2009/11/20 電動アシスト自転車の誕生秘話

今週は、電動アシスト自転車の誕生秘話。

ペダルをこぐ。 それは、自転車に乗るとき、絶対に必要な動作です。
でも、上り坂、向かい風、重い荷物。
街には、自転車にとって 厳しい環境が存在します。
そんなとき、ペダルをこぐ力を 何らかの力でアシストできれば。。。

ヤマハ発動機株式会社の技術者が 新しい乗り物の開発に着手したのは、1980年代前半のことでした。
明田久稔さんは当時をこう振り返ります。

小さいコミューター。 スクーターとかバイクのことなんですけど、その小さいコミューターの中で、「もっと新しいものをヤマハで作りたいという」そういう企画みたいなものがありましてね、スクーターのセクションで自転車のようなエンジンのついた乗り物を研究していたことがあるんです。 それで、エンジンつけたのがどうもうまくいかない、ということで、1年半くらいでそのプロジェクトがポシャったんですね。 で、一度、開発部隊から研究のほうに企画が移って、研究のほうで本当2〜3名と聞いてますけども、その数名で何とかならないかと悶々とやっていたんですね。

最初にあったアイディアは「自転車にエンジンをつけること」でした。
しかし、それではうまくいきません。
着想から数年後、ひとりのメンバーが思いつきます。
電動モーターをつけてみてはどうだろう?

私どもは、オートバイとか自動車のエンジンを作ってきた会社ですので、モーターというのは初めての取り組みなんですけど、それでやってみたところ、普通に走るじゃないかと。


ただし、自転車にモーターをつけただけでは、道路交通法上、バイクと同じ扱いになってしまいます。
そうではなく、あくまで、自転車として認めてもらいたい。

必要とされたのは、ペダルをこぐと、それに比例して電動モーターがアシストすること。
ペダルをこがないときにはモーターのパワーが関与しないこと。

なんとか、そのシステムはできました。
しかし、明田さんが本格的にチームに加入した際に見たものは。。。

その格好は自転車の格好なんだけど、重たいし、電池があるんで充電しなければいけないんですけど、充電するのはめちゃくちゃ面倒くさいし、説明員がいて、こうやって走るんですよ、充電するんですよと説明して終わったらまた調整して、という。。。そういうレベルだったので「これを生産するの?」という感じでしたね。 まず誰に売るのっていうのも決まってないし「どうやって作るの?」っていうのも見えてない。。。

ヤマハが世界で初めて開発、発売した電動アシスト自転車「PAS」。
最初にできた試作車は、あまりにも重く、しかも、扱いづらいものでした。
開発チームは、目標を設定しました。

当時の試作車でもモノによっては、30キロを越えているものもありましたし、「それをまず軽くしなきゃいけない」と考えたんですが、メンバーが集まって、20人くらい「どんなんだったら作りたい?」「買いたい?」とやって、決めたのが、 「重さが26キロくらい」「いくらなら買う?5万かな7万かな?」

何にも比較するものがないわけですから、買うとしたらどうするということで話し合って、それで決めたんですよね、開発目標を。

1992年5月、一台の試作車ができました。
開発チームの明田さんには、自信がありました。

車内の女性を集めてきて、乗ってみてくださいってやったら、ブーブーで。 「こんなもの乗れない」と言われましてね。

前側のほうにバッテリーを置いていたんですね。
これは女性しか分からないと思うんだけど、
ひざのところに大きなバッテリーがあると、ひざがどうしても開いてしまうと。
そんな格好で自転車には乗れないと随分言われましてね(笑)

バッテリーはサドルの下に置くことにしました。
さらに、モーターについての構造など、さまざまな改良が加えられます。

世の中にないものを作りたい。
世の中の役に立つものを作りたい。

その情熱がすべてでした。
92年の終わり、これなら世の中に出せるかもしれない、というモノができました。

1993年11月、静岡、神奈川、兵庫で限定販売をスタート。
翌94年には、全国発売。
誰も知らない新しい乗り物、電動アシスト自転車、ヤマハのPASが登場したのです。



あとになって分かったことなんですけど、注文してくださった方には年輩の方が多かった。 今まで自転車乗っていたけれど、坂道が上れなくなったと。

例えば、坂道の上の病院に行かなければいけないんだけど、行けなくなった。
だから、ずっと回り道で電車で行ってましたと。
そういうお手紙をいただきまして。

その方が病院に行くのにPASを買いました。 今までは1時間以上かかっていたのが数10分で行けるようになりましたと。
大変重宝してますってお手紙いただきまして。

僕らが作ったものを使ってもらってるんだなとそのとき感じましたね。
ちっとは良かったかなと。

現在は、バッテリーも進化して、リチウムイオン電池を使用。
これによって、性能もアップ! さらに軽量化にも成功したそうです。
また、デザイン的には、スポーティなタイプも登場してより幅広い層にアピールしている、ということです。

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