2008/9/12 TOKYO Xの誕生秘話

今週は・・・美味しさと安心、安全生産にこだわった豚肉、TOKYO Xの誕生秘話。

1988年の秋、ひとりの東京都職員が中国・北京へと旅立ちました。東京都と北京市は、友好都市。畜産技術の交流を目的に、研究者が送りこまれたのです。そして、この技術交流こそが、東京ブランドの豚肉として広く知られる「TOKYO X」が誕生するきっかけでした。

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北京市と東京は友好都市で技術者の交流をしていたんですね。そのときの、最初の歓迎レセプションのときに、豚肉を出されたんですね。それを食べたときに、今までに食べたことのない味だということが分かりました。早速、その翌日、豚肉を見たいということで行ったんですね。そうすると、色がきれいなピンク色。そして脂肪の色がまっしろで、、、、ということが確認できました。

当時、東京都の畜産試験場の研究員だった兵頭勲さんはこう思いました。「この豚があれば、東京で新しい豚を作ることができるかもしれない。この豚が欲しい」様々な交渉の末、合計7頭の北京黒豚が 東京にやって来ました。いよいよ、東京で、新しい豚の開発が始まったのです。

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中国の豚は、発育が悪い、脂が多いと言われていましたので本当にそうなのか、1年かけて調べました。そうしましたら、発育は意外と早いんです。日本の豚に少し劣るくらいでした。それから、子供の数が多いんですね。初産で12頭くらい。それから3つ目の特徴として、筋肉内に脂肪が入る。サシが入るわけです。これは驚きでした。 この豚のいいところを取り出して、いい豚を作ろうということで、Xのプロジェクトが始まるんです。

兵頭さんが「これは」と目をつけた「北京黒豚」ですが、ひとつ欠点がありました。それは、肉の量が少ないこと。質はいいけれど、日本の豚の3分の2程度しか 赤肉がとれない。技術者たちはこう考えました。「脂はもう少し薄くして、筋肉内にサシが入る豚にしたい。そして、発育スピードももっと改善したい。それには品種の交雑が必要だ」しかし、、、大きな壁が立ちはだかります。

品種を交雑して新しい豚を作るというのは、日本では前例がないんです。で、最初に始めるときに、農水省の担当者から「それはだめだ」と。誰もやっていない、どんなものができるか分からないものを許可するわけにはいかない、と言われたんですね。

この問題を乗り越えるための力となったのはまさにTOKYO Xにかける熱き想いだったのですが、、、技術者たちが胸に抱いていた 本当の想い、、、複数の品種を交雑して新しい豚を作る。当初、国から許可がおりなかった この試みですが、、、東京都の畜産試験場の研究者、兵頭勲さんには絶対に、新しい豚を作らなければいけない理由がありました。

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80年代の後半になって、農家の養豚業が経営が難しくなったんですね。規模を拡大できれば、それが解消できたんでしょうが、東京の場合は規模が拡大できないんですね。家が近くにあって、臭いだとか、害虫の問題であるとか。それで、廃業が相次いだんですね。農家を見てまわったら、クモの巣が張ってると。これではいけない。東京の農家を何とかしなくてはいけない。これが最初の想いでしたね。

「東京でも育てられる、、、そして収益率の高い、付加価値の高い豚を何としても作る」兵頭さんは そんな決意を胸に、新しい豚づくりに挑戦していたのです。この熱い想いにおされ、、、改良の途中のデータを完全に公開することなど いくつかの条件付きで品種間の交雑が 認められました。北京黒豚、鹿児島バークシャー、そしてアメリカのデュロック。この3つの豚をかけあわせた 改良がスタートします。最大のポイントは、筋肉内に脂肪を入れる、つまりサシの入った肉を作ること。 世界で誰ひとり成功したことがない前代未聞のチャレンジでした。

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あ〜、これはですね、なんというか、「できない。筋肉内脂肪は、サシは改良できない」と言われていたのが、改良できたという喜びと。これで農家を立て直すことができる、と。そういう喜びが非常に大きかったですね。実質そのあと、この豚を養豚農家を飼い始めて、当時、数件ずつ廃業していたのが、一軒もやめずに、むしろ やめていた方から、そんなにいい豚ならやってみようという声もありました。結果的に、東京の農家をある面で救うことができたというのは、とても嬉しく思います。

現在は、東京だけでなく、埼玉、茨城、静岡、山梨、長野、、、他の県でも飼育され、その数は 7000頭にまで増えた「TOKYO X」。最後に兵頭さんが強調されたのは、その安全性です。収穫後に農薬を使ったエサ、さらに遺伝子組み換えのエサは使わない。そんな条件をクリアした豚だけが TOKYO X。最高の味と、安心安全、、、それを極めたのが 東京ブランドの豚なのです。