なぜイギリス国民はEU離脱を選択したのか? 今後の展開は? 混迷を極めるブレグジット問題を解説

2019年01月24日

J-WAVEで放送中の番組『JAM THE WORLD』(ナビゲーター:グローバー)のワンコーナー「UP CLOSE」。1月22日(火)のオンエアでは、火曜日のニュース・スーパーバイザーを務める青木 理が登場。ゲストに、かつてロンドン特派員も務め、ヨーロッパやイギリス情勢に詳しい、毎日新聞編集局次長の小倉孝保さんを迎え、イギリスのEU離脱問題について訊きました。


■イギリス議会でEU離脱案が否決

イギリスのEU(欧州連合)からの離脱(ブレグジット)問題について、先日イギリス政府とEUで合意した離脱案は、イギリス議会において大差で否決されました。その後の内閣不信任案は否決されたものの、これを受け英メイ首相が離脱協定の代替案を提出しましたが、まだ事態打開の目処は全く立っていません。このままいくと「合意なき離脱」となり、世界経済にも大きな影響を与える可能性もあります。

イギリス議会においてEU離脱案が否決されたことについて、小倉さんは「見るからに、絶対に否決されそうなところにメイ首相は突き進んでいったので、彼女が何を考えているのかわからないし、彼女の政治的な感覚に僕は最近大きな疑問を持っています」と話します。

イギリスのEU離脱における課題として、イギリスの一部である北アイルランドと、EUに残るアイルランドの国境問題や民族問題などの問題がありました。そのため、すぐにイギリスはEUから離脱することが難しく、その解決策として、関税同盟などに関しては少し猶予期間を設けようと離脱合意案に入れることに。しかし、それに対して離脱の賛成派からも反対派からも反発が起こり、メイ首相の離脱案に反旗をひるがえしました。

小倉:「合意なき離脱でもいい」と言う人から「もう一度国民投票をやってEUに残ろうよ」と言う人たちまですべてが、この離脱合意案に反対しているため、先日、イギリス議会において大差で敗れたわけです。

この大敗を受けて、メイ首相は離脱合意案の代替案を出すとしながら、具体的な話はまだ出ていない状況で、ほぼ大きな変更はなくこのまま離脱に踏み切ると宣言しています。

小倉:歴史的大差で否決されたものを、「微調整レベルで修正したから賛成してください」という状況にはなりません。なぜ、メイ首相がこの後に及んで微調整くらいしかできないのか。今から合意案を大きく変更してしまうとEUとの交渉をまた一からする必要があり、そこまで時間がないので瀬戸際戦術ではありますが、世界経済を人質に取って「このままいくと大変なことになるから賛成してください」と言っているようなもので、彼女は政治家としてやってはいけないところまでやっているような気がします。

イギリス議会から離脱案が否決されたことを受け、メイ首相は「この案をみなさんが支持していないことは明確になった。しかし、どのような案ならみなさんが支持するのかもわからない」と言っています。

小倉:メイ首相は離脱案の代替案を出すと言ったにも関わらず、僕には「私たちが言っても議会に通る見込みはないから、議会で合意できる話を持って来てください」と言っているように聞こえます。「議会で話し合って、落としどころを見つけて、代替案を持って来てください。それである程度合理性があるものであれば私たちはEUと話をします」というかたちにしているわけです。
青木:その代替案はどのようなものが考えられるのでしょうか。
小倉:ほとんどないと思います。イギリス人は現実的で、何かを進めながら問題が出てきた場合に、それを修正する能力にたけていると思います。でも、今回の状況をみていると、保守党も労働党も党利党略で、「国民のため」という行動を忘れている気がします。本来ならもっとお互いが歩み寄って落としどころを見つける必要があるにも関わらず、議会にそういう機能が低下しているように感じています。


■もう一度EU離脱を問う国民投票は行われるのか?

もともとEU離脱は、(メイ首相の前任の)キャメロン前首相率いる保守党がEU反対派の票を取り込むために、EU離脱を公約にしたことがきっかけです。そのときの選挙は保守党が勝利し、離脱の国民投票をやらざるを得なくなりました。

小倉:国民投票は国民から直接意見を聞く制度であるため、本来であれば、そんなにまずいものではないはずなんです。でも難しいのは、議会との関係です。議会も国民の声なので、国民の声を聞く議会がきちっと機能していれば、直接国民から意見を聞かなくてもよかったわけです。
青木:それが代議制民主主義ですからね。
小倉:そうなんです。でも、EU離脱という、国の方向を決める重要なことを国民に直接ゆだねてしまったわけです。一方で国民も「国民投票をやってほしい」と声が大きくなったのは、「自分たちの声を議会がちゃんとすくいあげてくれない」という議会への不信感からなんです。そういうものが今の状況を招いていると思います。議会の機能が低下したり、今の日本がやっているように強いものが勝ってしまったりすれば、「直接意見を聞いてくれよ」という声が膨らんでもおかしくないと思います。

イギリスの国民投票ではEU離脱派が勝利したにもかかわらず、さまざまな問題から現在は反対派が優勢で、「4:3くらいで今はEU残留派が上回っている」と小倉さんは言います。

青木:究極の民主主義とも言える国民投票でEU離脱が決まりましたが、現実的に見て、もう一度イギリスは国民投票をするという選択肢があるのでしょうか。
小倉:私は昨年末まで、もう一度国民投票をすることはあり得ないと言ってきました。それは、もう一度するとなれば、前回多数を占めた離脱支持派の声を無視するかたちになるわけで民主的ではなく、むしろ混乱を深めるだけだと思うからです。メイ首相も「再度の国民投票はしない」と言っていますが、ようやく国民が離脱における難しい問題を理解しはじめ、「国民投票をやってくれ」「もう一度、話を聞いてくれ」という声が大きくなっているので、国民投票をやり直す可能性が0パーセントではなくなってきたという気がしています。

現在、「合意なき離脱に踏み切るのでは」「イギリスがEUに3月29日の期限を延期してもらうのでは」などの報道が出ています。この先、EU離脱問題はどう展開するのでしょうか。

小倉:メイ首相は、その二つはないと言っています。僕は、合意なき離脱はできないから、EUとの話し合いをもとに離脱期限を数カ月ほど後ろ倒しすることが数少ない現実的な選択肢だと思います。1月29日に離脱代替案を法的拘束力のないかたちで、1度議会にかけると言っていますが、これはまず否決されます。それはメイ首相も見込んでいると思います。その後、「本当に弱ったなというタイミングでどのような結論をだすのか」ということですね。
青木:イギリスが合意なき離脱をしてしまうと、世界経済に与える影響が大きいので、それを放っておくことはできないですよね。
小倉:できないですね。EU側も必死で「合意のない離脱だけはやめてくれ」と言っていますので、イギリスが離脱期限を後ろ倒しにしたいと言えば、それを受け入れると思います。

混迷を極めるイギリスのEU離脱問題。これから先どのよう動きがあるのか、引き続き注視が必要です。

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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時−21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld
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