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Letter #19 Bluey(Incognito)
僕が手紙を送ったのは、IncognitoのBluey。
【Bluey Profile】
Incognitoのリーダーで、ギタリスト。
Incognitoは、1979年、ジャン・ポール・'ブルーイ'・モーニックによって、
イギリス・ロンドンで結成されたジャズ・ファンク・バンド。
多くの実力派ボーカリストを迎えた彼らの楽曲は音楽ファンを魅了し、
アシッドジャズ・ムーヴメントを牽引する存在として、世界中で愛され続けています。
社長:
親愛なるブルーイ。
お久しぶりです。
恐らく最後にお話をしたのは、ヒースロー空港だったと思います。
遠くの方から「SOIL&”PIMP”SESSIONS is in the house!」という大きな声が聞こえたと思ったら、
その声の主はあなたでしたね。
声をかけてもらったことはもちろん、僕たちの事を認識してくれていたこと自体に感動しました。
もちろん、その後の来日公演は毎回、毎年、欠かさず見に行ってますよ。
ブルーイに聞きたいことは沢山あって、どれから話そうか迷うけれども、やはりすこし昔の話を聞いてみたい。
Incognitoをスタートさせるよりも前の話を。
Acid Jazzのムーブメントは、
70年代終盤から80年代初頭にかけてのBrit Funkと呼ばれるシーンに源流があると理解している。
Level42やAverage White Band、Atomospher、Gonzales、
そしてブルーイがいたLight of the WorldやThe Warriors。
未だに色褪せない名曲を残しているバンドが沢山いたんだよね。
そんなBrit Funkのシーンの真っ只中にいたブルーイにとって、
何か象徴的な出来事や思い出を聞かせてくれないかな。
Best Regards, 社長
Bluey:
親愛なる社長
連絡をくれてありがとう。
君とSOIL & “PIMP” SESSIONSのチームの皆が健康で人生を楽しんでいることと思います。
私はロンドンとその近郊で、
イギリス人と移民コミュニティーの人々に囲まれて音楽の人生を追い求めながら育ったんだ。
ロンドンは人種のるつぼで、私たちはロック、ブルース、フォーク、カリブ海や
アフリカの影響、DJやジャズ愛好家が輸入したソウル、ファンク、ジャズのレコードに触れていた。
学校のバンドや地元のジャムバンドにも入っていたけど、
北ロンドンのトッテナムにあるレコード・ショップで働き始めたことで、夢が形になったんだ!
その店には、ミュージシャンたちが、Roy Ayers、Lonnie Liston Smith、
Donald Byrd & the Black Byrdsなどの最新作を探しに店にやってきた。
Earth Wind & Fireはとても人気があったし、ジャズ・ファンク・ソウル・シーンの有名どころも全て揃っていたよ。
そして、私たちは、その店の上にある部屋でジャムることになって…
こうしてLight of the Worldは結成されたんだ。
そのレコード・ショップのオーナーが有名なクラブDJのChris Hillと知り合いで、
彼を呼んで私たちの演奏を聞いてもらうことになったんだ。
ChrisはA&Rでもあったから、すぐにEnsign Recordsと契約し、私のプロのミュージシャンとしての人生が始まった。
バンドと一緒にデビュー・アルバムを一緒にレコーディングをしたんだけど、
そのアルバムのプロモーション・ツアー中に親友を交通事故で亡くしてしまい、
私はバンドを辞めることにしたんだ。
だけど、すぐに自分の音楽の願望を永遠に凍らせておくわけにはいかないと気づき、
Freeezというバンドを結成、その後、IncognitoとThe Worriorsを結成したんだ。
ブリット・ファンク・シーンは、様々な民族の子供たちが一つの旗の下に集まり、
現状を打破し、社会的、政治的、文化的に必要な変化をもたらす大きな役割を果たした、
という点でユニークだった。
まさに”One Nation Under a Groove(ひとつのグルーヴの下、ひとつの国家)”だね。
ひとつのバンドにいることに満足していた多くの友人とは違い、私は他のミュージシャンと実験したり、
他の世界や、クリエイティブなコラボレーションを探求したかったんだ。
Citrus SunとSTR4TAの存在と、その他ソロ・アーティストたちとの活動こそ、
その私の手法を立証するものなんだ。
質問の答えになったかな?近いうちに話そう。
Best Regards, Bluey
Bluey:
親愛なる社長へ
私の音楽の技術に関して興味をもってくれてありがとう。
私は音楽のトレーニングを受けたことはなく、完全に耳で聞いて演奏しているんだ。
影響を受けたレコードは、どれもソウルフルで、音的に魅惑的なものだった。
例えば、Mizell Brothersの作品、Charles Stepneyのアレンジ、
Marvin Gayeのハーモニー、Stevie Wonderのグルーヴ、
Rudy Van Gelderのレコーディング、Quincy Jonesのディレクション。
これらは、私の音楽と人生におけるレッスンだった。
「人生」と言ったのは、私はただ音楽を演奏するだけではないからね。
さっき挙げた伝説的なミュージシャンと同じように、私は音楽で生きているんだ。
音楽は僕の聖域であり、人生なんだ。
私は、自分が持てる力をすべて発揮するように心がけている。
自分よりもスキルや教養がある人はいるかもしれないけど、
僕は常々、自分のビジョンは自分だけのものであり、
自分の能力と限界こそが創造性の源であり、個性の刻印であると理解してきた。
私は一生懸命働き、仕事に適した人材を選びます。
そして一番大切なのは、作曲、作詞、トラックのカッティング、ハーモナイズ、
複雑なレコーディング、ミキシング、マスタリングまで、音楽の旅のすべての段階を楽しい体験にすること。
これは他の人と共有するに値する冒険であるべきだと思っているんだ。
これで僕のクラフトマンシップをより深く解ってもらえたら嬉しい。
社長は音楽・技術的なトレーニングを受けたのかい?
それとも私と同じく独学なのかな?
Best Regards, Bluey
社長:
親愛なるブルーイ、返事をありがとう。
いやぁ驚いた。
あなたが挙げてくれたレジェンド達の事が、まさに僕も同じだったから。
特に、チャールズ・ステップニーのアレンジ、スティービー・ワンダーのグルーヴは、永遠の教科書だよね。
ノーマン・ホィットフィールドのプロダクションからも大きな学びがある。
少しだけ違うのは、スタイルのお手本はUnited FutureOrganization、作品のお手本はMasters At Work、
そしてバンドのディレクションのお手本は……ブルーイ、あなたなんだ。
そんな先輩達の音楽を聞きながら、僕も完全に独学で音楽を学んだ。
バンドを組んでからはメンバーからも沢山のことを学んだ。
今でも分からないことだらけだから、学びは続いているし、新しい発見や気付きもある。
そんな音楽の旅はまだまだ続くけれども、
あなたが言う通り、全ての瞬間が楽しい体験であるように、意識をして動いて行こうと思う。
Best Regards, 社長
【PLAY LIST】
Talkin' Loud / Incognito
Southern Freeez / Freeez
Superstition / Stevie Wonder
シティオブキメラ feat. SKY-HI / SOIL&”PIMP”SESSIONS
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