「選ぶ側が男性ばかり」の現状を変えないと、男女平等は成立しない【東浩紀×津田大介】

2019年04月16日

社会的・構造的差別によって何らかの不利益を被ってきた人々に対して積極的な配慮を行う「アファーマティブ・アクション」をテーマに、作家・思想家の東 浩紀さんと津田大介が語りました。 アファーマティブ・アクションは、マイノリティの人たちがきちんと権利を獲得できるようにする、あるいは、構造的な差別を改善するアクション全般を指します。

【4月8日(月)のオンエア:『JAM THE WORLD』の「UP CLOSE」(ナビゲーター:グローバー/月曜担当ニュースアドバイザー:津田大介)】


■国際芸術祭のアーティスト男女比を1対1にした理由

津田が芸術監督を務める、8月1日(木)から愛知県で開催される国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」において、参加アーティストの男女比を半々にする取り組みが大きな反響を呼んでいます。芸術祭で東さんは企画アドバイザーを担当しています。

津田:芸術祭は「情の時代」というテーマを持ち、それに合ったアーティストを選ぼうという方針で選定していました。そのテーマで進めていくと男女比が6対4になったんです。その状況を日本人キュレーターに訊くと「他の国際芸術祭と比べて女性比がめちゃくちゃ多い」と言われました。

これに疑問を持った津田は、過去の国際芸術祭を調べたそうで……。

津田:さまざまなデータを調べると、日本で行われているほとんどの国際芸術祭は、男性アーティストが女性アーティストに比べて3倍、ときには5倍くらい差がありました。
:津田さんは「あいちトリエンナーレ2019」の記者会見でデータを出しながら、アート界における男女比がいかに偏っているかを示し、「あいちトリエンナーレ2019」では男女比を1対1にするメッセージを打ち出しましたよね。その発表は必ずしも肯定的な反応だけではなく、批判された部分もありました。

発表から2〜3日間は98パーセントほどの人が賛同していましたが、1〜2週間ほど経つと反対や批判も出てきたと、津田は話します。

津田:当初は匿名で吐き捨てるような批判でしたけど、今は美術業界や芸術関係の人たちが実名で反応しはじめています。ただ、賛否両論というよりは80〜90パーセント近くは賛同してくれていると感じています。
:常識的に見ると反論するような話でもないけど、時間が経つに従って業界関係者から反論が出てきているところに問題の根深さを感じます。
津田:もともとアーティストはテーマに合うか合わないかで選定していました。この方針だけは揺るぎません。事後的に最後の調整としてジェンダー平等を決めただけで、テーマに合わないけど女性アーティストを増やすということはしてないんです。
:「あいちトリエンナーレ2019」の企画アドバイザーとして言いますが、ジェンダーバランスが1対1という内容が出てきたのは、かなり最近ですよね。だから、それまでは全くそんなことは考えられていなかった。最初からジェンダー平等を掲げていたならばテーマ設定から何から変わっていたはずですよね。今はその誤解がちょっとあるのかなと思います。


■日本で女性が社会進出できる場所はまだまだ限られている

津田が示したこれまでの美術業界の男女比データを見て、東さんは深刻な問題だと感じたと言います。

:芸術大学の新入生の男女比は女性が多いにもかかわらず、教員は男性が8割以上。これは大変なことです。実際にものを作ったりサービスの現場では女性が活躍しているのに、それを管理したり俯瞰したりしているところは男性ばかり。これは日本における女性の政治進出が遅れている問題そのものだと思います。
津田:「あいちトリエンナーレ2019」でジェンダー平等を掲げるきっかけになったのは、昨年、東京医科大学で発覚した女子受験生や長期浪人生を実質減点する問題があります。この問題は擁護しようがないことだと思ったけど、現場の人からは「それじゃまわらない」という意見がすごくあってショックでした。今回のデータで示した美術業界の問題は医療業界にも通じるものがあると感じましたね。
:男女平等が進んでいない、女性の社会進出が進んでいないと叫ばれると、必ず反論として「そんなことはない。現場では女性が働いているし、クリエイターやアイドルなど、こんなに活躍している国って他にないじゃないか」という話が出ます。じゃあ、政治で男女比がゆがんでいるギャップはどう考えるんだと言うと、みんな口をつぐんでしまう。現実的に、女性の社会進出はフィルタリングされているわけで、日本において女性の社会進出できる場所が限られていることは明らかだと思います。その限られている場所を指定しているのが男性であるのも明らかなので、この構造を変えない限り、本当の意味での男女平等は実現しないと思います。

東さんは「アーティストを選考していても女性の比率が高かったことに象徴されているとおり、実は現代美術の世界はそもそも女性が少ないわけではなかった。問題は選ぶ側だ」と続けます。

:選んでいる側が男性ばかりだということをどう変えていくか。それが今回のいちばんの問題提起ですよね。それを津田さんがやったことは大きなことだと思います。
津田:僕が芸術監督として決定権を持っている立場で、無理なくジェンダー平等を達成できるのであれば、自分の持ち場でアファーマティブ・アクションをやっていくことが重要だと思いました。芸術祭は注目されているにもかかわらず、不自然にもジェンダー平等が達成されていない。それが美術業界では当たり前のようになっているなかジェンダー平等を達成できるのであれば、それが達成したときにどのような議論が美術業界で起きるのか、それが日本社会にどう浸透していくのかの問題提起に一石を投じたいという思いが途中から出てきました。


■意識することで世の中が変わっていく

この一連の動きは、ジャーナリストとしても非常に学びがあったと津田は振り返ります。

津田:今回、提案したジェンダー平等を受けて「無理に女性アーティストを増やすことによって芸術祭の質が落ちるのではないか」という批判がいちばん多かったです。しかし、実際にやってみて質は落ちないことがわかりました。つまり、豊富なプレーヤーがいるところでは質が落ちないわけです。そもそも、美術大学の生徒は女性が多い。また、今回の選定として35歳以下のアーティストを2割入れようと考えていました。通常の「トリエンナーレ」は中堅以上のアーティストを選んで手堅くまとめるような場合が多かったけど、公金を使った芸術祭は若手が世に出るための手助けをするべきだと思っています。そのため、若手を増やした結果、女性アーティストも増えました。しかも、国際芸術祭は海外アーティストを含めるため、量が多いので質が落ちないんですよ。

津田は「『あいちトリエンナーレ2019』で男女平等にしたことによって、全ての芸術祭もそうしなければいけないとは思っていない」としながらも「公金を使った国際芸術祭は男女平等を意識してほしい。意識することで世の中が変わっていくのだから」と考えを述べました。

【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時−21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/
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