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日本の刑事司法は、国際的に見て異様…青木理が選ぶ「2018年の重大ニュース」

日本の刑事司法は、国際的に見て異様…青木理が選ぶ「2018年の重大ニュース」

J-WAVEで放送中の番組『JAM THE WORLD』(ナビゲーター:グローバー)。12月25日(火)のオンエアでは、グローバーがお休みのため津田大介がナビゲーターを務めました。「UP CLOSE」のコーナーでは火曜日のニュース・スーパーバイザーの青木 理を迎え、「青木 理が選ぶ、2018年の重大ニュースTOP5」をお届けしました。


■5位:カジノ法・入管法改正などの強行…立法府の機能不全極まる

特定秘密保護法や共謀罪、安保法制などの法案を無理やり通したことも大いに問題があるとしながら、特に入管法改正の問題は「これまでとは違うひどさだった」と青木は指摘します。

青木:入管法改正は、日本が少子高齢化もあって人材不足に陥るなか、外国人労働者の受け入れを拡大してそれを補おうという案ですよね。与党がこの案を国会でしっかり議論して本気でいい制度として作り上げたいとしたら、野党は反対しなかったと思います。

ところが腰だめで法案を作り、肝心なところは全部省令で定めると、行政府に丸投げしました。

青木:これなら唯一の立法権を持つ立法府なんていらないですよ。揚げ句の果てには、参議院の議論ですら与党の人たちは質問もしないで終わるような惨状なら、単なる行政府の下請け機関なので。
津田:野党がだらしないとか、まとまっていないという見方もあるけど、こんな議会ならそもそも野党が力を発揮できるところがないですよね。
青木:選挙の結果だからやむを得ないけど、与党が圧倒的な議席を持っていたら野党ができることなんて限られていますよね。

入管法改正の議論では、野党が追及したことで判明した問題もたくさんあり、野党を問題視したくないと青木は続けます。

青木:この問題は、権力を持つ人たちが少数派の人たちの声に耳を傾ける、言い換えると、権力を持つ人たちが権力の行使に対して一定の恐れを常に持つか否かに尽きると思います。しかし、今の政権にそういう恐れはないと同時に、それをチェックする立法府が機能不全に陥り、深刻な域にまで達していることが問題だと感じています。


■4位:森友問題をめぐる公文書改ざんなど、官僚機構の不能も極致に

「立法府の機能不全」は森友問題にも関わると津田。

津田:行政府が出すデータに基づいて立法府で審議して法律や政策が決まるのに、官僚機構が出すデータがそもそも改ざんされ、それが常態化していたことが明らかになりましたよね。
青木:入管法改正の審議に対して法務省が出したデータがデタラメだったこともそうだし、厚生労働省の出したデータもずさんを極めました。かつて官僚機構が当時の大蔵省(現、財務省)を頂点とした鉄壁の官僚機構としてそびえ立っていたんですが、一強政権に人事まで握られ、それの結果として安倍政権下がうまく使い、官僚を完全に掌握した。その官僚機構が政権の意向を忖度して、本来は客観的であるべきデータまで政権の都合に合わせてねじ曲げたり隠したり、果ては森友学園問題における公文書の改ざんにまで及んでしまいました。

5位と4位のニュースを合わせて、青木はこのようにまとめます。

青木:我々の国権の最高機関である立法府が機能不全になったと同時に、行政府を支える官僚機構も根腐れしつつある。つまりこの国の統治機構が、現政権下で非常にひどいことになっているので、いずれ大きなしっぺ返しを受けることになるのではないかと思っています。


■3位:史上初の米朝首脳会談…南北首脳会談など朝鮮半島情勢動く

青木は「米朝首脳会談が行われ、世界で最後に残った冷戦体制が雪解けムードになったことは非常に歓迎すべきで、この対話が南北、米朝の雪解けと同時に朝鮮半島に平和と安定をもたらすのであればどんどん進めるべき」と述べる一方で、「日本はこの問題に乗り遅れてしまった」と指摘します。

青木:マティス国防長官が辞任するなどトランプ政権側が不安定ですし、年内に2回目の米朝首脳会談、もしくは金正恩委員長のソウル訪問もあるのでは、とささやかれていましたが、年を越しそうなので、来年以降にどうなるか要注目のニュースです。


■2位:沖縄・翁長前知事死去、玉城知事誕生。辺野古埋め立てを強行

辺野古の埋め立て予定地に土砂が投入されてから現地を取材した青木と津田は、このニュースについてこう話しました。

青木:現地でいろんな人たちに話を聞くと「まだ諦めない」と言うんだけど、諦めないもなにも辺野古に基地は作れないと思います。まだ埋め立てたのはほんの数パーセントですよね。
津田:面積でいうと4パーセントだけど、今後はさらに深い沖を埋め立てる必要がある。
青木:だから、これからもっと大量の土砂が必要なんですよ。これらの土砂は沖縄だけでは足りないので、本土から持ってくる必要があるけど、そうなると県の手続きが必要になるし、辺野古の軟弱地盤を埋め立てるには相当難しい工事なので、沖縄県の試算だと5年から10年必要になると言われています。結局、いろいろな手続きには沖縄県知事の承認が必要になるので、玉城知事の姿勢が変わらなければ基地移転はできないと思います。

青木は「巨大な公共工事において100パーセントの理解を得ることは不可能だ」としながらも、「可能な限り理解を得る努力をしないまま強行した公共工事は、敢えて公共工事と言いますが、間違いなく失敗します」と持論を語ります。

青木:なので今回の土砂投入はなんなのかと言うと、地元の記者は「嫌がらせだろう」と言っていました。
津田:そうでしょうね。
青木:沖縄の人は辺野古移転反対を諦めろ、政府は本気なんだと。
津田:県民投票を待たずに土砂を投入したことがなによりの証拠ですよね。
青木:それに加えて年内に行ったこともですよね。この問題は来年も動くと思うので、要注目のニュースです。


■1位:オウム13人の死刑執行、日産ゴーン前会長の逮捕

この2つのニュースで共通するのは「刑事司法」だと青木。

青木:日本の刑事司法が世界的にずいぶん変わっているということが、ゴーン前会長の逮捕で世界的にバレてしまいました。特捜検察は逮捕すると10日間の拘留、さらに10日間延長して再逮捕と何十日間と拘留し、場合によっては起訴後も保釈を許されずに、弁護士の立ち会いも許されない取り調べで自供を迫っていく。これは「人質司法」と言われ、日本では当たり前だったけど、国際的に見ると異常だと非難を浴びました。その批判からゴーン前会長の勾留延長を東京地裁が認めなかったことに対し、東京地検特捜部が特別背任でゴーン前会長を再々逮捕することになりました。

この事件で、国際的にみると非常識で異様な日本の刑事司法が明るみになったことと、オウム死刑囚の死刑執行の問題は共通点があると青木は述べます。

青木:世界的にみると死刑制度を廃止することが圧倒的な潮流になっています。先進国で死刑制度を維持しているのは、日本とアメリカの一部の州くらいです。
津田:冤罪で死刑があったときに回復ができないですからね。
青木:そのことからヨーロッパは一斉に死刑廃止に舵を切って、EU加盟国は死刑廃止が加盟条件にもなっています。また、東アジアで死刑執行をしている国は北朝鮮と中国と日本という、人権的に問題がある国ばかりが死刑制度を維持していて今も死刑を執行している。しかも、日本は今年13人の死刑を執行した。
津田:狭山事件や袴田事件など、さまざまな事件の冤罪が明らかになっている状況での死刑執行でしたよね。
青木:オウムに関して冤罪はないにせよ、国民の生命と財産を守る役目を負う国家が、一方で人の命を奪う刑罰を執行することは果たしていいのだろうか。オウムの死刑執行も国際的には批判されたにも関わらず、日本は微動だにしていない。しかも日本の死刑の場合は非常に秘密主義で、どういう順番でどうやって死刑が執行されているのかわからないんですよ。これも日本のある種の非常識なところかもしれませんよね。

青木の選んだ重大ニュースは2019年も続く注目度の高い問題ばかりでした。果たしてこの先どのような展開になるのか、来年も注目していきましょう。

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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld

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