「いじめを増やす方法」を考えて、いじめを減らす…荻上チキの提案

2018年08月29日

J-WAVEで放送中の番組『JAM THE WORLD』(ナビゲーター:グローバー)のワンコーナー「UP CLOSE」。8月22日(水)のオンエアでは、水曜日のニュース・スーパーバイザーを務めるフォトジャーナリスト・安田菜津紀が登場。いじめ問題を解決するために必要な知識について、先日著書『いじめを生む教室 子どもを守るために知っておきたいデータと知識』を出版した評論家でNPO法人「ストップいじめ!ナビ」の代表理事・荻上チキさんに訊きました。


■「いじめの本」の決定版

これまでもいじめ問題に関する著書を出版してきた荻上さん。改めて、なぜ今回このテーマの書籍を作ったのか、理由を伺いました。

荻上:2012年に大津のいじめ事件がメディアで大きく取り上げられ、そのときから私はNPOを作っていじめ問題の啓発を行ってきました。いじめ問題は、日本では1980年代から30年近く研究の蓄積がありますが、政治やメディアの報道には活かされていませんでした。その現状を変えるために知識や情報を届けなければいけないと、NPO活動で講演活動をしたり、行政の行動計画を一緒に策定したりということを続けてきました。そのうちに、「いじめの本」という形で決定版というのを自分で言うのもなんですが、これを読んでおけば今のいじめ研究の大まかな全体像が見えるというものを、まとめておきたいと思い、今回本にしたという次第です。


■「いじめを増やす方法」から、減らす方法を導く

安田:この本で印象的だったのは「いじめをどうすれば教室のなかで増やすことができますか?」という問いでした。道徳教育で「どうやったらいじめをなくせるか、減らせるか」という問いかけは多数ありますが、増やす方法とは珍しいですね。
荻上:講演会や子どもたちを交えたワークショップで、「いじめを増やす方法」を各々考えてもらうことがあるんです。たとえば「先生が見て見ぬふりをする」「リーダーが嫌なあだ名をつける」など挙げてもらう。そのいじめを増やす要因をひとつずつ防いでいくと、つまりいじめが減るということなります。頭の発想を切り替えた上で、どのような要因がいじめを増やすのか考えてほしいという議論をしています。
安田:いじめの少ない教室を「ご機嫌な教室」多い教室を「不機嫌な教室」と分類していますが、具体的にはどのような要因が重なると「不機嫌な教室」になりやすいのですか?
荻上:初期の段階で先生が何もしないとかは 「不機嫌な教室」になりますよね。一見いじめとは関係ないようなテーマでもいじめを増やしてしまう要因はいくつかあります。たとえば、学校のクラスの先生が体罰をする先生だといじめが増えます。体罰をする先生は殴るだけではなく、普段から怒鳴り散らしたり理不尽なことを口にしていることが多いので子どもたちにストレスをかけるんです。いじめはストレスが一定程度たまることで起こるケースもある。何か発散したい、でもストレス発散の手段は学校にはほとんどない、ゲームも本も持ち込み禁止、クラスから出歩くことも禁止……と、いろいろ禁止されるなかで、唯一の楽しみがいじめだということもあるからです。集団に対する連帯責任もそうで、輪を乱すものを密告しあう状況になっていじめを助長するメカニズムになります。


■生徒のストレス発散の場を設けることも重要

日本の教室空間の特異性も、いじめを生み出す要因に挙げられます。同じ教室で同じメンバーで授業を受ける日本では休み時間の教室で一番いじめが起きやすく、移動教室が多い英米ではグラウンドや廊下で起きやすいといいます。

安田:いじめの典型例があぶり出されると、その点をどのように改善していくか具体的な対策につながっていくと思いますが。
荻上:休み時間の教室でいじめが多いのであれば、それを止めるために先生や大人たちが子どもたちのコミュニケーションを介助できるようにする。子ども園や幼稚園だと先生が、子どもたちのトラブルの間にすっと入って仲直りさせたり、間を取り持ったりしますが、小学校1年生に変わるとガラリと雰囲気が変わり、先生たちが恫喝というか叱りだすようになるんです。
安田:そうですよね。いきなり1対集団になりがちですよね。
荻上:それは学校の先生も忙しくて余裕がなくて、全体をみることはできても、ひとりひとりをみる時間がない。先生が教室にいても、毎日保護者の方とやりとりしている生活観察ノートを一生懸命つけていて、後ろや廊下でどんなトラブルが起きているのかというのが見えにくかったりするんです。担任ひとりで授業をみるのは厳しいので、複数担任制をやってみてはどうだろう、と思っています。あるいは、休み時間に子どもたちに発散できるような状況を作る。ある学校では下駄箱に靴を置くのではなく、体育館側に靴を置いて休み時間になったらみんな靴を履いて、体育館や運動場にでて、5分前着席のようなかったるいことはやらずに、チャイムが鳴ってから教室に入って授業をやりましょうと、なるべくギスギスしないようにする。図書館に行ってもいいし、グラウンドに行ってもいいと自由をもたせる工夫をすることで、いじめを抑止するということは、すでに行われています。


■教師の側も…休暇や学校外で「勉強」が必要

荻上さんは著書のなかで、前述の複数担任制や、教師たちのサバティカル休暇で半年くらいさまざまな授業の現場に行ったり、論文に触れる機会などを提案しています。

荻上:学校の先生は子どもたちが最初に触れる科学者なので、その科学者たちの知識をアップデートすることはとても大事だと思います。でも学校にずっと居続けると、学校の中でなんとなく正しいと思われることを吸収してしまって、ヘンな校則を守らせたり部活動の指導のために土日も出勤して、燃え尽き症候群になることを疑わなくなってしまう。だから知識や空気を更新する余裕づくりを政策としてやってほしい。授業の環境はいろいろな工夫でよくしてほしい。同時に、個人の頑張りではどうにもならないから、国や自治体がしっかりと先生たちをバックアップできるように人を増やすという両面を繰り返し言い続けることが大事だと思います。

トーク後半では、いじめとメディア報道に関わり方を議論。いじめから死亡事故などに発展した場合に犯人探しのような報道をするより、平時からのいじめに関する報道、教育やいじめ対策、過ごしやすい教室づくりの情報共有することなどでメディアの役割を果たしてほしいと語りました。


■今いじめに悩んでいる子どもたちへ

9月の上旬や8月の下旬という学校再開の時期は、子どもたちの自殺が増える時期といわれています。自らもいじめられた経験がある荻上さんは今いじめで悩んでいる子どもたちにメッセージを投げかけました。

荻上:僕も小中学校ずっといじめられていました。それで死なずにすんだのは学校という場所に自分が居場所感を持たずに「学校は自分の居場所じゃない」と思っていたからです。僕の場合は家に帰ってゲームをする時間だけが僕の時間だったんですね。学校とか自分の好きでもない人に自分の日常を乱された場合にも自分の世界までを壊させないという気持ちを持ってほしい。あと自分だけの第三の場所、学校でも家でもない場所を探す、いつか見つかりますので、そうした場所を探し続けるそのために生き続けるということをしてほしいです。具体的にいえば、いじめというのは証拠を残せばだいたい誰かに届く、学校の先生に相談すれば7割近くの人が解決に向かう、でも学校の先生がハズレだった場合がありますよね。その場合は地方で議員やメディア、教育団体、地方のNPOだったり何かしらの方法で支えようとしてくれる人はいます。たまたま会った数人の大人が頼りないからといって、それが世界の全てだと思わなくていい、たまたま会った友だちが酷いからといってそれが世界の全てだと思わなくていい。必ず世界のオルタナティブ、別のもの、替わりのものにアクセスする、そのための具体的な方法は本にも書きましたし、ネットにも無料で載せていますので、ぜひそうしたアイテムを使って人生をより豊かに生きてほしいと思います。

荻上さんが主催する「ストップいじめ!ナビ」では、具体的な相談先やヒントがサイトに詰め込まれています。気になる方はぜひ検索してみてください。

【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時−21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld
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