20230512 ONAIR
5月の主演
小野花梨、長澤樹
ショートストーリー
『余命』
「人生だるいわあ?」と屋上でたばこをふかす2人は…?

ドイツ人と日本人は“職人気質的に似ている”とよく言われますが、
この1年、ドイツのチームと映画をつくっていた高崎さんは、何度もベルリンに通って、ドイツ人と接しているうちに、
カメラや車、ペンといったプロダクトの完成度の高さについては、ドイツも日本もとても素晴らしいと思う反面…
高崎「似てるかっていわれるとちょっとちがう感じがします。
日本の職人が植物だとしたら、ドイツの職人は肉、いや、鉄みたいな。
何言ってるかわかんないと思いますが、同じ職人なんですが、
原動力も体力もちょっとちがうというか。だからとても学びが多くて。」
映画に関することでいうと、編集やグレーディング(色の調整)は同じ機械つかってるのに随分違って感じるそうで、それぞれの人とんでもなくセンスがいい。
高崎「1番驚いたのが、音のおじさんでした。」
音のおじさんとはサウンドデザインをする人。
高崎さんの目から見ておじさんは、おそらく60中頃くらい。
高崎「音にしか興味がないんです。まずそれが最高にいい。」
作業するスタジオは、ベルリンの片隅にある10年前につぶれた高校の4階の教室。
リノベーションをしている様子は全くなく、自分で壁に防音のウレタンのようなものを適当に貼って、
家で使うようなプロジェクターから壁に映像をうつしていたそうです。
サウンドデザインするための機材は先生用の小さなデスクの上。
高崎「ただスピーカーだけはめちゃいいやつが囲むように置いてあって。」
その配置は、あきらかに何かの試行錯誤の痕跡を感じるもの。
見た目は雑然とした倉庫みたいな空間なのに、おじさんなりに独自の規律があって、絶対に触れないオーラを感じたという高崎さん。
因みに高崎さんが作業をしていた椅子もその辺にあった硬い椅子をガラガラと持ってきて「座れ」と言ってきたそうです。
そこでは1日中、音やセリフについて、ああでもないこうでもないと会話する。
監督は78歳、ドイツのヴィム・ヴェンダース。
大巨匠が一目置くおじさんと三人の会話はとても刺激的だったそうです。
一度日本に戻った高崎さんのもとへ、そのおじさんがまとめたものが送られてきます。
“音を聴くのにいい環境でチェックしてね”とメモを添えて。
高崎「それを聴いて度肝を抜かれました。」
映像作家 の佐藤雅彦さんも“映像は音が規定する”とよく話していましたが、まさにそれだと高崎さんは言います。
高崎「絵がみえるようになるんですよね。」
小さな音が聞こえると、映像のなかのその音のついたものに意識がすこし寄る。
その動きをつくりながら観客を映画の時間につれていく。
そんなことを丁寧な仕事をした音のおじさん。
1人、日本でそれをチェックしながら、その仕事の見事さになんか目頭が熱くなったという高崎さん。
高崎「でも本人音にしか興味がないから、自分のことを巨匠ともなんとも思ってなくて、
そのことを手紙でつたえると、君たち日本人もふくめて、スタッフが優秀なんだよとしか書いてこなくて。
あげくにタクマは耳がいいなとだけ。僕はそれでもううれしいんですけど。
他人の評価とかどうでもよくなる瞬間が彼の仕事にはあって、ああそうだ。
プロの仕事って他人の評価がどうでも良くなる瞬間を連れてくるものなんだなと。
そう気がつきました。彼は僕の理想のひとのひとりです。」