麻生氏の失言は「毒舌キャラだから」で許されるのか…お笑いブームが社会に与えた影響【武田砂鉄×津田大介】

2019年02月05日

J-WAVEで放送中の番組『JAM THE WORLD』(ナビゲーター:グローバー)のワンコーナー「UP CLOSE」。2月4日(月)のオンエアでは、月曜日のニュース・スーパーバイザーを務める津田大介が登場。この日は時代の空気や気配を的確に捉え、鋭い論評に定評のある、ライターの武田砂鉄さんを迎え、津田と「ポスト平成を生きるうえで必要な視点」をテーマに考えました。


■「平成の終わり」こじつける風潮

今、「平成が終わる」ことに、何でもこじつけるような風潮があります。武田さんは疑問を抱いているそうです。

武田:新聞記者の方などに「この出来事は平成の終わりだからですか?」と訊かれると「いや、違うと思いますよ」と言うけど、「いやいや武田さん、これは平成の終わりだからでしょ」と言われてしまう。でも、そこでうなずいたら、フリーライターの武田砂鉄が「平成の終わりだ」と言った、となっちゃうので。

武田さんが「平成の終わり」という言葉を避けるのは、どうしてなのでしょうか。

武田:先日、橋本聖子議員が国会で「平成を生きてきた私たち」という入り口から「新しい時代を迎えようとする今、時代の変化に応じた国の姿である憲法はどのようにあるべきか、ということについて議論することが必要です」と言っていました。今まで安倍首相が「東京オリンピックにあわせて」と言うことも「?」と感じたけれど、今度は「平成」というキーワードが機運を高めるものとして使っていきたと。
津田:メディアが「平成」を主語として大きく使いすぎた結果、議員もそこに乗っかってきたということですね。
武田:そうですね。メディアが「流行ってんじゃね?」というノリであっても、政治家など何かを決める人たちは、もっと緊張感を持って使えるかもしれないですから、慎重になっています。


■「ああいうキャラだから」という考え方…お笑いが一般社会に与えた影響

武田さんの視点で平成を振り返ってもらったところ、「SNSなどで、物事のスパンが短くなった」とコメント。

武田:僕は中高生のころ、ナンシー関さんや小田嶋隆さんなどが書く週刊誌のコラムで今の世の中の流れを把握し、モノの味方を取得した感覚がありました。ある種、斜に構えるというか。でも今は、物事に対する評定が1週間も持たずに、「今日起きたことは今日の夜に議論して終わって、明日には忘れる」というような状況ですよね。
津田:SNSの炎上がコラムニスト殺しみたいなところもありますよね。
武田:そうですね。週刊誌で「この人が何を言うだろうか」までを考えて、そこでこの人がこう話して、それを受けてどう考えるかというスパンの長さみたいなものが、あらゆる場所で収縮してしまっている。たとえば政治家の失言も、そのときは大きくバッシングを受けるけど、一晩、二晩寝ると、みんな次の話題に移ったりするわけですよね。

今、麻生太郎財務相が「子どもを産まなかったほうが問題なんだから」と発言したことがバッシングを浴びていますが、これも次第に忘れ去られてしまうのかもしれません。

津田:ああいう発言が許されるのは、「毒舌キャラだから」というところがあるんじゃないか。個人的に平成という時代は、お笑いブームの影響が大きかった気がしますね。お笑いがメディアを席巻し、芸人がニュース番組でコメントをするようになった。そんな中で、「あの人は、ああいうキャラだから」という扱い方が世の中に蔓延した。昔は「キャラだから」という話にはならなかったと思うんですよね。
武田:昨年、麻生さんが失言を重ねていたとき、読売新聞が「止まらない麻生節」という見出しで報じていました。“節”として、メディアが認めてしまった。「ああいうキャラだから」という話法が、政治にも、一般社会にも浸透してきているのかなと思いますね。


■怒りを表明する若者が少ない

37歳の武田さん。中年の目線も、若者の目線もわかる年代と言えます。津田に「若者についてどう思いますか」と問われると……。

武田:怒ることが恥ずかしくなり、怒りを表明する人が少ない気がしますね。
津田:強い批判に引いてしまうところがありますよね。
武田:ただ、一方で、『週刊SPA!』に掲載された「ヤレる女子大学生ランキング」の問題は、大学生が有志で立ち上がりました。東京医科大学で女子受験生たちを不利に扱っていた問題でも、学生が署名運動をはじめたりしていた。怒れる学生たちがいるんだと、勝手に励まされたところもありました。
津田:私も武田さんと同じ意見です。『週刊SPA!』の問題に立ち上がった女子大学生はアメリカンスクールに通って海外の経験もあり、国際基督教大学(ICU)に進学したとありました。
武田:彼女は議論することに慣れていたわけですね。
津田:裏を返せば、危機感を覚えるような学生とは違い、優しく多様性を認める学生を増やしているのが今の日本の教育だと思います。
武田:「怒ったところで何か変わるんですか?」という彼ら、彼女らのあり方と、政権を握る人たちが「俺はべつに関係ないから」と逃げてしまう今の日本の政治のあり方が合致しているから、そこが心配ですよね。


■内閣が倒れないのは「騒ぎ声が小さすぎる」から

平成を振り返ると、社会党の土井ブームや細川政権誕生、自社さ連立政権など、政治の世界も大きく動いた時代でした。

津田:平成は政治に対する興味・関心が高く、投票率も高かったんですけど、徐々に国民の「脱政治化」が進んでいるように感じます。
武田:先日、亡くなった橋本 治さんの著書『思いつきで世界は進む』で、「内閣が倒れないのは与党がだらしないからだ、と言う人がいるけど、それは違う。私は騒ぎ声が小さすぎるからだと思う」とシンプルに書いていました。「なんであの人は騒いでいるんだろう」「なんであの人は声のボリュームを張り上げて怒り続けているんだろう」ということに対する軽視や嘲笑する風潮が、政治家の所作としてもベースになってしまっている。それを見ていると「こうやって怒っていてもしょうがないな」というふうに思ってしまう人が増えてくると思うので、それは危ない気がします。
津田:この問題について、国民がどうやって解決すればいいのかすらわからず、「しかたないか」というムードになってきていますよね。
武田:最近の政治家の手癖としてあるのは、「どうやって忘れさせるか」ということですよね。「今は騒いでいるけど、あと2、3週間すればほとぼりが冷めるんじゃないか」という状況を、いつまでも冷めさせずに、グズグズ言っていきたいなと思っています。

武田さんの話を受けて、政治などの問題について怒りを持続させるような報道をしようと試みても、それが支持率や国民の意識の変化につながっていかない徒労感もメディア側にあるのではないかと津田は指摘します。

津田:こういう時代だからこそマスメディアの重要さも増していると思うんですけど、これからの報道のあり方をどう考えたらよいでしょうか。
武田:その処方箋は、なかなかないと思います。津田さんも私も日々徒労感が増していると思うので。「これをやったらこうなる」という特効薬みたいなものをメディアが求めると、わかりやすく明後日には結論が出るものだけを報じなくてはいけなくなるわけなので、徒労感を抱えながらも即座に結果を出すだけではなく、調査報道などを地道にやっていかないといけない気がします。

次回、2月5日(火)の『JAM THE WORLD』は『銃』『教団X』などの作品で知られ、近年、社会問題に対しても積極的に意見を発信している芥川賞作家の中村文則さんを迎え、ジャーナリストの青木理と、今の日本、今後の日本について徹底議論します。お聴き逃しなく!

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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時−21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/
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