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佐野元春、大瀧詠一に「はっぴいえんどを反面教師として見ているよね」と言われた理由

佐野元春、大瀧詠一に「はっぴいえんどを反面教師として見ているよね」と言われた理由

J-WAVEで放送中の番組『RADIO SWITCH』。この番組は【Listen to the Magazine, Reading Radio 雑誌を聴く、ラジオを読む。】をコンセプトに、カルチャーマガジン『SWITCH』、旅の雑誌『Coyote』、新しい文芸誌『MONKEY』の3つの雑誌とゆるやかに連動しながらお送りしています。

11月17日(土)のオンエアでは、『SWITCH』編集長 新井敏記さんによる佐野元春さんへのロングインタビューをお送りしました。ここでは佐野さんの活動に大きな影響を与えた「ビート・ジェネレーション」について語り合ったパートを紹介します。


■「ビート・ジェネレーション」とは?

「ビート・ジェネレーション」とは1950年代、詩人のギンズバーグやケルアックなどが中心となり、当時の若者に絶大な影響を与えたアメリカの文学運動です。

新井:佐野さんとビートの原体験は、高校時代に始まるんですか?
佐野:はい。僕がビート文学に初めて触れたのはジャック・ケルアックの著作でした。僕はもともと音楽は好きでしたし、10代の頃は自分でバンドも持っていましたから、やはりビートと言葉の関係というのが、いちばん興味の主体としてあった。その中で古今東西いろいろな文学があるけれども、50年代ビートの人たちの文体がすごく音楽的。英語で見てみるとすごく音楽的なんですね。そこから僕は俄然、興味を持って接しました。


■ビート的な態度の詩の朗読にチャレンジ

その後、詩人のアレン・ギンズバーグやグレゴリー・コーソ、音楽家ジョン・ケージによるビートと音楽の融合に激しくインスパイアされた佐野さんは、自身のポエトリーを朗読する表現活動を行いました。

佐野:日本語を使った、いわゆるビート的な態度の詩の朗読ができないだろうか、というのが僕の中でありました。もちろんそれまでも60年代、自分はまだ中高生でしたけど、渋谷のジァン・ジァンといった小さなベニューで、白石かずこさん、諏訪優さんとか当時の僕よりずっと年上の詩人たちが、ジャズ音楽に合わせて朗読をする、という催しをやっていました。

そして80年代、佐野さんは「ビートと言葉の融合ということについて、意識的な作品を生み出したい」という気持ちから、「スポークンワーズ」をスタートさせました。自分なりのスタイルを追求したこの「スポークンワーズ」は、昨年2017年にアメリカ・ブロンクスでも開催されました。


■はっぴいえんどを反面教師に?

そんな佐野さんの活動の中で、新井編集長が特に印象的だったのが、立教大学での「言葉とビート」をテーマにした講座。言葉とビートが織りなすアートがどのように人々の共感を得ていくのか、それを科学的に解析していくという内容でした。

佐野:近代詩から現代詩までをなぞって、生徒たちとその作品を共有しつつ、ここに新しく音楽詩というカテゴリーをセットしてみよう、という。音楽詩というのは、ビートを伴ったポエトリー、あるいはポエトリーを伴ったビート、という言い方もできると思うんですけど。こうした新しいカテゴリーで日本の詩を見ていくと、「ソングライターこそが今を映し出している詩人たち」という仮説が立てられるんじゃないか、っていうところから始まったんですね。
新井:なるほど。僕は逆に言うと「佐野さん以前と佐野さん以降」、要するに佐野さんが若い人たちと触れ合うこと。それと先達の人たち、大瀧詠一さんとか小田和正さんもそうですけど、そういう先輩たちがどういう音楽を作られてきたのか、ということを分析することで、日本の音楽の豊かさっていうのを改めて教えてくれた感じがします。

大瀧詠一さんがプロデュースした1982年の作品、『NIAGARA TRIANGLE Vol.2』に参加した佐野さん。その時に大瀧さんの音楽論、ソングライティング論などに触れたのですが、中でも印象に残っている言葉があります。

佐野:大瀧さんは、「音楽、ソングライティングというものを、いわゆる感性だけで捉えるものではなく、技術として捉えてもおもしろいんじゃないか」ということを教えてくれた人ですね。
新井:あるとき、大瀧さんから佐野さんに電話があって、「赤坂にいるんだけど、今から来ないか?」って話しがあって、僕もお供したんですが。そのときに印象的だった言葉があって。「佐野くんは、はっぴいえんどを反面教師として見てるよね」って。いわゆる詩に表れる叙情的なものを否定して、新しいものを作り出そうとしているって。大瀧さんはそれに、ものすごく日本の音楽の可能性を感じるっていうふうにおっしゃっていました。

70年代のポップ音楽をよく聴いていた佐野さんは、当時の詩に描かれている世界観が「非常に日本的というか、叙情的」と感じていました。しかし佐野さんは叙情よりも、実際に身の回りで起きている叙事的なものをスケッチするだけで詩になるのではと思い、そこから出来上がったのが、デビュー曲の『アンジェリーナ』をはじめとする初期の曲でした。

佐野さんの創作活動に大きな影響を与えた「ビート・ジェネレーション」。これを機会に触れてみてはいかがでしょうか?

【番組情報】
番組名:『RADIO SWITCH』
放送日時:土曜23時00分ー24時00時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/radioswitch/about.html

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