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「公文書」への意識が遅れる日本の事情

「公文書」への意識が遅れる日本の事情

J-WAVE平日夜の番組「JAM THE WORLD」のワンコーナー「BREAKTHROUGH!」。4月15日のオンエアは、金曜担当の青木理がナビゲート。今回は「国立公文書館、公文書の重要性」をテーマにお送りしました。

冒頭で、公文書の重要性について「公文書がないと、僕らはいろんな権力者たち・公務員・政府がある決定をする際に、どういう議論、どういう手続きをして決定したのかを検証できない」と、自身の考えを語った青木。

確かに、その決定事項が成功にせよ、失敗にせよ、過程の詳細がなければ後世に活かすことができませんよね。「つまり、公文書は国民、未来の子供たちを含めた共有の財産」(青木)とも言えます。

しかし、日本ではこの公文書への意識やシステム、法整備が諸外国に比べてかなり遅れているそうです。この問題について、国立公文書館の前館長で、フェローの高山正也さんにお話を伺いました。

国、国民にとって重要な公文書を保管している国立公文書館。その職員数はアメリカ2,720人、イギリス600人、フランス570人、ドイツ790人、お隣の韓国340人なのですが、日本はわずか50人ちょっと。日本に国立公文書館ができたのは1971年ですが、アメリカは1934年、イギリスは1831年、フランスは1790年にはできており、規模も歴史も先進国としてはかなり遅れているのが分かります。

韓国や、マレーシア、インドネシアなど、新しい国家ほど「自分の国がどういう国なのかというアイデンティティを持たなければならない」という意識から、公文書館を作ることに非常に力を入れているそうなのですが、日本はどうなのでしょう。

「幸か不幸か、我が国は大変長い歴史もあれば、日本人だというアイデンティティをしっかり持っているがために、公文書にあまり力を入れなくても、政治家が“鼎(かなえ)の軽重を問われる”ことがないという側面があるかもしれません。また、日本人はそもそも公文書を重要だと思っていないんじゃないかという説があるんですが、私は逆だと思うんです。公文書が持っている重要さっていうのは日本人はみんな良く分かっている」(高山さん)

その証拠の一つに、高山さんは日本の公文書館に類似する役所、図書寮が大宝律令(制定701年)で作られていたことを挙げます。さらにもっと歴史を遡れば、平安初期にも公文書館に近いものがあったそうです。では、なぜ現代の公文書館の規模が非常に小さいのでしょうか。

それには、記録の重要性を十分に分かっているからこそ、という背景もありそうです。

これを受けて青木は、「文書を作成する側(政府、官僚など公務員)が、先輩・同僚に累が及ぶことを危惧して公文書を作らない、残さないとなると、公文書館を充実させてもどうしようもないということになってしまう」と発言。続けて、「私は、以前から自虐的に言っているのですが、『日本の公文書館ってなんだ?』というのに『政府の紙くず箱である』ということになる。紙くず箱にしないためにはどうするか、というのが問題なのですが、一番は記録はきちっと作ろうよ、と」とも。

災害時における政府の対応や、海外諸国との外交など、公文書は国にとって重要な記録。2011年に公文書管理の法律が制定されましたが、その機能はまだ万全に働いていないといわれている現状。

青木は「国家の記録とは一体誰のものなのか。現在の国民と同時に、将来の国民に対する共有の財産なのだから、様々な決定に携わる公務員・官僚の人たちはきちんと公文書を作る、そして責任を持って公文書館に移し保管する、一定期間が来たら公開する、というシステムを作っていかなければいけないということですね」と締めくくりました。

【関連サイト】
「JAM THE WORLD」オフィシャルサイト
https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/

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