2010/9/17 ソニーNEXシリーズの開発秘話

今週は、いま大人気となっている ミラーレス一眼カメラ。 ソニーNEXシリーズの設計に携わった人物が明かす開発秘話。 取材に答えていただいたのは、ソニー株式会社の野田康さん。 NEXシリーズの設計チームを率いたその人です。 ソニーがこのカメラの開発に着手したのは、2008年の年末のこと。

世の中の一眼レフが、かなり大きい、重い、それから難しそう、という問題がありまして、それをいかに簡単に使ってもらえるか、ということを考えまして…… 実はそういう話は昔からあって、今の一眼レフのカメラをそういう三大障壁を克服するためにどうするか考えていました。実は裏のほうで、小さなモックができていて、デザイナーのほうではそういうものを作っていて、「こういうものがあるんですけど」と持って来たんですよ。それを当時の事業部長という石塚さんという方がいたんですけど、それをトップに見せて、「これ、やることになったから。決めちゃったよ」と。「ええ、ちょっと待ってくれ」と……そういうところからこの商品は始まってます。
開発にゴーサインが出たものの、そのとき手元にあったのは、中身の検討などまったくなされていないモックアップ。外側だけがデザインされたものでした。 チームが至急、編成されることになります。集められたのは、αというデジタル一眼レフカメラの設計者と、サイバーショットというコンパクトデジタルカメラのスタッフでした。
当時、αの設計部隊は大阪にいまして、我々は品川にいたんですけど…… サイバーショットをやっていた部隊と、大阪のαの部隊が一緒にやろう、ということで、品川と大阪を行ったり来たりしながら、商品の骨格を作り上げていったわけですね。 ですから、メンバーも気の知れたメンバーではなく、初対面のメンバーでやる、ということで……それでいながら、事業部長がトップにそういう話をしちゃったということで、ひっちゃかめっちゃか状態でした、最初は(笑)
初対面のメンバー。しかも、当時は東京と大阪、離れたところにいたチーム。 さらに、開発期間は限られていました。 この状況を打開するために、ひとつの策が講じられます。 ソニーの小型一眼デジタルカメラ、NEXシリーズ開発チームは、東京と大阪に分散。しかも、初めて組むメンバーでした。 そのチームをまとめるために作られたもの。それは……
あんまり我々はやったことがないんですけど、商品を作る前に、商品イメージを共有するために、カタログを作ってしまったんですよ。今のカタログとは当然違いますけど、イメージが分かるようなカタログを作って、それを設計者とか、マーケティング、企画の人ですとか、そういう人と共有することで、「ああ、こういう商品を作りたいんだな」というのをベクトルをあわせて商品化していったんですが、それが非常に効果がありまして。そこでみんなが会社としてやりたい商品というのがよく見えるようになって。
どういうユーザーにどんな写真を撮影してもらいたいのか? 最終的なカメラの形は、どんなものなのか? 小型化するためにどんな技術が必要なのか? 開発前に作られたカタログには、旅の目的地、そしてそこへの道のりが記されていたのです。

小型化、ですよね。これをいかに作り上げるか?これが一番難しかったですね。 特にNEX5のほうは、デザインの強い意志がありまして、ひとつの板、液晶パネルですね。この板にレンズである円筒が突きささった形にしたいと。それでパネルとレンズが一体化させるというコンセプトでできてまして……これをどう実現するかで、そういう意味では割り切ったところもありまして、これは実はフラッシュが内蔵されていなかったりですとか……当然、フラッシュは内蔵されていると思われるんですが、内蔵したデザインも考えたんですが、デザインコンセプトにあったものができなくてですね、最後の最後まで検討した結果、……「とっちゃおうか」と。
設計担当マネージャー、野田康さんいわく、「あり得ないほど、短い開発期間でした」というソニーの小型一眼デジタルカメラ、NEX5とNEX3。 東京と大阪に分散したチームをまとめるために必要だったのは、やはり、コミュニケーション。最後に こんなエピソードを。
密にコミュニケーションをとるために、実際行ったり来たりもしましたけど、 ほぼ毎日というか、日に2、3回ですかね、VCって呼んでますけど、電話会議なりテレビ会議ですか、それを使って毎日やってましたね。 そういう意味では、テレビ会議システムというのを使ってますけど、かなりみんなそれについての操作は詳しくなってですね(笑)……この会社のなかでテレビ会議システムについて、うちのメンバーは使いこなせる人が多いと思いますけど。