった。
2人:(笑)
茂木:ごめん、マイク触っちゃった(笑)あーでもなんか、落ち着きました。あ、Barに座ったなーって思って。
志村:ちょっと、いい感じですよね。
(♪カンカンという音がする)
茂木:あれ??なんか音がした!なんの?なんかグラスが当たるような音。…ん?
志村:グラスの音でしたね。
茂木:Barの奥の方にグラスの音がしたんですけど。
みきティ:よろしければお飲物をご用意してますので、召し上がりますか?
志村:ん〜。
茂木:せっかくですから。
みきティ:はい。今日は、ちょっと夏らしいものがいいかなと思いまして、4種類ご用意してます。1つ目は麦茶です。もう1つは100%のオレンジジュース、もう1つはシュワッと炭酸水、そして、やっぱり夏にゴクゴク飲みたいものと言えば、ビール!
茂木:ビールまであるの??
みきティ:はい、ございますので、ぜひお2人ともお好きなものをご注文ください。
茂木:じゃあレディーファーストで、季世恵さん。
志村:私からでいいんですか?私ねー、炭酸水飲みたいな!
みきティ:炭酸水!いいですね〜。茂木さんはどうですか?
茂木:被っちゃったね。僕も炭酸水お願いします。
志村:あ、いいですね。2人とも炭酸水?
みきティ:じゃあお2人とも炭酸水ご用意してよろしいでしょうか?
茂木:お願いします。
志村:はい。
みきティ:はい、ではご用意しますね、お待ちください。
茂木:でも不思議なんだよな〜、だってさ、みきティどうして4つ、どれがなにか分かるんだろう?場所覚えてるのかな?
志村:場所ね〜、形もきっと違いますよね。
茂木:あーあー!入れ物の形が違うのか!それにしてもすごいね。
志村:そうですよね、なにしろ注ぐのがね。
茂木:確かに!!ここ暗闇の中で注ぐって。でもみきティにとっては毎日やってることだろうからね。
志村:そうですね。
茂木:すごいよね、ほんとに。
志村:茂木さん、自分で暗い所で、お酌とか注いだりしたことないですか?
茂木:うーん、やろうとしたことはあったんですけど、ここまで暗いっていうのはまだないですね。
志村:あー。私ね、結構練習してるんですよ!
茂木:えーそうなの?
志村:そうなんですよ。やっぱりほら、自分でもやってみないとなと思ってね。
茂木:うん。
志村:そうするとね、やっぱり分かってくるんですよね。
茂木:あ、分かってくるんですか!
志村:練習だなーって思いますね、なんでもね。
茂木:やっぱり脳の視覚野使わないと、他の感覚野で補おうとするから。間違えると脳は活性化するし、回路が変わってくると思うんですけど、え、なんかそういう実感あります?脳が変わって来たというか。
志村:あ、あのね、脳がって言うより目を使ってないとやっぱり違うことが出てきますね。例えば私はドリンク注ぐときの音が鳴るんだけど、コップの温度が変わっていくのとかが分かって来るんですよ。
茂木:あ、へー!
志村:指をね、コップに当てて注ぐんだけど、そうすると意外と温度が上がってくるとか。あと重さ。
茂木:あーそかそか。注ぐとだんだん重くなってくる所とか、分かってくるってことですよね。
志村:そうそう。それって脳のどっか違う所なんですかね?
茂木:体性感覚野ですよね。やっぱ視覚野から口頭葉を中心として大体30%ぐらい占めちゃってるんで、お…今音がした。逆にその30%使わないことによって他の回路が使われるってことで、潜在能力が…ね。今なんか音したよね?
志村:しましたね。
みきティ:失礼いたします。
(♪グラスにドリンクを注ぐ)
茂木:おーーいい音…。すごいなんか…官能的だよね。
志村:ほんとですねー。
茂木:普段気付かないこの小さな音が。わ、ドキドキする。乾杯もドキドキするわ、だって…あ、いた。
志村:乾杯!
茂木:あれ?もう1回!えーい!ドキドキする〜(笑)全部ドキドキするね!
志村:結構緊張しますね。でもいい緊張だな、私は好きですこれ。いただきまーす。
茂木:あー美味しい〜。お〜…僕ダイアログ、最初は18年前だったと思うんですけど、あの時ほんとびっくりしましたもんねー、ドイツから新しいのが来たって言って。
志村:ほんとですよね〜。
茂木:あの時季世恵さんもいて。やっぱり僕それから時々伺ってますけど、その度に発見ありますからね〜。
志村:一番最初の発見ってなんだったんですか?
茂木:やっぱり、ちょうどだからあの時18年前ってことは、ちょっと待ってくださいよ、僕が脳科学始めてからちょうど6年目ぐらいじゃないかしらって思うんですけど、やっぱり普段から脳は視覚が中心で、ものすごく視覚が重要になってて、逆にそれを一旦オフにしちゃった時にいかに他の感覚が研ぎ澄まされるかってことを思いましたしね〜。
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茂木:やっぱりね、ダイアログ経験すると、言葉を大事にするようになるのかもしれないね。前に僕、10人くらいグループで、確か焚き火かなんかやってた時があって。
志村:秋の時ですねー。
茂木:秋の時、コタツかなんか入った回もあって、やっぱり言葉でちゃんと伝えないと伝わんないじゃない?例えば家族なんかでも思春期の子供とか「あー分かってるよ!」とかあんまりお父さんお母さんに言葉でちゃんと伝えないけど、ダイアログだとさ、全て言葉で伝えないと伝わらないじゃない?だから、「コレ、ソレ、分かるだろー!」って言うそれだと伝わんないじゃない?だから俺思うんだけどさー、今意外と社会ギスギスしちゃったりするんだけど、みんなダイアログ的なツイッターとか(笑)ダイアログ的なインスタグラムやったらいいんじゃないかね?
志村:それってどういう風に?
茂木:もう前提にしてる事からちゃんと説明するっていうか、丁寧に。
志村:あーなるほど。その前提からっていうのは、もうあったことをちゃんと最初っから説明するみたいな?
茂木:そうそう、だからマインドフルネスってねすごく注目されてて、判断する前にちゃんと全部見ようねっていうことなんですけど。やっぱり社会の色んな事も社会的マインドフルネスが必要な気がして、なにかについて賛成・反対っていうんじゃなくて、そのことってこういうこととか色々、こういうことあってこうだよね?って全体見渡してからものを伝えるようにすると、意外と炎上もしないし、ケンカしないで済むような気がするんだけど。
志村:あーなるほどなるほど。なんかわたしの父ってね、3回結婚してるんですよ。
茂木:えっ??モテモテ。
志村:モテモテですよね。でわたしの母と父って大体19歳年が違ったんですね、父が年上で。兄弟も多くて、全部合わせれば6人なんですよ。姉が20歳近く年が上なの私より。
茂木:え、ちょっと待って、それっていわゆる…異母兄弟ってやつ?
志村:そうそう異母兄弟が3組いるのね。お風呂に一緒に入ると、姉と母の文化が違うことに気付くんですよ。例えば姉の場合は頭から先に洗うべきだって私に教えてくれるの。だけど母は足から洗うべきだって。
茂木:へえ。
志村:で、どっちも合ってるって子供ながらに思うの。頭から洗うのって、泡が下に落ちてくるわけだから頭洗ってからだんだん下の方に降りていけばいいみたいな。でも母は、ずっと自分の足で歩いてることがあるわけだから、足に感謝してありがとうって言ってから体洗いなさいって言ってたのね。私にするとどっちでもいいんだけど、合わせるわけですよ。姉と入れば頭から洗う、母と入ったらば足からありがとうって言ってから洗うってね。
茂木:なるほど。
志村:そうするとどっちも言い分があるなってなってことに気が付いて、合わせるというよりは、どっちも意外と…
茂木:合わせると。
志村:そう、なんか、どっちでもいいなーみたいにもなるんだけど。
茂木:意外とその身体に関わることって最も大事なことで、脳の部位で言うと、テンポロパラエイタルジャンクションっていうTPJってとこがあって、そこが体性感覚も司ってるし、体の感覚も司ってるし、良い悪いのの判断も、倫理的な判断も司ってるってことが分かってるんで、だから正にどこから洗うかって、季世恵さん偉いと思いますよ、そういうことが原因で人って喧嘩しちゃったりするから。
志村:あーそうそう。
茂木:なんて言うの、体のことって譲りにくい所もあるじゃない?
志村:1番そうですよねーきっとね。でもそこが、結構小さい時に分かって来た時に、そこの基本がどっちにも言い分があって、どっちもそれって正しくもあり、どうでもいいことでもあったりするんだなーって思ったんですよね。
茂木:いい経験したね。
志村:そう、今お話伺ってて、ちょっとその辺思い出しましたね。
茂木:寿司屋とかでさ、醤油どれくらいつけるかとかね(笑)
志村:あーそうそうそう。
茂木:それもなんか、まあお互い好きなようにやればいいんだけど、気になっちゃう人は気になっちゃうしね。
志村:そう、ご飯からつけるか刺身からつけるかとかね。
茂木:そう。だけどそういうことって難しくって、特に今国際化の時代でこれが正しいとか、例えば箸の使い方とかお風呂の入り方とか、うーん確かにそれは大きいと思うわー。
志村:だからそういうことがあると対話の質も変わってくるのかなって思ったりして。ダイアログで大事にしたいなって思うのって、どっちが正しい・正しくないじゃなくて、1回ちゃんとお互い聞き合ってみようよみたいな。それもほら、服もどんなの着てるか分かんないし暗闇って。別にネクタイ付けてるかも分かんないし、宝石も付けてるかどうか分かんないじゃないですか。意外と年齢もあんまり分かんないみたいな。
茂木:そう、僕ね、エイジイズムっていうのかな、年齢で人をどうのこうのって僕ずっと前からあんまり好きじゃないですか。で、某動画配信大手、そこのCEOの人とこの前喋ってたら、そこではユーザーの好みの分析をする時に性別・年齢のデータを取るの辞めたって言うんですよ、関係ないからって。だから「何歳だからこの映画好き」とかいうの関係なくて、「これが好きな人は何歳でもこれが好き」とか。年齢とか性別で人を見るってのは、基本的にビジネス上役に立たないって、これ大発見だと思うんですど。
志村:わーそれいいですね。
茂木:だから正にダイアログの中でも、こうやってお互いに年齢分かんないじゃない?だって今季世恵さん、そうだなー…んーと…女子大生くらいに聞こえてるかな!(笑)
志村:そうでしょ?
茂木:だから女子大生だからいいっていうわけじゃなくて。
志村:そうそうそうそう。だからなんだろなー、捕われちゃってるみたいな。若いといいんだとか、年取ってたらダメなんだとか、そういうのじゃなくてもうちょっと違った出会い方とかあってもいいし、そしたら対話も楽しいだろうし、あと自分で作っちゃった壁も取っ払えるかもしれないし、いいなーとか思うんですよね。でもどうして人ってこう、自分の中で枠を付けちゃうものなんですかね?
茂木:怖いのもあるんじゃないですか?僕ダイアログに最初来た時すごい怖かったもん、だって暗闇の中でどういう経験するんだろうって。だけどそこ超えるとすごく安心するっていうか、今もそうですけどすごく安らいでるんですよね、逆に。だから不安とか怖いっていうのがあって本当の自分とか本当の相手を見るのがなかなか出来ないんで、その年齢とか見た目で分類しちゃったほうが楽じゃない?でも本当はその先にいるその人本人っていうか、本当のその人を見た方が恵みが大きいよっていう、そこだよね。そこの経験どれだけ積み重ねられるかってことなんだろうと思うんだけどね。
志村:うーん、あーそうだったんだー。
茂木:だからね、大抵「怖い」って思うものの向こうには真実がある感じしますね。脳はやっぱりそうやって自分を守ってて、脳の免疫系みたいなのがあって、「こういう安心した世界にいるからそっから先に行くの辞めとこう」って思うんだけど、実は行くとより深い安心とか安らぎがあったりするから。ダイアログってやっぱり「裸になる」イメージあるんですよねー。僕はね、元々脳科学やってて、またフリーな感じで活動してるからあんまりないんですけど、世の中の色んな方と話してると、年齢、性別、社会的な役割、組織とか肩書きとか、そういうのでがんじがらめになっちゃってる方すごく多いくて、だからそういう方にこそダイアログ来ていただきたいなっていうか。そういうのを取っ払った時の安心できる感じってか楽な感じって、経験するととってもいい感じしません?
志村:裸ん坊になってる感じするんですよ、みんながね。そうするといいこといっぱいだろうなーって思います。
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志村:茂木さんってチャレンジしてることとか、これからチャレンジしたいことってあったりしますか?
茂木:それは僕は、「イースター・エッグ理論」っていうのがありましてね。
志村:イースター・エッグ?
茂木:イースター・エッグって例えばコンピュータとかで、ある時間になるとなにかが起こるんだけど、ずっとそれを開発者は黙っててその時になって初めて分かるっていうのが、イースターの卵でイースター・エッグって言うのですけど。これ認知科学的にも分かってるんですけど、目標って言っちゃうと達成確率が下がるんですよ。
志村:うん。
茂木:基本僕はチャレンジしてることってのは人に言わないで、それが出来たら「あーそういうことやってたんだー」って、出来なかったら「あー茂木なにもやってないね」ってのが好きなの(笑)だからイースター・エッグ方式でやってますね。
志村:イースター・エッグ方式ってそういうことなんだー。いいですね。
茂木:いいですよ?これ聴いてる方にもオススメなんですけど、意外と学生さんとかに「茂木さん俺これやりますよ」「これやるから見ててください」って言われて「あーうん楽しみにしてるよ」って言って、しばらく経って「あれどうなったー?」って言ったら「い、いやぁ…」みたいな(笑)脳って言うだけで満足しちゃう所があるんですよ。
志村:あ、そうなんだー。
茂木:ところがイースター・エッグ方式だと、ほんとにやらないと満足出来ないっていうか。みんなに認めてもらえないじゃない?言ってないんだから。意外と僕はステルスというか、イースター・エッグ方式が好きかなぁ。
志村:それ私もやろう。だからなのか。
茂木:だからってなに?
志村:いや私、あと5キロ痩せますよとかよく言ってて。
茂木:言ってんの?ダメだよ言っちゃ。
志村:そうねー。別に宣言する必要もないしね。そうかー、でもそういうのってみんなあってもいいなー。
茂木:だから痩せるんだったら宣言しないで(笑)
志村:私もう宣言しない!
茂木:ある日突然、あれ〜!?みたいな(笑)その方がいいと思うよ。
志村:そうかーそれだったのか、叶わなかったのは!
茂木:まあだけど、こうやって話してるとだんだん深い所に降りていくっていうか、僕は村上春樹さんの小説で「井戸に降りる」ってメタファーっていうか、その例えがすごく好きでね。よく聞かれるんですよ「集中するってどういうことですか?」って。僕は細切れでも、例えば1分でもなんとか集中してやるのが大事だ、今みんな忙しいんだからって言うのだけど、ただやっぱり「集中の深さ」っていうのがあって、集中してるとだんだん、だんだん深い所に降りて行くっていうかね、どんな仕事でも。だからそういう「井戸に降りる」ってのすごく好きで、このダイアログやってると正に井戸に降りていく感じがあるんだよね。
志村:井戸に降りてくねー。
茂木:うーーん。だんだん、だんだん深い所に降りていく感じがする。
志村:その深い所に降りて降りてずっと行くと、なにか出会えるものがあったりとか、自分と出会えたりする時もあるんですかね?
茂木:あるんだと思う。僕最近「エピファニー」って言葉すごい好きで、僕時々脳科学で「ひらめき」とか言ってるんだけど、エピファニーはさらに大きく人生を変えるような気付きとか出会いのことを言うんですけど、エピファニーはかなり深いものだから、例えば僕、『赤毛のアン』が好きじゃないですか、やっと大人になってからカミングアウトして本も出しちゃったりしたんだけど、この間「『赤毛のアン』ってなんで好きだったんだろう?」って思った時に、ユングで「アニマ」っていうのがあってさ、理想の異性像っていうのはそれは付き合う相手っていうよりも自分が成長するために、例えば男性だったら女性のイメージ、女性だったら男性のイメージが大切で、「あ、『赤毛のアン』って俺に取って「アニマ」だったんだ」って。つまり主人公のアン・シャーリーって例えば好奇心だとか色々想像力を持つこととか、だからアン・シャーリーっていうものをそういう女性がいて自分の恋人だったらいいなーって見てるんじゃなくて。だからそういうことってね、ある程度深く降りていかないと気付かなくて、そういうことを見ると、例えばアイドルが好きな女性とかも別にアイドルと付き合いたいと思ってるよりは、まあ理想の男性像を「アニマ」に対して「アニムス」と言いますけど、アイドルがその「アニムス」として女性の成長を助けてくれてるんだなって。そこに気付くとね、すごいモノの見方が広がるっていうかね。優しい気持ちになる。
志村:いいですねー。そういう風な存在っていうのがまた、自分の中で深く出会えたりとか後々するんでしょうねー。
茂木:そういう深い井戸に降りていくような気付きが、もっともっと現代においては求められてるような気がするから、やっぱりラジオってそういう意味でテレビより深く降りやすい媒体だと思うし、ダイアログは正にそうだから。逆に僕ダイアログしてると、男性・女性の感じ方って変わって来たりしません?どんな感じになるのかな?だって見た目で男性・女性というよりは、もっとその人自身が出てくると、むしろ男・女っていう人間って感じになってくるじゃん?
志村:なりますねー。まあ出会って結婚する人もいますけどね、暗闇の中でね。
茂木:まじっすか。どういうことそれ。
志村:いやお客さん同士がね、出会ってそして恋に落ちて結婚するので、この暗闇で結婚式挙げてもいいですか?って人いるんですよ。
茂木:(笑)それやったことあるんですか?ウエディング。
志村:ありますあります。
茂木:まじ?どうやってやるの?
志村:見えないからもうほんとに、別にドレスもどうって、でもちゃんと触ったらドレスなんだなって思ったりとか。
茂木:親戚の人とか来るの?
志村:来ますよ。友達も。
茂木:へえーー。ウエディング・イン・ザ・ダーク!
志村:そう。
茂木:いいかも。
志村:すごい素敵で、例えば指輪を全員で回したりとかして、ここで指輪が相手の指に入るとか、その質感をちゃんと味わって「あーこの指輪がぐるっと回って相手の人に渡るんだなー」とかしみじみ感じたりしますよ。
茂木:へえー。
志村:すごく素敵。みんな温かさを感じられるんですよ。なにかこう、モノとか形じゃなくてみんながほんとに祝ってくれてるんだなーとか、みんなが想ってくれてるんだなーとかってね。それは何人かの人たちがここで結婚式を挙げてくれたけど、そう感じました。
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茂木:やっぱり絆って目に見えないものだからねー。やっぱり「見る」ってすごく現代文明においては大事だし伝達速度も速いんだけど、それにみんな縛られすぎちゃって疲れてる所があるから、やっぱり癒されるのはそのせいだと思う。普段「見る」ってことに支配されちゃってるが故にダイアログに来るとなんか、そこから解放されて「いいな」って思うし、みきティなんかさ「いらっしゃい、いらっしゃい」って感じなの?我々さあ、普段見ることに疲れちゃってるんだよねー。で、ここに来たら色々気付くじゃない?そしたら「いらっしゃい」って感じなの?
みきティ(アテンド):いらっしゃい?
志村:招くっていうか?
茂木:こっちには楽しいことが色々あるよって感じ?
みきティ:感覚の捉え方ってことですか?
茂木:見ることに頼らないことで拓かれることがあるじゃない?僕ダイアログで忘れられないことが、みきティが高校まで見えてたってことだけど、生まれつき見えない方が2人で喋ってた時に「月はどういう風なものか」って、月を一度も見たことない2人が喋ってた時にすごく感動したんだよね。
みきティ:あーー。
茂木:空の月って銀色でなんとかって…それはだから見てないんだけど、色んなことを聞いて「空の月ってこういうもんだ」って2人が想像しているんだけど、その会話がすーごくよくって「はーー、本当の月を知ってるのはこの2人の方かも」って思ったの、そのとき。
志村:私もそう思いましたよー。
みきティ:うーん。
茂木:だから、そういう意味に置いてはさ「こっちおいでー」ってなるのかなって。人間の魅力もそうじゃない?だってねー、いやだよねー見た目だけで好きになるとかさー。それ入り口かもしれないけど、いやじゃん!
みきティ:そうですね。ほんとに見た目って所を取っ払ったその人自身っていう、色んな…声の温度だとか色んな。
茂木:声の温度かー。
みきティ:どういう所に自分は惹かれるんだろうっていう自分を知ることにもなりますよねー。
茂木:みきティはどういう時に好きになるの?
みきティ:へーー…やっぱりこの人の考えとか声とかが自分の心にしっかりマッチしてるなって、こうなんだろ、引き合ってるなって言うんですかね。
茂木:あ、引き合ってるって分かるんだ?
みきティ:仲良くなってるなって自分自身が心の中に感じる時に、きっとそれが好きって気持ちになって相手に向かっていくんだろうなって。
茂木:好きになる相手は目が見える方も見えない方も、同じように好きになるの?
みきティ:見える人も見えない人も、両方好きになったことはあります。
茂木:デートの仕方とか違うでしょ?
みきティ:そうですね…やっぱり見るか見ないかっていうことに関して、見えてる人は見えてるってビジョン的なものも入って来たりはするんですけれど、でも自分の感じ方、お互いがいいなって思ってることとか、そういう感じ方の所はきっと変わらないんだろうなって思うんですよ。
志村:目が見える人とデートしてる時は、やっぱりお化粧の仕方とかちょっと気になっちゃう?
みきティ:(笑)どう見られるかなってすごく気になることもあるんですけど、でも基本は見えてる人の場合と見えない人の場合で、そんなに大きく変わらないかなって思ったりはするんですよね(笑)
茂木:気にしないの?(笑)偉いなーー!達人だ!すごい!(拍手)
志村:そうねー。だってね、茂木さん前暗闇でコンサートしたことあったんですよ。その時に見える人と見えない人とどっちも混じって演奏してもらったんです。で、見えない真っ暗闇のコンサートだったから当然みんな見えないんだけど、目が見える音楽家の人たちは、私服を着て来たんですよ。で、目が見えない人たちは、ちゃんとスーツを着て来たんですよ。それは幕が降りても上がっても関係ないんですよ、真っ暗なんだから。でもその時にね「あ、すごいなー」って私思った!いい話でしょー?
茂木:いい話だわー。ねー!目が見える人は逆に暗闇の中で油断してたんだろうな。見えないんだからとか。
志村:そう、どうせ見えないから、みたいな。でもそうじゃなかったんですよね。
茂木:目が見えない方は、元々スーツ着てても見えないんだけど、着てるという姿勢とか、身体感覚?それが違うっていうことなんだろうね。
志村:そうなんですよ。きっと。だから今みきティが言ったこと、そういうことなんじゃないかなってふと思い出しました。
茂木:あー。僕子供のとき、近所にお2人とも目の見えないご夫婦が住んでらいて、鍼灸師かなにかで整形を立てられてたんですけど、娘が2人いらしたんですよ、2人とも目が見えるわけ。当時は子供で分かんなくて当たり前だと思ってたけど、今思い返すとそのご夫婦も色々ご苦労があっただろうし、娘さん2人も大変だったと思うんだよね。子供は生まれた時は分かんないけど、だんだん自分の親は他の親と違って目が見えないんだって気付いていくじゃない?でもさ、2人ともすーごく優しい子になっていったよ。
志村:分かる気がします。でもね、そのお話で言うと、目の見えないダイアログのスタッフだった2人がいて、結婚して子供もいるんですよ。でね、赤ちゃん生まれて退院した日にお祝いに行ったんですね。もうすごい感動したことがって。初めて赤ちゃん育てるわけだけど、当然見えないからミルクをあげるにしても口がどこにあるか分かんないの。だから哺乳瓶の乳首の部分の持って行き方がぎこちないんですよね。そうすると赤ちゃんの唇を探して、それを触ってからそおーっとミルクを入れたりとかするの。時間かかるんですよね。でも黙って見守ってたの。もう1こはオムツ替え。その時にうんちがついてた。その時に私どうやって変えるのかな?って思って、手を出そうかどうか悩んだんですよ。でも2人はこれからずっと育てる。そしたら指で撫でるのね。お尻を触るのね。私すごい感動して、でも私は自分の子供4人いるのにこうやってオムツ替えしたかなって思ったんですよ。目だけで見てさっと拭いておしまいなの。でもそうじゃなかった、子供4人もいて育てても知らないことがあった。そうやって丁寧に、時間じゃないんだなって。手際いいんじゃないんだなって。自分の指先で感じているその……感覚って言うのかな…あの映像は今でも美しくって温かいものが残っていて、そういう子育てをその茂木さんの近くの方もしてたんじゃないかなと思うと。
茂木:そうだね、外からしか分かんないんだけど、でも人間ってすごいなって思った。苦労はあるんだろうけど、すごいよね。乗り越えていくっていう。
志村:だから、優しくないわけがないって思うんですよ。そんなに丁寧に自分のことを扱ってもらって、育ててもらって、それはそうだろうって。今のその私の仲間の人もとっても素敵な子供に育ってますよ。
茂木:やっぱりだから、いい人になるためにも、ダイアログ時々来た方がいいなって感じする(笑)
志村:ありがとうございます。
茂木:自分の中の1番いいものが引き出されて行く感じする。
志村:ほんとですね。そういう時間をダイアログに来てもらっても嬉しいし、普通の暮らしの中にも時々あったらいいなーって。ちょっと丁寧にみたいな、急ぎ急ぎじゃなくていいから。いや、これからもがんばろうっ。
みきティ(アテンド):はい。もうほんとに素敵なお話尽きない所なんですけれど、そろそろここのお店も閉店のお時間が来ました。
茂木:えー閉店!あーそうか残念だな。また来よう。
みきティ:ゆっくりと進んで帰っていただけたらなーって思います。
茂木:みきティありがとう。美味しかった。
みきティ:あーどうもありがとうございました。
茂木:季世恵さんありがとうございました、すごい楽しかったー。
志村:ありがとうございました。握手していいですか?
茂木:手が見えるかな?あーおーおーおー。
志村:ありがとうございます。みきティも。
みきティ:失礼します。
茂木:あーいた、ありがとう、ありがとう。