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賛否両論あるも…オリンピックやラグビーワールドカップが被災地に果たす役割とは?

賛否両論あるも…オリンピックやラグビーワールドカップが被災地に果たす役割とは?

J-WAVEがいま注目するさまざまなトピックをお届けする日曜夜の番組「J-WAVE SELECTION」。毎月第3日曜は、震災復興プログラム『Hitachi Systems HEART TO HEART』(ナビゲーター:重松 清)をお届けしています。8月19日(日)のオンエアでは、宮城県気仙沼市出身のスポーツライター、大友信彦さんがゲストに登場。スポーツと復興について一緒に考えました。

■震災直後はいてもたってもいられなかった

大友さんはラグビーを通じて釜石を中心に東北全体の復興支援活動を行うために発足したNPO法人「スクラム釜石」の理事も務めています。

大友さんは東日本大震災の当日、テレビのニュースを見て「とてつもない災害だ」とすぐ察し、いてもたってもいられず、「これは本当に長い間、何かをしていかなければいけない」という思いがすぐにわき上がってきたそうです。


■震発生直後からボランティア活動をした釜石シーウェイブス

重松清と桜庭吉彦さん
今回、重松はラグビー日本選手権でかつて7連覇を達成した新日鉄釜石ラグビー部の流れをくむ、釜石シーウェイブスのゼネラルマネージャーで監督の桜庭吉彦さんを取材しました。桜庭さんは秋田工業高校時代に花園(全国高校ラグビー大会)で日本一に輝き、新日鉄釜石ラグビー部でも大活躍した、日本を代表する元名ラガーマンです。釜石シーウェイブスのチームスタッフや選手たちは、地震発生直後からボランティア活動を開始しました。

桜庭:いつもお世話になっている人たちが被災し、苦労しているので、何か手伝いをしたいと考え、外国人選手も含めて物資運搬などの手伝いをしました。
重松:チームと釜石の町の関係がいっそう深まったのではないですか。
桜庭:そうですね。普段なかなか接点のない町の人たちとも関わることができましたし、話をすることができました。それによって、みなさんがどういう期待や思いを持っているかについて震災を通じて知ることができ、絆が深まったと思います。

震災後、大友さんも被災地に向かい、釜石シーウェイブスの選手を取材しました。そのとき、支援学校に勤務していた小原一志選手の言葉が印象的だったと話します。

大友信彦さん
大友:その学校は山あいにあり震災で孤立したため、小原選手をはじめ学校の子どもたちは家に帰れなくなりました。小原選手は子どもたちを落ち着かせるために、自分たちがどう振る舞えばいいかを考えたといいます。「自分のことよりも、まわりのことを考えた」という小原選手の言葉が非常に印象的でしたね。ほかの選手を取材しても、口を揃えたように(ボランティアは)「特別なことではなかった」「自然なことだった」と話していました。普段から献身的に行動するラグビー選手の行動原理を知った気がします。
重松:ラグビーには「一人はみんなのために、みんなは一人のために」という言葉がありますよね。この精神が大きいんでしょうか。
大友:その言葉も監督やコーチに言われ続けていると思います。ただ、言葉にする以前に、そういう行動をしてしまうんだと思います。迷わず行動することを選手のみなさんから感じましたね。

■町づくりは5年後10年後と先を見据える必要がある

重松清と富山智門さん
次に重松は、復興をテーマに掲げる2020年の「東京オリンピック・パラリンピック」を機に、被災自治体が震災後に支援を受けた世界の国々と交流をして感謝を伝える「復興『ありがとう』ホストタウン」に名乗りをあげた岩手県大船渡市役所の富山智門さんを取材しました。

個人的にオリンピックと復興を結びつけることは、今ひとつ実感できなかったと話す富山さんが、オリンピックをきっかけにした交流事業に感じている意義について伺いました。

富山:今だけで見ると、「復興『ありがとう』ホストタウン」よりもやらないといけないことがたくさんあるかもしれません。しかし、町づくりなどは、今だけではなく5年後10年後と先を見据えて考える必要があると思います。自分たちだけで大船渡市は成り立っていかないから、国際交流は何年経っても必要なこと。世界に目を向けて、身の丈に合った交流は非常に大切なことだと思います。「今だけじゃない」ことを伝えていきたいと考えています。

重松清と下村達志さん
続いて、来年釜石市でも試合が行われる「ラグビーワールドカップ2019」の盛り上げに奮闘している、釜石まちづくり株式会社の下村達志さんに、この大会を釜石市の未来にどう役立てていきたいかについて伺いました。

下村:建物ができることが復興ではなく、いかにそこに人が集う場になるかが大事だと思います。
重松:この大会でラグビーの試合を観た釜石市の少年が、野球をやろうと思っていたけどラグビーに目覚めることが、いちばんいいレガシーですよね。
下村:そう思いますね。釜石シーウェイブスが強いことはもちろんですけど、釜石でラグビーをやって、釜石市出身のすごい選手がでてくるときが来るんじゃないかなと思っています。


■スポーツを通して明るい未来を示す

釜石で「ラグビーワールドカップ2019」の試合が行われることが決定したのは2015年のこと。重松は「地元・釜石では、この大会の開催について賛否両論あったのではないか」と大友さんに質問します。

大友:「そんなことを言える段階ではないよ」とか「そんなお金があったら、1円でも2円でもまわしてほしい」という意見があることはすごく分かります。ただ、(被災地の人たちは)生き残る、生き延びる段階を過ぎて、これから生きていかなくてはいけない。そう考えたときに、明るい未来を示すことがあるといいなと思います。
重松:取材で釜石の新しいスタジアムに行ったときに、いわゆる箱モノのいかめしさが全くなくて、早くも町の風景の一部になっているような気がしました。おそらく試行錯誤しながら、みなさんの中で問い直しながら何度も考えていることを実感しました。

「ラグビーワールドカップ2019」、2020年の「東京オリンピック・パラリンピック」を通して、東日本大震災の被災地はどのように変化していくのか。スポーツが持つ可能性について多くを知る時間となりました。

重松清と大友信彦さん

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【番組情報】
番組名:『Hitachi Systems HEART TO HEART』
放送日時:毎月第3日曜 22時-22時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/special/hearttoheart/

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