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2008年06月26日
「アフタースクール」★★★★★

最近、「何か面白い映画ない?」と聞かれなくても、「絶対に見て!」と人に勧めしてしまう映画がある。5月の後半に公開された日本映画「アフタースクール」。正直、最近の日本映画でこれは!というものに出会ってなかったので、これを見たときは、なぜか心の中でガッツポーズをしてしまった。いやぁ、本当に面白いんですよ、この映画。

ある日、母校の中学校で働く教師・神野(大泉洋)のもとに探偵(佐々木蔵之介)がやってくる。探偵が探しているのは、神野の親友であり同級生の木村(堺雅人)。一流企業のサラリーマンである木村が何故、追われているのか。訳のわからないまま、人のいい神野は探偵の捜索活動を手伝うはめに…

実はこの映画、映画の感想を書く側からすると、ちょっと厄介な作品。というのも、この作品を面白く見てもらうには、このくらいのストーリーしか明かせないからなのである。この後はもう、劇場で見てもらうしか、ない。ヒントをあげるならば、映画のポスターに書かれているフレーズ「甘く見てると、だまされちゃいますよ」かな。

個性豊かなキャラクターの登場を楽しみながら、観客は登場人物の関係、そして一体彼らに何が起こっているのかを頭の中で整理して行く。でも、ぼんやりと全体図を描いていたあたりで、見てきたこと、そして信じてきたことが、細部にわたってことごとく覆されてしまうのである。この感じ、何かに似てると思い続けて、やっと頭に浮かんだのが「ユージュアル・サスペクツ」。あれは、例えるならば、最後の汽圈璽垢粘粟というジグゾーパズルを、一気に壊されてしまうような感じだったのだが、この「アフタースクール」は、ほぼ勝ちが見えていたオセロゲームを最後の一手でしくじった為に、相手の色に一枚ずつ染め上げられてしまう感じ。そう、一枚、一枚。これがキモ。そんな風に、些細なことまでもが覆されていく。

脚本・監督を手掛けたのは、前作「運命じゃない人」でカンヌの他、数々の映画賞を受賞した内田けんじ(早く「運命じゃない人」見なくては!)。 そして、一癖も二癖もあるキャラクターを演じている俳優陣も見応え十分。そもそも、私がこの映画を見た理由の一つは、大好きな大泉洋が神野という主人公を演じているからなのだが、探偵役の佐々木蔵之介と木村役の堺雅人も素晴らしい。というか、この3人のコンビネーションが絶妙!基本的にこの3人に通じる私なりの印象は“飄々とした人”で、この映画ではそれに加え、それぞれが持つ世間の印象というものまでもうまく活かしているから面白い。そして皆、演技が巧い。

よく考えると、ここまで緻密な謎解き映画って日本映画で体験したことなかったかも。笑いと驚きとユーモアたっぷりの“大人の放課後”。皆さんも気持ちよ〜く騙されてみてはいかがですか?


| 18:08 | カテゴリー:映画
2008年04月18日
「つぐない」★★★★☆

映画を見終わった後も、台詞が、音楽が、色彩が、いつまでも頭から離れない時があります。試写会で観たのは2ヶ月も前なのに、映画「つぐない」のポスターを見るたび、キーラ・ナイトレイグリーンのロングドレスと、タイプライターの音を思い出す。そして、果てしなく切ない気持ちになってしまう…

ブッカー賞作家イアン・マキューアンのベストセラー「贖罪」。私はまだ未読のこの小説は、その緻密な構成と文学性の高さから、映像化は困難と言われ続けてきたのだそうです。それを見事に映画化したのは「プライドと偏見」で、監督として素晴らしいスタートを切ったジョー・ライト。再びキーラ・ナイトレイと組んで、今作も高く評価されました。そうそう、彼女が出演したシャネルのCMもジョー・ライトが監督したんですよね(こちらは深紅のドレスが素敵でした)。相性がよほど良いのか、ライト監督が撮るナイトレイは本当に美しくて、毎回、ハッとさせられます。

舞台は1930年代、戦火が忍び寄るイギリス。政府高官の美しい長女セシーリア(キーラ・ナイトレイ)と使用人の息子ロビー(ジェームス・マカヴォイ)が、互いに身分を越えて愛しあっていることに気付いたある夏の日。これから始まるはずの2人の運命は、多感な妹ブライオニー(シアーシャ・ローナン)の嘘によって引き裂かれてしまう…

小説家を目指していた聡明で自信家の少女だったブライオニー。ロビーに淡い憧れを抱いていた少女にとって、ロビーが姉セシーリアにしたためた手紙と、2人が激しく愛し合う姿は衝撃だったことでしょう。そのことで、少女の心には2人への嫌悪感が生まれてしまった。そして起こったある事件。少女が口にした嘘は、きっとそんな2人をちょっと懲らしめてやろう、というくらいのものだったかも知れない。しかし、それは容赦のない一撃となり、戦争というどうにもならない時代の波が押し寄せ、幸せになれるはずだった2人の未来を飲み込んでしまうのです。戦場の最前線へ送り出されロビーと、愛する人の帰りを待ち続けるセシーリア。そして、歳を重ねるごとに、自分の犯した罪の重さを思い知らされるブライオニー。あぁ、なんという悲劇。

映画で流れる音楽には、タイプライターの音が散りばめられています。最初は、これから起こる何かを予感させ、後半にはブライオニーの将来をも暗示するんですね。とてもユニークで強い印象を残すサウンドトラックは、アカデミー賞作曲賞を受賞しました。

この映画の面白いところは、この登場人物3人の内の誰に感情移入をするかで、感想が違ってくることでしょう。映画は基本的にブライオニーの視点で描かれて行くのですが、サスペンス調から壮大なドラマへと発展していく演出も効いているからか、それと共に私の思い入れも3人のキャラクターそれぞれに移り変わっていきました。

キーラ・ナイトレイはもちろんですが、ロビー役のジェームズ・マカヴォイも素晴らしかった。彼が演じた「ナルニア物語」のタムナスさんが好きだったんだけれど、最近の活躍は目覚ましいものがありますね。そして、ブライオニーの賞助役を演じたシアーシャ・ローナン。その透明感は、幼い頃の広末涼子さんのようで、ハマってしまう男性が多いかも!? その後のブライオニーを、「エンジェル」のロモーラ・ガライ、大作家となる晩年をバネッサ・レッドグレイヴが演じているんだけれど、このキャスティングは素晴らしい。

ちなみにセシーリアのグリーンのロングドレスは、ロビーとのラブシーンで纏っていたもの。やっと愛を確かめあうことが出来た後にやってくる悲劇が、その姿をより美しいものにするのでしょうね。

これから原作の「贖罪」を読んで、また劇場に足を運びたいですね。きっと、また新しい感動があるような気がします。

| 08:29 | カテゴリー:映画
2008年01月30日
「潜水服は蝶の夢を見る」★★★★★

先日、アカデミー賞ノミネートが発表になりましたが、組合のストの影響で授賞式が危ぶまれているそうで。授賞式なしだったゴールデングローブ賞もさら〜っと終わっちゃったものね。スタジオでずっと仕事をしていた私は、次の日に新聞で気づいたという、非常に残念な人になってしまいました。う〜む、アカデミー賞は大丈夫なのだろうか。レッドカーペットを歩く女優たちのゴージャス・ドレスが見たい!私の一押し、「ノーカントリー」のハビエル・バルデムがオスカーを獲るところを見たい!どうか、無事に授賞式が行われますように…。

さて、今回ご紹介する作品は、今年のアカデミー賞で監督賞・脚色賞・撮影賞・編集賞の4部門にノミネートされている「潜水服は蝶の夢を見る」。43歳の時に脳梗塞で倒れた、フランス版ELLEの名編集長ジャン=ドミニク・ボビーの自伝の映画化です。ジャン=ドミニクは、意識は正常だけれども体の自由を全て奪われてしまうというロックト・インシンドロームになり、唯一動く左目の瞬きだけで自伝を書いたという驚異的な人。言語療法士が彼に教えたコミュニケーション方法というのが、言葉の中で使用される頻度の高いアルファベットから並べられた、特別なアルファベット表を読み上げて行き、該当する音が出てきたら、はい=瞬き1回、もしくは、いいえ=瞬き2回で文章を作って行くというもの。それを続けながら彼は自伝を書き上げたのです。

体の不自由な人間が、何かに挑戦する。そして、生きるということの素晴らしさを悟る。こういった映画は今まで沢山作られてきました。けれどもこの作品が新しいと感じるのは、その映像表現の方法です。映画がスタートすると、観客は違和感を感じるはず。スクリーンに投影されるのは、ちょっと斜めに固定された一つのアングルからの映像のみ。焦点があったかと思うと、ボヤけてしまう、その繰り返し。やがて、カメラを覗き込むように話しかける医者たちの姿が見え、その問いに答える主人公ジャン=ドミニク(マチュー・アマルリック)のつぶやく声が聞こえます。しかし、言葉は彼らに全く伝わらない。そうするうちに、ジャン=ドミニクは自分の身に何が起こり、どうして自分の言っていることが彼らに伝わらないのかを知るようになるのです。つまり、私たち観客はジャン=ドミニクの中、強いて言うならば彼が唯一動かせる左目から全てを見ているわけ。だから彼自身の姿を、観客は見ることが出来ないないのです。

しかし、彼が「自分を憐れむのをやめた」と心の中でつぶやいた瞬間から、カメラは外側からジャン=ドミニクを捉えるようになります。彼が、自分はこの左目と記憶とイマジネーションで、蝶のように自由に羽ばたくことが出来ると気づいた時から。そして、彼の大切な想い出と、友人、恋人、家族への想いが、ジュリアン・シュナーベル監督らしい、どこかアーティスティックさが漂う美しい色彩で紡がれていくのです。

習い始めたコミューニケーション方法で、言語療法士に最初に伝えたある言葉。その文字が完結する前に、意味に気づいた言語療法士は目に涙が浮かべ、思わず部屋を出て行ってしまいます。このシーンをきっかけに、私の目からは何度も涙が溢れました。

人は時に、体が不自由になったり病に冒されたり、あるいは自分の身に大きな悲劇が降り掛かって、やっと自分の本質や「生きる」という真の意味を知るのでしょうか? だとしたら、後になって悔やむより、どんな状況であっても、今この時を謳歌したい。ジャン=ドミニクの姿から生きる力をもらえる、そんな映画。必見です!!

そして、映画を見た後はこの一本…
ジャン=ドミニクが描く想像の世界を見ているうちに、私がふと思い出したのはハビエル・バルデムの演技が光るアカデミー賞外国語映画賞受賞作品「海を飛ぶ夢」。共に、体は動かなくとも、イマジネーションで自由に羽ばたく、という映像が秀逸です。

| 14:49 | カテゴリー:映画
2008年01月13日
「俺たちフィギュアスケーター」★★★☆☆

2008年に入り、気がつけばもう成人の日。新年の挨拶が遅れてしまいました。
まずは、寒中お見舞い申し上げます!
今年も沢山の映画を私なりの視点で紹介して行きますので、どうぞご贔屓に。

さて、皆さんは2008年の「映画初め」はどんな作品でしたか?私はとにかく何も考えずに笑っていたい!ということで、昨年末に見損なっていた映画「俺たちフィギュアスケーター」を見て参りました。原題は“Blades of Glory”で、昨年アメリカでBOX OFFICE3週連続No1を記録した大ヒット映画。ですが、正直、日本公開はないと思ってました。アメリカのコメディ映画って、笑いのツボが日本とはずれているから興行的に難しいし、アメリカでは「今一番、客を呼べるコメディアン」と言われる主演のウィル・フェレルの認知度が低いから。「主人公は僕だった」は良い映画だったけど、サタデー・ナイト・ライブ出身の彼ならでは笑いが詰まったコメディ映画(いや、おバカギャグ映画と言うべきか…)は、本国でどんなにヒットしようとも、悲しいことに殆どが日本で公開されないままDVD直行。確かに、私もウィル・フェレルには興味がなかった。イケメンという訳でもないしね。けれども、数年前に偶然、飛行機の中で見た「タラテガ・ナイト オーバルの狼」でハマってしまったのです。あまりにも面白くて、2回続けて見てしまった。私、この人とこの笑い、結構好きかも!? そんなわけで、2008年の映画初めは「俺たちフィギュアスケーター」を選んでしまったわけですが…。いやぁ、笑った。良い意味で、下らなすぎ!というか、この映画、企画の勝利ですね。男子ペアのフィギュアだなんて、あり得ないでしょう? 

ワイルドが売りのチャズ(ウィル・フェレル)と、王子様的存在のジミー(ジョン・ヘダー)は優勝争いをするほどの実力を持つライバル同士。日頃から犬猿の仲だった2人はある大会でダブル優勝しますが、表彰台で大喧嘩したためスケート界から永久追放されてしまいます。そんな2人が、なんと前代未聞の男子ペアで復帰するのですが…。

男子ペアってありえるの?と突っ込みをいれちゃうと、この映画は楽しめません。フィギュアスケーターたちの“氷上の美”をこよなく愛する人は、見ようとしてはいけません。そもそも、主人公の2人には女をメロメロにするワイルドさも、瞳に星がキラリな王子様的美しさも全く備わっていないもの。あるのは、どこか時代遅れなスタイルだけ。だからこそこの映画、2人が出てきただけで笑っちゃうのです。

クジャクをイメージしたジミーの衣装&振り付けが凄い。ちなみにジミー役のジョン・ヘダーは「バス男」の脱力キャラのひとです。そしてラストでチャズとジミーが見せる必殺技!(結局、どういう技なのか良くわからなかったけど)。しかも、新旧の有名スケーターが、こんな映画に出ちゃってる。 個人的には、主人公2人の演技より、ライバル男女ペアの「JFKとマリリン・モンロー」が大好き(笑)。

なんのこっちゃと思われた方は、ぜひ劇場で確かめてみてください。

ちなみにパンフレットは作られていないのね(残念)

| 17:29 | カテゴリー:映画
2007年11月25日
" No country for old men" (邦題”ノーカントリー”)★★★★★

11月10日から11月20日までNYに行ってきました。今まで行ったNY旅行では最長。着いたその日からブロードウェイのストライキが始まり、ブロードウェイは閑散としていましたが、私のお目当てだったクレア・デーンズのブロードウェイデビュー作"Pygmalion"は組合が違うとかでストライキに引っかからず、無事、見ることが出来ました。目の前で見るクレア・デーンズはとっても美しかった。演技もうまいしね。

さて、今回、NYに行ったらどうしても見たい映画がありました。それはコーエン兄弟の話題の新作"No country for old men"。 ちょうど、NYで限定上映が始まったばかりで、映画館は毎回、満席状態。私が入った映画館が、ユニオン・スクエアという場所柄かも知れませんが。
 
この映画、今年のカンヌ映画祭で好評だったにもかかわらず受賞できなかったという作品。でも、私が贔屓にしているRotten Tomatoesのサイトでは好評価を得ていて、ずっと気になっていたんです。原作はピューリッツァー賞作家、コーマック・マッカーシーのベストセラー小説。マッカーシーの本は読んだことがなかったのですが、今回、映画を見てペーパーバッグ買ってしまいました。ちなみに「血と暴力の国」というタイトルで翻訳本が出ているようです。

舞台はテキサス州。保安官役のトミー・リー・ジョーンズの語りとともに映し出される荒野は、人もいない、ただ乾いた風と砂埃だけ。そこで狩りをしていた男モス(ジョシュ・ブローリン)がある光景に出くわします。それは、無惨な死体が転がった凄まじい撃ち合いのあと。慎重に辺りを見回すと、二百万ドルの入った鞄が置き去りに。それを持ち逃げしたことから、モスの運命の歯車は狂い始めるのです。

登場人物のテキサス訛りになれるまで、かなり時間がかかりましたが、面白い。面白すぎる、この映画。簡単に言えば、大金をネコババしたモスをヒットマンが追う、というハラハラドキドキのクライム・ムービー。この事件に、平和なはずのその町の保安官が絡んでくるんですが、シンプルのようでいて、実は凝った演出(影とか光の使い方が巧い)。私はコーエン兄弟の初期作「ブラッド・シンプル」を思い出しました…。モスとヒットマンの追いかけっこは、常にピンと張った緊張感が漂い、見るものに息つく暇を与えないほど。でも、ちょっとした台詞にブラックな笑いが散りばめられているところは、コーエン兄弟ならでは。

でも、この映画の最大の見所はヒットマンを演じるハビエル・バルデム!この映画を見た日から、私の頭から離れないの、この人の姿が(笑)。おかっぱ頭に大きな目。どんなことがあっても冷静沈着。かなりの几帳面。でもって、この人の武器がボンベ!!酸素ボンベみたいなものをエアガンみたいに使うんだけど、これが凄いんです。なんでもかんでも、このボンベでやっちゃう。ここ数年見た中でNo.1のキレキャラです。

アカデミー賞外国語賞を受賞した「海を飛ぶ夢」の主人公も素晴らしかったけど、この人、この映画で絶対に賞を取るって予想してます。いや、映画自体が、これからの賞レースにかなり絡んでくると思われます。きっとそこを予想してるから、日本公開が来年の3月なのかも!?(深読みし過ぎかな)気になって調べてみたら、ハビエル・バルデムって1969年生まれでびっくり。マット・デイモンが1970年生まれでしょ。このあたりから男性は年齢と顔が一致しなくなるのか?(笑)

とにもかくにも、コーエン兄弟ファンはもちろん、クライム・ムービー好きな人は首を長〜くして待っててください。待てない人はオフィシャル・サイトの予告編をどうぞ。

ふふふ、見たくなったでしょ??

| 17:37 | カテゴリー:映画
2007年09月27日
「エディット・ピアフ 愛の讃歌」★★★★★

070928_01.jpg私が初めて「愛の讃歌」を聞いたのはいつのことだったろう。子供の頃、母が運転する車で聞いたラジオかもしれないし、それこそ、母が歌っていたのかも。今は韓流にどっぷりな母は、一時期、越路吹雪や美輪明宏に心酔し、シャンソンを良く聞いていました。家には越路吹雪のカセットテープが今でも大切に取ってあるし、美輪明宏の代表作「黒蜥蜴」に連れて行かれたこともあったな。ちなみに「バラ色の人生」は母が大好きなオードリー・ヘプバーンの「麗しのサブリナ」で初めて聞いたんだと思う…。

そんなわけで、自分でも気づかぬうちにシャンソンを親しんでいた私ですが、実はその大元、エディット・ピアフについてはあまり良く知りませんでした。シャンソンの代表的歌手で、今なおフランス国民に愛され続ける偉大な存在だということ意外は。だから、映画「エディット・ピアフ 愛の讃歌」を見てびっくりしました。人間の悲哀を歌い愛された歌手だもの、波瀾万丈な人生だろうとは思っていたけれど、こんなに激しく生き急いだ人だったなんて。

第一次世界大戦の最中に生を受けたエディット。大道芸人だった父は戦場へ。歌手を目指す母は路上で歌い日銭を稼ぐ毎日。やがて祖母が経営する娼館に預けられたエディットは、酷い角膜炎にかかり失明。少女に精一杯注いだ娼婦たちの愛情と聖テレーズへの祈りが届き、エディットの目は奇跡的に光りを取り戻します。戦場から戻った父はエディットを引き連れサーカス暮らしを始めますが、仲間とのいざこざで独立。そして、窮地に陥った父を助けるため路上で歌ったことから、彼女の人生は大きく変わっていきます。

映画は時間を交差しながら、エディット・ピアフの誕生と成功を描いていくのですが、これがかなり激しいかなりパンク。苦労の末に成功した、という美しい偉人伝ではないんです。成功をつかんでも、最愛の人に出会っても、いつもその先には悲劇が待っている。酒に溺れドラッグに溺れ、ボロボロになってもステージに立ちたいと渇望する姿に切なくなります。歌の途中で倒れて、皆にもう無理だと言われても、ステージで歌いたい。それはまるで、そうしなければ自分自身が消えてしまうかも知れない、という恐怖に捕われているかのようで胸が痛くなりました。

中でも、エディット・ピアフが生涯の恋人といわれるマルセル・ジルダンと死別するシーン。ワンショットで撮られているのですが、これが素晴らしい!幸せの絶頂からどん底へと落とされた女の絶叫。そして、その全てを歌に捧げる姿。幸せも辛さも痛いほど体験した人が歌えるのがシャンソンなのだなぁ、と思わずにはいられませんでした。

そのピアフを演じたのがマリオン・コティヤール。以前、紹介した「プロヴァンスの贈り物」でラッセル・クロウが恋に落ちるヒロインを演じていた人とは思えない変身ぶり。まるで、エディット・ピアフが乗り移ったような熱演は、今年見た映画では一番と言っていいでしょう。身も心もボロボロで、40代なのにもかかわらず、70代のお婆ちゃんのような姿のピアフまで演じきっていて、今後、賞レースに絡んできそうな演技を見せています。

「愛の讃歌」「バラ色の人生」など、おなじみの曲が散りばめられたこの作品。でも私の心を鷲掴みにしたのは、最後に流れる「水に流して」

♪ いいえ、ぜんぜん
  いいえ、私は何も後悔してない
  私がしたよいことも悪いことも
  何もかも、私にとってはどうだっていい

今の私はすっかりシャンソン・モード(笑)。私にとってe-stationサーガは楽しいことばかりだったけど、今日は悔いのない最終回にしたいと思いますっ!!

こっちでは情けないこと書いてますが…

最後に…

みんシネマloungeを読んでくれた皆様へ
長い間、ありがとうございました〜。映画が好き!ってだけで、ここまで書いてきました。少しでも皆さんの映画ライフに貢献できたなら幸せです。これからも映画LOVEを叫んでいきますので、どうぞよろしく。
そして、映画を紹介するにあたって、私や番組スタッフの無理を聞いてくださった映画関係者の皆様、ご協力ありがとうございました!

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| 17:08 | カテゴリー:映画
2007年09月20日
「パンズ・ラビリンス」★★★★★

070921_01.jpg今年2月に行われた第79回アカデミー賞。主要部門を獲得した殆どの作品がDVDで見られる中、ようやく日本で公開される映画があります。今回の賞レースでダークホースと言われ、撮影賞、美術賞、メイクアップ賞の3部門獲得した映画「パンズ・ラビリンス」。ダーク・ファンタジーの傑作との呼び声も高いこの映画の公開を、私のようにずっと待ち続けてきた映画ファンも多いことでしょう。果たして、一体そこにはどんな迷宮が広がっているのかと、ワクワクしながら見たのですが…。

やられました、ガツーンと心に一発。なんて美しく残酷で、切ない物語なのでしょう。いい意味で私の期待は裏切られました。これはまさしく、ダーク・ファンタジーという言葉を借りた戦争映画。狂気を帯びた現実の世界から逃げるため、幻想の世界に迷い込んだ少女の物語だったのです。

070921_02.jpg1944年、フランコ独裁体制下の暗黒のスペイン。内戦で父親をなくした少女オフェリアは、母カルメンの再婚相手、ビダル大尉の元に身を寄せることになる。そこは、内戦終結後も未だゲリラたちとの戦いが続く山奥の駐屯地だった。妊娠してからどんどん衰弱していく母のことよりも、自分の世継ぎが無事に生まれてくることしか頭にないビダル大尉を、オフェリアは父親として受け入れることが出来ない。何よりもビダル大尉は、顔色一つ変えずに人を殺す残忍な男だったのだ。そんなある夜、オフェリアは森で出会った昆虫の妖精に導かれ、家の庭の奥へと向かう。そこには大昔からあったというラビリンスがあり、羊の頭をしたパン<牧神>がオフェリアにこう告げる。「あなたは遠い昔に命を落としてしまった、地底の王国のプリンセスではないか」と。そして、本当のプリンセスかどうかを確かめる為、オフェリアは“3つの試練”を与えられるのだが…。

070921_03.jpg少女が不思議な世界に足を踏み入れる設定は、まさに「不思議の国のアリス」。オフェリアが最初の試練に向かおうと大木の前に立つ姿なんて、アリスそのものです。でも、日本にいる私たちがもっと強烈に感じるのは、宮崎駿の世界。オフェリアが虫の姿をした妖精に出会う森の様子や巨大なカエルの化け物など、どこか懐かしいシーンに出くわします。聞けば、ギレルモ・デル・トロ監督、かなりのオタクだとか。でも、大きく違うのは、オフェリアが思い描くファンタジーの世界はどこまでも暗く、恐怖に満ちていること。独創的な怪物たちはグロテスクで、子供ならばうなされてしまうかも。でも現実の世界では、それ以上に残忍なことが起きていて、目を背けたい描写も多く登場します。

しかし、過酷な現実から逃れようとオフェリアが描いた世界を、一言で幻想だと言いきれるのでしょうか。自分の力ではどうすることも出来ない、目の前で起きている悲惨な現実こそ、もしかしたら少女にとって不可思議な世界なのかも知れない。だからこそ、オフェリアはパンの迷宮で自分の意志で行動し、3つの試練に打ち勝とうとするのです。現実とファンタジーのトーンが見事に交錯した映像。私たちはまるで、少女と同じ目線で映画を見て行くことになります。

それにしても、オフェリア役のイバナ・バケロがかわいい。彼女でなかったら、この映画はあり得ないと思わせるほど魅力的です。オフェリア同様、少女から思春期へと向かう、もう二度とない瞬間を捉えたその瑞々しさは貴重です。

さて、問題はエンディング。この話は悲劇なのか、それともハッピーエンドなのか。あなたの心に問いかけてみてください。紛れもなく、今年見るべき一本です!

p.s みんしるの迷宮こちらから…


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| 17:36 | カテゴリー:映画
2007年09月13日
「ミス・ポター」★★★★☆

今週の火曜日。J-WAVE試写会「めがね」のMCをさせていただきました。この日のスペシャルゲストは映画「めがね」でエンディングテーマを担当された大貫妙子さん。深夜番組“THE UNIVERSE”水曜日のナビゲーターとしてもお馴染みですよね。J-WAVEでちらっとお見かけしたことはあったけど、お話をするのはこれが初めて。ちょっと緊張しましたが、サバサバした気持ちのいい方でした。ちなみに映画「めがね」は“これからずっと付き合って行きたいと思うような映画”とのこと。皆さんもぜひ、ご覧ください。

070914_01.jpgところで、今回紹介する映画には、大貫妙子さんも歌ったことのあるキャラクターが登場します。ブルーの上着を羽織ったうさぎ=ピーターラビット「ミス・ポター」は、111カ国で1億部という地球規模のベストセラーとなった「ピーターラビット」シリーズの原作者ビアトリクス・ポターを描いた作品です。

1902年。上流階級の女性が結婚もせずに仕事を持つことなどあり得ない時代。32才のビアトリクス・ポター(レニー・ゼルウィガ−)は、幼い頃に湖水地方で出会った動物たちの絵に物語を添えた自分の絵本を出したいと夢見ていた。ついに出版を引き受けてくれる会社に出会うエリザベス。編集担当者は会社を経営するウォーン兄弟の末弟ノーマン(ユアン・マグレガー)だった。今まで母のお守りをまかされ、仕事をさせてもらえなかったノーマンに、兄たちが任せたのは失敗しても構わないような仕事。編集初心者のノーマンに、ビアトリクスはがっかり。しかし、彼は本気だった。そして、ビアトリクスにとって真の理解者となっていく。2人で完成した「ピーターラビットのおはなし」は瞬く間にベストセラー。そして2人は互いに惹かれあうようになる…。

070914_02.jpgポスターや予告からしてこの映画、多くの人がいわゆる恋愛ものだと思うことでしょう。でも、違うんです。妥協をせず、精一杯生きることやめなかった女性の物語なんですね。親に結婚しなさいと言われ続ける30代女子。一度の人生だもの、結婚よりも自分の夢を優先させたい30代女子。そして、そんな自分を理解してくれる素敵なパートナーに出会いたい30代女子。そう、時代が違っても、今の私たちと変わらない女性の生き方が、この映画で描かれているのです。

ビアトリクスを演じるレニー・ゼルウィガーがうまい。この人、作品ごとに成長しますよね。「リアリティ・バイツ」で朝帰りするイーサン・ホークをドア越しに見送るチョイ役だったのに…。あの時は、こんな素晴らしい女優になるなんて思ってもいなかった。ビアトリクスは自分が描いた動物の絵とおしゃべり出来る、ちょっぴり不思議ちゃんでもあるんですが、レニーが演じると自然に見えるし、ノーマンと恋に落ちた時の、真っ白な肌がポッと紅潮した感じなんて本当に可愛いの。ノーマン役のユアン・マグレガーは「恋は邪魔者」以来の共演もあってか2人の息もぴったり。久々にスクリーンで素敵なカップルを見たような気がします。

070914_03.jpg監督は「ベイブ」で可愛い子豚に魔法を掛けたクリス・ヌーナン。「ベイブ」を越える企画があるまでメガホンをとらないと言ったヌーナン監督の、なんと11年ぶりの新作です。今回はピーターラビットの仲間たちが絵の中で動くんですよ。あの絵のタッチはそのままなのが素晴らしい。ベアトリスのドローイングや可愛い絵本たちの装丁も素敵で、映画に登場するものはみんな欲しくなってしまうほどです。

ビアトリクスが愛したイギリス湖水地方の風景もこの映画の見所の一つ。女性が元気をもらえる、そんな作品です。

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| 17:27 | カテゴリー:映画
2007年09月06日
「サイボーグでも大丈夫」★★★★☆

先日、偶然見た韓国のバラエティ番組。カン・ホドンという人気男性司会者の番組で、その日のゲストはパク・チニョンでした。彼はJYPエンターテイメントの社長であり、数々のヒットを生んだ名プロデューサー。韓国が世界に誇るエンターテイナーRainを手がけたことでも有名です。もちろんトークにもRainの話がたくさん登場したのですが、これがとっても興味深かった。中でも印象的だったのは、Rainは自分に向けられたアドバイスをすべてメモして部屋中に張っているという話。こんなに努力をする人なのだから、彼はどんな仕事に就いたとしても成功してみせるだろう、とパク・チニョンは話していました。

070907_01.jpgそんなRain=チョン・ジフン初主演映画「サイボーグでも大丈夫」。監督は私の大好きなパク・チャヌク。実は、パク監督がRainを起用したというニュースを聞いた時、正直、驚きました。今までのパク監督作品のイメージとRainが結びつかない…。でも、パク監督と仕事をするということは、「チャングムの誓い」から「親切なクムジャさん」へと変貌を遂げたイ・ヨンエのような変身ぶりが見られることは間違いないわけで、そのことが私をワクワクさせたのでした。

映画の舞台は精神クリニック。そこにやってきたのは、自分をサイボーグだと思い込んでいる女の子ヨングン(イム・スジョン)。蛍光灯を叱ったり、自動販売機とお話しをしたり。食事は乾電池をペロペロと舐め、それで充電できたと思っている。ある日、ヨングンは「人のもの」なら何でも盗むことが出来るイルスン(チョン・ジフン)に自分の“同情心”を盗んで欲しいとお願いする。一体、なぜ?“同情心”って盗めるの?訳がわからないイルスンは、しばらくヨングンの行動を観察することにするのですが…。

スケルトンになった工場ライン。そしてヨングンの空想の世界=グリーンの床の工場内。真っ赤な作業着と頭巾姿の鮮やかなヨングンは、まるで童話の世界の主人公。キャストやスタッフの名前が、服やPCなど色んな所に隠されているというポップなタイトルロールのセンスに心奪われます。

070907_02.jpg精神病院を舞台した映画は数あれど、その多くが閉塞感いっぱいの雰囲気。でもこの映画で描かれる病院は、パステルカラーに包まれたプレイルームのような空間。謙虚すぎて後ろ向きに歩く男、手鏡を持ちヨーデルを歌う女、腰にゴムが付いていると信じている男…。心を病んだ患者たちが、ちょっぴり個性的すぎる“子供”たちのように、優しい視点で描かれています。

祖母を亡くしたことで心のバランスを失ってしまったヨングンが、どんどん弱っていく姿に心痛めるイルスン。元気づけたい、という一途でピュアな彼の思いは伝わるのか。女性ならば、チョン・ジフンがヨーデルを歌うシーンでキュンとなり、かなり長いキスシーンではうっとりすること間違いなし。男性ならば、今年27歳というイム・スジョンの少女のような変わらぬ透明感に萌え〜となるのでは?(笑)。

パク監督ならでは残酷さを残しつつ、なぜか見終わると幸せな気持ちになるこの作品。娘のために作ったんだそうですよ。

辛すぎるから、とパク・チャヌク作品を敬遠していた人にこそ見てほしい、とってもキュートな映画です。

P.S 先日この映画の関連イベントで、フジテレビアナウンサーの佐々木恭子さんとお仕事しました〜
  詳しくはみんしる's Diaryを見てください

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| 16:54 | カテゴリー:映画
2007年08月30日
「デス・プルーフ in グラインドハウス」★★★★☆

子供の頃、映画はいつも“2本立て”で楽しんでいました。封切り後、すぐには見られなくても、ちょっと待てば近所の映画館で上映される。しかも、もう一本おまけがついてくる。少ないお小遣いで2本も見られて、何時間も映画に浸っていられるなんて夢のようでした。いわゆる名画座。最近はこの手の劇場がグッと減ってしまって、なんだか寂しい気がします。最新設備が備わったシネコンもいいけど、たまには味のある名画座に行ってみたい。

さて、名画座とはちょっと違うけれど、アメリカにも“2本立て”を楽しめる場所がありました。60〜70年代に数多く存在したグラインドハウスと呼ばれる映画館。ただ、そこでは名画ではなく、B級映画がかかっていたそうですが。その映画館を現代に再現しようと企んだのがクエンティン・タランティーノロバート・ロドリゲス。2人の作品やバックグラウンドを少しでも知っていれば、そのアイデアに思わずニヤッとしてしまうはずです。

070831_01.jpgアメリカで公開されたときのタイトルは“グラインドハウス”のみ。ロドリゲス監督の“プラネット・テラー”、タランティーノ監督の“デス・プルーフ”という順で上映されました。つまりグラインドハウスでの2本立てという設定。しかも、映画の前や間には予告編まで上映するという凝りよう。でも上映時間を3時間程度に押さえるため、結局、自分たちの作品を短く編集するハメになり、二人は国外で公開するときは1本ずつ上映すると決めたらしい。

そんな訳で、まず最初に公開されるのがタランティーノ監督の「デス・プルーフ in グラインドハウス」。スラッシャー・ガールズ・ムービーってことなんだけど…。う〜ん、なるほど(笑)。でも、思ったほどエグい訳じゃなかった。いや、最終的には、かなりスカッとしちゃう映画です。

070831_02.jpgストーリーは簡単明瞭。女を口説いては、デス・プルーフ=耐死仕様の改造シボレーで死に至らしめるサイコな男、スタントマン・マイク(カート・ラッセル)と、彼に狙われる女性たちのお話です。最初に狙われるのが、テキサスの田舎町で人気のDJと彼女のお友達の皆さん。続いて、テネシー州で映画撮影に携わっている4人の女性たち。2組を比べてみると、セクシー度もおバカ度も前者の方が上で、登場した瞬間から「この娘たちやられるな」って匂いがプンプンする(笑)。それに比べてテネシーの女たちはタフ。明らかにテキサスのギャルズよりも年上で、人生経験からの頼もしさも滲み出ている。そのうちの2人はスタントマンというキャラで、「キル・ビル」でユマ・サーマンのスタントを担当したゾーイ・ベルがもの凄いカースタントを見せてくれます。これは必見!

「レザボア・ドッグス」の有名な“Like a Virgin”トークに匹敵する、どうでもいいようなガールズ・トーク(しかも、さりげなくオタクネタが散りばめられている)。女性たちの脚と尻を舐めまわすように撮りまくるカメラワークに、こだわりの車で見せる迫力のカーアクション。しかも、フィルムの傷やノイズ、さらにはリールが飛んでしまうところまでグラインドハウスを再現していて、これぞまさにタランティーノの趣味満開といったところ。

070831_03.jpg恐ろしい奴なのか、それとも弱っちいのかわからないカート・ラッセルの切れっぷりも見物です。相変わらず、音楽は最高ですよ。

ちなみに9月22日から公開されるロバート・ロドリゲス監督のゾンビ映画“プラネット・テラー”には、“デス・プルーフ”のローズ・マッゴーワンタランティーノが別キャラで登場します。2作共、全く同じチョイ役キャラも出てくるので、探してみると面白いかも。


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| 17:12 | カテゴリー:映画
2007年08月23日
「シッコ」★★★★★

070824_01.jpg初めてかもしれない。上映終了後、試写室で拍手が起こる場面に遭遇したのは。
私が思うに、いわゆるマスコミ試写ってちょっと感情が押さえ気味になる。大笑いするシーンなのに周りが静かだったり、大泣きしてる自分がちょっと恥ずかしく思えたり。なんていうか、見る人たちが妙にクール(!?)だったりする時があって、たまに窮屈に思うときがあるのです。なのに今回は、自然と拍手が沸き起こった。しかも、驚くべきことにドキュメンタリー映画で…である。

作品のタイトルは「シッコ」。ドキュメンタリー映画をエンターテイメントに変えた男、アポなし取材で有名なマイケル・ムーア監督の最新作です。「ボーリング・フォー・コロンバイン」でアメリカの銃社会を、「華氏911」でイラク戦争を。彼なりのやり方で社会に物申してきた彼が今回取り上げたのは、アメリカの医療問題。これが、トンデモナイことになっているのです。

070824_02.jpg先進国で唯一、国民健康保険制度のないアメリカでは、6人に1人が無保険で、毎年1万8千人が死んでいくといいます。民間の保険に入っていなければ、治療は受けられない。でも、ここに登場するのは、保険に入っているのに、治療を受けられない、という人々。一体、どうなっているのか。

問題はアメリカのHMO(建国維持機構)というシステムで、これによって民間の保険会社は医師に給料を支払って管理します。しかも保険会社は、“治療は不必要”と診断した医者に、無駄な支出を減らした=会社に利益をもたらしたという名目で奨励金を与え、加入者には何かと理由を付けて保険金を支払わない。さらに多額の献金で政治家を操って、都合のいい法律まで作らせちゃう。本人すら忘れている過去の小さな病気など、とにかくあらゆることに難癖をつけて、保険金や治療を却下するという実態を、ムーア流の皮肉なユーモアをピリリと効かせながら見せていきます。保険会社の酷い仕打ちを受けてきた人々の話は、本当に身に詰まされます。命を助けることが使命であるはずの医師が、そんなことをして許されるの?

070824_03.jpgそれでは、他の国はどうなのか。疑問を持ったムーア監督は、まず治療費がタダだというカナダへ。たった一日、橋を越えてアメリカに行くのにも旅行保険に入らなきゃ嫌だというムーア監督の親戚が印象的。イギリスでは治療費の話を持ち出すたびに皆に笑われ、お金を払うためではなく貰うための会計ブースを発見。フランスに至っては、医療費がタダな上に、産休の間は母親のためにハウスキーパーまで国がケアしてくれる。もちろん、それらは国民の税収で賄われているのだけれど、様々なインタビューから見えてくるのは、普遍的な助け合いの精神

でも、その助け合い精神の鑑とも言うべき人々、9.11の救命作業で健康を犠牲にしたボランティア救命員たちをアメリカは助けてくれないのです。グアンタナモ海軍米基地に収監されているアルカイダの一味はアメリカで唯一の無償治療を受けているというのに…。ムーア監督と救命員たちが仕方なく向かったのは“敵国”キューバ。そこで手厚い治療を受ける場面には、思わず涙が溢れてしまいました。敵だとか思想だとか関係なく、そこにはただ純粋に“助ける”という行為が見えたから。

いわゆるムーア監督らしい攻撃性は影を潜めているかもしれません。でも、今回はあらゆる人に受け入れてもらう為の“優しさ”“癒し”が溢れています。これが、ムーア監督の新しさなんじゃないかな。

医療問題については、日本も色々な問題を抱えている今日。他人事では済まされない映画です。必見!

それにしても、救急車を呼ぶ前に事前申請が必要って…出来るかよ!!

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| 17:20 | カテゴリー:映画
2007年08月16日
「夏休みSP~ オーシャンズ13/トランスフォーマー/酔いどれ詩人になる前に〜」

毎日、熱いですぅ。もう、外に出たくない(笑)。そんな時はヒンヤリ涼しい映画館でちょっと一息しませんか。今回は夏休みSP!お薦め映画をドーンとご紹介。テーマは“イイ男になるための3本”です(笑)。

070817_01.jpgまずは、やっぱりカッコ良かった「オーシャンズ13」。映画館で私の隣に座ったのは超イチャイチャカップル。おい、クルーニー兄貴に怒られるぞ、テスとうまくってないらしいから。(ジュリア・ロバーツが演じた妻。オーシャンズ12に登場)。ブラピもイザベルと倦怠期らしいしね(キャサリン・ゼタ・ジョーンズ演じた恋人。こちらも12に登場)。そんな近況もさりげなく会話に盛り込んで、シリーズ好きをニヤッとさせてくれる今作。オーシャンズの古参者ルーベン(エリオット・グールド)を裏切ったホテル王バンク(アル・パチーノ)へのド派手なリベンジが描かれています。集結して計画を立てて作戦開始。前半、説明が多すぎる気はするものの、計画を実行するまでの様子が、シンプルに描かれているところが潔い。アル・パチーノはさすがの存在感で情け無用なキャラなので、見ている方もオーシャンズたちのリベンジをワクワクしながら見守っていられます。バンクの右腕=アビゲイルを演じるエレン・バーキンの、思いっきり寄せてあげた胸元もいいね。いわゆる美女を登場させず、一貫して男気溢れる仕上がりになっています(最後のオチも素敵です)。やっぱり彼らにはべガスが良く合う。ちなみに今回のポイントは「つけ鼻」「オプラ」「媚薬」。これがかなり笑えます。そうそう、絶妙なところで途切れてしまう、ブラピの携帯の着メロも要チェック!ビシッとスーツを着こなしながら、絶妙な抜け感を持つ。これがイイ男の条件ですな。

070817_02.jpg続いては「トランスフォーマー」。すでに大ヒットしている作品です。トランスフォーマーが日本生まれのロボット玩具だったことも、アニメだったことも全く知りませんでしたが、かなり楽しめました。しかも予告編からはシリアスなムードが漂っていたのに、蓋を開けて見たらSFコメディじゃないですか!とにかく見所はトランスフォーム(変身)。携帯が、ラジカセが、車がロボットへと変身する様は圧巻。凄すぎて笑っちゃいますよ。未知の「金属生命体」が何故、地球にやって来たのか、なんてことはすっ飛ばしても問題なし。突っ込みどころ満載ですが、とにかくこの映画に乗っかっちゃってください。個人的には冒頭にアマウリー・ノラスコが登場して、「プリズン・ブレイクのスクレだ!」と心の中で叫んでしまいました。しかも主人公のオバカな友達を「エレファント」に出ていたジョン・ロビンソンが演じているの。あの繊細さはどこにいったのぉ!?ちなみにオーシャンズのメンバー、バーニー・マックも出演。この夏、一番のデートムービーなのは間違いないでしょう。で、思った。いくつになろうとも、少年の心を忘れない男は素敵である。子供の頃に大切にしていたロボット玩具の話なんてのをサラっとされると、女性はキュンとなる…かも知れない(笑)。

070817_03.jpg最後は「酔いどれ詩人になるまえに」。いい男のお手本にするにはかなり上級です。なぜならば、どんな仕事をやっても続かない、酔っぱらい男が主人公。女の所に転がり込んで、時には通りで寝泊まりして。けれども男には体から溢れ出すものがあります。それは“言葉”。惨めな人生であろうとも、“言葉”を信じ突き進もうとする姿が、どこか愛おしく感じるのです。原作はアメリカを代表する作家チャールズ・ブコウスキーの自伝的小説で、主人公チナスキーを演じるのはマット・ディロン。少し押さえたトーンで演じるマット・ディロンの演技が素晴らしく、彼のキャリア最高かも。思えば「アウトサイダー」でアイドル俳優となった彼も40代。低迷期から見事復活し、「クラッシュ」ではオスカーノミネートとなった、酸いも甘いも経験した彼が演じるからこそ味があるのでしょう。成功も挫折も経験した男は魅力的。ただし、そこには変わらぬ信念が必要ですが。

ということで…残暑お見舞い申し上げます。

P.S 「オーシャンズ13」を見る前、渋谷の街角でリュ・シウォンさんに遭遇!!
  詳しくはみんしる個人ブログをチェック。


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| 16:18 | カテゴリー:映画
2007年08月09日
「プロヴァンスの贈り物」★★★☆☆

世間はそろそろ、お盆休み。いつもなら混んでるはずの車内が空いていて、うれしい反面、ちょっと寂しかったりもします。周りからは夏休みの予定を聞かれますが、毎年、たいした計画がない。というのも、仕事の状況によって休めたり休めなかったり。それに、ハイシーズンの旅行は色々と割高になるし、民族大移動に無理して参加しなくても…と思ってしまって、ね。ちなみにとある調査によると、今年のお盆休みは家でゆっくり過ごす、という人は全体の約6割だそうです。

070810_01.jpgところで、皆さんはプロヴァンスに行かれたことはありますか?そう、南仏。10代の頃、雑誌「オリーブ」の洗礼を受けパリジェンヌに憧れた私は、その後、プロヴァンスに恋い焦がれた時期がありました。きっかけはピーター・メイルのベストセラー「南仏プロヴァンスの12ヶ月」。自然とワインに囲まれて、のんびりと暮らす。いつかはこんな風に生活してみたいなぁ〜、と夢想したものです。あんなにハマっていたのに…まだ一度もいったことがない。っていうか、いまだパリに、いやヨーロッパに足を踏み入れたことが無いんだな、これが。

そんな、すっかり忘れていた私のプロヴァンス熱に再び火がつきそうな映画が「プロヴァンスの贈り物」。原作者は前出のピーター・メイル。そして監督は、なんとリドリー・スコット。タフな映画のイメージが強いのでちょっと意外に思うかもしれませんが、実はこの二人、30年来の友人同士。しかもメイルが定住するプロヴァンスに、スコット監督は15年前から別荘とぶどう園を所有しているのだそうです。

070810_02.jpgマックス(ラッセル・クロウ)はロンドンで超多忙な日々を送る敏腕トレーダー。ある日、南仏に住むヘンリーおじさん(アルバート・フィニー)が亡くなり、屋敷とぶどう園を相続することになったマックスは、公証人との手続きを済ませる為、おじさんが住んでいたプロヴァンスに出向くことに。さっさと売却して、ロンドンへ戻るはずだったマックス。しかし、彼の車で轢かれそうになった女性ファニー(マリオン・コティヤール)の仕返しによって、やむなく屋敷に滞在せざるを得なくなります。そして、おじさんと過ごした幼い日の自分を思いだし、忘れかけていた本物の人生の豊かさを取り戻していくのですが…。

070810_03.jpg美しくのんびりとした風景が心に染み渡ります。なんだか大きく伸びをして、深呼吸したくなるような、そんな感じ。ストーリーにひねりは殆どありません。だからでしょうか、何も考えずに、映画に身を委ねていられるんですよね。しかも、クスクスッと笑わせてくれるユーモアが利いている。利己的でお金のことばかりを考えてきたワーカホリックが、プロヴァンスのゆったりとした時間の流れに馴染めるわけがないわけで。秘書が準備してくれたレンタカーや、ぶどう園を切り盛りする男デュフロとマックスのテニス対決(ブランド対決!?)、道すがら“ランス・アームストロング!!”と叫ぶシーンなど(どこで叫ぶかは見てのお楽しみ)、グラディエーター=ラッセル・クロウが演じるからなのか、かなり笑わせてくれます。

現実的に考えると、仕事で成功しているマックスはかなりのお金がある。しかも、手に入るかどうかは別として遺産もあるわけだから、一般の私たちとはだいぶかけ離れた話ではあります。でも、そこが大人のファンタジー。ほんわかと穏やかな気持ちにさせてくれる作品です。出来ることなら、美味しいワインを飲みながら見ていただきたいですね。

もしかしたら、家族サービスに疲れたお父さんの心に一番、染みるかも!?


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| 17:23 | カテゴリー:映画
2007年08月02日
「リトル・チルドレン」★★★★☆

070803_01.jpg年を重ねるごとに思うこと。果たして今の自分は、その年齢に相応しいのかどうか。いつまでも若くありたいと思う反面、年相応のちゃんとした大人でいなきゃという焦りがあったり。仕事、恋愛、そして結婚。私くらいの世代ともなれば、自分の思うように生きたくても、それを貫き通すことって結構、大変だったりするわけで。大人でありたいけれど、どこか子供のようでもある自分。それが良いのか、悪いのか。

さて、今回紹介する作品は「リトル・チルドレン」。さらに小さい子供のこと、じゃあありませんよ(特にタスクさん)。パンフレットには“大人になれない大人たち”とあります。今の幸せに満足できず、もっと違う人生を渇望する大人たち。何かが足りなくて、こんなはずじゃなかったのにという思いから逃れられない大人たちの姿が描かれています。

070803_03.jpgボストン郊外の住宅地で、コンサルティング会社に勤める夫と、娘ルーシーの3人で暮らすサラ(ケイト・ウィンスレット)。娘を連れて行く公園の主婦仲間にも馴染めず、平凡な毎日にうんざりしていたある日、公園でブラッドに出会います。息子と遊ぶ良きパパ=ブラッド(パトリック・ウィルソン)は、主婦仲間が“プロム・キング”と呼び憧れる存在。そして、電話番号を聞いたら5ドル、という主婦仲間の賭けに乗せられたサラは、ブラッドに近づきちょっとした“いたずら”を提案します。その“いたずら”が、二人の人生を大きく変えてしまうことも知らずに…。一方、彼らの住む街では、性犯罪で服役していたロニーが釈放され、元警察官ラリーは糾弾すべく、彼の家に執拗に嫌がらせを繰り返し…。

エロサイトにハマる夫と、言うことを聞かない娘に振り回されるサラ。そして、司法試験合格を目指し勉強するものの、家計を支える完璧な妻(ジェニファー・コネリー)の主夫状態に陥っているブラッド。虚無感を抱える二人は、互いの心の隙間を埋めようと情事に溺れていきます。本当の自分をわかってくれる人、今の生活から自分を救い出してくれる人だと思えば思うほど、どんどんのめり込んで行く二人。良きママ、良きパパだったはずの二人が、あっという間にダメな大人になる様は滑稽でもあり、悲しくもあり。

070803_02.jpgそれにしてもケイト・ウィンスレットがうまい。なんて言うのかな、結婚して子育てに追われて、体型もすっかり変わっちゃったお母さん。そんな彼女が、久しぶりのトキメキを感じ、ブラッドと一線を越えてしまうと、内面から美しさが少しずつ溢れてくる。さすがアカデミー賞にノミネートされるだけあります。パトリック・ウィルソンもなかなか。イケメンだからなのか、彼が色んな手法で現実逃避をすればするほど、ダメダメ感が増していくんです。

過去を捨ててしまえば、と思うサラとブラッドとは対照的に、過去の過ちをずっと引きずっていく運命なのがロニーとラリー。ラリーがロニーを追い続けるのには、実はわけがあるのです。また、息子が犯罪者であろうとも、変わらず親としての愛を注ぐロニーの母の姿は心を打ちます。この3人の物語が悲劇に変わった時、映画は加速度を上げてクライマックスへと突き進むのです。ロニーを演じるのは名子役から奇跡的な復活を遂げたジャッキー・アール・ヘイリー。実はこのロニーとラリーの結末が一番心にズシンと来る。

監督は「イン・ザ・ベッドルーム」のトッド・フィールド。郊外=サバービアが持つ閉塞感の中で繰り広げられるストーリーは、可笑しくもあり切なくもあり。一度でも別の人生を渇望したことがある人なら、共感すること間違いなしです。


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| 17:00 | カテゴリー:映画
2007年07月27日
ブラッド・ルイス氏 「レミーのおいしいレストラン」
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映画「レミーのおいしいレストラン」の製作プロデューサーのブラッド・ルイス氏にインタビューして来ました。

| 02:45 | カテゴリー:映画
2007年07月26日
「レミーのおいしいレストラン」★★★★★

070727_03.jpg私の映画友達は、毎年お正月になると、お年玉をもらいにやってくる甥っ子たちに映画のDVDをプレゼントする。お金もいいけど、もらってうれしいのはそれだけじゃないぞ…とのことなのでしょう。今年はピクサーの「カーズ」をセレクト。でもそれだけじゃ寂しいか、と思った友達は、ついでに(あくまでも、ついでに)サッカー好きな彼らに“有名選手の名プレー集”もプレゼントしたらしい。しかし…。甥っ子たちが釘付けになったのは名プレー集の方で、「カーズ」にはまったく興味なし。「カーズ」見たいなぁ、と言い続けていたのは、某自動車会社に勤める甥っ子たちの父、つまり自分の兄だったそうである。

う〜ん、そうかもね。ピクサー作品って子供よりも大人の方がもっと好きなのかもね。かくいう私も、ピクサー映画を見る度に大粒の涙を流し、心の洗濯をさせてもらっている。いっぱい笑って、いっぱい泣いて、見終わった後には幸せな気持ちになる。どれを見てもハズレなしだし…。

070727_04.jpgと思っていたら、またもや大人をも唸らせる傑作登場。新作「レミーのおいしいレストラン」はフランスの一流レストランで繰り広げられるとっても美味しいストーリー。でも、主人公はレストランの天敵=ネズミである!それもペットとしてのネズミではなく、私たちが思わずギャーッ!と叫んでしまいそうなドブネズミ。人々に嫌われる動物を主役に、美味しいそうな映画を作ってしまったんですから凄いです。

天才的な味覚と嗅覚を持ちながら、大家族(ネズミですから)の毒味役でしかなかったレミーの愛読書は、今は亡き天才シェフ、グストーが書いた一冊の本。“anyone can cook”というタイトルに惹かれ、レミーは一流レストランのシェフになることを夢見ていた。そんなレミーがひょんなことから家族とはぐれ、行き着いたのは夢見までみたパリのグストーの店。そこで料理音痴の見習いシェフ、リングイニと出会い、フランス料理界をも揺るがす“大事件”を巻き起こす…。

大半が、レストランや家のキッチンで展開されるこの映画。ネズミのレミーは、必ずキッチンで逃げ回ることになるわけですが、あの狭い空間であれだけのスペクタクルなシーンになっているのが驚き。反面、調理しているシーンは匂いが漂ってくるほどリアルで、出来上がった料理の数々に、思わずお腹が鳴ってしまった。レミーが屋根から見下ろすパリの風景もまるで写真みたい。これ、実写じゃないよね、って何度も思った(笑)。

070727_05.jpg子供に夢を与えるピクサーですから、言わずもがなハッピーエンドはお約束です。でもね、それ以上に、この作品には大人たちが共感する部分がいっぱいある。見た目だけじゃない。人の評価が全てじゃない。そして何よりも、社会に揉まれても純粋さを失っちゃいけない、というメッセージ。見るからに冷酷な辛口批評家イーゴに心動かされたのなら、あなたの心もきっと磨かれたはず。

ちなみに原題は“ラタトゥーユ”。これが映画のキモになっています。

ちなみに、先月行われたブラッド・バード監督とプロデューサー、ブラッド・ルイスの記者会見の司会をさせていただきましたが、終始、笑いの絶えない楽しいものとなりました。作品を作ることが楽しくてしょうがないんでしょうね。

そうそう、ピクサー恒例の本編の前に上映される短編“LIFTED”も最高です!!


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| 16:02 | カテゴリー:映画
2007年07月19日
「レッスン!」★★★☆☆

大好きなNYで一度はやってみたいことの一つに、“ボールルームで踊る”というのがある。そう、社交ダンス。以前、夏の時期にNYへ行った時、リンカーンセンターの中庭に作られた野外ボールルームに遭遇したことがあった。爽やかな夜風の中、流れるジャズの生演奏。フォーマルな服装に身を包んだ老若男女が優雅に踊る姿。カッチリ決めているというよりも、皆、さりげなく自然に社交ダンスを楽しんでいるという感じがステキ。社交ダンス経験&パートナー無し!だった私は(一人旅だったもので)、こんな風に踊れたら人生楽しいだろうなぁ、と思いながら、ずっと外から眺めていたんだっけ。

070720_01.jpgさて、今回紹介する作品「レッスン!」は学園映画。それも、よくありがちな“落ちこぼれを更生させる”というストーリー。ユニークなのは、彼らを更生させる方法が“社交ダンス”だということ。でもこれ、実話にインスパイヤされたお話なんです。

ニューヨークで社交ダンス教室を経営するダンサー、ピエール・デュレイン(アントニオ・バンデラス)はある夜、路地裏に止められていた車を壊して逃げ去る高校生に遭遇。翌日、高校生が通う学校へ赴いたピエールは、「社交ダンスで、生徒たちの更生に貢献したい」と校長に申し出るのだが…。

ピエールが特別講師として受け持ったのは、家庭、犯罪、ドラッグなど様々な問題を抱える落ちこぼれ生徒たち。ヒップホップしか知らない彼らにとって、社交ダンスなんて時代遅れのダンスでしかなく、彼らはなかなか受け入れない。けれども、本来、社交ダンスに必要なものはテクニックよりも“相手を尊重する気持ち”。互いを見つめ、体をゆだねて、一緒にステップやターンをする。つまり、そこに信頼関係が生まれなければ、完璧なダンスは踊れない。生徒たちは社交ダンスから、様々なことを学んでいくのである。

070720_02.jpg主人公ピエール・デュレインは実在する世界的に有名な社交ダンサーで、ニューヨークの公立小学校で社交ダンスを教える“Dancing classroom”を始めた人。今では、60以上の小学校で社交ダンスが授業として取り入れられているそう。小学生の社交ダンス大会もあり、その模様が収められたドキュメンタリー映画「ステップ!ステップ!ステップ!」は日本でも話題となった(ピエール・デュレイン本人も登場)。優勝トロフィーを目指して社交ダンスに励む小学生たちの方が、この「レッスン!」の高校生たちよりもリアルでシビアかも知れない。けれども、「レッスン!」には楽しませてくれる要素が一杯ある。まずは映画に登場する、タンゴ、ワルツ、サルサ、メレンゲ、そしてヒップホップといったダンスの数々。バックに流れる音楽と共に見る者の気分を盛り上げてくれる。

そして、この映画の最大の魅力は、ピエールを演じるアントニオ・バンデラス。ブロードウェイ・ミュージカル“Nine”で見せたような華麗なステップはもちろん、マナーのある男の姿が本当にカッコいい!もしかしたらこの映画、“女性の品格”ならぬ“男の品格”を垣間見せてくれる作品なのかも。男性はぜひ、勉強していただきたきたい。

原題は“Take the lead”(リードを取る)。バンデラスみたいな人が、ダンスも人生も“Take the lead”してくれたらいいのに…(笑)。


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| 16:25 | カテゴリー:映画
2007年07月12日
「インランド・エンパイア」★★★★☆

“ツイン・ピークス”セカンドシーズンのDVDリリースを心待ちにしている今日この頃。レンタルするのをグッと我慢です。大人買いしたら一気に見て、めくるめく世界にどっぷり浸かる、という魂胆ですから。そのためにも、“プリズン・ブレイク シーズン?”(順調に進んでます)や“24 シーズン?”(こっちは途中…)を、一気に片付けておかないと。なんだか夏休みの宿題みたい。それも楽しい宿題(笑)。

ツイン・ピークスは母と妹と私の三人ではまりまくった、忘れられないリンチ作品。クーパー捜査官がいつも何かを美味しそうに食べる姿に誘われて、夜な夜なドーナツやら巨大オムレツ(当時の我が家の人気メニュー)を作って食べていたら、家族全員がみるみるうちに太っていったという、楽しいエピソード(!?)もあります。母があの世界を理解していたかどうかは疑問だけれど、いまだにツイン・ピークスを見ながら良く食べたという話をするところをみると、あの時の思い出はしっかりと心に刻まれているに違いない。

070713_01.jpgところで、今年はデヴィッド・リンチ監督の長編第一作「イレイザー・ヘッド」から30年。ツイン・ピークスのDVD化、パリで行われたリンチの一大回顧展が大盛況で、今年は世界的‘リンチ・イヤー’なのだそうです。そんな中で公開される待望の新作「インランド・エンパイア」。訳もなく胸が高鳴ってしまう、この気持ち…わかります?

上映時間3時間、相変わらず難解でした。筋道があるようで、ない。映画を解く鍵が掴めそうで、掴めない。いや〜!もう何がどうなってるの〜っ!!脳みそがとけちゃいそうだ〜!!! でも、これが快感。これが楽しい。

キングスリー監督(ジェレミー・アイアンズ)の作品「暗い明日の空の下で」に主演することになったハリウッド女優ニッキー(ローラ・ダーン)は撮影が進むうち、映画と同じように相手役デヴォン(ジャスティン・セロー)と不倫関係に陥り、現実と映画の区別がつかなくなっていきます。しかも、ニッキーが主演する作品は、ポーランド映画「47」のリメイク。しかも、撮影中に主演2人が殺されてしまい未完となった曰く付きの作品で…。

070713_02.jpg私が自信を持って書けるのはここまで(笑)。この後、ニッキーの私生活と彼女が主演する映画。そのポーランド版と、撮影中に殺されたとポーランド女優の世界。そしてウサギ人間が交錯し、メビウスの輪じゃ収まらないほどの不可思議さを持って映画は進んでいきます。舞台がハリウッド、しかも女優が主役なので「マルホランド・ドライブ」と同じテイストのように感じられますが、見ていくうちに思い出したのは「ロスト・ハイウェイ」。主役を演じていたビル・プルマンが、突然、違う俳優になっているというあのぶっ飛び体験をしていれば、この映画も難なく受け入れられるはず。

試写会で配られるプレス用パンフレットが面白かったです。特に、“作品を解釈して遊ぶための叩き台”として作られたインランド・エンパイア地図。構成と文を担当された川勝正幸氏、さすがです。

で、結論。「インランド・エンパイア」を理解しようなんて思っちゃダメ。だってすべてはデヴィッド・リンチの閃きで作られているんですから、わかる訳がない。となれば、私たちは出口のないリンチ・ワールドに陶酔するのみ。リンチの頭の中を、楽しませてもらいましょう。

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| 16:50 | カテゴリー:映画
2007年07月05日
「スクリーミング・マスターピース」★★★☆☆

070706.jpgアイスランドを代表する世界的アーティストと言えばビョーク。ニューアルバム“Volta”のジャケットに張られていたシールで着ていたのは、ドレス?着ぐるみ? しかも観音開き仕様のジャケットを開いてみると、そこにはまるでカメレオンのような“カラフル”ビョークさん。毎回、私たちを音楽だけでなくビジュアルでも驚かせてくれるなんて、最高です。

さて、そんな彼女を生み出したアイスランド。個人的にはポスト・モダンロックとの呼び声も高いシガー・ロスや、残念ながら解散してしまったカラシなど、他にもお気に入りのアーティストがいたのですが、アイスランドのミュージック・シーン、いまだに良くわかりません。と思っていたら、こんな映画が登場。アイスランドの音楽ドキュメンタリー映画「スクリーミング・マスターピース」です。

北海道と四国を合わせたほどの国土に、人口わずか30万人。90の音楽学校、6000人の合唱団員と400を超えるオーケストラ、数えきれないほどのバンドやDJがいるというアイスランド共和国。この映画では今まで見たことがなかった、アーティストやバンドの姿が数多く登場します。アルバムがヒットしたといっても200枚、2、3のバンドを掛け持ちしている人も多いというのですが、あらゆるジャンルがあるといっても過言ではないほど、とにかくそれぞれが個性的

070706_2.jpg印象的だったのをいくつか紹介すると、まずはオルガン奏者4人からなるアパラット・オルガン・カルテット。スーツ姿で演奏する姿といい、オルガンの並びといい、ちょっとクラフトワーク風!?です。 シガー・ロスのバックバンドもつとめる女性4人組アミナのサウンドは、ヴァイオリンの旋律にオルゴールを用いたりと、懐かしい童話を読んでいるような気分。そしてトラバントはアイスランドの首相官邸で初めてエレキサウンドを演奏したバンド。劇中、その様子が映し出されるのだけれど、首相官邸がまるでスキー場近くのペンションのようで、なんだかアットホーム(笑)。

でも、やっぱり一番はビョーク。彼女の存在感たるや、映画を見れば見るほど大きくなる。映画では現在の彼女が歌う姿はもちろん、ポップを悪趣味と位置づけた上で産まれたシュガーキューブスの映像。それ以前に所属していたタッピ・チーカラッスの貴重なライブ映像はかなりレア。ほっぺたを赤く塗り、まるで白雪姫のような衣装で飛び跳ねる姿は、今となんら変わりない…。スゴいなぁ、この人。インタビュー映像も必見。アイスランド語で話すからか、いつになく饒舌。しかも、世界を見てきた彼女だからこそ言える、アイスランドのミュージック・シーンについての意見がとても興味深かったです。

大自然をバックに男が歌うリームル(アイスランドの伝統的な歌唱法で、北欧神話や歴史などを語り継ぐ伝承芸術)で幕を開けるこの映画。エルフ=妖精が住むというこの島には、火山があり、氷河がある。人々は頑固でありながら、一遍の詩に涙する。度々、映し出されるアイスランドの冷たく幻想的な映像と重なるように、劇中に登場するステージのライティングはほとんどが青。でも、そこで演奏される音楽はマグマのように熱いんです。まるで土地と人が持つ相反する性質を受け継いでいるように。

ビョークが好きな人はもちろん、音楽が好きな人にぜひ見てほしい音楽ドキュメンタリー要チェックです。

ちなみに、ビョークの本名はビョーク・グズムンズドッティル。舌噛んじゃいそうです。


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スクリーミング・マスターピース
7月7日〜 全国順次ロードショー公開。
渋谷シネクイント他。

アイスランドのアーティスト〜ヨハン・ヨハンソンの来日公演!
7月12日(火曜)・7月13日(水曜)
場所:船の科学館
今回は”霧の彫刻家”中谷芙二子さんとのコラボレーション。
音楽と科学による神秘の世界。

http://www.arion-edo.org/tsf/2007/program/concert.jsp?
year=2007&concertId=m03


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| 16:46 | カテゴリー:映画
2007年07月05日
“Geniun Party”で探してね

7月7日から映画“Genius Prty”が公開されます。「アニマトリックス」「鉄コン筋クリート」などを生み出したSTUDIO4℃の下に、7人の個性豊かなクリエーターたちが集まって作られたオムニバス・アニメーション。7つの個性がぶつかり合う、まさにパーティ・ムービー。そんな作品に私、声優として参加させていただきました〜、パチパチパチ。

私が担当したのは4話目にあたる作品“ドアチャイム”。自分以外の“自分”に翻弄されるという、どこかシュールなショートストーリー。ここに登場するOLさんの役です。アテレコ自体はもうだいぶ前のことだったし、まだ映像もざっくりとした段階だったので、どんなシーンになっているのかよくわからないまま見たのですが…。わかった。私はわかった(もちろんだ!)。でも一緒に見た友達は「わからないなぁ、これじゃ」とのことでした。台詞、2つしかないからね。気をつけてないと、わからないよね(ちょっと、がっかり)。

そんなわけで、これから見る皆さんにヒントを一つ。私は上司(声は小倉久寛さん)と歩きながら会話しているOLの役です。探してみてね。だからといって、賞品を用意している訳じゃありませんが…。

| 14:17 | カテゴリー:映画
2007年06月14日
「舞妓Haaaan!!!」★★★☆☆

070615_01.jpg昼下がりの日比谷。うっすらと額に汗をかきながら、試写室へと向かう私。地下鉄の改札を出て地上に出ると、すぐさま、宝塚歌劇団を見に地方から来たと思われる団体ツアーの列に捕まった。見渡してみると、おばさまだらけ。す、スゴい。熱いね〜、まったく。そんな、熱気溢れるおばさまたちの姿を横目に、目的地の東宝試写室へ向かったのですが、改築工事中。軽く迷った後、やっと現在の試写室に無事到着し、席を確保してちょっと涼む。が、会場にエンドレスで流れる映画主題歌が、妙に暑苦しい(笑)。聞きながら、思い出した。昨年のサマソニで私が唯一、最初から最後まで見たステージはグループ魂だったことを! 会場の異様な盛り上がりに煽られ、初見だったのにも関わらず、大爆笑しながらステージを見たんだっけ。ってことは、この「舞妓Haaaan!!!」も、あの乗りが必要ってわけかしら!?

はい、その通りでした。上映時間2時間、冒頭から最後まで“阿部サダヲ&クドカン”という名のジェットコースターに乗っているような映画です〜。ついていくのに、結構、体力が必要。阿部サダヲを見ているだけで、カロリー消費されそうな気さえしてくる。

高校の修学旅行で訪れた京都で“舞妓はん”に出会って以来、熱狂的な舞妓ファンとなったサラリーマン鬼塚公彦(阿部サダヲ)。舞妓さんの応援サイトまで立ち上げ、舞妓はんとの野球拳を夢見る毎日を過ごす彼に、京都支社転勤(実は左遷)という、夢のような機会が転がり込み大喜び。一方、そんな彼を携帯で隠し撮りしては、「カッコいい〜」と呟く同僚OL大沢富士子(柴咲コウ)。一応彼女ではあったものの、舞妓が命の公彦にあっさり捨てられてしまう。

070615_02.jpgこうして、舞妓遊びのために全てを捧げる男と、愛する人に振り向いて欲しいあまり舞妓になることを決意する女。そこへ、毎晩のように舞妓遊びに興じるプロ野球のスター選手(堤真一)が登場し、もの凄いハイテンションで話は展開していきます。

正直、京都のことも舞妓はんことも、勉強になりそうで、ならない映画です。この作品の見所は、途切れることの無い阿部サダヲキレッぷりと、クドカンならでは笑いを楽しむための映画ですからね。見終わった後に何も残らなくていいんです。あ、でも堤真一の目一杯振り切った演技は、心に残るかも知れません。クールな演技より、こういうハチャメチャな方が私は好きかも。

あと、一つ注意するならば、途中に登場するミュージカルシーンでしょうか。ここで乗れるかどうかは、重要なポイント。突然来ますからね、私もちょっと面食らっちゃいました。でも、「これがあるから、女将役は真矢みきなのか〜」などと、妙に納得。さすが元祖宝塚スターです。これをクリアできたら、最後まで問題なくいけますよ。

プロダクションノートを読んだら、京都にロケハンで行ったのは水田伸生監督だけで、クドカンは‘るるぶ’を読んで脚本を書いたというのが笑える。またチョイ役も含め、映画に登場する沢山の俳優たちの中で、圧倒的な存在感を見せる植木等さん。これが遺作なんですね。最後の作品がこんなハイテンションなコメディ映画だなんて、なんだかカッコいいな、と思いました。

そんなわけで、ザッツ・“舞妓”・エンターテイメント、ここにあり。


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| 17:22 | カテゴリー:映画
2007年06月07日
「ゾディアック」★★★★★

070608_01.jpgゾディアック」を見た後、昔、買っていたディアゴスティーニの“週刊マーダーケースブック”を思い出した。当時、私は親戚の叔母さんと共にパトリシア・コーンウェルのシリーズ第一作「検死官」の面白さにハマり、シリアルキラーなるものに強い興味を持っていて、雑誌が発売されると書店に駆け込んだ。しかし、熱しやすく冷めやすい私の性格と、毎週500円は意外と出費かも!?という理由で、結局、10冊くらいまでで断念。調べてみたらあのシリーズ、96号まで発売されていたのね。まったく、私の飽きっぽさったら…。でも叔母さんは今でもシリアルキラーへの興味は尽きないようで、先日会ったときも、「“週刊マーダーケースブック”は大切に取ってあるわよ〜ん。」と妙に色っぽい声で言っていた。叔母さんに早く教えてあげなきゃ、この映画。

だって監督は「セブン」のデビッド・フィンチャーですよ。今まで手がけた映画はほとんど後味の悪いものばかりですよ。そんな監督が、60年代後半から70年代にかけて全米を震撼させた実話であり、未だ捕まっていない殺人鬼“ゾディアック”を題材に映画を撮るんですから、相性が悪い訳がない。もうこれだけで、見たいという気持ちを押さえきれません。

で、期待度120%で見たわけですが…面白い、実に面白い。2時間37分、緊張感が緩むこと無し。しかもデビッド・フィンチャー監督ですから、真っ正面から殺人鬼を描くのかと思いきや、描かれていくのはその事件に翻弄されていく男たちの姿。そう、この映画で描かれるのは人間ドラマなんです。

070608_02.jpg1969年のアメリカ独立記念日に殺害された若いカップル。数日後、サンフランシスコの新聞社に届いたのは真犯人だと名乗る“ゾディアック”からの犯行声明。一緒に添えられた奇妙な暗号文は、犯人の要求通り新聞の第一面に掲載され、一般読者までもが暗号文解読に躍起になります。その中で事件と暗号文に並々ならぬ興味を抱いたのは、新聞社の花形記者ポール・エイブリー(ロバート・ダウニー・Jr)と風刺漫画家ロバート・グレイスミス(ジェイク・ギレンホール)。一方、サンフランシスコ市警のデイブ・トースキー刑事(マーク・ラファロ)は相棒ビル・アームストロング刑事(アンソニー・エドワード)と共に事件解決に全力を尽くすものの、その思いとは裏腹に空回りばかり。挑発的な“ゾディアック”に翻弄されながら、犯人を探し当てる、事件を解決する、という願いは執念へと変わり、それぞれが人生を狂わせていくのです。

その必死さ、緊迫感。あと一歩というところまで近づいているはずなのに、つかむことが出来ない最後の決め手。気がつけば、自分も必死に犯人を捜し出そうとスクリーンに釘付けになっていました。実際にまだ真犯人は捕まっていないと知っているのに。最後のシーンでは、思わず「クゥ〜ッ」て声が出ちゃいましたよ。

070608_03.jpgキャスティングはもちろん、映像、音楽、ファッション、当時の空気感まで隙のない作り。濃密な人間ドラマをも魅せるサスペンスでありながら、ウィットに富んだセリフには、知的な笑いも。“ゾディアック”事件が基になっている「ダーティハリー」(知らなかった!)が劇場で上映されるというシーンも面白かった。

個人的には、一番人生を狂わされる男、エイブリー記者を演じるロバート・ダウニー・Jrが切なかった。落ちぶれた男の部屋でピコピコいってるTVゲーム(懐かしい!)までもが悲しく見えるの。ロバート自身の人生に重なるようで…(笑)。

事件解決というカタルシスはないものの、犯人がメディアに仕掛ける挑発。そして時間と共に風化され、人々に忘れ去られていく事件に最後まで捕われてしまった男たちの哀切に釘付けになるはず。デビッド・フィンチャー監督の新境地を堪能してください。

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| 17:14 | カテゴリー:映画
2007年05月31日
「あるスキャンダルの覚え書き」★★★★★

070601.jpg誰でも一つは持っている“秘密”ですが、これって案外厄介なものですよね。「二人だけの秘密だよ…」なんて言われればその響きにうっとりするんだけれど…。そもそも秘密とは「隠して人に知られないこと」なのに、秘密を持つと誰かに言いたくなる。秘密と言われれば、それを知りたくなる。時には秘密を共有することで仲間意識が生まれるけれど、秘密を知られてその間柄の力関係がガラリと変わることもある。

そんな“秘密”によって歪んだ関係となる女性2人の姿を描いたのが「あるスキャンダルの覚え書き」。心理サスペンスものですが、はっきり言って、そんじょそこらのホラー映画よりも怖いです(笑)。

舞台はロンドン郊外の中学校。労働階級の子供たちが学ぶこの学校のベテラン教師バーバラ。子供思いの優しい先生…ではなく、同僚や社会に対しては批判的、常に斜に構えた態度に衣着せぬ物言い。冒頭から始まる彼女のナレーションが毒舌過ぎて、思わず苦笑いしてしまうほどです。そんなバーバラに友人がいるわけがなく。しかし、新任教師シーバがやってきたことで、彼女の日常は大きく変わっていきます。学校には場違いなほど美しく、ボヘミアンなスタイルをしていてもどこか上品さが漂うシーバに惹かれたバーバラは、素直な心を持つ彼女とならより崇高な友情を築けるはずだと直感。少しずつ近づいていくのです。しかしある日、バーバラはシーバが15歳の教え子と情事に耽っているのを目撃。その秘密を知ったバーバラの心には黒い感情が生まれ…。

070601_2.jpgこの映画の恐ろしさは、バーバラの歪んだ感情が決して私たちの日常からかけ離れたことではないということ。自ら孤独だと思う人が増える現代において、コミュニケーション不足だったり、何かが欠落した心を抱えた人が多いことは、昨今のニュースを見ればわかるはず。そこに通じるような人間の心の闇を、見事なサスペンスとして描いていています。

そして何よりも素晴らしいのは、この映画で今年のオスカーにノミネートされた2人の女優の演技バトル。バーバラ役、ジュディ・デンチの迫力のある演技は見るものを圧倒し、さすがデームの称号を持つ名女優という感じ。いかにも、という服装も堅物な感じをうまく表現していて、マジで近づきたくないよなぁ、と思ってしまった。

そして、15歳の教え子と不倫してしまうシーバを、程よい色っぽさで演じるケイト・ブランシェットもやっぱりうまい。育ちの良さや世間知らずな感じと、早くに結婚をし家族を持ったことで、自分の一番美しかった時を失ってしまったという女の喪失感が良く出てます。それにしても、物事の危険を察知する力は弱すぎますが(笑)。ちなみにシーバの夫を演じるのは、世界中で大ヒットしている「パイレーツ・オブ・カリビアン」に出演しているものの素顔が良くわからないイカ男役(笑)のビル・ナイです。

未だ大人になれず極端な形でしかコミュニケーションできなくなった、痛々しい姿のバーバラ、がんじがらめだった生活から抜け出し欲望に身を任せるシーバ。どちらに感情移入するかによって感じ方も変わる映画かも知れません。

でも、秘密を知られる相手には気をつけなくちゃね。


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| 17:24 | カテゴリー:映画
2007年05月24日
「パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド」★★★★☆
今週は“パイレーツ”づくしな私です。ざっと時間を計算してみると、<試写:2時間48分>+<受付から終了までの記者会見の所要時間:2時間20分>+<アジア・プレミア取材時間:4時間>+<オーランド・ブルームのインタビュー時間:たった3分(みんしる史上最短)>。合計9時間11分と、一つの作品に関わった時間としては大記録だ。さぁ、これをどうやって放送で紹介しよう…悩むなぁ。

ところで様々な会場に行って気づいたこと。まず、記者会見場でもアジア・プレミアでもレポーターのコスプレ度が高かった。もう、皆、“祭”という感じで、気合い入ってるなぁ、と感心。アジア・プレミアでキャストが登場した時の観客の声援も気になった。声の大きさは同じくらいだけど、ジョニー・デップよりもオーランド・ブルームの方が若干トーンが高め(?)。そして大御所、バルボッサ役のオスカー俳優ジェフリー・ラッシュと、デイヴィ・ジョーンズ役のビル・ナイ(今作で一瞬素顔が見られる)。ジョニーもオーリーももちろんいいけど、この二人が本当にチャーミング!記者会見もアジア・プレミアもこの人たちのおかげでとっても楽しいものになったと言ってもいいくらい。ジェフリー・ラッシュのジャック・スパロウの真似には笑った。


というわけで、世界が待ち望んでいた「パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド」。シリーズ3部作、遂に完結するわけですが…。

一言で言うと、“海賊たちの存亡を賭けた戦い”が描かれていきます。世界制覇をもくろむ東インド会社のベケット卿が一体誰と手を組むのか。それを阻止する為の道は何なのか。そして、パート2でクラーケンに飲み込まれたジャックはどうなってしまったのか。

最後ですからね、新旧のキャラクターが総出演ですよ。でもって、それぞれの思惑が絡み、メチャクチャですよ。中盤までしっかりついていかないと、何がなんだかわからなくなる恐れあり、です。そして最後はめくるめくスペクタクルゥ〜。凄いことになってます。これはもう、見てもらうしか。ヒントは“戦いの舞台は大渦巻き”です。そうそう、エンド・クレジットが終わった後もストーリーは続きますからね。見逃さないでください。

さすがに大ヒットシリーズの完結編という出来です。映画が完全にアトラクションと化している。そもそもディズニーランドの“カリブの海賊”から生まれた訳ですからね。立派なものです。そして、最終的に感じたのは、この映画のベースはあくまでもウィル(オーランド・ブルーム)とエリザベス(キーラ・ナイトレイ)のラブ・ストーリーが軸になっているということでしょうか。

それにしてもジョニー・デップのラブコールで、完結編で遂に出演を果たしたキース・リチャーズの存在感は凄いです。あの姿が今も脳裏に蘇る(笑)。ちなみにゴア・ヴァービンスキー監督は「キースは撮影中じっとしていないから、かなり困った」そうです。そんなことを思いながら見ると、楽しみもひと際かも!?

大ヒットシリーズを締めくくる「パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド」。やっぱり、楽しいものには乗っておきましょ。


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| 16:47 | カテゴリー:映画
2007年05月17日
「主人公は僕だった」★★★★☆

070518.jpg去年、NY行きの飛行機の中でメチャクチャ面白い映画を見ました。タイトルは“Talladega Nights: The Ballad of Ricky Bobby”。主演はサタデーナイト・ライブ出身で、アダム・サンドラーと並び今や稼げるコメディアン俳優No.1のウィル・フェレル。NASCARを舞台に繰り広げられるこのアクションコメディは、本国で興行収入175億円を記録した大ヒット作品。機内で2回も見てしまったほど面白かったけど、日本では劇場公開されないだろうなぁ、と思っていたら…。やっと「タラデガ・ナイト−オーバルの狼−」というタイトルで6月にDVDが出るらしい。ニコール・キッドマン共演作「奥様は魔女」や「プロデューサーズ」などの準主役作品は劇場公開されるのに、なぜか主演作はDVD直行となってしまうウィル・フェレル。難しいアメリカンジョークに加え、あの風貌がいかんのか!?(笑)。でも、遂に主演作が日本で劇場公開されます、それも心温まる作品で。タイトルは「主人公は僕だった」。

国税庁の会計捜査官として退屈で平凡な毎日を送っていたハロルド・クリック(ウィル・フェレル)に、ある日突然、“女性の声”が聞こえてきます。自分の考えや行動を、シンクロするように描写していくその声は、自分にしか聞こえない。しかも、突然やってくる。周りからは変な目で見られ、混乱するハロルド。そこへこんなフレーズが飛び込んできたのです。

「この些細な行為が死を招こうとは、彼は知る由もなかった…」

小説を読むとありますよね、こんなフレーズ。これから起こることを暗示するこの言葉。読む側は面白い。でも、書かれている側にすれば、冗談じゃないっ!どうも“書かれている側らしい”と気づいたハロルドは、よくわからないけれど“死ぬことになるらしい”自分の運命を突き止めるため立ち上がります。

冒頭から奇抜なアイデアに心奪われました。なぜ、ハロルドに声が聞こえるのか。どうしてハロルドが小説の主人公になり得るのか。ここで「ありえない!」と思ってしまったら、残念だけどこの映画は楽しめません。でも、心を少し広げれば、この映画が最後にもたらす幸せな気持ちを味わうことができるはず。

ハロルドはダスティン・ホフマン演じる大学教授ジュールズに相談をします。この教授が紐解く小説作法の数々がなかなか面白く、それを一つ一つ真面目に受け入れる堅物なハロルドとのやりとりはクスッとさせます。なんとか結末を変えるため、ハロルドは教授のアドバイス通り「敵対する相手=ケーキ屋のアナ」に恋をしたり、子供の頃の夢を取り戻したり。すると、今まで平凡だったハロルドの人生がイキイキと変化しくんですね。ちょっぴりパンクなアナ役のマギー・ギレンホールがとってもチャーミング。誰もが虜になるアナの手作りクッキーも美味しいそうでした。

一方、彼の姿と平行して描かれていくのが、10年振りの新作を書くというプレッシャーに苛まれ、どん底状態の作家カレン・アイフル。演技派エマ・トンプソンが悲壮感たっぷりに演じていて、この人こそフィクションの住人かと思わせるほど。主人公が死ぬストーリーばかりを書き続けてきた悲劇作家の産みの苦しみが伝わってきます。

最悪のフレーズがきっかけとなり、生きる喜びを知ったハロルド。果たして彼は声の主に会い、小説の結末を変えることが出来るのか。

平凡な毎日も、自分の心持ち次第でバラ色に変わる。大好きな人やモノがあれば、小さな幸せも大きな喜びになる。シュールなストーリーでありながら、見終わると暖かい気持ちにさせてくれる秀作。監督は「チョコレート」「ネバーランド」のマーク・フォースター

ちなみに、ウィル・フェレル最新作はフィギュア・スケート男子ペア(!?)を描いた「Blades of Glory」。うわっ、めっちゃ見たい(笑)。

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| 17:10 | カテゴリー:映画
2007年05月10日
「THE焼肉 MOVIEプルコギ」★★★☆☆

ゴールデンウィークに母と妹と甥っ子を連れて出かけたソウル旅行。今回、食した韓国料理を挙げてみると、まず、直訳すると鶏一羽という意味の“タッハンマリ(要は鶏が丸ごと一羽入った水炊きね)”に“センナッチポックム(激辛タコ炒め。食後の焼き飯が辛いけどうまいっ!)”“キムチマリクッス(さっぱりスープの冷やしキムチ麺)”そして“トトリムック(どんぐりの粉で作った寒天状の食べ物)に定番の“キムチチゲ”など。すべて美味しかったです〜。

ところで韓国と言えば“焼肉!”ですが、私は今だソウルで、ちゃんとした焼肉を食べた事がない。豚の三枚肉“サムギョプサル”はよく食べるけど、牛のカルビとかロースはまだ。なんでだろう?日本の焼肉が十分美味しいから、それに満足しているのかな…。

さて、そんな私の疑問はひとまず置いといて、なんと焼肉ムービーなるものが登場しました。その名も「プルコギ」。韓国語でプル=火、コギ=肉、つまり“焼肉”という意味ですね。

人気TV番組“ヤキニクバトルロワイヤル”で、赤肉料理で連戦連勝を続ける巨大焼肉チェーン店“虎王”の御曹司トラオ(ARATA)。トラオ人気で全国制覇を狙う虎王だが、なぜか北九州地区での売り上げはさっぱり。そこには“焼肉の達人=韓老人(田村高ひろ)”と一番弟子タツジ(松田龍平)、そして看板娘ヨリ(山田優)が切り盛りする“プルコギ食堂”があったのだった。うまい白肉料理(内臓系の肉)が売りで、地元の人から絶大な人気を誇る食堂を、あの手この手でつぶしにかかる虎王。かくして、虎王VSプルコギ食堂の宿命の対決が始まった。

この映画を一言で言うならば赤肉VS白肉、つまり肉が主役の映画です。裏を返せば高級VS庶民の対決か!? 最高の調理場で最高級の肉を調理するトラオに対し、換気扇からベト〜ッと黒い油が垂れる汚い店で、七輪の煙モウモウとさせながらコプチャンを焼くタツジ。どちらも美味しそうで思わず唾をゴクッと飲んでしまうほどなんですが、個人的には白肉に一票! だって料理好きな私のお爺ちゃんを思い出させてくれたから。新鮮なホルモンが手に入ると、映画に登場する韓老人のように一日がかりで丁寧に下ごしらえをし、親戚一同集めて焼肉パーティー。今でもみんしる家の語り草になるほど、お爺ちゃんの味付けは本当にうまかった(しみじみ)。お爺ちゃんのホルモン焼きが食べたいよ〜〜〜。

ちなみに映画の中で重要な存在となっているのが、韓国の代表的な総菜“ケンイップ(エゴマのキムチ)”。ケンイップがここまでフィーチャーされる作品は韓国映画を含めても無いでしょう。このケンイップも我が家ではおなじみ。おいしいケンイップがあれば、何杯でもご飯がいけちゃう。あぁ、お腹が空いてきたぞ(笑)。

なんだかお肉のことばかりになってしまいましたが、映画は漫画的チック。久しぶりに弾けた演技の田口トモロヲ&マイペースな桃井かおりコンビを始め、津川雅彦、ムッシュかまやつ、竹内力、前田愛など出演者が魅せるオフビートな笑いが満載(でも、ついていけるかな…)。クライマックスのトラオVSタツジの焼肉決戦がちょっと物足りないけど、さわやかな終わり方は良かったです。

とにかく、難しいことは考えず、映画を見た後はもちろん焼肉を食す。これが映画「プルコギ」の正しい見方ですぞ。


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| 17:21 | カテゴリー:映画
2007年04月26日
「スパイダーマン3」★★★★☆

4月16日、雨。たった一度の最初で最後のプレミア試写会@TOHOシネマズ六本木ヒルズ。世界最速で「スパイダーマン3」を上映というわけで、セキュリティが凄かった。電源OFFした携帯電話を白い封筒に入れて預けた後、エントランスに入ってバッグの中をチェックし、ゲート式金属製探知機をくぐる。でもって、ハンディタイプの探知機でボディチェックを受けて…と。まるで空港にでも来たかのよう。盗撮を防ぐために、ここまでやらなきゃならんのね。スタッフの皆様、ご苦労様でした。もちろん“STOP 海賊盤!”

それにしても制作費357億円です。映画史上最高だそうです。見終わった身としては、どこにどれだけのお金がかかっているのか気になってしょうがない。シーンごとに「ここはいくら」って表示して欲しいです(笑)。最新技術を駆使した映像も今では見慣れてしまって、私のような素人さんに微々たる違いはわからないけど、「スパイダーマン3」はわかったぞ。VFX凄すぎだもの。いつもよりも人数多めのアクションシーンは超高速、目で追うのが大変だし、謎の黒い液状生命体のピチャピチャした動きと、新キャラ・サンドマンの見事なまでの“砂状態”に驚愕しましたから…。

今やNY市民に愛される存在となったスパイダーマン=ピーター・パーカー(トビー・マグワイア<)。しかし、そんな自分にいい気になってしまったピーターは、気づかないうちに自慢話ばかり。女優業がうまく行かない恋人メリー・ジェーン(キルスティン・ダンスト)を傷つけていることにも気づかない、ダメな男に成り下がってしまいます。しかも、怒りをコントロールできないブラック・スパイダーマンへと変貌。今まで感じることがなかった新たなパワーに魅せられ、今回、スパイダーマンはダークサイドへと落ちてしまうのです。

少しずつ心がすれ違っていくピーターとメリー・ジェーン、そして父の敵をとるためニュー・ゴブリンへと変貌と遂げた親友ハリー(ジェームズ・フランコ)の関係がねじれていく中で、明らかになるベン伯父さん殺害の真相。そして、新たな敵サンドマン(トーマス・ヘイデン・チャーチ)とヴェノム(トファー・グレイス)との激しい戦い。映画のテーマを一言で言うのなら“赦し”でしょうか。

しかし新キャラが多すぎたのか、前2作に比べるとストーリーがさらっとしすぎる感は否めない。一つ一つのエピソードをもう少し丁寧に描いてほしかったな、と。もちろん、悩めるヒーロー、スパイダーマンの等身大さは相変わらずで、なんだか仲のいい男友達にダメだしするみたいに、ピーターに突っ込む私がいました。ちなみにダークサイドに落ちたピーターはなぜかダンス好き。これがイケてない。かなり笑えます。

色んな意味で中身がてんこ盛り!な「スパイダーマン3」。ストーリーが若干弱いものの、やっぱり最後までドキドキ楽しませてくれるし、シリーズ3作目としては上出来なんではないでしょうか。

GWはぜひ大きなスクリーンで、スパイダーマンと空中散歩(いや、空中アクション)を楽しんでください。

ちなみにサム・ライミ監督とトビー・マグワイヤの契約は今作までだそう。パート4はどうなっちゃうの?

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| 16:35 | カテゴリー:映画
2007年04月19日
「バベル」★★★★★

先日、友人に「今まで見た中で、一番後味の悪かった映画は何?」と聞かれた。私はすかさず「ミヒャエル・ハネケ監督の“ファニー・ゲーム”!」と答えたんだけど、他にも色んな作品名が出てきて、私ってそういう映画が好きなんだなぁ、と改めて思った。“後味が悪い映画”=“救われない映画”であり、人間の奥深くに眠っている悪や愚かさを暴く作品のこと。代表的なのがミヒャエル・ハネケラース・フォン・トリアーの作品で、見終わるとどうしようもないほど悶々とし、映画が持つ不快感が心を蝕む。しかし、その不快感は映画を何度も思い出させ、結果、映画の持つメッセージについて深く考えさせられる。これだから、私は見ることを止められない。

その類いの映画を撮る“私のフェイバリット監督”のリストの中には、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督もいるんだけど、彼の場合はちょっと違う。人間の愚かさや脆さを描きながらも、かすかな一筋の希望の光を与えてくれる。それを捉えられるかどうかは人それぞれだと思うけれど、彼はいつも小さな救いの手を延ばしてくれているような気がする。

そんな彼の最新作が「バベル」。菊池凛子の助演女優賞を含め、今年のアカデミー賞6部門7ノミネートを果たした話題作ですが、「アモーレス・ペロス」「21g」同様、今回もズシッと重い。軽い気持ちで見ると弾かれてしまいそうな…。

モロッコで山羊飼いをする幼い兄弟が、狼避けの為に父から渡された銃。彼らが放った一発の銃弾が、国境を越えて孤独な人々を繋ぎあわせていく。冷めてしまった絆を取り戻すべくモロッコへとやってきたアメリカ人夫婦(ブラッド・ピットケイト・ブランシェット)。メキシコ人の乳母(アドリアナ・バラッザ)に託された彼らの二人の子供たち。そして、母を亡くした後、心の溝が深まってしまった父(役所広司)と聾唖の娘(菊池凛子)。モロッコ、メキシコ、アメリカ、日本。孤独を抱えもがき続ける彼らは、自らの思いを通わせることができるのか。

それぞれのエピソードをバラバラにして見せていくというイニャリトゥ監督ならではの手法は変わらない。でも、今までよりはだいぶ見やすいような気がする。この手法だからこそ緊迫感が途切れず、一見、何の関係もない人々がどうやって繋がっていくのか、パズルのピースがはまっていく様を最後まで固唾を飲んで見守ることになるからだろう。だからあえてストーリーは紹介したくない。自分で確かめてほしいから。

神に近づこうと天まで届く塔を建てようとした人間たち。怒った神は人間の言葉を乱し、世界をバラバラにした―旧約聖書にあるバベルと呼ばれた街の物語。そこから名付けられたように、この映画に登場する人々は皆、それぞれの心を通わせられない。同じ言葉を話していても、想いが届かないもどかしさ。それを彼らは“痛み”を媒介にして乗り越えようとする。そしてやっとコミュニケーションが取れたとき、かすかな希望の光が見えてくる。

荒涼とした風景でも、きらびやかな都会でも、心を通じ合わせることが難しくなってしまったこの世界。映画で語られるストーリーは特別なことじゃない。同じようなことが、私たちの周りで日々、起きている。楽しい作品じゃないけれど、観ることで何かを気づかせてくれる、そんな映画である。

それにしても、菊池凛子の視線は力強い

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| 16:52 | カテゴリー:映画
2007年04月12日
「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」★★★★★

200万部を超え国民的ベストセラーとなったリリー・フランキーさんの「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」。その盛り上がりは一種の社会現象となり、本を読んでない人でも内容を知っているといっても過言ではないでしょう。そうなると、必然的に映画化となるわけですが、これがちょっと問題なんです、私の場合。う〜ん、ひねくれ者なんでしょうかねぇ、盛り上がれば盛り上がるほど、なんだか冷めてしまう。「セカチュー」の時も、あの波に乗り切れなかったしね。そもそも小説が映画化された場合、原作を先に読んでしまうとまず映画の評価が低くなる。それに加えて「東京タワー」はすでに2時間ドラマと連続ドラマになっているでしょう。これだけ多くの人が読み、見てきたストーリーを、さらに映画にする。もう十分、感動している訳だから、見る方もどこかシビアにならざるを得ない。

そんなわけで「とりあえず見てみよう」という気持ちを拭いきれないまま出向いた夕方の某試写室。私の勝手な予想は見事に裏切られ、号泣のあまり軽い疲労感を覚えるほど…。

そうです、見事にやられました(笑)。いやぁ、素晴らしい映画でした。原作との違いは、現在と過去が交互に描かれていくことくらいで、ほとんど忠実に映像化されています。現在のオカンを演じるのは樹木希林。そして若かりし頃のオカンを演じるのは樹木希林の実の娘、内田也哉子。本格的な演技は初挑戦とのことですが、彼女の起用は大正解。ある種の先入観があるから、最初はちょっと不安な気持ちで彼女の演技を見てしまいますが、やっぱり“カエルの子はカエル”。ホンワカした雰囲気といい、独特なオーラといい、単に似ているとか、演技だけでは醸し出せないところまでも同じなんですよね。もちろん、樹木希林はいつも通りの名演技。

そしてボクを演じるオダギリ・ジョー。やっぱり凄いですね、この人は。キャラクターを演じるというよりは、自分の中に取り込んじゃうっていう感じだから、すごく自然なんです。色んな人がボクを演じてきたけど、彼が一番リリーさんに近い。そんなボク=オダギリ・ジョーとオカン=樹木希林の二人。アドリブで生まれた台詞も多いんでしょう、二人のやり取りを見ているとどんどん本物の親子に見えてくる。

オトン役の小林薫やミズエ役の松たか子他、脇を固める俳優陣も豪華です。個人的には平栗役の勝地涼が印象的でした。ちょうど彼が出演していたドラマ「ハケンの品格」を見ていたから、イメージのギャップが強烈で(笑)。

この作品が成功している理由は、ベストセラーの映画化という気張りやプレッシャーが全く感じられないことじゃないかな、と思います。感動させようとか泣かせようとか、そういうことを強いるところが全くない。いかにもというシーンより、ささやかな瞬間に目頭が熱くなるんです。行間まで丁寧に描かれているというか。脚本は松尾スズキ、監督は松岡錠司。ほんと、いい仕事しています。

エンディングで福山雅治の「東京にもあったんだ」が流れる頃には、きっと思うはず。自分のオカンに会いたいな…って。

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| 17:10 | カテゴリー:映画
2007年04月05日
「ブラッド・ダイヤモンド」★★★★★

ダイヤモンドと聞いて私が思い浮かべるのは、ピンク色のサテンドレスに身を包んだマリリン・モンローが歌う“Diamonds are a girl’s best friend”という曲。マドンナが“Material Girl”のビデオクリップで真似していた「紳士は金髪がお好き」の名シーンですね。マリリン好きだった母の影響でほとんどの作品を見ましたが、やっぱり一番印象に残っているのがこれ。うっとりしながら、子供ながらに「いつか私もダイアモンド買ってもらうんだぁ…」なんて思っていたような。

それから大人になった私が自分で買ったり、時には頂いたりもしたダイアモンド(小さいものばかりですが…)。購入する時には“color”“cut”“clarity”“carat”という“4つのC”が大切。でも、もう一つの「c」があったなんて、この映画を見るまでは知らなかった。それは“conflict=争い”の「c」。

レオナルド・ディカプリオが今年度オスカーの主演男優賞にノミネートされた作品「ブラッド・ダイモンド」は、ダイヤを巡るお気楽なアドベンチャー大作、ではありません。実に骨太な社会派ドラマ。冒頭から目を背けたくなるほどの残虐シーンが続きます。でもこれが、ダイアモンドを巡る現実。

内戦が続くシエラレオネ共和国。反政府軍RUFの襲撃によって家族と引き裂かれ、ダイアモンドの採掘場へと連行された漁師ソロモン・バンディー(ジャイモン・フンスー)はピンク・ダイヤを発見。投獄された刑務所でその話を聞きつけたダイヤの密輸人ダニー・アーチャー(レオナルド・ディカプリオ)は、その在処を知るため執拗にソロモンに近づく。そこへ現れたのがRUFの資金源と言われる“ブラッド・ダイヤモンド”の真相を追うアメリカ人女性ジャーナリストのマディー・ボウエン(ジェニファー・コネリー)。ソロモンは家族を取り戻すため、ダニーは自身の自由のため、そしてマディーは真実を暴くため。ピンク・ダイヤにそれぞれの望みが託されるのだが…。

“ブラッド・ダイヤモンド”とは、反政府勢力の武器購入費用などにあてられる紛争ダイヤのこと。このダイヤを採掘するため人々は強制的に連行され、惨殺され、家族を失い、多くの血が流されたことから“ブラッド・ダイヤモンド”と呼ばれているのです。その事実をエドワード・ズウィック監督は否応無しに描いていきます。私はもう、胸をかきむしられる思い。その上、残された幼い子供たちが反政府組織に洗脳され兵士にされるというエピソードは、怒りを覚えずにはいられなかった。

レオナルド・ディカプリオがこの作品でオスカーにノミネートされたのも納得でした。だって、素晴らしいですもの。「ディパーテッド」以上、いや、ここ数年で最高の演技なのではないでしょうか。彼が演じるダニーは決してヒーローじゃありません。自分のためなら姑息な手段もいとわない男。しかし、ソロモンやマディーと関わることよって、彼の中で少しずつ変化が訪れるのです。機敏な心の動き、そしてどこまでもワイルドな姿をディカプリオが体を張って演じている。これには「タイタニック」が苦手だった男性もクラッとくること間違いなしです。息子への愛を貫く父親を演じ、助演男優賞でオスカーにノミネートされたジャイモン・フンスー。知的な雰囲気で、甘さを排除したダニーとの関係も好印象だったジェニファー・コネリーなど、脇を固める俳優陣も安定した演技で魅せてくれます。

血塗られたダイヤモンドが生まれる場所で時折映し出される、ただ美しいだけの自然。その対比がさらに、私たちの胸を締め付けます。社会派でありながら、娯楽性も兼ね備えた作品「ブラッド・ダイヤモンド」。この映画を見て、あなたは何を感じますか?

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| 17:59 | カテゴリー:映画
2007年03月30日
「オール・ザ・キングスメン」

ショーン・ペンという名前を見つけると、この映画はヘビーなんだろうなぁ、と思うようになりました。「21グラム」とか「ミスティック・リバー」とか「リチャード・ニクソン暗殺を企てた男」とか…。しかも、ヘビーになればなるほど、彼の額の皺が増えるような気がする(笑)。

最新作「オール・ザ・キングスメン」も例に漏れず、かなり硬派な作品。原作は1946年のピューリッツァー賞受賞小説、ロバート・ペン・ウォーレン小説「すべての王の臣」。私は未読ですが、実話を元にしたストーリーなんですね。

1949年、ルイジアナ州。実直で社会変革の理想に燃えていた下級役人ウィリー・スターク(ショーン・ペン)は、校舎建設入札の不正と役人の汚職を訴え続けるも、人々に理解してもらえず職を失います。しかし、校舎の欠陥工事から児童らが死亡するという事故が起き、不正を訴えていたウィリーは一躍、時の人に。そんな彼を記事にしたのが、上流階級出身でクロニクル紙の記者ジャック・バーデン(ジュード・ロウ)。それによって絶大な人気を得たウィリーの元へ、次の知事選候補という話を持って州の役人タイニー・ダフィ(ジェームス・ガンドルフィーニ)が現れます。いきなり後ろ盾を得たウィリーは知事選に立候補しますが、これは対立候補の票を割るための当て馬。記者という立場から傍観していたジャックはそのことをウィリーに告げ、選挙のからくりに傷心したウィリーは演説原稿ではなく、信念によって溢れ出た自分自身の言葉で労働者や農民に訴え、知事選で見事、勝利を収めます。しかし…。

理想に燃えていたはずのウィリーが権力を持つことによって、今まで嫌み嫌っていたはずの汚職やスキャンダルにまみれていきます。政治家の汚職を訴え、貧しい人々のためにすべてを捧げると誓った男が突き進む道は“善”なのか“悪”なのか。そして異なるバックグラウンドを持ちながら、ウィリーに惹かれたジャックが彼を救うために取る行動。それが大切な人々を失い、自らを絶望の淵に陥れることも知らずに。

ウィリーとジャックの人生が交錯する中で繰り広げられる嫉妬、裏切り。ここに登場する人々すべてが、どこかに“悪”を隠し持っているのです。それはある意味、認めざるを得ない人間の姿。そして「善は、悪からも生まれる。」のかも知れないという事実。

ケイト・ウィンスレット、アンソニー・ホプキンス、パトリシア・クラークソン(彼女が演じる美人広報官が曲者!)他、演技派俳優による重厚な演技、光と陰のコントラストがフィルム・ノワールを彷彿とさせる映像も見応えあり。
中でもウィリーを演じるショーン・ペンの演説シーンは必見。ちょっと鳥肌ものです。

今の時代の政治家たちと比べながら見れば、もっと色んなことを考えさせられる作品です。

| 01:15 | カテゴリー:映画
2007年03月22日
「ホリディ」★★★★☆

女性がロマンティック・コメディに求めること。それは適度にリアルで、適度にファンタジーであることではないでしょうか。たとえ「あり得ない!」と突っ込んだとしても、そのストーリーにどっぷりはまれる魅力があればOK。このさじ加減がロマンティック・コメディの肝だと思うのです。

LAで映画の予告編製作会社の社長として活躍するアマンダ(キャメロン・ディアス)と、ロンドンで新聞記者をするアイリス(ケイト・ウィンスレット)。アマンダは浮気が原因で長年の恋人と破局したばかり。一方、アイリスは長年中途半端な関係だった彼に失恋。それも別の若い女と結婚するという酷い仕打ちで・・・。LAとロンドンの失意の女性たちは、今いる最悪の状況から逃れたいという思いで一杯。そんな二人がひょんなことからホーム・エクスチェンジのサイトで出会い、意気投合。それぞれ、家も車もすべて交換し、2週間のホリディを過ごすことになるのです。

もちろん、新しい場所には新しい出会いが待っています。寒々としたロンドンのコテージで過ごすアマンダの元にやってきたのはセクシーな英国男性。彼はコテージの持ち主であるアイリスの兄グラハム(ジュード・ロウ)で、かつてないほどの孤独感に苛まれていたアマンダは、高ぶる心を押さえきれず、大胆な行動に。そして、二人はあっという間に引かれていってしまうんですね。まぁ、こんなに早くイケメンに出会えるはずはない!と、突っ込まずにはいられませんが、気がつくとなんだかうっとり見入ってしまう自分がいました。美男美女であることはもちろんですが、二人の会話がなかなか洒落ていて素敵なんです。キャメロンのファッションは勉強になるし、ジュードはやっぱりいい男・・・。

アイリスが過ごすアマンダの家はというと、ハリウッドの絵に描いたような豪邸。ロンドンとLA、どっちに住みたいかと聞かれたら、迷わず私はこっちを選ぶでしょう(笑)。驚きと喜びでいっぱいのアイリスを演じるケイト・ウィンスレットは、今まで見たことのないようなキャピキャピ振りではじけてます。そんな彼女の元に現れるのは、映画音楽家マイルズ(ジャック・ブラック)。キャメロン&ジュードの出会いに比べると、こちらはいささかスロースタート。けれどもさりげない感じが心地いい。優しく魅力的なアイリスとハリウッドきっての有名脚本家アーサーという老人との心温まるエピソードも良いです。LAという場所柄、映画業界に携わる人々の話が綴られ、映画へのささやかなオマージュも感じられるようになっています。そうそう、大物スターのカメオ出演も見逃せません。ジャック・ブラックの本領発揮!なシーンで登場するので大いに笑ってください。

強くなりたいと願って生きてきたから、恋人と別れても泣くことができなかってしまったアマンダ。そして、都合のいい女でしかないことを見て見ぬ振りしながら、愛されていると信じてきたアイリス。リアルな視点からのキャラクター作りは、「恋愛適齢期」でダイアン・キートンを可愛い女性に仕立てたナンシー・メイヤーズ監督ならでは。新しい環境で新しい人々と出会って、本当の自分に気づかされる。たまにはそんな“ホリディ”を過ごしたいものです。

| 17:39 | カテゴリー:映画
2007年03月15日
「デジャヴ」★★★☆☆

“この場面、前にも一度見たような気がする”

普段の生活の中で、不意に現れる擬視感=デジャヴ。ウィキペディアによると“デジャヴ”とはフランスの超心理学者エミール・ブラワックがシカゴ大学在学中に執筆した「超心理学の将来」の中で提唱したものなのだとか。難しいので詳しい説明は省きますが(笑)、デジャヴって不思議だけれど、言葉の響きに惹かれますよね。ビヨンセ様だって歌っていたくらいですから。

さて、今回ご紹介する映画はその名も「デジャヴ」。私のように「言葉の響きがね、好き」なんてときめいたりしちゃってると、あっと言う間に置いていかれる…かも知れません。なぜならミステリアスなサスペンス映画、しかもアクション満載だからです。

ニューオーリンズのカーニバル“マルディグラ”を祝う為、フェリーに乗船した海軍の水兵たちとその家族や友人たち。船内には陽気な音楽が流れ、人々は幸せそうな笑顔を浮かべていました。しかし、突然、フェリーは炎上。結果、543名が犠牲になってしまうのです。ATF(アルコール・タバコ・火器局)の捜査官、ダグ・カーリン(デンゼル・ワシントン)は鋭い観察力と分析力で現場を調査。やがて爆発現場近くで発見されたという若い女性の遺体にたどり着きます。そして、悲惨な姿となった女性クレアを見た瞬間、彼が強烈な“デジャヴ”に襲われるのです。

「私は彼女を知っている・・・?」
う〜ん、ここまで。なんだかサイキックな力による“デジャヴ”が関係しているのか、と思うでしょう?しかし、この後からストーリーは息をもつかせぬ驚くべき方向へと突き進んでいくのです。キーワードは“4日と6時間前”。ダグは爆破事件を阻止しするため、そして、無残な姿となったクレアを救うため、過去と未来に立ち向かうのです!

とにかくストーリーが斬新。事前に情報を得ないで見たほうがいいかも。だってこの映画、その驚きを楽しむこともポイントになっていますから。途中の科学的説明についていけなくても大丈夫。プロデューサーは「アルマゲドン」「パイレーツ・オブ・カリビアン」でおなじみジェリー・ブラッカイマー、監督はヒットメーカーで知られるトニー・スコット。彼らが作り上げる勢いに乗ってしまえば、絶対に楽しめます。ダグを演じるデンゼル・ワシントンはスクリーンに登場したときから、信頼感たっぷりのオーラを放っていて、安心して見ていられますしね。

ネタバレ厳禁な作品なので多くを書けないのがもどかしいのですが、見所は後半のカーアクション。ダグが凄い運転をするんですよ。こういうシチュエーション、今までになかったはず。そして映画ファンとしては、久々にヴァル・キルマーが見られて嬉しかったです。ダグと共に特別捜査をFBI捜査官役で登場するんですけど、最初、誰だかわからなかった(笑)。中年太りって言うんでしょうか、体が大変大きくなられた…。

舞台となっているニューオーリンズと言えば、ハリケーン・カトリーナの被害の影響が未だ色濃く残っている場所。一度は「デジャヴ」も撮影を断念したそうなのですが、ニューオーリンズのためにと映画ロケを敢行することにしたんだそうです。最後のクレジットには「ニューオーリンズの人々に捧げる」とありました。

最初に感じるいくつかの謎が一つずつ解き明かされ、そして迎えるエンディング。最後までハラハラさせるエンターテイメント作品です。

| 17:04 | カテゴリー:映画
2007年03月08日
「サン・ジャックへの道」★★★★☆

春になると思い出すのが小学生の遠足。低学年の時は江ノ島に行くことが多かったのですが、何せ私の家からすぐ近く。子供心に「つまらないなぁ」などと思ったものでした。でもね、春の海ってとってもキレイ。風が強くて、母が気合いを入れて作ってくれた、あざやかなお弁当に砂が入ってしまうのが、難だったけど…。

サン・ジャックの道」を見ていたら、久しぶりにお弁当を持ってどこかに行きたくなりました。ウォーキングをしながら自然と戯れる。気持ちよさそうだなぁ、と。だからといってこの映画、別に遠足の話じゃありません。もっと大変なんです。だって、徒歩で1500kmにも及ぶ巡礼の旅をするのですから。

会社経営者の兄ピエール。失業中の夫に変わって家族を支えるおばさん教師、妹のクララ。そして、アルコール漬けで家族に見放された弟クロード。母を亡くしたこの3兄弟に、ある日、遺産相続の条件が提示されます。それは、キリスト教の聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラまでの1500kmの巡礼路を一緒に歩くこと。無心論者で歩くことも大嫌い、顔を合わせればケンカばかりという仲の悪い3兄弟が、果たしてその条件を果たし、遺産を相続することが出来るのか。

2ヶ月はかかるこの長旅を先導するのは、ベテランガイドのギイ。険悪3兄弟と一緒に旅をするメンバーは、カミーユエルザのお気楽コンビ、カミーユを追って参加したサイッド、イスラムのメッカに行くと思い込んでいるラムジィという学生4人組。そして頭にターバンを巻いた訳あり女性マチルドという面々。

3兄弟は出発したそばからケンカを始めます。このやりあう姿が、可笑しいんです。凄まじい毒舌バトル! もちろんその姿に周囲は呆れ顔。「3人は母親を亡くしたばかりだから」と彼らをかばうラムジィのほうがよっぽど大人です(笑)。それに加えて、皆、現代社会の申し子。携帯電話も車もない自然であたふたする姿は滑稽で、携帯の電波をキャッチしようと、牛の群れに突進するわ、森の真ん中でぐるぐる回るわ、笑わせてくれます。

けれども、不平たらたらの3兄弟も、この長い道のりで少しずつ変化していくんですね。心が健やかになれば、体も健やかになる。人に対する優しさというものを少しずつ取り戻していくのです。大変なのは3兄弟だけじゃありません。他のメンバーだって、内には色んな問題を抱えている。それを互いに解いていく姿が、美しい自然と共に描かれていくのです。素晴らしい景色に見向きもせず、ぶつかり合っていた人たちが、少しずつ歩調を合わせはじめる。心が通じ合っていくから、言葉も少なくなっていく。そして自然の美しさに立ち止まることが出来る・・・。

出発地点のノートルダム大聖堂で、メンバーが書いた願い事の数々を裏でチェックする修道女や、巡礼の途中で出会う陽気なアメリカ人3人組などのエピソードも面白いです。そして何より、1500kmという巡礼路で登場する、自然と文化的遺産の美しさと言ったら! 終盤に登場する、巡礼者のミサ・ボタフメイロの儀式も必見です。

監督は「赤ちゃんに乾杯!」や「女はみんな生きている」のコリーヌ・セロー。登場人物のダメッぷりをシニカルに描きながらも、優しさを忘れません。亡き母が託した思いを3兄弟が知ったとき、私たちの心も、幸せな気持ちに包まれます。旅を終えた後の彼らの姿に、思わず涙が溢れるはずです。

最近、私が見たフランス映画の中でも、秀逸な作品。皆さんも、ぜひ、ご覧あれ。

| 17:44 | カテゴリー:映画
2007年03月01日
「さくらん」★★★★☆

現在、日本でもヒット中の「マリー・アントワネット」。砂糖菓子のような作品を見たとき、私はふと、いつになったら日本映画界にソフィア・コッポラのような存在が生まれるのだろうと思いました。いつになったら、スタイルもファッションもサウンドも、女性ならではの視点と感覚で、私たち女性を魅了する作品が登場するのだろうかと…。それから数ヵ月後、長くかかると思われたその答えは、ハッとするような赤色をまとって目の前に現れました。

その作品は「さくらん」。安野モヨコの原作を、フォトグラファーとして活躍する蜷川実花が初監督。脚本はタナダユキ、音楽は椎名林檎、そして主演は土屋アンナ。それぞれの世界で個性を発揮するカッコいい女たちが集結したというだけで、女性たちの気持ちは高揚するというもの。もちろん、彼女達のコラボレーションも素晴らしいものになっています。

舞台は江戸時代。吉原遊郭<玉菊屋>に連れてこられた8歳の少女・きよ葉が、出世して吉原一の花魁・日暮になり、遊女の夢「身請け話」をされるまでを描いた出世物語。といっても彼女の人生はある意味、ROCK。どんなに傷ついたって「てめえの人生、てめえで咲かす」という心意気。時代を超えて今を生きる女性たちの心を熱くすします。

主人公を演じるのは土屋アンナ。原作のあのルックスをそのまま再現できるのは、彼女しかいない。弱さを隠して、がむしゃらに突っ走る女性をいう役柄も、彼女のハマリ役。目力が凄いから、ケレン味たっぷりに睨みつける表情も様になります。

それ以上に艶やかなのが2人の遊女。きよ葉の面倒を見ることになる粧ひを演じる管野美穂は、美しさと知性を兼ね備えた完璧な高級花魁の役で、きよ葉に“手練手管”を見せ付ける流し目が官能的。高尾役の木村佳乃も素晴らしく、いけないとわかっていながらも客に溺れてしまう遊女の苦しみが胸を突きます。ライバルである日暮との取っ組み合いも凄い迫力。それぞれ濡れ場シーンにも体当たりしていまして、そのエロティックな美しさには、女性もドキッとするはずです。

艶やかな遊女たちから夢を買う男達も様々。女を裏切る男女に全てを与える男、そして、女を見守り続ける男・・・。遊郭という特殊な世界を取っ払ったとしても、女が成熟するには色々なタイプの男が必要よね、と思ってりして。

ところで、この映画の一番のポイント、それはヴィジュアル極彩色の洪水にクラクラします。 下手すると下品になるような色の組み合わせなのに、息を呑む美しさ。特に印象的なのが赤色。遊女の紅に衣装、花、壁と、とにかく様々な赤色が効いていて、これぞ和の色、という感じ。フォトグラファー蜷川実花ならでの色彩感覚が光っていました。

吉原大門の入口、中に浮いた水槽にはたくさんの金魚たち。ゆらゆらと泳ぐ姿は美しいけれど、そこから出ることができない運命は、吉原の遊女たちの生き様を物語っているようで、どこか切なく…。

作品に携わった女性たちパワーと、監督・蜷川実花という新たな才能を堪能してください。

| 15:24 | カテゴリー:映画
2007年02月22日
「どろろ」★★★☆☆
“♪ほげほげ たらたら ほげたらぽん ほげほげ たらたら ほげたらぴん”

数年前、深夜に見ていたTVからこんな歌が流れてきました。主題歌が終り画面に現れたのは“どろろ”の文字。歌詞のインパクトに心奪われた私は、あっという間にこのアニメの虜になりました。

天下を取るため、自分の子供を生贄として48体の魔物に差し出した室町時代の武士、醍醐景光。結果、生まれたばかりの息子は体の48箇所を魔物に奪われ、化け物のような姿であったため、赤ん坊はそのまま川に流されてしまいます。しかし、寿海という医者に救われた赤ん坊は、義手や義足などを与えられて成長し、少年は自ら百鬼丸と名乗り、奪われた体の48箇所を取り返すべく旅に出ます。そして、百鬼丸はどろろという名のこそ泥に出会い、2人は奇妙な友情で結ばれ、魔物退治の旅を共にするというお話。

調べてみると、アニメ版「どろろ」がスタートしたのはコミックが出版された後の1969年で、途中から「カルピスアニメ劇場」という枠での放送となり、タイトルも「どろろと百鬼丸」に変更。爽やかでファミリー向けなイメージの「カルピスアニメ劇場」で、こんなおどろおどろしいアニメが放送されていたというのが、ちょっと以外だったりして。

けれど、大人の私が見ても十分に楽しめるストーリーのクオリティの高さ。魔物との戦いだけではなく、人間の欲や愚かさ親と子の因果関係といったメッセージもあり、さすが手塚治虫作品!と感動してしまったのです。そんな「どろろ」が遂に20億円という制作費で映画化されたわけですが…。

ちょっと黒がかった赤色がダークな雰囲気を醸し出すオープニングから、百鬼丸が登場するシーンまではワクワクしました。百鬼丸が最初に闘うカニと蜘蛛が合体したような魔物(ヤシガニ蜘蛛)との戦いも面白かった…のですが。そもそも、私が見たマンガ版とは舞台設定が違っていまして、古いものと新しいものが混在した世界という感じ。最初に登場する酒場のシーンでは、何故かスターウォーズを思い出してしまった(笑)。ストーリーの軸に変化はなく、見所は百鬼丸を演じる妻夫木聡と、どろろ演じる柴咲コウ他、俳優たちの熱演ぶりです。特にブッキーは体にも心にも痛みを抱えた男の頑なな姿を演じ、演技の幅が広がったのは間違いないはず。魔物を倒して百鬼丸が一つずつ体のパーツを取り戻していくシーンは、VFXも良くできていましたし。他に、景光を演じる中井貴一は映画に重厚感を与え、長い歳月が過ぎても息子を忘れてはいなかった百鬼丸の母を演じる原田美枝子も良かったです。なのにね、どこか物足りない…。

どうも映画がどちらの方向に向かいたのかがイマイチはっきりしていなかったような気がするんですよね。シリアスなのかコメディなのか、どっちつかずのシーンがいくつかあって、そこが凄く残念な気がしました。そして、登場する魔物たちがいかかがなものか、と。最新技術を使ったのはよくわかるのですが、う〜ん、これも中途半端。別にエイリアンみたいな凄いものを作らなくてもいいと思うんです。目一杯つっこめるような徹底したB級ものにしてもいいと思う。要は、その魔物たちが与えるインパクトが重要。すっごいコワイのか、笑えるのか。魔物にも色んな意味での愛嬌がないといけないんだなぁ、と私なりに思うわけです。

とはいっても、公開から4週で200万人を動員、興行収入は25億を越え、制作費は余裕で回収できちゃったんだから凄いなぁ。しかも、続編2本が制作されることも決定。ちなみに製作費は2つ合わせて60億円だとか。こうなったら、もうちょっと金額を上乗せして、「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソンとか「スパイダーマン」のサム・ライミに監督してもらっても面白いかも!?(笑)

| 15:34 | カテゴリー:映画
2007年02月15日
「ドリームガールズ」★★★★★
今年のグラミー賞授賞式で行われたユニークな企画“My grammy moments”。授賞式の生中継中にインターネット投票してもらって、最終選考に残った3人の中からジャスティン・ティンバーレイクとデュエットする女性を選ぶというもの。プロになってもなかなか立てないグラミー賞のステージで歌うチャンスが与えられるという、これぞアメリカ的な企画でした。そのラッキーな一人を発表するプレゼンターだったのが、「ドリームガールズ」アカデミー賞助演女優賞にノミネートされているジェニファー・ハドソン

「選ばれなかったとしても大丈夫。夢にはセカンド・チャンスが回ってくるのよ。私みたいに。」

発表の前に彼女が言った言葉です。アメリカン・アイドルの決勝で脱落したものの、「ドリームガールズ」のエフィー役を勝ち取り、今まで25の映画賞で最優秀助演女優賞に輝いたシンデレラガールの彼女ならではの言葉ですよね。

無名の女性ボーカルトリオがスターへの道へと駆け上っていく姿を描いた「ドリームガールズ」同様、ジェニファー・ハドソンはこの映画の“star is born”。一度は挫折を味わっているという部分でも重なります。そしてボーカルグループにありがちな諍いの中でスターへの道を突き進む主人公ディーナの姿は、まるでビヨンセが歩んできたヒストリーのよう。そんな事柄も、この映画をもっと面白くしているような気がします。

60年代初頭。エフィー(ジェニファー・ハドソン)、ディーナ(ビヨンセ)、ローレル(アニカ・ノニ・ローズ)という仲のいい友人同士で結成された“ドリーメッツ”。歌はうまいのになかなかコンテストで優勝できない彼女たちに手を差し伸べたのは、成功のために手段を選ばない野心家のマネージャー、カーティス(ジェイミー・フォックス)。強引な彼は、モメ事でバックボーカルに逃げられてしまったスーパースター、ジェームス・“サンダー”・アーリー(エディ・マーフィー)のバックコーラスとして“ドリーメッツ”をデビューさせ、彼女達は瞬く間にスターへの道を駆け上がっていきます。しかし、名声と引き換えに、彼女たちはたくさんのものを失なっていくのです。

いい曲を世に送り出しても、白人に受け入れられなければ金は稼げないと悟ったカーティスは、彼女達をポップス路線へ、しかもディーナをリードボーカルに抜擢し、ルックス面でも受け入れられるグループ“ザ・ドリームス”へと変貌させます。それによってリードボーカルの座を奪われるエフィー。彼女のプライドとわがままな性格が災いして、結局、グループから追い出されてしまうのです。そして映画は中盤から、スーパースターとなったディーナと、どん底から這い上がっていくエフィーの姿を追っていきます。

大物スターと堂々と渡り合う新人、ジェニファー・ハドソンの歌唱力は鳥肌物。特に切ないナンバー“And I’m telling you I’m not going”は言葉を失ってしまいました。見るものに、ビヨンセ以上のインパクトを与えるのは間違いないでしょう。でも、ビヨンセも凄いんです。だって無名時代のディーナを演じる彼女、スターオーラまったくなし。ビヨンセがあのオーラを消すって凄いことでしょう?祐さんがビヨンセに気付かなかったというんですから(笑)。でも、スターになるにつれ、徐々にオーラが宿っていくんです。そのあたりの変化のつけ方が素晴らしい。そして忘れてはいけないのが、エディー・マーフィー。JBをモデルにしたといわれるジェームス・“サンダー”・アーリーはまさに適役。時代の変化と共に、マーヴィン・ゲイっぽくもなるんだけど…。煌びやかなパフォーマンスから、自分の時代が終ったスターの哀愁までを見せ、見事、アカデミー賞助演男優賞ノミネートです。

シュープリームスとモータウンをモデルに作られたと言われる名作ミュージカルの映画化。今では、チャートの上位を常に占めているブラック・ミュージックですが、この映画に登場するような人々によって市民権を得たということを教えてくれます。

映画好きとしては、エンディングのこだわりかたにも好感が持てます。作品に関わった全ての人をリスペクトしているんですよ。この映画でスタッフがどんな仕事をしたのかを映像で紹介していくんです。歌やファッションも含め、初めから最後の最後まで楽しませてくれる、まさにエンターテイメントな映画に仕上がっています。

アカデミー賞歌曲賞に3曲もノミネートされている「ドリームガールズ」。授賞式では、一体、どんなパフォーマンスが見られるのか、今から楽しみです。

| 17:05 | カテゴリー:映画
2007年02月08日
「となり町戦争」★★★★☆
ここ最近、私の母は新聞や市の広報紙を声に出して読みます。理由を聞いてみると、ボケ防止のためとのこと。そして、小旅行の広告やクイズ、薀蓄が書かれた記事などを切り取って、私に読ませます。理由を聞いてみると、私のためになるから…だそうです。

さて、私の母が隅々まで読む広報紙ですが、映画「となり町戦争」の主人公“僕”は、足の爪を切るための下敷きでしかありません。訳ありで東京から地方都市・舞坂町にやってきたらしい“僕”は、町の広報紙を隅々まで見るほど、この町に興味はない。でも、おもむろに敷いた広報誌に目を疑う文章が。そこには、こんなことが書かれていたのです。

「舞坂町はとなり町・森見町と戦争を始めます。開戦日5月7日。終戦予定日は8月31日。」

本当なのか、冗談なのか。開戦したというけれど、旅行会社代理店で働く普通のサラリーマンの“僕”の周りは普段と変わらぬ平凡な日々が過ぎていく。広報誌に掲載される戦死者の数は増えていくけれど、“僕”には戦争が行われていることを全く感じられない。しかし、ある夜、彼の元に舞坂町対森見町戦争推進室の香西という女性から電話がかかってくる。“僕”に「偵察業務の辞令が出ました」…。

原作は2005年第17回小説すばる新人賞を受賞した三橋亜記の同名小説。私は未読なのですが、そのシュールなストーリーに吸い込まれてしまいました。のどかな町で始まる戦争。戦闘シーンも血みどろのシーンもない。でも、確実に戦争は行われていて、まったく他人事だと思っていた“僕”は、偵察業務を任命されたことで、その見えない戦争のど真ん中に立たされてしまうのです。

しかも戦争推進室の香西さんによると、この戦争は“町おこしの一環”。そう、恐ろしいことに、この映画においての戦争は“行政業務”なのです。それを淡々と、業務だからとそつなくこなしていく香西という女性の異様さ。でも、彼女の姿を見ていくうちに、たとえ疑問抱いたとしても、行政のルールですから、という一言で済まされてしまう、今の社会の姿が見えてきます。

もちろん、一番のテーマは戦争。世界のどこかで行われている戦争を、私たちはどう受け止めているのか。ニュースやインターネットで見聞きする悲惨な状況を見て心痛めていても、心のどこかで、自分には起こり得ない絵空事のように思っているのかも知れない。そして、知らず知らずに戦争に加担しているかもしれないという現実を、見ないようにしているのかも知れない。

町の様子も“僕”を取り巻く日々も、あまりにも静かで淡々としているからこそ、物語に秘められた恐怖が、じわじわとあぶりだされていくんです。結構、笑えるところも多くて、シュールなブラックコメディかと思っていたら、そこには真摯な問題提議があった。なかなか、見ごたえのある作品です。

主人公“僕”を演じる江口洋介は、なんとなく生きていた男が、戦争の不条理に目覚めていく姿を爽やかに演じています。そして、香西さんを演じるのは原田知世。いくつになっても透明感が漂う彼女って凄いです。香西さんの弟を演じる瑛太も、登場シーンは少ないものの、今、波に乗っているなぁ、と思わせる存在感がありました。

原作と若干、変更された部分もあるとのこと。原作を読んだ方も、そうでない方も、ぜひ見て欲しい作品です。

| 16:04 | カテゴリー:映画
2007年02月01日
「カンバセーションズ」★★★★☆
マンハッタンのクラシックなホテル。ウェディング・パーティが行われているバンケット・ルーム。そこで出会った男と女。煙草を吸う場所を探す女に、男はシャンパン・グラスを差し出す。「お酒は飲まないの」と言う女に、男はこう返す。「煙草は吸うのに?」

10年ぶりに再会した男女の一夜の物語が描かれていく作品「カンバセーションズ」。タイトル通り、この映画のキモは“カンバセーションズ=会話”。上映時間の84分がこの男女の会話だけ。思わず、イーサン・ホーク&ジュリー・テルピー主演の「ビフォア・サンライズ」と「ビフォア・サンセット」という傑作を思い浮かべますが、再会までに長いブランクがあること、そして2人にはタイムリミットがあるということを考えると、出会いから9年後の再会を描いた「ビフォア・サンセット」に似ているかも。大きな違いは、「カンバセーションズ」のほうがよりリアルでビターな話だということです。

久々の再会に、お互いの身上を探りあう2人。なぜこのウェディング・パーティに参加しているのか、そもそもどういう知り合いなのか。2人の会話からその関係が明らかになっていきます。その会話の中で、男は女と出会った頃の話を続け、女は現在進行形の話を続けるのが興味深い。男にとって彼女は今でも昔のままだと信じているんですね。つまり、昔のように今でも自分を思っていてくれているはずだ、と。けれど、女にとってそれはもう過去のこと。昔の彼との思い出は心の奥にしまってあって、時折、それを取り出したりするけれど、あの頃とは違う自分なのだと心の中で繰り返す。「男はロマンチストで、女はリアリスト」とよく言われますが、それを見事に捉えたセリフの数々に思わず頷いてしまうはずです。

2分割されたスクリーンに男女それぞれが映し出されるという“デュアル・フレーム・ムービー”という演出もユニーク。セリフを口にし、相手のセリフを聞いているときの男女の表情や心の動きを残さず捉えていくんですね。そして過去と現在の2人も。画面をキョロキョロ見るのに慣れるまでちょっと大変かも知れませんが、気が付けば、彼と彼女、どちらかのフレームに集中しているはず。その人物に興味を抱いているだけなのか、それともしっかり感情移入しているからなのか。見る人によって、色んな感じ方のできる作品です。

女を演じるのはヘレナ・ボナム・カーター。登場した瞬間から、訳あってウェディング・パーティに出席することになったことを感じさせてしまう存在感はさすが。男と再会し、一線を越えるか否か、思い出と現実の狭間で揺れる演技が素晴らしい。そして、男を演じるのは注目株のアーロン・エッカート。忘れられなかった女に再会し、いまでも自分を愛しているのだと信じようとする姿が、どこか可愛くて、そして切ない。

監督はこの作品が長編2作目となるハンス・カノーザ。フランス語の囁きが心地よいカーラ・ブルーニのナンバーも印象的です。

「あなたに会いたかったわ」という言葉とハッピーエンドをどこかで期待している男。そして、何かを期待しながらもハッピーエンドなどないという現実を冷静に見つめる女。見終わった後、男と女の恋愛観で話が弾むこと間違いなしの、大人の為のラブ・ストーリーです。

| 17:11 | カテゴリー:映画
2007年01月25日
「それでもボクはやってない」★★★★☆
私の結構、好きなジャンルの一つが裁判ものです。「推定無罪」「真実の行方」「ザ・ハリケーン」「ニューオーリンズ・トライアル」「評決のとき」「ア・フュー・グッドメン」「レイン・メーカー」などなど。正義の行方に息を呑み、人間の生き様に涙したり、人間の闇に驚愕したり。一番好きなのは、「アンタッチャブル」の裁判シーン。あれは何度見てもスカッとします。

邦画だとあまり思い浮かびません。見応えがあったのは、最近だと西川美和監督の「ゆれる」かな。大ヒットした「半落ち」も見てないし。どうも、土曜ワイドサスペンスの主人公が涙ながらに自白するっていう、お決まりのパターンが浮かんできてしまいます。そんな私の生涯映画リストに残るであろう作品が登場しました。「shall we dance?」の周防正行監督、11年ぶりの最新作「それでもボクはやってない」です。

一言で言えば、人生のためになって、知的好奇心を刺激してくれて、日本の裁判が抱える問題点をわかりやすく説いてくれる作品。ただ、次々と明らかになる理不尽な出来事に、見る側の心はずっとモヤモヤ。その緊張感たるや、2時間23分なんてあっと言う間

テーマは痴漢冤罪。主人公・金子徹平が、電車の中で痴漢に間違えられ、やっていないと言い続けたら起訴されて、なんと1年もの裁判になってしまう、というお話。第1回から第12回の公判まで(判決が出るまで)一つももらさず裁判の様子が描かれていくので、この映画の本当の主役は裁判と言っていいでしょう。

いや、それにしても冒頭から衝撃的でしたよ。痴漢に間違えられた徹平はあっと言う間に身柄を警察署に引き渡され、取調べを受けるんですが、「やってないものはやってない」としか言いようがない徹平に対して、刑事は「認めれば、罰金払って釈放だ」と言い、無理矢理にでも認めさせようとする。その隣の取調室では、本当に痴漢をした中年サラリーマンが罪を認め、罰金を払いあっと言う間に外に出る…。なんか、これ、おかしくないか?

ヘンな話、「やってない」と言えば言うほど、無罪から遠のいていくんです。これは“冤罪スパイラル”か!? 本当のことを言っているのだから、必ず信じてもらえる、という徹平の考えはあっと言う間に砕け散ってしまいます。家宅捜査もされ、アダルトビデオの類も証拠として提示されます。見ている側も、彼が犯人である可能性を否定できない、という思いにさせていきます。裁判官の質問も執拗です。どう答えても無理。けれど、やってないものをやったと言わなければならないのは、絶対におかしいということは徹平同様、私たちだってわかっています。でも、そうはいかないという現実を、周坊監督は徹底したリサーチを元に、リアリティたっぷりに見せ、そして私たちに問題を提議するのです。

キャスティングも素晴らしく、主人公・徹平を演じる加瀬亮をはじめ、徹平の弁護役の役所広司、検察官役の尾美としのり、お母さん役のもたいまさこなどなど、まったくもって無駄な役、俳優がいない。徹平の事件担当の裁判官なんて、本物かと思いましたよ(演じているのは正名僕蔵)。後に出てくる裁判官の小日向文世は、ネチッこくてね、言うことなし(笑)。その他、留置所の主のようなおじさん役の本田博太郎や、マンションの管理人役の竹中直人の演技が、時折、笑いを誘います。

“十人の真犯人を逃すとも、一人の無辜を罰するなかれ”

という冒頭に登場する言葉と、

“本当に裁くことの出来る人間は僕しかいない”

という徹平の最後の独白が心に残りました。

2009年からは裁判員制度もスタートし、一般の人にとって裁判というのが身近になっていくはず。その時のためにも、裁判とは?正義とは? ちょっと考えてみませんか?

| 16:17 | カテゴリー:映画
2007年01月18日
「ディパーテッド」★★★★★
本年度アカデミー賞最有力と噂されている映画「ディパーテッド」。その前哨戦とも言われる先日のゴールデン・グローブ賞で、見事、マーティン・スコセッシ最優秀監督賞を受賞しましね。辛口の批評家たちも唸らせ、高評価を得ているだけに、今年こそ、無冠の帝王スコセッシ監督がオスカー像を手にするのでは?と期待は膨らむばかり。でも、この作品は香港映画「インファナル・アフェア」のリメイク。欧米ではさほど有名でなくても、本国はもちろん、日本、韓国などアジア圏では大ヒットした傑作ですから、リメイクという時点でマイナス!? といっても、オリジナルに見劣りしているわけではありません。マフィア映画を撮らせるならやっぱりスコセッシ!!という作品なんです。

マフィアに潜入した警察官と警察に潜入したマフィアの対決という「インファナル・アフェア」の基本的なプロットはそのままに、登場人物の数を増やしたり状況設定に変更があったりと、細かいところが肉付けされていて、舞台となるボストン南部のサウシー地区ならではの乾いた雰囲気は、ジトッと重い空気が流れていた香港版と正反対なので、まったく違うものとしてみることが出来るのかも知れません。

私は昨年の秋、NYでこの映画を見ました。超満員の劇場の中、ジェットラグと疲れでスラング過多なセリフを消化出来きずに困った(笑)。でも、2時間30分まったく途切れない緊張感が凄まじく、釘付け。観客のリアクションも面白くてね、たたみかけるようなエンディングに皆“Oh NO〜!”“Oh My God!”の連発、最後の最後には笑いが起きるほど。

犯罪者の一族に生まれ、その血筋から訣別すべく警察官の道を選んだ男ビリー(レオナルド・ディカプリオ)は、マフィアの潜入捜査を命じられます。かたや、サウシー地区を牛耳るマフィアのボス、コステロに育てられたコリン(マット・デイモン)は、ボスの内通者になるためエリート警察官へとステップアップしていきます。互いに本当の姿を見破られたら一巻の終わり。しかし、マフィア撲滅の捜査の中で、2人は警察の方にもマフィアの方にも内通者がいることに気付いていきます。果たして、尻尾を捕まえられてしまうのはどちらなのか。

バレてしまったら死ぬしかないという極限に生きるビリーを、ディカプリオが熱演しています。辛さを湛えた表情を見ていると、眉間の皺が取れなくなっちゃうんじゃないかって心配になる(笑)。マフィアの一味として生きながらも、警察官の信念を忘れてはいけない。そこでもがく男の苦悩が、よく表れている。スコセッシ監督との仕事で着実に俳優としての力を上げてきてます。マフィアへの潜入捜査を命じる上司の一人ディグナム刑事(マーク・ウォルバーグ)とビリーのやり取りも凄い。汚い言葉オンパレードなマーク・ウォルバーグも(しかも髪型は七三分け!)がんばってます。マット・デイモンは、頭脳明晰で調子が良く、自分のことしか考えてない嫌な男を演じるとピタッとはまる。「リプリー」の彼に通じるものがあるかも。まさに“ネズミ”な奴(映画では内通者を“犬”ではなくこう呼ぶ)。

そして忘れてはならないのが、コステロ役のジャック・ニコルソン! もう、誰もオヤジを止められないと言う感じ。記者会見でニコルソンのことを聞かれたディカプリオのコメントが面白くて、「映画で見るそのままの人」ですって。私は思わず「シャイニング」を思い出したんですけど、ディカプリオも「“シャイニング”のDVDに入っているドキュメンタリーのようだった」と話していて、やっぱりね!と納得してしまった。ちなみに、映画に登場するコステロの愛人が、私にはジャック・ニコルソンの恋人だったララ・フリン・ボイルに見えてしょうがないんですけど。

記者会見でスコセッシ監督は、「“ミーンストリート”“タクシー・ドライバー”で、賞を取るための映画は作れないことを学んだ。けれども、オリジナルではないこの作品が観客や批評家に受けている。最初は“ディパーテッド”を撮りたいと思っていなかったし、今でもこの映画に怒りを感じているほどだ。けれども、皆は良いという。やっぱりまだまだ、映画についてはわからない。」と話していました。スコセッシ監督にオスカーをあげたいけれど、監督のほうはこの映画で取るのは本望ではない…のかもしれません。

とはいっても、タイトな人物描写と素晴らしい俳優陣による、リメイクを越えた映画になっているのは間違いない。スコセッシらしい無骨な男の世界を堪能してください。

| 17:06 | カテゴリー:映画
2007年01月04日
「マリー・アントワネット」★★★★☆
子供の頃、初めて読んだ少女コミックは「ベルサイユのばら」でした。マリー・アントワネットの縦長ロールと素敵なドレス、そして星が散らばる瞳に憧れたものの、内容を理解するにはまだ幼すぎたのか、2巻を読んだ辺りから「キャンディ・キャンディ」にシフト。結局、「ベルばら」に戻ることを忘れてしまったのでした。で、まさに今、完読を目指しているところ(笑)。

そんな私でも、ソフィア・コッポラが「マリー・アントワネット」を撮ると聞いたときは、胸が躍りました。子供の時に抱いた憧れを、そのまま映像にしてくれるのだろうと。でも、去年のカンヌ映画祭で上映された際に聞こえてきたのは悪評。やっぱり、ソフィアに歴史ものは無理なのか…と、心配したんですけどね、やっぱりソフィアは凄かった。「マリー・アントワネット」こそ、彼女じゃなきゃこんな作品は生まれない、と思わせる作品なのです。

祖国オーストリア繁栄のための政略結婚と知りながら、まだ見ぬ夫へ胸ときめかせ、馬車にゆられる14歳のマリー・アントワネット。フランスの国境付近で今まで身につけていたものをすべて取り上げられ、フランスの色に染められていく彼女の戸惑う姿。その後、バウ・ワウ・ワウ“アフロディジアック”にのってスクリーンに現れる映画タイトル。パンクです。カッコよすぎます!ここでやられちゃう人は、映画を面白く見れることは確実です。

事細かに捉えた歴史大作を期待してはいけません。ここに描かれるのは、母の命令でフランス王太子の元へと継ぐことになった少女の人生。贅を尽くしたヴェルサイユでの生活が、ティーンエイジャーの彼女にとってどれだけ奇妙で、閉ざされた世界だったのかが、マリー・アントワネットの視点から描かれていくのです。着替えを自分ですることすら許されない王室の慣習。夫のルイ16世はマリーよりも自分の趣味にしか興味がない15歳。皆に監視されながら迎えた初夜から、彼女はずっと王室のみならず最愛の母からも早く世継ぎを、というプレッシャーを浴びせられ、周りはひそひそと陰口を続けるばかり。誰にも言えない虚しさに打ちひしがれたマリーはそのストレスを、靴にドレス、宝石にお菓子で浪費することで発散していきます。

今も昔も変わらないなぁ、と共感しつつ、大して誉められることでもない。けれども、甘美な匂いが届いてきそうなスイーツをつまみながら、芸術的な美しさの靴をフィッティングする様子にうっとり…。お菓子はパリの老舗パティスリー“ラデュレ”。靴は女性の憧れ“マノロ・ブラニク”。でもって、撮影は本物のベルサイユ宮殿です!見てるだけでストレス発散、マリー・アントワネットと同じ幸せな気分になります。

マリー・アントワネットを演じるキルスティン・ダンストははまり役。というか、やっぱりソフィア・コッポラとキルスティンの相性はいい。「スパイダーマン」の彼女が信じられない(笑)。透き通った肌にブロンドヘア。王妃メイクも良く似合う。

どのシーンを切り取っても絵になる美しさに加え、18世紀の歴史絵巻に流れるニュー・ロマンティックなサウンド。そこに得意のガーリーテイストをプラスする。こんな方程式を考えられるのはやっぱりソフィア・コッポラしかいません。この感覚こそが彼女の才能なんだと、改めて感じさせられます。マリー・アントワネットと彼女が生きた世界を、目と耳で感じる。「マリー・アントワネット」は新感覚の歴史映画です。

| 16:58 | カテゴリー:映画
2006年12月28日
MOVIES OF 2006

今年も残りわずかです。先日、ようやくスケジュール帳のレフィルを買いました。エルメスさんのです。高い分だけ、価値のある日々を過ごそう、っていつも思います。それにしても・・・行っちゃいやだぁ〜、2006年さん!新年を迎えたら、あっと言う間に誕生日が来るにきまってる。そして、今年よりも速度を増して2007年が過ぎるにきまってる・・・ぶつぶつぶつ。あっ、いけませんね、新年を迎えるというのにこんなネガティブになっちゃ。来年の目標でも立てることにしましょう(笑)。

ところで、今年見た映画を数えてみたら、目標の100本に届きませんでした。この12月がちょっと忙しかったこともあって、結局91本…。まぁ、「プリズン・ブレイク」も「24シーズン?」(途中までだけど)見たし、韓国ドラマだって見たから、良しとするか。

さて、今年見た作品からがんばってBEST10を選んでみましたよ。まず6本は、このみんシネマLoungeで紹介した作品から。「クラッシュ」「カポーティ」「インサイドマン」「プラダを着た悪魔」「ビースティー・ボーイズ 撮られっぱなし天国」そして「王の男」。結構、悩みましたけど、何度見ても良い!と感じる作品たちです。

残りの4本は、良かったものの紹介する機会がなかった作品。まずは「グッドナイト&グッドラック」。ジョージ・クルーニー監督の才能、そして彼が本当にやりたかったことが凝縮された大人の為の映画でした。1950年代、レッドパージを果敢に批判したテレビキャスター、エド・マローを演じたデイヴィッド・ストラザーンがハマリ役。暗がりに立ちのぼるタバコの煙と、番組を締めくくる名セリフ“Good night and good luck”にしびれました。仕事に情熱を捧げる大人ってカッコいい、と思わせてくれるエド・マローの仲間たちもCOOLです。お腹周りが立派なジョージ・クルーニーはもちろん、ロバート・ダウニー・Jrパトリシア・クラークソンのカップルも素敵でしたね。ダイアン・リーブスのJazzでMELLOWになりながらも、真のジャーナリズムとは何かを考えさせてくれる作品でもあります。

続いては、アルフォンソ・キュアロン監督の「トゥモロー・ワールド」。「インサイドマン」のクライブ・オーウェンジュリアン・ムーア主演のSF作品です。18年間、子供が生まれないという異常事態が続く2027年の近未来のイギリスを舞台に繰り広げられるストーリーは、その原因を描くことも、解決論を解くこともありません。映し出されるのは人類存続が閉ざされた中で生まれる、テロや暴動、そして移民問題。カオスと化した社会状況の中で、ある秘密を持った移民の少女が発見されるのですが、果たして彼女は人類にとって希望となりえるのか。オープニングからエンディングまで、まったく途切れない緊張感が凄いです。そして8分間の長回しで見せるクライマックスは息を呑むほど。主人公テオを演じるクライブ・オーウェンって、どんどん良い役者になっていきますね。テオを支えるヒッピーな老人役のマイケル・ケインも最高! UKロック満載の音楽センスもGOODです。正直、邦題からは傑作という匂いがしないんですけど(原題は“Children of men”)、多くの人に見て欲しい作品です。

最後は日本映画から2本。ある事件がきっかけとなって崩れていく兄弟の関係を捉えた「ゆれる」は、ずっしりと心に残る作品でした。東京で成功した弟と、田舎で実家を継いだ兄。自由に生きる弟に対して、兄が心の奥底で感じていた羨望、そして嫉妬。弟想いだったはず兄が豹変したときの不気味さは、香川照之の演技力あってこそです。 オダギリ・ジョーは色っぽい俳優。改めてその魅力を感じました。西川美和監督の才能にも脱帽。
嫌われ松子の一生」。今年、一番、号泣した映画です。松子の転落人生を、ここまでカラフルでポップにエンターテイン出来ているのが奇跡というもの。痛いんだけど、笑える。笑えるのに泣ける。歌って踊って、楽しい演出すればするほど、彼女の悲痛な人生が際立ってくる。ハードな撮影をこなした中谷美紀は立派です! 松子が本当に欲しかった“愛”に気づかせてくれるエンディングには涙、涙でした。

ということで、来年も目指せ100本!

| 17:34 | カテゴリー:映画
2006年12月21日
「酒井家のしあわせ」★★★☆☆
先日、かわいい甥っ子が2歳になったことを祝いに、母の妹2人がやってきました。強烈なおばさん3姉妹に、私と私の妹に囲まれ、甥っ子は誕生日を祝ってもらったのでした。が、気がつけば主役はおばさん3人。松坂大輔にミキティ&ミラクル真央、「私の頭の中の消しゴム」と次々に変わる話のネタ。バースデー・パーティはただのやかましい井戸端会議へと変わっていきました(笑)。

ところで、甥っ子が生まれてからというもの、我が家には親戚がよく集まるようになりました。料理好きで、もてなし好きだった祖父がいたころは、ことあるごとに集まったものですが、亡くなってからはそんな機会もグッと減り…。でも、ここ2年は何かとみんなが集まるようになった、甥っ子がみんなを繋げてくれた、そんな気がするんですよね。やっぱり家族が集まるって大切。そして、家族と大きな声で笑うことって幸せ…

そんなことをふと気づかせてくれたのが「酒井家のしあわせ」という映画です。舞台は関西のとある田舎町。物語は、酒井家の朝の風景から始まります。味噌汁が出来上がり、食卓を囲む家族。せわしない母・照美(友近)は、部活に遅れると長男の次雄(森田直幸)を何度も呼び、食べ物で遊ぶ娘・光(鍋本凪々美)を叱る。そんな中、静かに朝食をとる父・正和(ユースケ・サンタマリア)。

一見、普通の家族に見えるけれど、照美はバツイチで、次雄は事故死した前夫との連れ子。光は父親違いの妹というちょっと複雑な家庭。中学2年の次雄は、そんな環境を最近ウザク感じています。言い換えれば、反抗期。ことうるさい母は無視、どこかつかみ所のない父をキショイと思っている。そんなある日、突然、父が家を出てしまいます。照美の実家で起きた親子喧嘩の最中、正和が大笑いしたのが原因?…と思ったら、なんと男を好きになったから!?

中学2年の男子にとって、それは重大事件。今までウザイと思っていた家族が、バラバラになってしまう!?自分なりに考え、離婚を回避しようと子どもなりに必死になります。その中で、次雄は今まで知らなかったこと、気づかなかったことが見えてくようになるのです。自分を取り巻く人々と様々な家族の形。弱々しそうに見えて家族への愛で一杯のお父さんと、どんな些細なことでもちゃんと気づいているお母さん。この二人に笑い声が戻った時、次雄も笑えるようになるのです。

友近の演技はあまりにも自然で、その辺にいる本物の母親を見ているような気になります。飄々としたユースケ・サンタマリアとのコンビもなかなかのもの。中でも、若いくせにはっちゃけられない中学生男子を演じた森田直幸君の演技は素晴らしい。同級生との淡い出来事とか、親友とのふざけっぷりも見ていて楽しいです。そうそう、この親友が机にアーティストの名前を彫って怒られるエピソードは爆笑もの。

脇を固める俳優も殆ど関西人でまとめてあるから、とある田舎の風景をそのまま見ているような感じだし、山崎まさよしの音楽の効果もあって和めます。クスクス笑いをしながら、家族の大切さを噛みしめ、涙した後、また笑える。新鋭女性監督・呉美保が描く家族には、愛おしさが一杯詰まっています。

ちなみに、次雄の同級生を演じる谷村美月ちゃんは、映画館で流れる海賊版撲滅キャンペーンの女の子なんですね。気になっていた方は、そこにも注目を。

| 16:43 | カテゴリー:映画
2006年12月14日
「あるいは裏切りという名の犬」★★★★☆
先日、新宿のタワーレコードに行ったら、「グッドナイト&グッドラック」のDVDが売っていました。「良い作品だったよね・・・、久々にクールでカッコいい男が見られる映画だったよね・・・」なんて思いながら、豪華版と通常版、どちらを購入するか悩み、結局、決められずに帰ってきてしまいました。

たまに見たくなるんですよね、男の渋さが際立つ映画って。なんかこう、女性が入り込めない世界で、正義と裏切りの狭間でせめぎあいながら生きていく。そんな姿に「くぅ〜、カッコよすぎ!」なんていいながら見てしまう私です。

古くはフランスのフィルム・ノアールがそうでした。でも、最近は香港の「インファナル・アフェア」とか韓国の「殺人の追憶」とか、アジア勢に押され気味だった。そんな中、フランスもまだまだ健在、と言わんばかりに登場したのが「あるいは裏切りという名の犬」です。

邦題がなんだか意味深で、私はそれだけで十分に心掴まれてしまったんですが、原題は「オルフェーベル河岸36番地」。フランス人なら誰でも知っているこの住所は、パリの警視庁がある場所。ここを舞台に、男警視2人の激しくも切ない運命が描かれていきます。

仲間からの信頼も厚い正義漢のレオ・ブリンクスと、野心家で利己的なドニ・クラン。かつては親友だったものの、今ではライバル同士となった男二人が、パリで多発する現金輸送車強奪事件を追うことになります。長官から、次の指揮官に任命されているレオを疎ましく思うドニは、レオ主導で進んでいた強奪事件の捜査で勝手な行動を取り、死者を出す始末。その失態の責任を問われ、調査委員会に掛けられことになります。しかし、ドニがある裏情報を入手したことによって、レオの運命が狂わされていくのです。

オープニングから途切れることのない緊張感の中、静かに物語は進んでいきます。硬派でありながら、娼婦や情報屋に対等の立場で接していくレオの仕事のやり方。そして、出世の為に手段を選ばず、敵を作り続けるドニ。きっと誰もがレオの方が順風満帆な人生を歩むと思う。けれども、神様は時に善良と思われる人間の運命を狂わせてしまうんですね。どうやっても逃げることが出来ない状況に加え、愛するものまでも失ってしまう痛みを、ただ静かに受け入れるレオの姿が潔い。もちろん、彼はその復讐を誓うわけですが、一体、どんな結末を迎えるのか。このオチがね、たまらない…。

レオとドニが、一人の女性を巡って奪い合った過去を含め、彼らがどのような人生を生きてきたのかということを、詳しく描くのではなく“醸し出す”ような演出も味わい深く、なんといってもレオ役のダニエル・オートゥイユとドニ役のジェラール・ドパルデューの渋い演技が素晴らしい。

実話をベースに描かれたこの作品、早くもロバート・デ・ニーロジョージ・クルーニーリメイクされることも決定しています。ハリウッド版の前に、ぜひオリジナルを劇場で堪能してください。

| 10:15 | カテゴリー:映画
2006年12月07日
「王の男」★★★★★
今から一年程前、本国・韓国で公開され大ヒットとなった映画「王の男」。今年、「グエムル 漢江の怪物」によって記録を塗り変えられるも、観客動員数1300万人は驚異的な数字です。今年3月、私が釜山の劇場で「王の男」を見たときは、記録がどこまで延びるかという国を挙げて大騒ぎの時期で、封切りされたばかりの映画「デイジー」よりも客席が埋まっていたのにはびっくり。公開から数ヶ月もたっているのに、「王の男」は未だに満席でした。その熱狂ぶりに、大ヒットしている理由を韓国の親友に聞いてみると、まず韓国史上最悪の暴君として有名な燕山君(ヨンサングン)という実在の人物の話に、フィクションが見事に融合されているのが非常に面白く、そこから人々は、悪名高き燕山君が抱いたであろう苦悩を発見することが出来る。また、フィクションとして描かれる旅芸人チャンセンとコンギルの魅力も大きく、特に女形・コンギル役を演じたイ・ジュンギの中性的な魅力に多くの観客が釘付けになってしまったのでは、と解説してくれました。私も映画を見て納得。「王の男」は名作と呼ぶにふさわしい作品でした。

時は16世紀初頭。田舎町で客を魅了していた幼馴染の旅芸人チャンセン(カム・ウソン)と女形コンギル(イ・ジュンギ)。女性より妖艶なコンギルを自分の物にしたいという町の有力者とのいざこざから逃れ、漢陽の都へとやってきます。巷では当時の王・燕山君が身分の低い妓生ノクスを宮中に招き入れ遊び呆けているという噂が流れ、それを聞いた2人は宮廷を皮肉った芝居を演じ、大人気となります。しかし、偶然それを見ていた王の側近の重臣に捕らえられ、芝居を見て王が笑わなければ死刑だと言い渡されてしまうのです。幼い頃に母親を毒殺されたことで、捻じ曲がった性格を持ち、人前では笑わない燕山君を前に、緊張のあまりうまく芸が出来ないチャンセン。それを救ったのがとっさに出たコンギルの演技。彼らの芸に大笑いした王は、特にコンギルをたいそう気に入り、臣下たちの猛反対を押し切って芸人達を宮廷に住まわせます。しかし、豪華絢爛な宮廷内には歪んだ真実が。そしてチャンセンとコンギルは、悲劇的な運命に巻き込まれてしまうのです。

チャンセンとコンギルが見せる芝居の内容は、かなり下世話。けれども暴君によって厳しい生活を余儀なくされた平民たちにとって、宮廷を茶化した芝居はストレス解消の場となります。また綱渡りの技はアッと息を呑む緊張感で、韓国に古くから伝わる大衆芸能の魅力を堪能することが出来ます。漢陽で出会い、チャンセンとコンギルの仲間になる3人の芸人たちもいい味出してる。“3バカトリオ”みたいなんだけど、これがね、泣けるんですよ。

コンギルに魅了され、毎晩のように彼を側に置く王。チャンセンはそれが耐えられない。けれども、繊細なコンギルは、王の悲しみ、苦しみを理解できてしまった。だから王のもとを簡単に去ることが出来なくなってしまうのです。しかし、やりたい放題の王に困惑する重臣たちや、コンギルに入れ込む王に嫉妬するノクスと、2人を陥れようとする陰謀も渦巻きはじめる。彼らを呼びいれた王の側近の思惑は一体何なのか。ラストのチャンセンとコンギルの散り際がはかなく美しい。ここは、涙、涙の名シーンです。

結局、しがない2人の旅芸人も、その国のすべてであるはずの王も、欲望と陰謀が渦巻く宮廷に翻弄されてしまう哀しい運命。絡まり合った人間模様を、豪華絢爛な映像と美しい音楽で描く一大巨編です。必見!

| 16:29 | カテゴリー:映画
2006年11月30日
「Mr.ソクラテス」★★★☆☆
今までにもこのブログで告白したことがありますが、私、キム・レウォンのファンです(笑)。熱しやすく冷めやすい性格に加え、チョン・ウソンやダニエル・ヘニーなど、他の俳優にも心ときめいちゃうので、レウォン熱もいつかは冷めてしまうのでは?と思ったりするんだけど、やっぱり今年もドラマ「君はどの星から来たの?」(日本未放送)にハマリまくり、トキメキ再発見な感じでございました。彼のナチュラルな感じが好きなんだな。あのいたずらな笑顔もいい…。

と、ミーハー度、満開でスタートしてしまいましたが、今回ご紹介するのはキム・レウォンの新たな魅力を堪能できる作品「Mr.ソクラテス」です。

ドラマでも映画でも、その好青年っぷりでファンを魅了してきたキム・レウォンが今回挑んだのは不良青年役=ク・ドンヒョク。ケンカっぱやいし、刑務所にいる父親にまでお金をせびるし、助けを求める仲間だって、金にならいなら警察に売ってしまうような悪い奴。そんなドンヒョクがある日、謎の集団に誘拐されてしまいます。気が付けば、そこは荒れ果てた廃校。そして、ヤクザの手下を従えた謎の<先生>が、「勉強だけがお前の生きる道だ。」と、ドンヒョクに勉強することを強要するのです。拒否するドンヒョクを待っているのはお仕置きの数々。お仕置きはとっても痛そうなのですが、謎の<先生>を演じているカン・シニル(「友へ チング」「シルミド」)は確かな演技力と強烈なインパクトで面白い。さらに、のんきな手下たちや、講師として登場する超マジメ大学生とのやり取りがコミカルで笑えます。そして、結局は弟に手を出すと脅され、渋々、勉強をするドンヒョク。でも、彼に課せられた最終目標は、警察官採用試験に見事合格することだった!これには悪の組織の思惑が絡んでいて…。

冒頭から見せるチンピラっぷりといい、死と隣り合わせという強引な授業を受けるジャージ姿といい、なかなか様になっています。スウィートな印象が強いキム・レウォンだけど、時折見せる無表情な顔が結構、強力。何を考えてるかわからない瓢々とした風貌が、今までワルで生きてきたドンヒョクの寂しさをも表わしています。なりたくてワルになったわけじゃない。不運な環境がそうさせてしまった。

でも、このドンヒョク、最終学歴まで終えてないけど、もともと頭脳明晰。その上、警察官として第2の人生をスタートさせたことで、家族や同僚に対する愛情、そして正義にも目覚めてしまいます。厳しい勉強の中で学んだソクラテスの言葉「悪法も法なり」を胸に、ちょっと強引なやり方で突き進んでいく。果たして、彼を警察官にさせた悪の組織と警察組織との間で、ドンヒョクはどんな選択をしていくのか。この辺りの展開が意外で面白く、観客をスカッとさせてくれるポイントになっています。

韓国映画の2大ジャンルとも言うべき、ヤクザものと刑事ものの組み合わせがユニークな「Mr.ソクラテス」に続いて、韓国でヒット中の最新作「ひまわり」でもヤクザを演じているキム・レウォン。スクリーンの方では当分、ワイルドな姿を楽しむことになりそうですね。

| 16:01 | カテゴリー:映画
2006年11月23日
「コワイ女」★★★☆☆
男と女、怖いのはどっちだ?と聞かれたら、私は「女!」と即答するでしょう。自分自身、女でありながらも、客観的に「女って怖い生き物だなぁ」と思うことがよくありますから。やっぱりね、女心って言うものは謎ですよ。男は素直な生き物です(笑)。

で、今回、ご紹介する映画が「コワイ女」。Jホラーのオムニバスムービーです。最近は日本のみならず、アジア映画市場でオムニバスものが増えているような気がするんですが、面白い作品に出会うと、ホラーって30〜40分程度で見せてくれるのが一番なのかな、と感じます。子供の頃に聞いた怖い話だって、ダラダラとした長い話より、簡潔でありながら、鳥肌が立つようなポイントをしっかり押さえたほうが、メチャクチャ怖かったでしょ?

さて、映画に収められた3作品には、ホラーとしてのコワイ女が登場します。第一話は「カタカタ」。タイトルからして、子供の頃に聞いたような怖い話を思い出しますね。結婚間近のOL(中越典子)が赤い服を着た女に追いかけられ、不条理な怨念の渦に巻き込まれていくわけなんだけれど、この赤い服の女=カタカタ(小林裕子)が怖すぎ! 思わず笑ってしまうほどです。特殊メイクなしだと思われるほど、表情筋が凄く、動きも人間離れしている。パンフレットを見れば、舞踏集団に所属する女優さんだそうで、納得です。

第3話「うけつぐもの」は、いわゆる日本らしいホラー。離婚をして田舎に戻ってきた母(目黒真希)と息子の話。大きな屋敷に、何重にも鍵を掛けられた蔵。その家に代々伝わる恐ろしい出来事。日中でも暗くひんやりとした田舎の屋敷の不気味な感じがよく現われています。また、コワイ女=母親という、現代に通じるテーマに深いものを感じました。

そして、この映画で一番お薦めなのが、第2話「鋼―はがね―」。いやぁ、やられた。面白すぎ。ストレートなホラーと言うわけではなく、不気味でシニカルで笑えて切ない、というシュールなお話なんです。ある日、自動車整備工場で働く青年(柄本佑)は、社長(香川照之)から「妹とデートしてやってくれ」と言われ、写真を見せられます。そこには、普通のかわいい女性の姿が。まだ女性と付き合ったこともないような無口でうぶな青年は、社長の言われるまま妹さんを迎えに行くんですが、現われたのはズタ袋を被った人間、名前は鋼−はがね…。

ズタ袋を被った人間というか得体の知れないものに、青年はたじろぎます。しかし、無理矢理デートをさせられて、いつしか青年は愛着ともいえる不思議な感情を抱くんです。しかも、年若い青年、ズタ袋の上半身に嫌悪感を抱いても、ミニスカートから伸びる美しいおみ足にクラッときちゃうわけ。しかも、その足と動きがエロい(笑)。鋼にボコボコにされたって、足の親指で「もっと」って(しかも血で)書かれちゃ、青年、突進してしまうわけです。鋼の正体と結末は、見てのお楽しみ…ですが。それにしても鋼ちゃん、気持ちいいくらいに転ぶ、壁に体当たりする、川に流される…。見る方もいつしか愛着を持ってしまいます。転んだりするシーンはスタントの方が演じているらしいのですが、ズタ袋を被って実際に演じているのは菜葉菜という女優さん。足だけで、あんなに表現できるって、凄いなぁ。これは、海外でも受けるんじゃないかな?ちなみに、現在、スピンオフ作品「鋼ちゃん」というのが東映モバイルコンテンツサービスで配信中です。

人恋しくなるこの季節、ステキな人とホラーを見るのもいいのでは?

| 16:08 | カテゴリー:映画
2006年11月16日
「007/カジノ・ロワイヤル」★★★★☆
私が初めて劇場で見た007シリーズは、3代目ジェームス・ボンド=ロジャー・ムーア主演「007/美しき獲物たち」。見た理由はただ一つ、デュラン・デュランがテーマ曲を歌ったていたから!その時の感想は、いわゆるイケメン俳優が悪い奴と戦う、くらいなものでした(グレース・ジョーンズも凄かったね)。今も昔もそうですけど、007シリーズはテーマ曲を誰が歌うのか、というのが話題になるわけでして、私の場合、“好きなアーティストが歌う=映画を見なくっちゃ!”という、いたってシンプルなファン心理から007シリーズを見るようになったのです。残念ながら「007/リビング・デイライツ」は、ティモシー・ダルトンの魅力がまったくわからなくて、本当にa〜haが歌う主題歌だけを聴きにいっただけでしたが…。

その後、歴代の中で一番あま〜いマスクのピアース・ブロスナン主演作と共に古い作品も見返し、若かりしショーン・コネリーの濃さにビックリしたりしながら、少しずつ007という魅力にはまっていった私。今回、新しいジェームス・ボンド=ダニエル・クレイグを迎えての新作「007/カジノ・ロワイヤル」は、期待よりも、心配する気持ちちょい多めで待っておりました。007ファンの間にはダニエル・クレイグ反対派が多いというし、NYの地下鉄で見かけたポスターにも悪口いっぱい書いてあったし…。

しかし、私のそんな思いは吹き飛んでしまいまいましたぞ。だって、面白いんだもの〜!! 冷静に考えてみると、私は今までずっと007シリーズを、作品が持つブランド力で見てきたように思うんです。でも、この作品は違う。一つの作品として純粋に面白いと思える映画に仕上がっているのです。

原作者イアン・フレミングが書いた第1作目「カジノ・ロワイヤル」。この物語によって殺しのライセンスを持つ“007=ジェームス・ボンド”が生まれたわけですが、その“00(ダブルオー)”に昇格したばかりの若き日のジェームス・ボンドが描かれています。といっても、設定は現在に置き換えて。冒頭から釘付けのアクションシーンで、猿のような跳躍で逃げ回るターゲットを追うボンドは、今までで見たことの無いアグレッシブさ。少々荒削りで冷酷さを持ち合わせたボンドに、あの“M”(ジュディ・デンチ)も頭を悩ませるほど。そんな彼にとっての最初の任務。それは、世界中のテロリストの資金源である“謎の男”ル・シッフル(マッツ・ミケルセン)に接触すること。ボンドによってマネーロンダリングに失敗したル・シッフルは、巨額の金を取り戻す為に、モンテネグロの“カジノ・ロワイヤル”で高額なポーカーゲームをやるという。そのル・シッフルを負かすことが、ボンドの任務なのです。ポーカーのルールなんてわからないけど、ブリオーニのタキシードで決めたボンドが、ポーカーでル・シフルと対決する姿はクールです。ボンドの監視役として送り込まれ、後にボンドにとって運命の女性となる聡明な女性ヴェスパー(エヴァ・グリーン)の美しさも加わって、一層ゴージャス。ゲームの途中、ボンドが注文する“特製マティーニ”って、一体、どんなお味なの〜!?(笑)。もちろん、罠や裏切りによって、ボンドが窮地に立たされるというスリリングな展開はお約束。廃車状態になるアストンマーティンに、地上に降りたターミネーターのような(シュワちゃんのこと)のクレイグの全裸も拝めます(ただし、めっちゃ痛いシーンで…)。

約2時間半の上映時間はちょっと長いものの、「クラッシュ」のポール・ハギスによる脚色が功を奏してか展開もスピーディーで全く飽きさせません。どこか無骨なボンドには、男臭いクリス・コーネルの歌声もぴったり。

バハマ、プラハ、コモ湖にヴェニス。豪華な舞台で活躍する、新生ジェームス・ボンド=ダニエル・クレイグの研ぎ澄まされたビターな味わいを、ぜひ、堪能してください。

| 15:15 | カテゴリー:映画
2006年11月09日
「サッド・ムービー」★★★☆☆
俳優の目から大粒の涙がつぅーっと落ちる瞬間を捉えたポスター。韓国映画ではよく見られます。最近では、イ・ビョンホン主演最新作「夏物語」もそういうポスターですね。愛を描いた物語に、“涙”は欠かせないということなんでしょう。「泣かせるぞ〜っ」という気合いが入りまくったポスターが多いのも、お国柄なのかもしれません。

今回、紹介する「サッド・ムービー」もそう。出演者8人がみんな泣いているというポスターを見れば、泣かないわけがない。きわめてつけはタイトル。「サッド・ムービー」=“哀しい映画”ですから…。

さて、この「サッド・ムービー」、様々な“別れ”をテーマにしたオムニバス映画になっています。といっても、登場人物8人が、なんとなくどこかで交錯しているというのがミソ。最近だと「ラブ・アクチュアリー」や「クラッシュ」などを思い浮かべますが、この2作品の交錯する部分がボンドでしっかり止められているとしたら、こちらはもう少しライトなもの、という感じです。

登場するのは、消防士ジヌ(チョン・ウソン)と、彼の危険な仕事に不安を抱える手話担当のアナウンサー、スジョン(イム・スジョン)。スジョンの妹で耳に障害を持つスウン(シン・ミナ)と、彼女がアルバイトをする遊園地で出会った絵描きの青年サンギュ(イ・ギウ)。スーパーのレジ係として働くスッキョン(ソン・テヨン)に別れを切り出され、彼女の心を取り戻したいがために“別れさせ屋”を始める青年ハソク(チャ・テヒョン)。そして、病に倒れるキャリアウーマンのジュヨン(ヨム・ジョンア)と、愛する母を守ろうとする少年フィチャン(ヨ・ジング)。

8人の織り成すストーリーは全て、“別れ”へと向かっていくのですが、私が涙してしまったのは、まず、スウンとサンギュの物語。火事に巻き込まれた後遺症で顔に火傷を負ってしまったスウンのアルバイトは、遊園地の着ぐるみ。キャラクター・デザインは違うものの、設定は「白雪姫と7人の小人」のようになっていて、彼女の周りでキャラクターを演じる7人がスウンの恋を手伝おうとする姿、そして、喋ることが出来ないスウンが心の中で呟く独り言がどこか微笑ましい。もう一つは、ジュヨンとフィチャン親子の物語。やっぱり親子ものはグッときちゃいますね。忙しくてかまってくれない母親に反抗していた少年フィチャンが、お母さんを守ろう、お母さんの為に良い子になろう、と思うきっかけというのがなかなかいいエピソードなんです。

もちろん、チョン・ウソンは相変わらずカッコいいです。相手役のイム・スジョンが小柄だから、チョン・ウソンの長身がさらに引き立つんですよね。“別れさせ屋”(というよりも、“別れの言葉代行屋”と言った方がいいかな)という仕事を始めるチャ・テヒョンは、もう30だって言うのに若い(笑)。

ささやかな人生の、哀しく、美しい1ページを映し出した「サッド・ムービー」。演出や音楽、そして美しい映像が心に染み入る、そんな作品です。

| 16:54 | カテゴリー:映画
2006年10月26日
「上海の伯爵夫人」★★★☆☆
高校生の時に「眺めのいい部屋」を見たときから、ジェイムズ・アイボリー監督の作品は、いつも私に水彩画をイメージさせます。軽やかでありながらも丁寧に描かれた、気品をたたえた一枚の絵。「眺めのいい部屋」の美しいエンディングに魅了された後、いくつものアイボリー監督作品を見ましたが、私が抱くのイメージはいつも美しい水彩画。「モーリス」「日の名残り」「ハワーズ・エンド」「サバイビング・ピカソ」。どんなストーリーであっても、常に気品を湛えているところが、好きなんですよね。

さて、そんなジェイムス・アイボリー監督が今回選んだ舞台は、1930年代の上海。アカデミー賞8部門ノミネートとなった「日の名残り」の作家、カズオ・イシグロとタッグを組んだと聞けば、見ないわけには行きません。しかも、撮影監督はアジアを撮らせたら右に出でるものはいない、クリストファー・ドイル。俳優と同じくらい、スタッフの名が魅力的な作品、それが「上海の伯爵夫人」です。

日本軍が中国東部へ侵攻し始め、緊迫した空気が流れる1936年の上海で、外国人租界のクラブで男と女が出会います。男は、盲目の元アメリカ外交官、ジャクソン(レイフ・ファインズ)。女はロシアからの亡命貴族で、今はクラブのホステスとして家計を支える伯爵夫人、ソフィア(ナターシャ・リチャードソン)。ある日、ソフィアの働くクラブにやってきたジャクソン。目が不自由な彼を狙う暴漢に気付いたソフィアは、自然な調子でジャクソンに近づき、彼を救います。「ここに来る時は、いい靴を履かないで」という忠告を残して。その時、ジャクソンは、彼女こそが自分が捜し求めていた女性だと悟ります。そして、ずっと思い描いていた“夢のバー”にはソフィアという女性が必要であると。1年後、競馬で大金を当てたジャクソンは“白い伯爵夫人”という名のバーを開き、ソフィアは“店の華”としてジャクソンの理想の世界に君臨します。しかし、着々と近づく戦火の恐怖に、二人は翻弄されていくのです。

伯爵夫人でありながら、ホステスとして生きるソフィア。彼女の稼ぎがなければ生きていけないのにも関わらず、家族は彼女に軽蔑の眼差しを浴びせ、ソフィアの一人娘カティアを彼女に近づけまいとします。なのに、ソフィアはグッと堪え、伯爵夫人の高貴さを忘れず必死に生きている。ジャクソンはと言えば、外交官としての輝かしい経歴を持ちながら、視力と家族を失ったことによって、半ば世捨て人となってしまい、“夢のバー”を作ることでしか、未来を築けなかった。明るい将来なんて持ち合わせない二人は、お互いを気にしながらも、必要以上のことは何も打ち明けず、単なるビジネスのパートナーであり続けようとする。そんな2人の関係が逆に大人の恋愛を感じさせ、どこか色っぽく映るんですね。そこに、ジャクソンに憧れる日本人マツダ(真田広之)の存在が絡み、政治的な香りもほのかに匂ってくるわけです。

ジャズ、お酒、ダンス、煙草の煙…名作「カサブランカ」を髣髴とさせこの作品。ジェイムズ・アイボリーが描くエキゾティックな上海を堪能してください。

| 16:05 | カテゴリー:映画
2006年10月19日
「プラダを着た悪魔」★★★★★
なんてオシャレ愉快クールハッピーな映画なんでしょう!? 「プラダを着た悪魔」を見た後の帰り道、心の中でスキップしてました。こんな気分になったのは久しぶりだなぁ。私の大好きなものが全て詰まっている。しかも、とっても面白いんだもの。

女性ファッション雑誌でよく特集される海外のコレクション。最新モードを身に纏いランウェイを颯爽と歩くモデル以上に、今、注目されているのは、各国からやってきたファッション・エディター達でしょう。彼女達が抱える“エディターズ・バッグ”は高価なのにも関わらずソールドアウト続出。私もいくつ買ったことやら・・・。でも、トレンドに身を包むファッション・エディター。羨ましいほどきらびやかなライフスタイルかと思いきや、彼女達の仕事って色々と大変らしい。

大学卒業後、ジャーナリストを目指してNYにやってきたものの、なかなか芽が出ないアンディ(アン・ハサウェイ)。そんな彼女が運良く手に入れたのが、トレンドをリードするハイ・ファッション誌“ランウェイ”のアシスタントの面接。でも、とりあえず編集の職を探していたアンディ、さほどオシャレに興味がないんですね。オフィスにやってきた彼女は、スタッフから見れば“Poor Girl”。しかも、多大な影響力を持つセレブ編集長ミランダ・プリーストリー(メリル・ストリープ)を知らないときた。面接ではミランダから「センス・ゼロ!」などと厳しく突っ込まれますが、賢くて覚えが早く良く働くという強いアピールが効いたのか、なんと、ミランダのジュニア・アシスタントに採用されてしまった! 世界中の女性たちが死ぬほど憧れる仕事。でも、これが恐怖のポストだったのです・・・。

KT TUNSTALLの“Suddenly I see”で始まるオープニング。最高級ブランドを身に纏い出勤準備をする女性たちと対比するように登場するのは、庶民派ファッションで固めるアンディの姿。音楽もさることながら、見せ方のうまさにハートをがっちり掴まれてしまいます。そう、この映画の魅力はテンポ。想定外でオフィスにやってくるミランダに慌てるスタッフたちも、毎日変わるミランダのコート&バッグも、テンポのある見せ方だから面白い。途中、ファッションに目覚めるアンディの七変化なんて、まるで最高のファッション雑誌をめくっているみたいで本当に楽しい。

主人公アンディを演じるのはアン・ハサウェイ。色白で長身でお嬢様のようなルックスで、元がいいから、モードに身を包むと本当に華やかスタンリー・トゥッチがハマリ役のファッション・ディレクターに“Size6”ってバカにされるけど、そんなわけはないだろう、と突っ込みたくなる。そして悪魔のような要求を出し続けるミランダを演じるメリル・ストリープがウマい!! 彼女がいるからこの映画はキュッとしまっているわけでして、ほんと、アカデミー賞候補になるんじゃないかなぁ、と思います。ニコリともせずに仕事をこなす編集長、でも、色々な悩みも抱えた女性でもある。アンディに出すメチャクチャな指令は本当に笑えるけれど、でも、しっかり彼女の実力は見ていて、最後のシーンはホロッときます。あなたもミランダの口癖“That’s All”の真似をしたくなりますよ。

アンディの先輩アシスタント、エミリー(エミリー・プラント)を象徴とする早口エディターたちの会話は、英語のまま感じられると、より面白いと思いますが、それを差し引いてもファッションに音楽、トレンディ・スポット、そして有名モデルやデザイナーも登場し、まったく飽きさせないこの映画。仕事に恋に一生懸命生きる全ての女性にパワーを与えてくれる、そんな映画です。

エミリーが持ってたFENDIのスパイ・バッグ、やっぱり欲しいなぁ。

| 15:54 | カテゴリー:映画
2006年10月12日
「ワールド・トレード・センター」★★★☆☆
オリバー・ストーン監督9.11を題材に映画を撮ると聞いて、一体、どんな切り口で描くのか、興味深いものがありました。「プラトーン」「7月4日に生まれて」「JFK」など、ストーン監督の代表作を見た人なら誰しも、社会派監督と呼ばれる彼なりのメッセージを期待せずにはいられません。でも「ワールド・トレード・センター」は、ある意味、私達の期待を裏切る、そんな作品。なぜならば、ただシンプルに、家族愛・人間愛を描いた作品だからです。

きっと誰もが、いつもと変わらぬ一日を過ごすはずだった2001年9月11日、午前8時40分過ぎ。旅客機がマンハッタン上空を横切り、ニューヨークのシンボル、ワールド・トレード・センターに激突します。私達が何度もニュースで見たあの映像は登場せず、低空飛行をする機影が一瞬、ビルに映るだけなのに、胸がざわつき、その後に起こるであろう悪夢に思わず身構えてしまいます。港湾局警察官のジョン・マクローリン(ニコラス・ケイジ)は部下と共に現場へ急行。あまりの惨状に呆然となる警察官達。でも、一時も早くこのビルにいる人々を避難させなければならないと、マクローリンはウィル・ヒメノ(マイケル・ペーニャ)の他2人の部下と、ビルの内部に入っていきます。そして、再び起こった轟音とともにビルが倒壊。マクローリンとヒメノは奇跡的に生き残りますが、瓦礫の下敷きになり身動きが取れない状態のまま、生死をさまようことになるのです。

このビル倒壊のシーンが怖い。ワールド・トレード・センターが倒壊する様を、外からの映像でしか見たことがないけれど、内部はこんな有様だったのかと想像するだけで、背筋がゾッとしました。そして、ニコラス・ケイジマイケル・ペーニャの主人公2人は、この後ずっと、瓦礫に埋もれたまま。2次災害によって、さらに瓦礫は崩れ、二人は顔がどうにか見えるという状態での演技。見ているこちらも、息が詰まりそうになります。そんな中で、互いに励まし、家族を思いながら生きるために戦う二人。意識を失いかける度に思う妻の姿。一筋の光に見る幻。そして、情報が錯綜する中、無事を祈る家族たちと、1人でも多くの生存者を見つけようと、自らの危険を顧みず現場で捜索活動を続ける消防士、警官たちの姿が映し出されていきます。ただ、“神”のように登場する海兵隊員を、どう捉えるのかは、人それぞれかも知れませんが。

この映画は、なぜ9.11が起きたのかとか、その内幕を暴くということは全くなく、ただただ、あの大惨事の中で奇跡的に助かった二人と、彼らを救うために手を差し伸べた人々の姿を、丁寧に描いているのです。“悪”を行うのは人間だけれど、多くの人間を救うのもまた人間である、ということ。家族、仲間、そして人の絆の大切さを、等身大で描いたストーン監督。今までの彼らしい演出からは想像できないほど淡々と進む物語は、実話を忠実に描いて欲しい、という実際に救出されたマクローリンさん、ヒメノさんの強い思いを受けたからなのでしょう。

派手さはないけれど、ポジティブな光を感じられる映画。ストーン監督作品は苦手という人にも見て欲しい作品です。

| 15:24 | カテゴリー:映画
2006年10月05日
「カポーティ」★★★★★
今年のアカデミー賞でフィリップ・シーモア・ホフマン主演男優賞をもたらした映画「カポーティ」。去年、初めてポスターを見たときから、間違いない!と思っていた作品でした。作家や画家、音楽家など著名人を描いた映画は数多くあるけれど、この作品はここ10年で一番面白いといってもいいくらい。思わず興味をそそられるトルーマン・カポーティという題材はもちろん、そのカポーティを見事に演じきったフィリップ・シーモア・ホフマンが素晴らしい。

カポーティといえば、オードリー・ヘプバーン主演で映画化された「ティファニーで朝食を」が有名ですが、今回の映画「カポーティ」は作家カポーティのもう一つの傑作「冷血」が、いかにして生まれたのかをドキュメンタリータッチで描いています。1959年11月、カンザスで起きた一家四人惨殺事件。新聞の小さなスペースに書かれていたその事件に惹かれたカポーティは取材を始めます。時に自分の名声を武器に頑なな事件担当の保安官から情報を掴み、現場や遺体写真を見てまわり、ついには犯人の2人組に接触。結果、カポーティは5年という長い先月をかけ、「冷血」を完成させるのです。

中でも、カポーティは犯人の一人、ペリー・スミスに特別な興味を持ち、面会を重ねていきます。そんなカポーティに心を開き始めるスミスですが、事件についての核心はなかなか明かさない。予想以上に創作活動は長引いていくんですね。新たなジャンルを開拓しようという野心が大きいだけに、苛立ちは募っていく。何よりも、この2人が死刑を受けるという結末がないと、作品は完成しないわけです。しかし、彼はスミスに惹かれてしまった。憂いを帯びたルックス以上に、今まで疎外され続けてきた哀れな生い立ちに、自分自身を重ね、同情の念を強くしていきます。しかし、死刑執行がなければ作品は完成しない。そのジレンマに悩まされていくのです。彼にとっては「冷血」を完成させたいという欲望の方が勝っていて、その為ならどんな卑劣なこともできるというカポーティこそが、冷血な心の持ち主じゃないかと感じるほど。そこまでやって生まれた傑作。でも、その代償は大きく、その後、彼は作品を一つも書き上げることがなかったのです。

甲高い声で自慢話をし、自らゲイであることを公言。最高級の物を身につけ、身振り手振りの話術に皆が虜になってしまったといわれるトルーマン・カポーティ。そんな彼が、荒涼としたカンザスに立つ姿。そして、最後に見せる本来の人間としての姿。その全てを、全身全霊で演じるフィリップ・シーモア・ホフマンは必見。カポーティの取材を手伝うネル・ハーパー・リー役のキャサリン・キーナーもさすがの演技。カポーティと友人だった彼女は、後に絶縁状態になってしまうんだけれど、その片鱗を垣間見る言動が興味深い。最後に彼女がカポーティに言い放つ言葉にゾクッと来ました。監督はこれが初長編作品となったベネット・ミラー。主人公のスキャンダラスさよりも、主人公の心の機微を丁寧に描いていて良い仕事しています。

読書の秋、本のかわりにぜひ「カポーティ」を。見終わったら、原作の「冷血」にもチャレンジしてください。

| 15:18 | カテゴリー:映画
2006年09月28日
「山猫」★★★★☆
映画好きな母の影響で、幼い頃からたくさんのクラシック映画に親しんできました。オードリー・ヘプバーンにマリリン・モンロー、ジーンケリーにグレゴリー・ペック。母の思い出話を聞きながら見るTVの洋画劇場は本当に楽しかった。目を輝かせながら、銀幕のスターたちを話す母がうらやましかったものです。小さな画面じゃなく、私も母のように一度はスクリーンで見てみたかったと…。だから、テクノロジーの進歩によってその思いが叶えられるようになったのはとてもうれしいこと。もはやスクリーンで見ることができないと思われていた作品が息を吹き返し、私達もあの感動をリアルに体感できるんですから、こんな幸せなことはないでしょう?

さて、今回紹介するのは、イタリアの巨匠ルキーノ・ヴィスコンティ監督の最高傑作「山猫」。1963年のカンヌ国際映画祭でグランプリに輝いたこの作品です。1964年、日本初公開時は大幅に短縮された英語国際版で、1981年にようやくイタリア語のオリジナル版が公開されたもののプリントの保存状態が悪かった。それが、国を挙げての文化事業として見事に復元され、今回、両方の良いとこ取りとも言える、187分の“イタリア語・完全復元版”として蘇ったわけです。

これが凄い。パンフレットに書かれてある通り、まさに“映像の世界遺産”。イタリア統一戦争時代に滅び行く貴族社会の最後の煌きが描かれていくのですが、その時間、空間に思わずため息。 巨額の制作費をかけたって、二度と作り上げることが出来ないという、本物の贅沢がここにはあります。圧巻は1時間にも及ぶ大舞踏会のシーンで、屋敷もインテリアも衣装もみんなゴージャス。女性たちが身に着けたドレスが本当に美しいんだけど、見ればその数にビックリするはず。撮影だって贅沢ですよ。殆どが長回しじゃないかと思うほど。どうやって撮ったんだろう?エキストラは一体何人使っているんだろう?って、色んな疑問が頭をよぎる。普通ならばカットされそうな映像も、この映画においては無駄じゃない。なぜならば、そこに流れる空気や匂いまでもを捉えているからです。

そんな貴族社会の落日を冷静に見つめながらも、冷静に己の生き方を貫くサリーナ公爵を演じるバート・ランカスターが渋い。タンクレディ役のアラン・ドロンの美しさにもびっくりしたけど、時代の変化を受け入れながら、他に迎合せず最後まで貴族の誇りを捨てないサリーナ公爵の男の美学にしびれました。また、タンクレディと恋に落ちるアンジェリカ役のクラウディア・カルディナーレの強い眼差しと色気。近くから見るとヴァネッサ・パラディ、遠くから見るとキャサリン・ゼタ・ジョーンズに似ているような…。

名門貴族ヴィスコンティ家の末裔だったルキーノ・ヴィスコンティ監督が描く、シチリア貴族の豪華絢爛な一大叙事詩。映画史に残る名作を、ぜひこの機会に大きなスクリーンで体感してください。

| 17:25 | カテゴリー:映画
2006年09月21日
「記憶の棘」★★★☆☆
11月頃にNYへ行きたいなぁ、と思い情報収集に明け暮れている毎日。大好きなNYは2003年に行ったきりご無沙汰だったので、気合い入りまくっています。にしても・・・NYのホテルは高すぎる!! 以前泊まった、結構リーズナブルだったはずのホテルの料金が2倍になっているんだもの。BIG LEAGUE TODAYの小林紀美嬢の情報によると、11月の始めはNYシティマラソンがあるため、ホテル料金が値上がりするんだと。それにしても、高すぎる・・・。

そんなわけで、最近、NYという字に惹かれまくりの私が紹介するのは、NYを舞台に描かれる、ミステリアスな作品「記憶の棘」です。

10年前、ジョギング中の心臓発作で夫を亡くした主人公アナ。10年かけて悲しみから抜け出した彼女は、ずっと彼女を待ち続けてくれたジョセフと婚約する。しかし、数日後、家族団らんで行われた母の誕生日パーティの席に、10歳の見知らぬ少年がやって来て、「アナと2人だけでキッチンで話したい」という。言われるままにアナが少年をキッチンへ連れていくと、信じられないような言葉を口にした。

「僕はショーン、君の夫だ。」

この映画のテーマは「輪廻」。そんなタイトルのジャパニーズホラーがありましたが、こちらはミステリアスなラブストーリーという趣きです。最初はショーンの生れ変わりだという10歳の少年の言葉を、アナも家族も笑い飛ばす。そんな非科学的なこと、誰も信じない。けれども、少年の言動によって、アナは再びショーンを亡くしたという喪失感に蝕まれていきます。彼女が信じることを止められないほど、アナの亡き夫への愛は強かったのです。

果たして少年は本当にショーンの生れ変わりなのか?冒頭に流れる夫ショーンの言葉や、ショーンの親友だった男の妻の言動など、様々な謎が散りばめられているのだけど、最終的な判断は観客にゆだねられているという点がユニークなところ。

それにしてもアナを演じる二コール・キッドマンが魅せてくれます。ベリーショートヘアの二コールはハッとさせられる美しさ。ジーン・セバーグやミア・ファローを彷彿とさせます。この作品でゴールデン・グローブ賞にノミネートされた演技も素晴らしい。少年が生れ変わりだと信じ始めたアナが、複雑な気持ちでワーグナーのワルキューレの舞台を見るシーン。表情だけで心の揺らぎを表現する演技力に脱帽です。

少年を演じるキャメロン・ブライト君はカナダ出身の天才子役。最近では「X-MEN ファイナル・ディシジョン」で“キュア”となる少年を演じていました。演技はもちろんだけど、妙に大人顔をしているので、少年ショーン役に説得力がある。監督はジャミロクワイの“Virtual Insanity”など数々のPVやCMを手掛けているジョナサン・グレイザー

スタイリッシュな映像と余韻の残るストーリーもさることながら、アナのシンプル&ラグジュアリーなファッションやアッパーイースト・サイドのライフスタイルも堪能できる作品です。

| 17:32 | カテゴリー:映画
2006年09月14日
「トンマッコルへようこそ」★★★★★
2005年、韓国で800万人の観客動員数を記録した話題作「トンマッコルへようこそ」は、1950年代の朝鮮戦争を舞台にした映画。でも、今まで見てきた戦争映画とは、ひと味もふた味も違う趣で、なんとも不思議な作品です。それは、歴史に刻まれた戦争という爪痕を描きながらも、ファンタジーに溢れたストーリーになっていて、見るものの心を温かくし、人間の本来あるべき姿を気付かせてくれる、そんな映画だからです。

タイトルにある“トンマッコル”というのは、映画の舞台である架空の村の名前で「子供のような純粋な村」という意味(“コル”というのは韓国語で“村”の意)。ある日、この村で、連合軍、韓国軍、人民軍という、互いにいがみ合うひとびとが鉢合わせします。一触即発な彼らなのに、村人達はびっくり顔。なぜなら、彼らは戦争が起きていることはもちろん、人を憎むという気持ちも知らずに、この村で幸せに生きてきたのです。思いやりと優しさと笑顔で満ち溢れた“トンマッコル”は、戦いというものとは無縁のユートピア。最初は敵意をむき出しにしていた軍人達も、村人達との触れ合いの中で、人間本来の豊かな心を取り戻していきます。しかし、彼らが村にやって来たことで、“トンマッコル”に危機が迫るのです。

この映画、まず、ストーリーのアイデアが秀逸。よそから来た3組の兵士たちが、村で重ねていくエピソードがユニークなんです。悲劇が喜劇に変わる、魔法のような瞬間が何度も訪れる。ポップコーンの場面はこの映画の名シーン。彼らに笑顔が戻る頃、見ている私達も笑顔になります。人を憎むこと、人と争うことが、どんなにバカバカしく哀しいことかを、村人達が教えてくれる。兵士達にしたように、私達の心も溶かしてしまうのです。

韓国の人達にとって忘れらない朝鮮戦争の傷跡。数年前、韓国で当時の観客動員新記録を打ち立てた「ブラザーフッド」では、「思想の違いの為に、なぜ殺しあわなきゃいけないんだ」というセリフが印象的でした。この映画では、言葉のイントネーションで、その人間がどちら側なのか、と問われるシーンが登場します。ちなみに村人たちは強烈な方言。字幕は標準語になっていますが、喋りを聞いているだけで笑ってしまうほどなんです。英語が出来ないため、村人がアメリカ人兵士と意思の疎通が出来ないシーンもあって、そこには、言葉や人種、国籍に関係なく、人は皆、助け合い思いやらなきゃいけない、というメッセージが込められているような気がしました。

原作は「ガン&トークス」の監督としても知られるチャン・ジンの舞台劇。それを美しい映像で仕上げたのが、これが長編初監督となるパク・クァンヒョン。彼の映像に久石譲の音楽もぴったり合っていて、トンマッコルという“ユートピア”を浮き立たせています。シン・ハギュンチョン・ジェヨンをはじめ、子役からおじいちゃん役まで俳優陣も素晴らしい。中でも、不思議な雰囲気の少女ヨイル役のカン・ヘジョンはやっぱりうまいですね。

戦争映画は苦手、という人にもぜひ見て欲しい、心温まる韓国映画です。

| 17:13 | カテゴリー:映画
2006年09月13日
ポップコーンとX−MEN
手が汚れるからね…
トンマッコル試写会受付中!
早く見たい映画No.1!
「X−MEN:ファイナル・ディシジョン」を見てきました〜。日曜洋画劇場で放送された「X−MEN」「X−MEN2」で復習もバッチリ。1も面白いけど、2はさらに面白いことを改めて実感。こうなると3作目を期待せずにはいられない!しかも“ファイナル”と銘打っているのだから…。

さて、感想。
若かりし日のプロフェッサーとマグニートーが、少女だったジーンを迎えに行く回想シーン、天使のような羽を持つ少年のエピソードと、オープニングから釘付け。展開はスピーディだし、アクションも満載。マグニートー率いる“ブラザーフッド”の手下ミュータントもいっぱい登場するんだけど…

重要だと思われる謎が解明されないまま、話が終ってしまったのがちょっと物足りない。おなじみのキャラクターの活躍も不完全燃焼で、「2」で見られるようなミュータントの心理やストーリーの深みもあまり感じられず。ここが先代のブライアン・シンガー監督と、今回メガホンをとったブレッド・ラトナー監督の違いかなぁ。でも、エンドクレジットが終った後、意味深な映像があるっていう事は、つまり・・・う〜ん。
ぜひ、あなたの目で確かめてくださいね。

それにしても、マイカルシネマのポップコーンはうまいね。映画見る前に、完食してしまいました(笑)。久々の映画館だったんで、劇場で遊ぼうと思ったけど、イマイチ、面白いものがなかった。残念…

| 14:31 | カテゴリー:映画
2006年09月07日
「マイアミ・バイス」★★★☆☆
最近の私の楽しみ…それは「特捜刑事マイアミ・バイス」を見ること。9月2日の映画版公開に合わせてだと思うけど、8月23日からテレビ東京で放送がスタートしたのです。お昼時と言えば「笑っていいとも!」ですが、最近は12:30になると12チャンネル。ヤン・ハマーのテーマ曲にのって登場する、水色とピンクのタイトルロゴが、う〜ん、たまりません。何故か強烈に覚えているピンクフラミンゴの群れの映像にワクワク。未だ行ったことのない私が抱くマイアミのイメージは、あのオープニングで作られたようなものです。ハードな潜入捜査は、時に問題が解決しないまま終ってしまうこともあって、「これだけの権力と金がある悪人ならば、どうにか逃げられちゃうものだわよねぇ」と子供ながらに納得。いつもハッピーエンドとは限らない、という厳しい世界にすっかりハマっていったのでした。それに、ヴェルサーチやらのスーツ、ヨットでの生活、ワニがペット、乗ってる車も超高級!これがナウなアメリカ人なんだと信じてた(笑)。もう一つ、このドラマの魅力と言えば、ドラマを彩る音楽。久々に見て思ったけど、80'sサウンドの玉手箱や〜。気に入った曲があれば、レコード探しに走ったっけ…青春だったなぁ。

ちなみに、映画のほうの「マイアミ・バイス」。舞台設定と主役の二人、ソニー・クリケットとリカルト・タブスはTVシリーズのまま。

南米と北米を結ぶドラッグ密輸コネクション合同捜査で、極秘情報が漏えい。合同捜査には関与していなかったクロケットとタブスは任務を受け、南米へ飛び現地の犯罪組織と接触。情報が漏れた原因を探るのだが…。

TVシリーズではエグゼクティブ・プロデューサーだったマイケル・マンが、監督・製作・脚本を担当しているこの作品。闘う男の美学とリアルさを追求した、渋〜い作品に仕上がっています。まさに、ポスターに書かれた「深く静かに潜入せよ」というフレーズの世界。全体的なトーンは静かで、ドラマの持っていたトレンドを全て取り除いたような感じ、でしょうか。仲間=バディ同士のジョークもないし。とにかく真剣な潜入捜査…(捜査はいつでも真剣勝負じゃないと困るんだけどね)。でも、ラブシーンは多いです。タブス役のジェイミー・フォックスの腹筋、凄いです。でも…

映画は映画で良いんだけど、TVシリーズにハマり、ドン・ジョンソンの「ハートビート」とか聞きまくっていた私のようなミーハーさんには、ちょっと寂しいんですよ。サントラを買いたくなるような心に染みる曲もないし。コリン・ファレルよりもやっぱりドン・ジョンソンのソニー・クロケットが見たい。ジェイミー・フォックスもクールだけど、やっぱりフィリップ・M・トーマスのリカルド・タブスがイイ。出来れば、隆大介&尾藤イサオの吹き替えでね。

あれ、映画の話とドラマの話、どっちがメインだったんだっけ?

| 16:39 | カテゴリー:映画
2006年08月31日
「夢遊ハワイ」★★★☆☆

夏は何かと10代の思い出に浸りがちである。高校野球を見れば、必死に応援している高校生の姿に自分を重ねてしまうし、8月も終わりになると、赤とんぼが遊ぶガランとした校庭を思い出す。花火の残り香は、どこか胸をキュンとさせ、夏が苦手な私に、ふと、夏をいとおしく思わせてくれる。もう9月…そろそろ夏も終わりかぁ。

さて、そんな淡く切ない記憶を呼び覚ましてくれる映画が「夢遊ハワイ」。ハワイとは何の関係もない、台湾映画である。以前、台湾に行ったときに思ったこと、それは、アジアの国々の中でも日本に一番似ているという感覚。街角の緑の多さとか、オシャレなカフェやそこに集まる人々とか、日本の空気に似ていて、とても過ごしやすかった。「夢遊ハワイ」に漂う空気もそう。しきたりや環境に多少の違いはあっても、どこか日本の夏の風景に似ているのである。

兵役終了間近の主人公アーチョウは、ある夜突然、小学校の同級生チェン・シンシンが死ぬ夢を見る。彼女の身に何かあったのでは、と気になってしようがない。一方、アーチョウの親友シァオグエは、休憩時間に兵舎を抜け出し会いに行く恋人がいるが、その付き合いは退役するまでだと考えている。そんな2人に、上官は休暇を言い渡すのだが、休暇とは名ばかりで、銃を持ったまま脱走した後輩を連れて帰れという命令があった。しかし、任務は二の次、休暇を楽しむことにした2人。ひとまず家に帰ったアーチョウは、チェン・シンシンを探しに行くのだが…。

映画で印象的なのは、チェン・シンシンに再会したアーチョウが、彼女を連れてシャオグエと向かう海辺。台湾東部の花連という場所で、最近はサーフィンのメッカとして有名なんだとか。けれども、映画に登場するのは、彼ら以外誰もいない静かな風景。この海辺で、淡く切ないひと夏の出来事が描かれていく。

アーチョウ役のトニー・ヤンとシャオグエ役のホァン・ホンセンナチュラルな演技が秀逸で、度々登場する2人がふざけあうシーンは、演じているのかアドリブなのかわからないほど。心を病んでしまったシンシンの相手をするアーチョウも、女に目がない軟派なシャオグエも、共に真直ぐな好青年なのが微笑ましい。

また、緊迫感のある韓国とは対照的な、台湾の兵役制度や、シンシンが心を病む原因となった受験事情、シャオグエの恋人のコスプレ姿など、今まで知らなかった台湾の表情も見所の一つ。

無邪気な姿、淡い恋心、そして悲しい出来事。記憶に残らないかもしれない、そんな時を積み重ねて、彼らは大人になっていく。遠い昔の自分がそうだったように…。

懐かしい友人に出会ったような気持ちにさせてくれる、そっと心にしまっておきたい映画です。

| 16:28 | カテゴリー:映画
2006年08月24日
「グエムル 漢江の怪物」★★★★☆
ここ数年の韓流ブームが一段落したように思う、今日この頃。もう、人気スターが出演しているだけでは、興行的な成功は望めなくなった。特に今年は、スターのネームバリューや莫大な制作費が売りものの作品が、ことごとく破れている感あり。でも、これはブームに沸いた日本だけのことではなく、本国、韓国でも同じこと。あちらなんて人気がなければ1週間で打ち切りとなってしまうんだから、日本よりもシビアである。そんな状況でも、年に1、2本は傑作に出会えるから、韓国映画は止められない。今年なら、「グエムル 漢江の怪物」が傑作に数えられるのは間違いないだろう。

韓国で初の観客動員数1300万人越えをしそうな勢いの大ヒット作「グエムル」を監督したのは弱冠36歳のポン・ジュノ。「殺人の追憶」が日本でも高く評価された監督が、“怪物”映画を作る!? 最初はイメージが出来なかった。でも、映画を見て納得。どんなジャンルであろうと、ポン・ジュノ監督の世界は全くぶれることはなかった。

…韓国市民の憩いの場、漢江。そこで小さな売店を営むパク一家。ある日、漢江に謎の巨大怪物が現われ、辺りはパニックになる。人々が次々と襲われる中、店にいた長男カンドゥ(ソン・ガンホ)は学校から帰ってきた一人娘ヒョンソ(コ・アソン)を連れて逃げる。しかし、2人は一瞬の隙にはぐれ、ヒョンソは怪物にさらわれてしまう。果たしてパク一家はヒョンソを助けることが出来るのか?…

怪物映画といえば、少しずつその正体を見せていくのものだが、この映画ではものの15分程でその姿をあらわにする。「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズなどを手掛けたWETAワークショップによる“怪物”は、なるほど、良く出来ている。思いのほか小さめなのは、リアリティを出すためという監督の思惑で、“怪物”はどんどん不気味さを増し、見るものの恐怖感を煽っていく。

でも、これは単なる怪物映画ではない。

この映画が描いているものは現在の韓国社会。“怪物”を媒介とし、今を生きる韓国人の姿を、悲劇と喜劇を交えて捉えていく。大学卒でも職に就けない次男ナミルや、ヒョンソを生んで逃げてしまった母親の存在。賄賂を欲しがる役人やパク一家の家長ヒボンが持つクレジットカードの数など、さりげなく韓国の社会問題を突き、さらには“怪物”とウィルス蔓延を食い止める為、韓国政府に干渉するアメリカを登場させ、アメリカと無力な韓国政府を批判する。ちなみに“怪物”が誕生する原因は、実際にあった在韓米兵による有毒物質垂れ流し事件をベースにしているそうである。

ここには、弱者を助けてくれるものは誰もいない。バラバラだったはずの家族の力だけが、ヒョンソを助ける手段。デモ隊経験から火炎ビン作りがうまい次男ナミル(パク・ヘイル)と、本番に弱いアーチェリー選手の長女ナムジュ(ペ・ドゥナ)。必死に娘を救おうとする長男カンドゥと、いつも頼りないカンドゥをかばう父ヒボン(パク・ヒボン)。皮肉にもヒョンソ探しによって団結することになる一家の姿が、時に滑稽に、時に感動的に描かれていく。

ストーリーテリングの才能といい、斬新な演出といい、今回も独自の世界を作り出したポン・ジュノ監督と、彼の作品に欠かせないお馴染みの俳優陣が見せる演技力。怖いだけの物映画と思うなかれ。パニック映画が苦手な人にも見て欲しい、韓国映画の底力を感じられる作品である。

それにしても、最初に映し出されるソン・ガンホの顔は強烈だった…。

| 17:26 | カテゴリー:映画
2006年08月17日
「マッチポイント」★★★★☆
私の大好きなウッディ・アレンがNYを離れ、ロンドンで映画を撮った。それだけでもびっくりなのに、新作「マッチポイント」は彼にとって初めての恋愛サスペンス。彼の作品には欠かせない、神経質でお喋りなキャラクターは1人もいない。自虐的な笑いや、彼がこよなく愛するジャズも、ない。シンプルで無駄がなく、どこまでも緻密な演出と脚本が冴え渡り、言われなければ、これがウッディ・アレンの映画だとは気付かないほどなのです。

映画の冒頭、ネットの上を行き来するテニスボールで始まるモノローグ。テニスの試合でネット上に当たったボールは、どっちに落ちるかで勝敗が決まる。それは、自分の力が及ばない“運”。この映画の主人公クリスは、その“運”に翻弄されるのです。

クリスはアイルランド人の元テニスプレーヤー。上流階級が会員のテニスクラブでコーチを始めるのですが、そこで大金持ちの御曹司トムに気に入られます。やがて、トムの妹クロエと結婚。義父の大会社の重役というポジションも手に入れ、憧れだった上流社会の生活を手中に収めていきます。しかし、彼には忘れられない女性が。それはトムのフィアンセで女優の卵だったアメリカ人、ノラ。挑発的な彼女に惹きつけられ、一度関係を持ってしまったことを忘れることが出来ない。そんなある日、クリスの前に今だ独身のノラが現われます。欲望に再び火がついたクリスは、妻クロエと愛人ノラとの二重生活を送ることになるのですが…。

入門書を片手にドストエフスキーの「罪と罰」を読み、義父と同じ趣味のオペラをたしなむクリスは、静かに策略するしたたかな野心家。「人生を掛ける仕事がしたい」と言っておきながら、妻の出世へのお膳立てを一度は拒否し、ガツガツした野心を見せない術を持っています。金目当てではないかと、一度は怪しんだクロエの母親の心もしっかり掴み、着実に上流階級の生活を手に入れる姿は憎らしいほど。そんなクリスをジョナサン・リース・マイヤーがクールに演じています。

しかし、冷静沈着なクリスもノラへの欲望は抑えきれない。ノラを演じるスカーレット・ヨハンソンが素晴らしく、彼女を見ればどんな男性だって人生を狂わせてしまうだろうという説得力がある。クリスがノラと初めて顔を合わせる卓球台でのシーン。挑発的な視線と官能的な唇、そして、さらりとクリスをかわしてその場を立ち去る後ろ姿。うなじから背中、くびれたウエストから豊満なヒップへと続くライン…。女の私ですらドキッとしてしまう。

用意周到だったはずの男が、知人に姿を見られ、妻に疑われ、愛人に詰め寄られ、少しずつ見え始める綻びを繕おうと必死になる姿は滑稽ですらあります。クリスのような男は、ある意味、女の敵でもありますからね(笑)。さすがに運の強いクリスもここまでか、と思いきや…。

よくあるはずの三角関係は、衝撃的な結末へと突き進んでいくのです!


緻密に仕掛けられた伏線に、アイロニーとウィットで味付けされた脚本が秀逸。本やオペラ、ギャラリーや建築など、知的好奇心も刺激してくれる演出もさすが。御年70歳の仕事とは思えない。

ところで、やはりウディ・アレンは、彼の新たなミューズと言われるヨハンソンを狙っているのでしょうかねぇ?(笑)

| 15:09 | カテゴリー:映画
2006年08月10日
「ユナイテッド93」★★★★★
2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ。世界を震撼させた日から、早5年が過ぎようとしている。あの日、私は仕事先の甲府から帰ってくるところだった。台風だったか列車のトラブルだったかで電車が運休し、どうにか最終の高速バスに乗り新宿へと向かい、小田急線に乗り換え出発を待っていると、母から連絡が入った。 「NYが大変なことになってるのよ!」 年に1度は訪れるほどNYが大好きな私に、NYに行ったこともない母は状況を一生懸命教えてくれた。 「良くわからないけど、背の高いビルに飛行機が突っ込んでいったの」 最初、どういうことなのか全く理解が出来なかった。なんで、そんなところに飛行機が突っ込むの?言っている意味がわからない。よく聞けば、その背の高いビルはワールド・トレード・センターだった。飛行機がNYへ近づくと、まず目に飛び込んでくる2つのビル。向かうときは私の心をワクワクさせ、帰るときはいつも寂しい気持ちにさせた。そのビルが突然、消えてしまうなんて、想像すらしなかった私は、恐怖からか震えが止まらなかったのを、よく覚えている。

いつかは映画になるだろうと思っていた<9.11>。でも、正直、こんなに早く作られるとは思っていなかった。「ユナイテッド93」は、あの日ハイジャックされた4機のうち、テロリストたちが目的を達することなく、ペンシルバニア州に墜落したユナイテッド航空93便の乗員・乗客40人の姿を描いた作品である。

…いつもと変わらない1日になるはずだった。しかし朝から管制塔は慌しくなる。ハイジャック情報が錯綜し、管制塔と軍とのコミュニケーションもうまくいかない。そんな中、ハイジャック2機がワールド・トレード・センターに激突。呆然とする人々。そんなことも知らず、朝の離陸ラッシュに巻き込まれたユナイテッド93便はテロリストを乗せ、予定時間を遅れて出発していった…。

ユナイテッド93便の機内で何が起きたのか、本当のことは誰も知らない。けれども、遺族をはじめ、9.11委員会、航空管制官、軍関係者への膨大なインタビューを元に、時間軸に沿って描いたという姿勢から、知りうる全てを見せようという製作側の熱い想いが伝わってくる。パイロットや乗務員経験者、本物の管制官等を起用し、事件当日に指揮を執っていたハーンドン連邦航空管制センターベン・スライニ―は、自身の役で登場する。これほどまでに“as himself”というクレジットが多い作品は初めてだった。俳優も無名の人々を起用、過剰な演出は全くなくフラット。リアルさを追及したドキュメンタリータッチの映像は、見る者の心を、怒りと不安と恐怖と悲しみで一杯にする。

たわいもない会話を楽しむ乗客たちが、一転、死へと向かっていることを知ったときの絶望。残されたわずかの時間に、最愛の人に伝える“I love you”の言葉の重み。そして、極限状態で彼らがとった勇気ある行動。もう私の心はクシャクシャになって、泣くことも出来なかった。

でも、この作品が凄いのは、テロリストを単なる悪として描いていない点だと思う。彼らにも、もう二度と会えない家族がいる。固い決意の眼差しにも、一瞬の戸惑いがある。なぜ、彼らはテロという道を選んだのか?悪というのは簡単だけれど、何が彼らをそうさせたのか?

映画の最後に登場する文章にはこうある。「軍上層部がユナイテッド93便のハイジャックを知ったのは、墜落して4分も経った後」だったと・・・。

今だ謎が多いと言われる<9.11>。でもこの映画は、色んなことを考える機会を与えてくれるという意味で、多くの人々に見てもらうべき作品だと思う。そして単なる「お涙頂戴」的な作品にしなかった、ポール・グリーングラス監督に拍手を送りたい。

| 16:32 | カテゴリー:映画
2006年08月03日
「カクタス・ジャック」★★★★☆


今週、「スーパーマン・リターンズ」ジャパン・プレミアに行きました。舞台挨拶には新生スーパーマン役のブランドン・ラウスに、恋人オーリーとフジロックのステージにも登場したケイト・ボスワース。普通ならそこでキャーッ!なんだけど、今回は初来日のケビン・スペイシーブライアン・シンガー監督キャーッ! 美男美女を見るよりも、「ユージュアル・サスペクツ」のコンビを見られたことのほうが嬉しかった。まさか、ヒーローものでそれが叶うとは、夢にも思わなかったけど。

ところで、ブライアン・シンガーと並び、監督の第1作目で私がノックダウンされたと言えばクエンティン・タランティーノ。「パルプ・フィクション」も「キル・ビル」もいいけど、やはり「レザボア・ドッグス」にはかなわない。低予算だし、少々荒削りだったりするけれど、1作目の輝きっていうんですかね。それが全く失われていないから、何度見ても面白い。でも、最近、そういう作品に出会えないなぁ・・・と、嘆いていたら、やっと出会えた、面白い作品に! 母国では5人に1人が見たというメキシコ映画「カクタス・ジャック」です。

街の独裁者で上司でもあるカボスの娘に手を出し、暴力を振るわれたジャック。ある日、彼が社長室を訪れると、カボスは仕返しをしに来たと勘違い。再び襲撃!?と思いきや、足元のゴルフボールで足を滑らしカボスが気絶。ビックリしたジャックは助けを求めに部屋を出るのだが、その隙にやってきたのは掃除係のチーノ。カボスに恨みを持つチーノは、カボスのスーツや装飾品を全て身につけ、出て行ってしまう。ジャックと友人ムドが部屋に戻ると、そこには、なぜか下着姿のカボス。人の気配を感じた二人は慌てて、カボスをジャックの車のトランクへと運び込んでしまう。

一方、父チーノを奴隷のように扱うカボスへの恨みを晴らす為、カボスの誘拐を企てるチーノの息子ボッチャは、地下の駐車場で仲間のニコと待ち伏せしていた。カボスのふりをした父親だとは知らず、ボッチャは男を誘拐してしまい…。

ここまでが出だしの部分。この後、登場人物や話が複雑に絡み合い、色んなハプニングが起きるんだけれど、展開はスピーディー。でも、演出が良く出来ているので、混乱することもなく、最後まで一気に見れます。しかも、ジャックとムドの助っ人、伝説のレスラー“マスカリータ”“人食い”トニーという面白キャラ登場で、話がどんどん可笑しくなっていくから、笑わずにはいられない。皆、どこかお間抜けなのです。果たして、全てをうまく収拾させたいジャックとルド、そして間違えた人質に気づかず家族を脅迫するボッチャ一味が迎えるエンディングは、いかに!?

監督は、この作品が長編初作品となるアレファンドロ・ロサーノスタイリッシュな演出音楽のセンス。でもどこかB級なノリもあって、「ポスト・タランティーノ」と呼ばれているのも納得。また、部屋に飾られた「ダウン・バイ・ロー」のポスターや、「タクシー・ドライバー」の名シーンなど随所に映画人へのオマージュが散りばめられています。世界的にも有名なアステカスタジアムでのカーチェイスも最高。アウディの美しい着地をぜひ、スクリーンで見ていただきたい。

最近、面白い作品が多いメキシコ映画。タランティーノが好きならはまること間違いなし。久々に見つけた掘り出し物映画です!

ちなみにカクタス・ジャックっていうプロレスラーいたんですねぇ。インターネットで調べたらたくさん出てきた(笑)。

| 15:52 | カテゴリー:映画
2006年07月27日
「ビースティ・ボーイズ 撮られっぱなし天国」★★★★★

今週、ちょっと面白い試写会に出掛けた。それは「ビースティ・ボーイズ 撮られっぱなし天国 オール・スタンディング試写会」@代官山AIR!実はすでに一度、この映画の試写を見ているんだけど、座って見るのがどうも窮屈で、「これはライブのように立って見ないとダメ」と感想を言ったら、映画宣伝担当の方が、実はこんな試写会がありますよ・・・と、こっそり教えてくれた。しかも、ビースティーの準メンバー(!?)、マニー・マークのミニライブ付きである。これは行かねば!と友人を誘って参加することにした。

なぜ、座って見るのが窮屈なのか? それは半端じゃなく面白いライブ・ドキュメンタリーだから。2004年10月、マジソン・スクエア・ガーデンで行われたビースティ・ボーイズの凱旋ライブを収録したものなんだけれど、この映画がユニークなのは斬新な映像手法。抽選で選ばれた50人のファンがそれぞれのビデオカメラで撮った映像が編集されていて、これが何ともいい味を出している。ブレまくる映像あり、遠い席からのロングショットあり、バックステージに忍び込もうとする映像あり。これがナサニエル・ホーンブロウワー監督(っていうか、MCAなんだけど)の物凄い編集作業を経て、体感できるライブ・ドキュメンタリーへと昇華している。最初から最後まで大合唱の観客の姿、ベース音が心臓に響くようなサラウンド、そして何よりビースティーの完全燃焼を見ていると気持ちが高揚し、おとなしく椅子に座っていられなくなる。ラストナンバーの“Sabotage”なんて、もうヤバイ。ライブ会場にいるような気持ちになって、最高にハッピーになれる映画である。

それにしても、アメリカ人はやっぱりリアクションが良いね〜。カメラを向けられた時の反応が最高!あれはリアクションじゃなくて、パフォーマンスだ。この観客達を見るのが本当に面白い。一緒に歌を歌えると、こんなに楽しめるんだなぁ、と痛感した。早口のラップだって皆、大合唱。でもって、それぞれの表現の仕方があるから凄い。ビール売ってるおじちゃんに、体のでかい警備員、清掃作業のおばちゃんだって、みんなノリノリ。そんな姿を見ていると、ビースティって愛されてるなぁ、とジーンときたりする。色んなカメラに撮られていたベン・スティラーも笑える。エンディングで「人生最高のライブ」と語る姿に、ベンの株がアップすること間違いなし。

そんなわけで、いつもと違う試写会になるに違いない!と思って出掛けたオール・スタンディング試写会だったのだが・・・。マイクDのドラム演奏をサンプリングした自前のMacを抱え演奏するマニー・マークの不思議なライブの後、映画が始まると殆ど皆、体育座りをして静かに鑑賞していた(笑)。もっと凄いことになると期待していたんだけどなぁ・・・。その中で、途中からすっくと立ち上がったのが年齢不詳のサラリーマン。ど真ん中でまるでレスラーのような大きな体を揺らして、さぞかし気持ちよかったことでしょう。

サマフェスに行く予定なんかないもん、と拗ねているあなた。ライブのように盛り上がれる映画を渋谷で体感してみてはいかが?

P.S 水曜の夜、渋谷のスクランブル交差点でマニー・マークを発見!写真を撮ろうかと思い振り返ったら、彼の姿は消えていた。なんとも不思議な人だった。

| 16:14 | カテゴリー:映画
2006年07月13日
「幸せのポートレート」★★★★☆

今だ結婚していないワタクシではありますが、三十数年の人生を振り返ってみると、彼氏の家族に紹介されたことが何回かあります。付き合いが長くなって自然とそうなったことも、半ば策略的に実家に連れて行かれた、なんてこともありましたなぁ・・・(遠い目)。とにもかくにも、恋人の家族に紹介されるというのは、なかなか、緊張するものであります。男性よりも女性の方がもっとね。そんなことを、映画「幸せのポートレート」を見て思い出しました。

マンハッタンに住むキャリアウーマンのメレディスは、恋人エヴェレットの両親の家で、彼の家族と一緒にクリスマスを過ごすことになります。理想の恋人が初めて自分を家族に紹介してくれる!そりゃぁ、いいところ見せなくちゃ、と張り切ります。けれども彼の家族は、自由奔放なボヘミアン的一家。ナルシソ・ロドリゲスのスーツにピンヒール、ルックスからしても全く隙がないメレディスは戸惑うばかり。でも恋人と自分の幸せの為ですもの、溶け込もうとがんばる。しかし、全ては空回り…。

とにかくサラ・ジェシカ・パーカー演じるメレディスが超堅物な女性で、「もう少しうまく立ち回ってよ〜」と言いたくなるほど、柔軟性が皆無(笑)。その行動は観客の反感も買ってしまうほど。大ヒットドラマ「SEX & THE CITY」のサラ・ジェシカを良く知っている人だったら、そんなにビックリしないと思うけど(ドラマでも恋人の両親に会うという様々なシチュエーションはあったし…)。ただ、全く知らない人が見たら、イラついてしまうかも知れません。だけど、話が進んでいくうちに、メレディスという女性は自分の理想が強すぎちゃうんだなって思った。きっとキャリアも恋愛も「理想」という言葉で完全武装してここまできてしまった。だから、その鎧を脱ぐことが出来ないまま、自分にとって“本当の幸せ”が何なのか、気付いていない。

一方、エヴェレットの家族はというと、唯一、メレディスと会ったことのある次女のエイミー(レイチェル・マクアダムス)が彼女を毛嫌いしていて、家族全員、冷ややかな目でメレディスを見てしまう。もちろん、優しく迎えよう、受け入れてあげようとするんだけど、当の本人が次々と墓穴を掘るもんだから、溝は深まるばかり。案の定、メレディスにプロポーズしようとする長男エヴェレット(ダーモット・マローニー)に母シビル(ダイアン・キートン)は反対する。そりゃそうだなぁ、なんて思っていると、母親の隠された事実が明かされ、さらに、家族の中で唯一、メレディスを慰める次男ベン(ルーク・ウィルソン)と、メレディスのSOSを聞いて駆けつけた妹ジュリー(クレア・デインズ)の出現で物語は意外な方向へ。笑っていた私の顔が、気がつけば涙、涙

ラブコメディでありながら、家族愛、夫婦愛、同性愛など、色んなや要素が盛り込まれたストーリー。邦題にもある“ポートレート”という言葉を噛みしめたとき、心が幸せな気持ちで一杯になる、クリスマスシーズンにはもってこいの映画です。

それにしても、なんで日本での公開は夏なんだろう・・・?

| 16:39 | カテゴリー:映画
2006年07月06日
「美しい人」★★★★☆

ベッドサイドにあるコルクボードに、映画のチラシが一枚、ピンで留めてある。映画「彼女を見ればわかること」の日本版ポスターを小さくしたもので、一面にはフランチェスコ・クレメンテの女性像がプリントされている。力強さと脆さが共存しているようなその絵の女性は、孤独や不安に打ちひしがれながらも、ささやかな幸せを掴もうとする劇中の女性たちの姿にぴったり重なり、私の心を捉えてしまった。その後、日本版のポスターを探してみたけれどなかなか出会えず、劇場で手に入れたチラシは今でも大切に飾っているお気に入り。

ノーベル文学賞作家、ガルシア・マルケスを父に持つロドリゴ・ガルシア監督のデビュー作「彼女を見ればわかること」は、何気ない日常のある瞬間に訪れる女性たちの孤独、悲しみ、痛みを、5つのストーリーから描いたもの。静かで繊細、そしてシンプルに演出された短編集のような趣で、女性の心にすっと染み込む映画だった。

そんなロドリゴ・ガルシア監督の最新作「美しい人」。原題は“Nine Lives”で、タイトル通り、9人の女性のストーリーが集められています。時間にして10〜14分程度という短いストーリーが9つ。でも、短いからと言って侮るなかれ。この十数分というのがなんとも密度の濃いものになっているのです。というのも、今回、監督がとった手法はワンシーン・ワンカット。つまり、ここに描かれる話は全て一発勝負で撮影されている。良かったテイクを切り貼りするなんてことが出来ないわけで、俳優とスタッフ間にある緊張感が、エモーショナルなものを生み、それがフィクションをリアルなものに見せてくれるのです。

娘との面会を心待ちにしている刑務所に服役している女性や、父親の愛を渇望する女性、元夫の妻の葬儀で愛を求められる女性などなど、色んな人が登場しますが、どの女性も「ある境界線」に立たされるというのが共通項。小さなことに見えて、それが彼女達の進む道=人生を示すのです。どのストーリーに共感するかは、人それぞれだと思いますが、私が一番、惹かれたのは第2話・ダイアナの物語。スーパーマーケットで偶然、昔の恋人と出会うダイアナ。お互い結婚をし、ダイアナは妊娠中。最初は当たり障りのない話を続ける2人だけれど、交わされる言葉、表情から、2人が長い間、別れを引きずってきたというのがわかるんですね。二人がこの瞬間、思うものは何なのか。そして、ダイアナが取る決断とは…。ダイアナを演じるロビン・ライト・ペンがうまい。嬉しさと後悔が交じり合った表情が何ともいえない。そして彼女が元恋人に放つ決定的なセリフ。あなたはどう感じるでしょうか?

最後に登場するグレン・クローズダコタ・ファニングの話も印象的。この章は交わされる会話をしっかり聞いていないと、重要なところを見失うところがあるのでご注意を。それにしても、ワンカットだというのに、グレン・クローズと堂々と渡り合うダコタ・ファニングってやっぱり天才。その他、ホリー・ハンターシシー・スペイセクキャシー・ベイカーなど演技派女優が勢ぞろいで見ごたえ十分です。

登場人物が他の章に登場したりと、交錯するパートがあるものの、今回も独立したストーリーが集められた短編集のような仕上がり。いつまでも大切にしたい、そんな作品です。

| 16:53 | カテゴリー:映画
2006年06月29日
お薦め日本映画…「花よりもなほ」&「嫌われ松子の一生」
最近、日本映画を見る機会が多い。今月のスケジュール帳を見ると、邦画7本に対し洋画は2本。今日の放送後にビースティ・ボーイズのドキュメンタリーを見る予定だけど、それを足しても邦画の半分。こんなにたくさん邦画を見ているなんて、私にしては珍しい。作品はそれぞれ個性豊かで十分に楽しく、最近の日本映画は元気だなぁ、と実感。

今回はその中から、ぜひ見て欲しい作品を2本ご紹介。まずは岡田准一主演の「花よりもなほ」。14歳だった柳楽優弥君が史上最年少でカンヌ映画祭・最優秀主演男優賞に輝いた映画「誰も知らない」の是枝裕和監督が手掛けた時代劇です。

舞台は仇討ちに藩が賞金を出していた元禄時代。父親の仇討ちのため上京した宗佐(岡田准一)は、剣の腕はからきしダメで、血を見れば腰を抜かし、逃げ足が速いというお侍さん。そんな男が、貧しい長屋で暮らすうちに、「仇討ちしない人生」もあるんじゃないかと考え始め…というお話。金はなくとも毎日を一生懸命生きる長屋の住人たちとの生活の中で、仇討ちをするべきかと葛藤する宗佐。宗佐が恋心を抱く未亡人・おさえ(宮沢りえ)はこんな言葉をかける。

「お父上の人生が残したものが憎しみだけだったら寂しすぎます…」

仇討ちをすれば、その恨みがまた返ってくる。憎しみの連鎖ほど、悲しいことはない。時代劇でありながら、現代へのメッセージがしっかりと込められていているところが是枝監督らしいと思った。キャストは本当に豪華で、中には出演シーンが短くてもったいないと思う人も。くすくす笑えて、見終わると心が優しくなるこの映画「是枝流の落語」という趣で、大好きな立川志の輔の口上で見てみたいと思ったのでした。評価は★★★★☆


続いては、今年のベスト5に入るであろう傑作「嫌われ松子の一生」。いやぁ〜、泣いた、泣いた。大泣きさせてもらいましたよ。「下妻物語」もかなり面白かったけど、さらに上を行く出来映えはさすが、中島哲也監督。最近、山田宗樹さんの原作を読み始めたんだけど、不運な女・松子の転落人生を、良くぞこれだけのエンターテイメントに仕上げたなと感心するばかりです。大ベストセラーをあんな映画にしちゃったロン・ハワード監督にも見て欲しい(笑)。

教師時代、お金を盗んだ生徒をかばったことから始まった松子の不幸な人生。惚れた男たちには裏切られ、挙句の果てには殺人を犯し、それでも這い上がっては生きる女。普通ならばドーンと落ちてしまう超不幸話を、ど派手な色使いのファンタジーとミュージカルタッチに仕上げてしまった! 一歩間違えば悪趣味になるかもしれない演出なのに、物語が進むにつれ、松子の悲しさ、やるせなさ、切なさがどんどん際立っていくんです。そして最後にはもう、号泣・・・

俳優も音楽も映像も、全てが最初から最後までパワフル。全く失速することないテンションに圧倒されますが、何度、男に裏切られても、また信じようとする健気な松子の姿に心打たれ、ブラックなユーモアに笑い、昭和から平成までの時代を象徴する映像や衣装も楽しめる。さらに、「花よりもなほ」同様、こちらも俳優陣は超豪華!ミュージシャンも登場します。

病弱な妹ばかりに愛情を注ぐ父親に、寂しい思いをずっと抱えていた松子。誰よりも愛を欲しがっていたのに、いつも与えるだけだった。そんな女の一生を、中谷美紀が演じ上げる。もう、女優魂、炸裂です。間違いなく彼女の代表作となるでしょう。★★★★★満点です!

明日7月1日は映画の日。ぜひ、劇場で楽しんでもらいたい2本です。

| 17:56 | カテゴリー:映画
2006年06月22日
「ハチミツとクローバー」★★★★☆
私はこの映画のパンフレットを見るまで、「ハチミツとクローバー」が累計480万部を超える超人気コミックだということを知らなかった。以前、深夜のTVで偶然見たアニメと同じタイトルだと言うことに気付いただけ。しかも、他の番組を見るためのザッピング中だったため、何となく、ホンワカした作風だったような…というくらいしか記憶にない。そんな、ハチクロを全く知らなかった私をフリークにしてしまったこの映画。

美術大学生5人の、甘酸っぱくて切ない群像劇。それぞれ恋に未来に悩んでいるけど、みんな、キラキラしているんだなぁ。もう十分、大人になってしまった私には、思わず「若いな〜」とつっこんじゃう点も若干あったりするけど、エンディングではうかつにも泣いてしまった(笑)。何かね、好きだけじゃ叶わないこともあると気付かされた、遠い昔の自分を見ているようでねぇ…(しみじみ)。試写室を出る時には「マンガ絶対読まなきゃっ!」と、書店に走ったのでした。

小説でもコミックでも、先に原作を読むか、映画を見るかというのは毎回、悩むところではありますが、私が思うにこの「ハチクロ」に関してはどっちが先でも大丈夫なのではないかな?という気がします。もちろん、原作とは若干設定が変更されていたり、オリジナルのエピソードが加わっていたりするけど、コミックが持つテイスト(お笑いはやや控えめ)はしっかりキープされているし、全編に流れる音楽もナイスなセレクト。最近、私が見たコミック原作の作品(僅かではありますが)の中では、かなり評価高し。

でも、この映画が成功している一番のポイントはキャスティングでしょう。コミックの映画化はすでにビジュアル化されているだけに、キャスティングはとっても重要だと思うけど、竹本=櫻井 翔、はぐ=蒼井 優、森本=伊勢谷友介、真山=加瀬 亮、あゆ=関めぐみの“ハチクロ美大生5人衆”に関しては、ルックスといい演技といい、これ以外考えられないというパーフェクトな配役です。中でも印象的だったのはメガネ男子(だけど、ストーカー!?)な加瀬 亮。「花よりもなほ」でもいい演技でしたけど、ハチクロでは見事なまでに真山クンを体現しています。美人でカッコイイけど片思い一直線!なあゆを演じた関めぐみ、この映画で最大の発見。彼女の演技は初めて見たけど、すごくナチュラルで良かった…。

もう一つ、見所といえば、胸がキューンとなるようなセリフの数々。私がコミックを読みながら時折、泣いてしまうのは、セリフや心の中の呟きのせいでして、その数々の言葉が耳に届くのは、何とも幸せなことです。

「人が恋に落ちる瞬間をはじめて見てしまった…」

スクリーンの中の5人は、一体、どんな風に言葉を届けてくれるのか?お楽しみに。

主人公は男性の方が多い、ということもあって、女子のみならず男子にもぜひ見てもらいたい「ハチミツとクローバー」。思わず、青春っていいなぁ…と、呟いてしまう、そんな作品です。

| 14:34 | カテゴリー:映画
2006年06月15日
「フーリガン」★★★☆☆
先週末から、生活サイクルがW杯モードになってしまいました〜。夜10時からリアルタイムで第1試合。その後、用事を済ませていると深夜1時になり、寝なきゃいけないのにズルズルと第2試合を見始めて…。さすがに早朝4時の試合は録画してますけど、人間、楽しいことならあっと言う間に生活リズムを変えられるのねぇ。おかげで早起きがきつい今日この頃です。

(そうこうしているうちに、たった今、イングランドvsトリニダードトバゴ戦が始まってしまった。)

さて、今回、紹介する映画は「フーリガン」。世界で一番サッカー好きな国と言われるイギリスの映画です。同じ部屋に住む友人の罪を着せられ、名門大学を退学処分になったアメリカ人青年マット。傷心のまま、姉夫婦の住むロンドンに向かったマットは、そこで義兄の弟ピートに出会う。ピートはウェストハム・ユナイテッドのフーリガン・ファームGSE(グリーン・ストリート・フーリガン)のカリスマ的リーダーで、彼に誘われプレミアム・リーグの試合を体験したマットは、次第にフーリガンに魅せられていく…。

オープニングに描かれるのは、因縁の対決と言われる<ウェストハム>vs<ミルウォール>のフーリガン同士のバトル。「まったく、何やってんだかなぁ」と、正直ちょっと呆れ顔になるけど、見ていくうちにどんどん面白くなる映画です。

“サッカー”と言うアメリカ人マットに「イギリスではフットボールと言うんだ!」とダメ出し。競技場に入る時は監視カメラに顔を見られないようにフードを被る(だから皆フード付きを着ている)。さらにフーリガンはアメリカ人と記者が大嫌い(マットは大学でジャーナリズム専攻)などなど。思わず“へぇボタン”を叩いてしまう小ネタが一杯なのも、フーリガン事情に詳しい作家ドゥギー・ブリムソンが脚本に携わっているからでしょう。

でも、フーリガンを讃える映画になっているわけではなく、マット=つまり外部の人間の視線から描かれている。心の拠り所がなかったマットは、フーリガン同士の連帯感や信頼に家族のような心地よさを知ると同時に、危険な暴力が持つ魅力にもはまっていく。だけれども、興奮を味わえる暴力からは悲しみが生まれる。それに気づくことができるか。それとも、全てを失ってでも、自分自身の存在を確かめる為にフーリガンであり続けるのか。見方によっては、様々な感情を掴むことが出来るはず。

キャスティングも良く、中でもピート役のチャーリー・ハナムがス・テ・キ。マット役のイライジャ・ウッド以上に、短髪姿のチャーリーに女子は目が釘付けになるはずです。

ちなみに監督はレクシー・アレキサンダーという女性。2002年にはアカデミー賞短編実写映画賞にノミネートされていて、これが待望の初監督作品です。映画で描かれる喧嘩シーンや、実際のプレミアリーグの試合映像の迫力から、監督が女性と知ってビックリしたけれど、本人は子供の頃からドイツ・マインハムの熱狂的サポーター、しかも空手やキックボクシングをたしなむという美人。なんだか頼もしい(笑)。

フーリガンを青春映画に盛り込んで描いた「フーリガン」。暴力を肯定するわけでは決してないけれど、リアルな姿を描いたという意味では興味深い映画です。

| 17:53 | カテゴリー:映画
2006年06月08日
「インサイド・マン」★★★★★
先月、我が番組が行った「インサイド・マン」の試写会。私と祐さん、久々に二人揃ってMCをさせてもらいましたが、映画の感想を送ってくれた皆様、ありがとうございました。あと、「みんしるさんのヒールが高い」とメッセージを送ってくれた方々も!あのくらいのヒールの靴は普段から履いているので、たくさんの指摘を受けてちょっとビックリしました。ま、少しでも足を長く見せたい、颯爽と歩くイイ女になりたい、という気持ちだけで履き続けたら、難なくこなせるようになりましたねぇ・・・。それだけ、年も重ねましたしねぇ・・・(しんみり)。

さて、「インサイド・マン」。お気に入りのクライム・サスペンスです。銀行に立てこもった犯人グループと警察の攻防、その中で明らかになる銀行の会長の“秘密”。さらにその「秘密」を守秘すべく、会長によって現場に送られた女弁護士。登場人物たちの背景にある様々な事情が絡む中、犯人グループのリーダーが言う“完全犯罪”がどうやって行われるのか、ハラハラしながら見ていくのですが、人種の坩堝=NYならではのエピソードとセリフが、そんな私をクスクスっと笑わせる。なんていうか、インテリジェントでウィットに富んでいて、大人のための映画になっているんですね。そもそも、犯人グループが、どんな目的でその銀行に押し入ったのか? 伏線やトリックを使い、説明よりも観客に想像させるこの映画の演出が、私は好きです。

ところで、ハイヒールと言えば、女弁護士マデリーンを演じているジョディ・フォスター。髪を後ろで一つにまとめ、高いヒールにアルマーニのスーツで颯爽と歩く姿は“THE デキル女”。でもって、自分よりも上に立つ相手であっても、私に出来ない仕事はないと言い放てる自信。くぅ〜、カッコいい!一度でいいから、言ってみたいわ、そんなこと(笑)。 まぁ、友達は出来ないタイプだと思うけどね。「フライトプラン」で見せたブルース・ウィリスばりのアクションよりも、こういう役を演じるジョディ・フォスターをもっと見たいなぁ。

冒頭からどアップで登場する犯人グループのリーダー、ダルトン役のクライブ・オーウェンもイイ。下品な言葉の応酬&泥沼恋愛物語だった「クローサー」での彼に入れ込むことはなかったけど、今回はとっても魅力的。でも、やっぱり一番はデンゼル・ワシントンでしょう。服装といい、チョイ悪ぶりといい、顔に増えたシワを差し引いても、やっぱりステキ。演技も文句ナシですし…。

社会派と言われてきたスパイク・リー監督が、初めて手掛けた娯楽作品「インサイド・マン」。映画を見終わった後、「ユージュアル・サスペクツ」を見た時のような満足感で一杯になり、もう一度見たい!と思ったのでした。撮る側と演じる側の余裕と、彼らの最高の化学反応が楽しめる1本です。

| 15:43 | カテゴリー:映画
2006年05月25日
「STAY」★★★★☆

映画「STAY」の宣伝文句にこんなフレーズがある。それは“感動のイリュージョン・スリラー”。正直、さっぱりわからん、と思った。イリュージョンと言えば、思い浮かぶのはプリンセス天功に、デビッド・カッパーフィールド。彼らが見せる信じられないようなトリックは、見る者の錯覚=イリュージョンによって完成する。では、この映画におけるイリュージョンとは、一体、何なの?

精神科医のサム・フォスター(ユアン・マグレガー)は同僚のセラピストからの引継ぎで、男性患者ヘンリー・レサム(ライアン・ゴスリング)を担当することになる。死に囚われていた美大生のヘンリーは、三日後の土曜の真夜中に自殺すると、サムに予告する。ヘンリーのことで話し合いたいのに連絡がつかない同僚。そんな中、サムの恋人で画家のライラ(ナオミ・ワッツ)がヘンリーに興味を持ち始めるが、サムは守秘義務があると突っぱねる。ライラはサムの元患者で、以前、自殺未遂をしたことがあり、ヘンリーの影響を受けるのではないかと心配だったのである。ヘンリーの自殺を阻止するため、サムは奔走するのだが…。

簡単なストーリーラインを読むと、心理サスペンスのようだけれども、この映画、只者ではありません。というのも、これだけでは映画の10分の1も理解できないから。耳障りな金属音の後、カメラが最初に捉えるのは、燃え上がる事故車の隣に膝を抱えて座るヘンリーの姿。その後ろに長く繋がる車両は、ずっと、停止したまま。ゆっくりと歩いてくるヘンリーの顔がスクリーン一杯に映し出された時、瞬時にして場面はサムの顔へと移動する。これはサムの夢?という疑問もそこそこに、この映画はあっと言う間に私達を、現実とカオスの狭間へと連れて行くのです。

敏感な人なら映画を10分も見れば、主人公達が住む世界はどこか歪んでいると感じるはず。私はまず、異常に短いユアン・マクレガーのパンツの丈が気になった(何か意味があるのかなぁ)。不可思議な出来事の数々、サムとヘンリーの周りに登場する双子や三つ子、様々なシーンでさりげなく掛かっている絵、どこまでも続く螺旋階段、何故か巻き戻されるシーンなど。何かがずれている。サムが見るものは現実なのか?それとも、ヘンリーはサムの中にいる分身なのか?謎は深まるばかり。何度も登場する“銀の風船を持った少年”が母親に向かって言うセリフもいつも同じで意味深です。

理論的に言い表せないシュール感は、エッシャーやダリの絵。独特な色彩はファイン・アート。そして瞬間移動する刺激的な映像は、ケミカル・ブラザーズの“Let Forever Be”のPVのよう…。この映画は、散りばめられた謎や伏線を忍耐強く探し出せる洞察力を持ち、頭ではなく感覚で映画を見られる人なら、さらに楽しめるはず。「π」とか「マルホランド・ドライブ」が好きな人なら大丈夫でしょう。ただ、ユアン・マクレガー、ナオミ・ワッツ、ライアン・ゴスリングなど、俳優が見たくて、と言う理由だけだと…?。もちろん、皆、良い演技をしているんですけどね。

ネタバレ厳禁なストーリーもさることながら、妥協することなく作り出された刺激的な映像も楽しんで欲しい作品。いつもとは違う表情を見せるNYの風景も楽しめます。

監督は「チョコレート」「ネバーランド」のマーク・フォスター。人生を静かに、時にファンタジックに描いてきた彼が、こんな迷路のようにスリリングな映画を作るとは。ちょっとビックリです。

| 14:33 | カテゴリー:映画
2006年05月18日
「ナイロビの蜂」★★★★★
レイチェル・ワイズといえば「真っ白な美尻」。映画「レニングラード」を見た男性達が、ジュード・ロウとのラブシーンで見せた彼女のお尻を絶賛していたからだ。私といえば、あのラブシーンが必要だったのか疑問だったし、大好きなジョード・ロウやエド・ハリスが出演していたのに映画に入り込めず、「レニングラード」の評価はあまり良くなかった。

ところで、レイチェル・ワイズという女優さんはナチュラルな美しさと演技力を兼ね備えているのに、今までどうも印象が薄い。「ハムナプトラ」シリーズではブレンダン・ブレイザー、「チェーン・リアクション」「コンスタンティン」でキアヌ・リーブスなどの人気スターと共演しているわりには、である。彼女のキャリアで最も評価が高い「アバウト・ア・ボーイ」もヒュー・グラントの情けない顔しか浮かばず…。今までずっと、何か損をしている感じの女優という印象だった。でもやっと、彼女なしではありえないと思うような真の代表作が生まれた。今年のアカデミー賞助演女優賞を獲得した映画「ナイロビの蜂」である。

映画のTVCMを見ると、単なるラブストーリーだと思われがちだけど、この作品の軸は重厚な社会派サスペンスである。駐在先のナイロビで、英国外交官ジャスティンの妻テッサが不慮の事故で亡くなる。強盗に襲われたという現地の警察の言葉に納得が行かない。ジャスティンは妻の死の真相を独自に探り始めるのだが…。

妻の足跡を追う中で、今まで知らなかった妻の姿を知るジャスティン。何度も浮かぶのは、まばゆいばかりのテッサの笑顔。しかし、なぜ?という疑問が解けるたび、夫は彼女の深い愛を知ることになる。そして、情熱的な活動家だったテッサが暴こうとしていたある陰謀を知り、ガーデニング好きで物静かだった夫は行動を始める。

貧困と病気に苦しむアフリカ。そのリアルな光景に言葉を失う。息を呑むほど美しい自然と、貧しい生活の中で見せる子供たちの元気な笑顔が、私達の心を締めつける。そこには真のボランティア精神を持った天使と、援助という仮面を被った悪魔もいる。アフリカで横行する薬物実験、大手製薬会社と官僚の癒着。憎むべき人間たちに憤りを感じながら、一体、私には何が出来るのだろう?考えさせられた。

ジャスティン役のレイフ・ファインズはいつものように素晴らしい演技。でも、今回はテッサ役のレイチェル・ワイズがさらに上をいく。ノーメークとおぼしき場面もたくさんあるのだが、内面から溢れるハツラツとした姿が本当に美しい。ナチュラルでありながら、地に足がしっかりついている、そんな女性像を演じていて、映画を見終わってこんな女性になりたいと思ってしまった。

社会派ドラマ、サスペンス、そして夫婦の深い愛を、独特なタッチで見事なまでに描き、原作が持つメッセージ性もしっかりと盛り込んだフェルナンド・メイレレス監督の手腕にも脱帽。多くの人に見てもらいたい、そんな作品です

| 16:01 | カテゴリー:映画
2006年05月17日
心臓バクバク!「ポセイドン」
パンフレットは綺麗なんだけど…
昨夜、「ポセイドン」完成披露試写会に行ってまいりました@丸の内ピカデリー1。アメリカではBOX OFFICE初登場2位。1位独走中のトム・クルーズ主演「M:I III」にはかなわなかったものの、私の見たい度は日に日に高まりまして。だって、あの予告編、凄いじゃない?当初は「ポセイドン・アドベンチャー」のリメイクなんて惹かれないなぁ…なんて思ってたんだけどねぇ。映画会社の思うツボですな。

で、ワクワクしながら見たんだけど…心臓に悪いよぅ、この映画。パニックの描き方が、ある意味、容赦ないです。この手の映画は、何かと長く作りたがる傾向があると思うのですが、上映時間はたったの98分!あっと言う間に船が転覆して、あっと言う間にパニックになります。そんな馬鹿な、という突っ込みなんて出来ません。見ている私は目の前の恐怖に苦しくなって、どんどん心臓が痛くなりました。う〜ん、閉所恐怖症高所恐怖症、そして水が怖い人にはあまりお薦めできませんね、この映画(笑)。

海と大波とパニックを描けばこの人の右に出るものはいない!? ウォルフガング・ペーターゼン監督は、今回、本物の恐怖を描きたかったんだそうです。どこがCGだかわからない、よく出来た映像は一見の価値あり。とりあえず、最近始めたスイミング、これからはクロールよりも潜水を練習しようと思いました(見ればわかります、この気持ち)。

ちなみに今夜は「ダ・ヴィンチ・コード」試写会に行ってきます。待ってて〜、ジャン・レノ〜!

| 03:07 | カテゴリー:映画
2006年05月11日
デンゼル・ワシントン傑作集/「マルコムX」★★★★★

祝!e-station GOLD special preview 「インサイド・マン」!ということで、今回は主演デンゼル・ワシントンの過去の作品を紹介することにいたしました。

デンゼル・ワシントン、ステキですよねぇ。彼のイメージを3つの言葉で表現すると知的ジェントルマン、そして誠実。その合間からフワリとセクシーさが漂ってくる。クーッ、たまりません。「グローリー」でアカデミー賞助演男優賞を、「トレイニング・ディ」で見事アカデミー主演男優賞を獲得した演技力も兼ね備えています。

そこで、今までのデンゼル・ワシントン出演作の評価がいかがなものか、調べてみました。私が贔屓にしているアメリカのサイト“Rotten Tomato”(あらゆるレビューを集計して、映画を評価するサイト。評価が高いとfresh=新鮮、低いとrotten=腐っているとなり、トマト・メーターにそのパーセンテージが表示される)では、1986年の「キングの報酬」から2006年の「インサイド・マン」まで30作品の平均トマト・メーターは、67%が新鮮。平均的に見ると出演作には駄作があまりない、ということ。さすが、デンゼル!中でも、スパイク・リー監督と組んだ作品はすべて高評価…。となれば、やっぱり紹介するのはこの黄金コンビの作品じゃないと。それならば、スーツ姿が多いデンゼルとは一味違う、女に弱くてセクシーなトランペッターを演じた「モ’・ベター・ブルース」しかないっ!と思ったのに、廃盤…(なぜ、この名作が廃盤!?)。でもって、レンタルでもなかなか手に入らない。そうなったら、デンゼルにとってもスパイク・リーにとっても、過去最高の評価を得ている「マルコムX」しかない。(テイストは違うけど…)

実は、「マルコムX」を最後まで見たことがないんです。上映時間が201分=3時間 21分ということで、以前、レンタルした時、時間がなかったのか途中まで見て返してしまった。今回はそのリベンジだ。果たして、最後まで見ることができるのか…。

不幸な家庭に育ち、チンピラのような生活をしていた男が、どのようにして黒人解放運動の指導者マルコムXとなっていったのかが描かれていくのですが、いやぁ、凄い映画だった。14年前の作品だと思えないクオリティの高さ。もちろん、設定が40〜60年代ということもあるけれど、スパイク・リーの切れのある演出と、主役を演じたデンゼル・ワシントンの演技力は、今も輝き続けている!前半は、お調子者風なデンゼルの生き生きした演技と、カラフルな衣装やダンスなどが、私の心をワクワクさせ、強盗犯として服役した刑務所から出所後、ブラック・モスリム指導者の右腕となって活躍する姿にゾクゾクさせられる。そのカリスマたるや、凄い。これ1本で、デンゼル・ワシントンのすべてを堪能できるといっても、過言ではありません。信じていたものに裏切られ、自分なりの道を模索するも、一度は仲間だった者たちによって命を奪われてしまうマルコムX。時代は移り変わろうとも、今を生きる私達の心を揺さぶるものが、この映画にはあります。デンゼル・ワシントンの妻を演じる若かりし頃のアンジェラ・バセットも美しい…。

「モ‘・ベター・ブルース」「マルコムX」「ラスト・ゲーム」と見ていけば、新作「インサイド・マン」でのデンゼルをもっと楽しめるはず。久々にスパイク・リーとの黄金コンビ復活で、演技するのが嬉しくてしょうがない、といった感じですから。というわけで、「インサイド・マン」の試写会へのご応募、お急ぎください!

ちなみに…“Rotten Tomato”によるデンゼルのワースト映画ベスト3は

3位「ボーン・コレクター」、
2位「ジョンQ 最後の決断」
1位「私の愛したゴースト」

えっ、「ヴァーチュオシティ」より「ボーン・コレクター」の方が駄作なの!?

| 16:50 | カテゴリー:映画
2006年04月27日
「隠された記憶」★★★★☆
皆さんは、ミヒャエル・ハネケをご存知でしょうか?カンヌ映画祭でパルムドールを受賞した「ピアニスト」の監督。そして、私が今まで見た作品の中で最も不快度指数が高かった映画「ファニーゲーム」の監督です。「ピアニスト」はパルムドール受賞という輝かしい成績と、イザペル・ユペール&ブノワ・マジメル主演に惹かれて見に行った方も多いことでしょう。でも、賛否両論、好きか嫌いかはっきり分かれる作品でした。私の感想を一言で言うならば、色んな意味で「痛い!」(笑)。でも、以前に衝撃作「ファニーゲーム」を見ていたから、そんなにびっくりはしなかった。こっちはもう、凄いですもん。見ている間は残酷さと理不尽さにイライラし、最後はドーンと落ちましたから。あれはまさに、史上最高の不快感。しかし…なぜか虜になってしまうんだな、これが。後味が悪い映画は今まで何度も見たけれど、ハネケ監督は何か違う。「嫌な映画」というだけでは済まされない。明白に答えを出さないから、見終わると色んなことを考えさせられる。描かれるのは現代社会の「闇」、そして人間が潜在的にもっている「狂気」。ウィーン大学で哲学や心理学を専攻した監督が投げかける問題に、なぜか挑んでしまうのです。

そんなハネケ監督の最新作「隠された記憶」はカンヌ映画祭で監督賞・国際批評家賞・人道賞(こんな賞もあるのね)を獲得した作品です。冒頭に映し出される、ある家。ある一定の場所から撮影された何の変哲もない映像に、見る側が飽きかけたころ、夫婦の会話が聞こえ始める。早回しされる映像。そう、この映像は主人公である人気キャスター、ジョルジュ(ダニエル・オートゥイユ)とその妻アンヌ(ジュリエット・ビノシュ)に届けられたビデオテープ。誰が何の為に撮影し、送りつけたのか全くわからないまま、その後も2人の家には、彼らの日常を撮影したビデオ・テープと不気味な絵が、何度となく届けられるようになる。嫌がらせに困る家族に対して、何もしてくれない警察。恐怖と不信感から、友人に囲まれ幸せそうだった家族に、少しずつ亀裂が生じてきた頃、ジョルジュは子供の頃の記憶を呼び覚ます・・・。

劇中、何度となく映し出されるビデオテープの映像は、単調でその意図が全くわからないからこそ、主人公同様、どんどん見る側の心もかき乱していきます。そして、訴えてもなかなか動いてくれない警察への苛立ち。これらは私達の生活でも起こりうること。無差別的な攻撃、警察の不誠実な対応。ここ数年、これらを原因とする事件が、いかに多いかを考えさせられる。けれども、同情していたはずの主人公ジョルジュを見ていくうちに、人間が持つ残酷さ、やましさを思い知らされることになるのです。ハネケ監督のどこまでも冷徹な視点と、音楽を一切使わない演出が、静かにじわじわと効果を表すのです。最初に見たときは、犯人は誰なのか?ということに集中してしまいましたが、2度目に見たときは、犯人捜しよりも、ハネケ監督が描こうとする部分がクリアに見えてきた。1度目でモヤモヤが残った人は、2度見ることをお薦めします。ちなみに映画の宣伝でも謳われている“衝撃のラストカット!”は、よ〜く、目を凝らさないとわかりません。この映画の理解度にも反映するのかも。

今年で64歳になるミヒャエル・ハネケ監督ですが、日本で紹介されたのは「ファニーゲーム」「ピアニスト」のみでした。今回、「隠された記憶」公開に合わせ、渋谷のユーロスペースでミヒャエル・ハネケ映画祭が開催中。日本未公開作品上映に惹かれ、GWに行こうと思ったけれど…えっ、モーニングショー!? 朝いちで見るにはしんどい作品ばかりかも(笑)。

| 15:08 | カテゴリー:映画
2006年04月20日
「ぼくを葬る」★★★★☆
普段の生活の中で、「死」について考えることは、あまり、ない。もちろん、自分の知っている誰か、もしくはその人の周りの誰かが亡くなった時は、色んなことを考える。家族の死、友人の死、恋人の死、そして、自分の死にどう向かい合うのだろうか、と。でも、大抵は、時が過ぎればそのことを忘れてしまう。忘れてしまう、というより、忘れようとするのだろう。それはきっと、自分が死に対して恐怖を抱いているから。だけど、時に映画は、そんな私に「死」について冷静に考える時間をくれる。

フランソワ・オゾン監督の最新作「ぼくを葬(おく)る」の主人公ロマンは、美しく魅力的なルックスを持つ、売れっ子フォトグラファー。充実した毎日を送る彼は、ある日、余命3ヶ月と宣告される。自分の運命への怒り、悲しみ、絶望。そして、彼が選んだ決断は、たった一人で死と向き合うということだった。

ケンカばかりの姉、そして、自分が同性愛者だとカミングアウトしてからぎこちない両親には、自分の死を内緒にしておく。一緒に暮らす最愛の恋人には、一方的に別れを告げる。そんなロマンの行動はある意味、自分勝手である。彼がひっそりと死んでしまったら、周りの人たちはどれだけ悲しみ、嘆くのだろう。それは彼を愛する者たちへの、酷い仕打ちではないだろうか。

そんな想いがよぎる中、ロマンは唯一の理解者である祖母(ジャンヌ・モロー)に会い、自分がまもなく死ぬと言うことを打ち明ける。共にタバコをくゆらし、語り合う2人。その中で祖母がロマンに見せる、たくさんのサプリメントが印象的だった。少しでも長く生きようとする祖母と、たった一人で死に立ち向かおうとするロマン。「今、ここで、お前と一緒に死にたい」という祖母の言葉に泣き崩れるロマンに、内に隠した彼の本当の心情が見え隠れする。

しかし、たった一人の死への旅は、思いもよらない方向へと進む。ある女性から、代理父になって欲しいと懇願されるのである。果たしてロマンが取る決断とは…。

死によって自らと向き合い、それによって残された日々の一瞬一瞬を慈しみ、カメラに収めていくロマン。その難しい役柄を、メルヴィル・プポーが熱演。近づく最期に身体はやせ細っても、彼の表情には満ち足りた光を見ることができる。そして、美しすぎるエンディングシーンは、いつまでも心を捉えて離さない。私はあんな風に逝くことができるだろうか…。

“愛する者の死”を描いたシャーロット・ランプリング主演の「まぼろし」。そして“自分自身の死”を描いた「ぼくを葬る」。二作ともが重要なモチーフとなっていて、人は海に帰るというイメージはどこか東洋的だな、と思った。フランソワ・オゾン監督によれば、これらは死を描く3部作で、次回作は“子供の死”を描いた物語になるという。

81分という短い時間の中で、死に向かう者の姿を見守りながら、自分だったらどうするだろうか、と考えさせられる作品。大切な人と、もしくは1人でじっくりと観て欲しいです。

それにしても、美しい邦題である。

| 15:43 | カテゴリー:映画
2006年04月13日
「君とボクの虹色の世界」★★★☆☆
映画につけられた邦題といい、ピンク色のポスターといい、絵に描いたようなSWEET感漂う「君とボクの虹色の世界」。そこに主役の子の超ガーリーなルックスと、「ポスト ソフィア・コッポラ」というフレーズが加われば、鬼に金棒!? 何を隠そう、今、並べた全てにすっかりやられてしまったのは、私です。で、映画を見てみたら…。「虹色の世界」という程、甘くはないぞ。だって、登場人物は皆、どこか風変わりで、展開されるエピソードの数々に対する視点はとても鋭い。「ポスト ソフィア・コッポラ」と呼ばれるミランダ・ジュライ(監督、脚本、主演)は、明らかにソフィアよりも独創的。根本的な部分は明らかに違う、と感じずにはいられない。

アーティストを夢見ながら高齢者タクシーの運転手をするクリスティーン(ミランダ・ジュライ)は、ちょっぴり不思議ちゃん。そんな彼女がある日、ショッピングモールの店員で靴売り場担当リチャードに恋をする。ストーカーちっくなアプローチからは、熱い想いと共に彼女の不器用さが伺える。リチャードの方はというと、離婚したばかり。妻が家を出て行く時、自分の手に火をつけ、火傷の痛みと共に心の痛手も引きずっている。この2人の恋愛模様を軸に、彼らの周りのちょっとヘンテコで愛しい人たちが登場する。父親に冷たいリチャードの息子たち、クリスティーンの得意客の老人、リチャード家の隣に住む嫁入り道具コレクターの小学生、ロリコンの妄想にふけるリチャードの同僚、仲良し女子高生二人組に、クリスティーンの売り込みに冷たいキュレーターなど。中でも、エロチャットにはまるリチャードの次男、6歳のロビーは最高。意味もわからずレスポンスするんだけど、文章はどんどんアブノーマルな展開に。オチも含めて、可笑しすぎる。

臆することなく新しい世界に飛び込んでいく子供たちと、自分が作り上げた殻から這い出すのが難しくなってしまった大人たち。それぞれが、自分にぴったりの触れ合いを求めて、小さな一歩を踏み出す過程が、見るものの心を暖かくします。画面を彩る鮮やかなビタミンカラーに、ポエティックな言葉の数々。そして、主人公クリスティーンが製作するアートは、等身大のミランダ・ジュライを髣髴とさせる。ちょっとしたシーンまでもがアーティスティックで、リチャードになかなか近づけないクリスティーンが、彼に選んでもらったピンクの靴に“YOU”“ME”と書くシーンや、ボンネットに乗ったままの金魚のシーンが印象的。

アート、小説、音楽、ファッションに映像と、様々な手法で独自の世界を作り上げてきたミランダ・ジュライ(BFはマイク・ミルズだそう)のマルチ・アーティストぶり全開の作品。心地良いホンワカとした脱力感は、ちょっぴり寂しかったり、何かに疲れた時、あなたを包み込んでくれるはずです。

ちなみに…日本語公式サイトも良いけれど、英語公式サイトも面白い。ミランダ・ジュライのブログが楽しいので、お薦め。

| 15:35 | カテゴリー:映画
2006年04月12日
試写会でもらったものは…
学芸会みたいだ…
お金が入っていればなぁ

今日は試写会2本立て!まずは4月22日公開の「Vフォー・ヴェンデッタ」。「マトリックス」のクリエイターが手掛けたこの作品は、様々なキーワードが散りばめられた、メッセージ性の強い刺激的な作品。坊主頭になるナタリー・ポートマンの演技が光る。街角の巨大スクリーンから発せられる人々を抑圧する映像を見て、ジョン・カーペンターの「ゼイリブ」を思い出した。面白かったよね、「ゼイリブ」…。ちなみにパンフレットには映画に登場する謎の人物“V”のお面が入っていたので、家で被ってみました(ちっとも、怖くない…)。

もう1本は、スパイク・リー監督の「インサイド・マン」やばいですっ!面白いですっ!!もっとシリアスな映画だと思っていたら、最後の最後までドキドキ、ワクワクさせられるサスペンス映画だった。なんといってもプロットが面白い。スマートで良く出来てる。セリフも面白いし、さすがスパイク・リーが捉えるNYの姿は生き生きしてますな。さらに、デンゼル・ワシントンの可笑しくてカッコよすぎる捜査官に、沈着冷静な強盗団のリーダー、クライブ・オーウェン。そして、やり手の弁護士を演じるジョディ・フォスター他、出演者の演技も味があって良い。あ〜、見た人と話したいよ〜。もう一度、見たい映画です。で、ここでも貰いました、お・ま・け。映画に登場する銀行の金庫にあったのと同じデザインの袋。何に使えばいいんでしょうね…。

| 14:19 | カテゴリー:映画
2006年04月06日
「リバティーン」★★★☆☆
ジョニー・デップって凄い人だぁ…と、つくづく思う。主役でなくても、彼が出演したと聞けば、映画好きは必ず見たいと思う俳優。「パイレーツ・オブ・カリビアン」や「チャーリーとチョコレート工場」の強烈キャラで、今では子供たちのハートまで掴んでしまった俳優。そして、ドル箱スターとなった今でも、世間の目なんて気にせずに、自分が演じたいという欲望のままに映画を選ぶ俳優、である。もちろん、映画の内容がイマイチだったこともあるけど、ジョニー・デップの演技は、どんなときでも私達を楽しませてくれる。

そんな彼の最新作が「リバティーン」。脚本の冒頭3行を読んで、出演を即決したというのだから、この映画ただものではない。ジョニー・デップが演じるのは17世紀のイギリス王政復古期に生きた、放蕩詩人ジョン・ウィルモットこと第二代ロチェスター伯爵。挑発的な言動で常に人々の注目を集め、重要な客人の前で猥褻な詩を披露し、欲望のおもむくままに女たちを愛した男の生き様。その姿はまさにロック!その猥雑さたるや、強烈。ジョニー・デップが惚れこんだのもよくわかる。色気、野性味、狂気、そしてカリスマを持つジョニー・デップじゃなければ、リアルに演じることは出来ないとさえ思うほど。

映画はジョン・ウィルモットのこんな独白から始まる。「初めに断っておく。諸君は私を好きになるまい。・・・・・・・どうか私を好きにならないでくれ。」 暗闇から浮かびあがるジョニー・デップの顔は、まるで、「この映画を見るおまえたちをここからじっと観察しているぞ」、と挑発するかのよう。

たしかに、誰もが好きになれる映画ではないだろう。猥褻な言葉の応酬といい、劇中に登場する世にもビックリな舞台といい、普通の人なら眉をひそめる箇所も多い。むせ返るような匂いを感じるロンドンの町並みは、雨、泥、霧だらけ。屋内は蝋燭の明かりだけで、いつも暗い。そんな中、唯一、美しいのが、駆け出しの女優エリザベス・バリーが、芝居好きなウィルモットに見出され、稽古をするシーン。蝋燭の揺れる炎の中で、女優として開花する瞬間を演じるサマンサ・モートンは素晴らしく、後に愛し合うデップとの駆け引きは、ピンとした緊張感があってゾクゾクする。

国王チャールズ二世を演じるのは、舞台版でウィルモットを演じていたジョン・マルコヴィッチ。最後まで奔放な夫を見届ける妻マレットに、透き通った肌の美しさに惚れ惚れするロザムンド・パイク。監督は、これが初監督作品となるローレンス・ダンモア

セクシーで美しいジョニー・デップが、梅毒によって蝕まれていく姿は、無残。私が見たジョニー・デップ作品の中でも1、2を争うビックリものである。ジョニー・デップという俳優を愛しているのならば、禿頭に白いソックスが強烈だった「ラスベガスをやっつけろ!」と並んで、必ず見て欲しい作品である。

| 14:49 | カテゴリー:映画
2006年03月30日
「リトル・イタリーの恋」★★★☆☆
イタリア人が好きなものと言えば、エスプレッソ。以前、とあるTV番組で“ちょいワルオヤジ”ジローラモさんが、来日した時、大切に持ってきたエスプレッソメーカーの話をしていた。イタリア時代から使い続けているというエスプレッソメーカーで、毎朝、自分でエスプレッソを作って飲まないと一日が始まらないのだという。そんなことを「リトル・イタリーの恋」を見て思い出した。オーストラリアのリトル・イタリーを舞台に描かれるこの物語の中で、極めて印象的なシーンが、カフェにエスプレッソ・マシンが導入される場面。村の長老が(神父様を差し置いて)最初の一杯を飲み干し、「これぞ、コーヒーだ!」と叫んだ後、次々に小さなカップを手にした村人たちはお祭り騒ぎ。1950年代当時、オーストラリアに渡って来たイタリア移民たちの故郷へ思いが、エスプレッソの如く、ギュッと濃縮されたシーンである。

その頃の“リトル・イタリー”にはイタリア人女性が少なかった為、当時は写真と手紙でお互いを知り合い結婚する、というのが一般的なお見合い方法だった。そんな中、プロポーズにことごとく失敗してきた青年アンジェロ。原因は自分の容姿だと思いこんでいる。ある日、アンジェロはイタリアに住む美しい女性ロゼッタを紹介される。しかし、アンジェロはきっとまた断られると消極的になっていた。そんな兄に、弟ジーノは熱心に手紙を書くことを薦め、ついにアンジェロは「花嫁になって欲しい」と綴った手紙を送る。弟ジーノの写真を添えて・・・。

本人に会うことなく結婚を決意する。今の時代では考えられないことだけれど、リトル・イタリーのみならず、昔はそうやって嫁いだ女性がたくさんいたのだと思う。ましてやこの映画のヒロイン、ロゼッタは国を離れて見も知らぬ国オーストラリアに嫁ぐのだから、家族を離れる寂しさや新たな地への不安感は募るばかり。それを払拭する為に、彼女は夫となる人とのストーリーを、想像の中で作り上げていく。愛しいアンジェロ・・・しかし、彼女のストーリーに登場するのはジーノである。間違いだったという言葉だけでは消えることのないジーノへの想いが、ロゼッタの心を一杯にし、彼女の美しさに惹かれながらも、ジーノは兄の為に彼女の思いを拒む。ジーノの本当の気持ちは?そしてアンジェロが選ぶ道とは?

アンジェロを演じるのは、神経質そうな表情が役柄にぴったりのジョバンニ・リビシ。楽天的な弟ジーノ役は、若かりし頃のジョン・トラボルタを彷彿とさせるアダム・ガルシア。ロゼッタが脳裏から消せないというのも納得のイケメンである。そしてロゼッタ役のアメリア・ワーナー。レトロな雰囲気にあった美しさが印象的な彼女だが、最近では「イーオン・フラックス」にも出ているそう。
監督はこれが初メガホンとなる「きみに読む物語」の脚本家ジャン・サルディ。「リトル・イタリーの恋」は、イタリアをルーツに持ち、オーストラリアのリトル・イタリー、カールトンで育ったサルディ監督ならではの作品である。

始まりはコミカルながら、ちょっぴり苦い物語。でも、映画を見終わった後には、暖かい気持ちになる。小粒ながら、あなたの心を桜色に染めてくれる作品です。

| 15:31 | カテゴリー:映画
2006年03月23日
「ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!」★★★★★

映画「チキンラン」が日本で公開された頃に、新宿高島屋で行われていた「アードマン展」を見に行ったことがあります。イギリスが誇るクレイ・アニメーション殿堂、アードマン・アニメーションズの製作風景や、今まで手掛けてきた作品の数々が展示されていて、会場は超満員。会場のスペースはさほど広くはなかったのに、気がつけば1時間半以上もそこにいた私。楽しさと驚きが一杯で、死ぬまでに一度はアードマンのスタジオを見学したいと思いました。1秒間で24コマ。3秒のセリフ一つを撮影するのに丸一日かかるクレイ・アニメーション。手、足、口、目をちょっといじったくらいじゃ、その変化はわからないけれど、根気と緻密な作業の積み重ねで、キャラクター達に命が吹き込まれ、映像からは、しっかりと人の温もりが伝わってくる。まさに、職人芸です。

さて、世界中の人々を魅了してやまないアードマン作品の中でも、一番人気がウォレスとグルミット。1986年に製作された短編映画「チーズホリデー」からスタートしたシリーズがなんと長編映画デビュー。しかもオスカーまで受賞してしまった作品が「ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!」です。上映時間は85分。普通ならば映画の中でも短い方だけど、クレイ・アニメーションです。1週間で作れる映像は5秒分くらいです。85分だなんて、もう、気の遠くなるような作業です。考えただけで、頭がクラクラしていまいます。

今回、発明家ウォレスと相棒グルミットは、プロの害獣駆除隊「アンチ・ペスト」として活躍します。年に一度の巨大野菜コンテストが間近に迫っている中、町の住民たちが育てた巨大野菜を食べつくす畑荒らしのウサギを、ウサギ吸引マシーンBV6000で捕獲するのです。しかし、捕獲したウサギは増える一方。困ったウォレスは、以前発明したココロ・コントローラーを使ってウサギを野菜嫌いにしようとするも、失敗。そんなある夜、今までにないほど畑が荒らされる事件が起こり、巨大ウサギの仕業だという噂が流れるのですが…。

日本語のサブタイトルは「野菜畑で大ピンチ!」。でも原題は“THE CURSE OF THE WERE-RABBIT”=「ウェア・ラビットの呪い」。映画はホラー風なタイトルロゴでスタートし、ストーリーにもホラーの要素が散りばめられています(まったく怖くありませんが)。「サンダーバード」を彷彿とさせる「アンチ・ペスト」の出動シーンや、吸引マシーンに浮遊するたくさんのウサギ。クライマックスのアクションシーンと見所一杯。そして、ディテールの細かさに感動し、ウィットに富んだセリフの数々に大笑い。

映画館では、メチャクチャかわいい5歳くらいの外国人少年が、楽しそうに見ていました。もちろん、その他大勢の大人の方々も。そして見終わった後は、皆、幸せ顔

ちなみに私は、「グルミットが欲しい〜。豚のような鼻をしたブスかわいいウサギも欲しい〜。」と駄々をこねていたのでした。

| 17:35 | カテゴリー:映画
2006年03月16日
「ラストデイズ」★★★★☆
1994年に自ら命を絶ったカート・コバーン。グランジの立役者として、ニルヴァーナのフロントマンとして活躍した彼が名声と引き換えに自分自身を失い、彼のいないグランジは、その後、急激に失速していった。カート・コバーン亡き後、周りの人間がどんなに多くを語っても、彼の本当の思いは決してわからないけれど、「ラストデイズ」を見て、彼に少し近づいたような気がした。彼が纏っていた空気に触れた、そんな感じ。

リハビリ施設を抜け出し、薄汚れたパジャマで森をさまよう男がたどり着いたのは、仲間たちが居候している彼の屋敷だった。セールスマンや勧誘と、絶えず色んな人がやってくる。でも、男は誰にも心を開かない。ぶつぶつと独り言を言いながら、屋敷と森の中を彷徨い続ける・・・。

前作「エレファント」で、コロンバイン高校射殺事件が起きるまでの校内を繊細な映像で切り取ったガス・ヴァン・サント監督は、今回も、同じようなアプローチでロックスターの最後の日々を描いていく。登場人物それぞれの目線で描かれるのは、ストーリーではなく風景。セリフはとことんまでそぎ落とし、男の苦悩や孤独感を映像で捉えていく。男が通り過ぎた森や、風に揺れる木々の枝までが、何かを物語っているようである。ちなみに、映画の主人公の名はブレイク。「カート・コバーンの死にインスパイアされた架空の物語」ということだけれど、マイケル・ピット演じるブレイクは、カート・コバーンの以外の何者でもない。歩き方や喋り方、タバコを吸う仕草まで、カートが乗り移っているかのよう。ここまでくると「演技をした」というよりも、「役に入り込んだ」というほうが適切かもしれない。

自らの人生を問うかのように歌う“Death to Birth”。そして、神々しく感じられる最後のシーンは、死を選ぶことで解放された彼の魂が癒されますようにという願いが込められているようだった。

ニルヴァーナにどっぷりはまった人も、駆け足で通り過ぎた人も、必見の映画です。

| 14:29 | カテゴリー:映画
2006年03月09日
「マンダレイ」★★★★☆

マンダレイ」の試写会を見に行った後、配給会社の知人から「映画どうだった?」と電話があった。なかなか面白かったと感想を伝え、「私、ラース・フォン・トリアー大好きなのよね〜」と言ったら、「変わってるねぇ」と笑っていた。うん、変わってる…かも。だって、見る側の好き嫌いが、これほどはっきりとわかれる監督も珍しいものね。一度見れば、もう当分はいいかなって思うほど後味悪いし、人間の本性と闇の部分をシニカルに描くラース・フォン・トリアー監督は、嫌悪感を抱く観客を楽しんでいるのでは?と思う時もある。だけど…見るのを止められない。心が悲鳴を上げるのに、どうしてだろう、引き込まれていく。

「マンダレイ」は、彼が今、手掛けているアメリカ3部作の2作目で、ニコール・キッドマンが主人公グレースを演じた映画「ドッグヴィル」の続編でもある。床に建物や道の見取り図が描かれた、部屋の壁もドアもない特殊な空間で描かれた「ドッグヴィル」。今回も、その独創的な手法で撮影されているから、前作を見ていれば驚きは少ないはず。大きな特徴は、主人公グレースをニコール・キッドマンに代わって「ヴィレッジ」のブライス・ダラス・ハワードが演じていること。オスカー女優さえも演じるのが大変だったはずのグレースを、24歳の新進女優がどのように演じるのか。

「こんな街さえなければ、世の中はもう少しましになる」と言い捨て、ドッグヴィルを後にしたグレースが、立ち寄った南部アラバマの大農園マンダレイ。なんとそこでは70年も前に廃止されていたはずの奴隷制度が存在していた。理想主義者であるグレースは、奴隷達に身体的、そして精神的自由を与えるため、農園に留まり彼らを改革しようとする。しかし、全てはグレースの思惑とは違う方向へと向かっていく…。

いやぁ、これまた問題作です。今までアメリカに一度も行ったことがないラース・フォン・トリアー監督が描く今回のアメリカ、どう見てもブッシュ大統領のことを考えざるを得ない。ずっと奴隷として暮らしてきた黒人たちに、自由とは何か、民主主義とは何かと教えようと奮闘するグレース。彼らの幸せの為に自分は良いことをしているんだと信じて疑わないグレース(しかし、当の奴隷達は困惑気味)。そして何より、権力を行使したいグレース。周りを見ずに、自分自身を過信して行動してしまうことほど恐ろしいことないのではないか。政治レベルだけではなく、私達の生活レベルでも起こりうること。噛み砕いて言えば、「お節介もほどほどに!」ということでしょうか。

女優として出来上がった感のあるニコール・キッドマンに比べ、ブライス・ダラス・ハワードは若さの強みか堂々と、そしてチャレンジ精神旺盛にグレースという役に挑んでいる。終盤の彼女は、この後、立ち直れたのだろうかと心配してしまうほどの体当たり演技。名監督である父ロン・ハワードの七光りは、全く無用な女優さんである。

現在、Gya0で「マンダレイ」制作ドキュメンタリー映像が配信されているので、映画と併せればもっと深く楽しめます。もちろん「マンダレイ」の前に、必ず「ドッグヴィル」を見ることをお薦めします。

次回作は「ワシントン」だそうで。ラース・フォン・トリアー監督とグレースのアメリカの旅はどのような結末を迎えるのか。今から楽しみです。

| 15:25 | カテゴリー:映画
2006年03月02日
「ブロークバック・マウンテン」★★★★☆

派手さはないけれど、見応えのある作品が集まった今年のアカデミー賞。中でも最多8部門にノミネートされた「ブロークバック・マウンテン」の評判がすこぶる良い。主な映画賞で受賞しなかったという例はないんじゃないか、と思うくらい。海外のレビューを見ても、びっくりするくらい多くの人が絶賛しているから、私の期待も高まるばかり。台湾出身のアン・リー監督が描く、カウボーイ同士の「純愛」映画って、一体…?

「 …なんて静かな映画なんだろう。」
エンドロールに流れるウィリー・ネルソンの“He was a friend of mine”を聞きながら思った。というのも、保守的な西部を舞台にした男同士の禁断の愛を、刺激的・破滅的に描いているはず、と思っていたから。もちろん、この映画にも激しく切ない思いが溢れている。だけど、描かれ方が、今までにあった同ジャンルの映画とは明らかに違う。そこが、画期的なんです。淡々と進むから、期待外れという人もいるでしょう。でも、ちょっとした仕草や視線、表情、セリフを見逃さなければ、一生、心に残る映画になるはず。主人公は男同士だけど、描かれているのは正統派の純愛物語なんです。

二十歳の青年だったイニスジャック。羊の放牧の見張り番として、ブロークバック・マウンテンの大自然の中でひと夏を過ごす2人の友情は、愛情へと変化していく。そして、それぞれ家庭を持った後も人目を忍んで逢引を重ねる。物語は彼らが40歳になるまでの20年間を描いていくのだけれど、アン・リーの演出が本当に上手い。貧しいままのイニスと、リッチになったジャックの身分の差の描き方や、堂々と振舞うことが出来ない2人の抑圧された感情など、すべてが繊細。その積み重ねがあるからこそ、人里離れた思い出の地「ブロークバック・マウンテン」で過ごす時が、2人にとってどれだけかけがえのないものなのかを感じさせるのです。

俳優陣も見事。口数が少なく、感情を押し殺るタイプのイニスを演じるヒース・レジャーはもちろんのこと、視線だけでイニスへの思いを表現してしまうジャック役のジェイク・ギレンホール!二人の演技なくして、この映画は成立しなかっただろうと思わせるほどの熱演です。そして、イニスの妻アルマを演じたミッシェル・ウィリアムスの演技が素晴らしかった。夫の秘密を知ってしまっい悩む姿はとてもリアル。助演女優賞は必ず彼女が獲ると予想します。

雄大で荒々しく、時に神々しいブロークバック・マウンテンの美しさも格別(でも撮影はカナダのカルガリーなんだって!)。その中で育んだイニスとジャックの切ない純愛の行方は…。見終わった後、色んなシーンを思い出しながら、もう一度見たいと思った作品でした。

どんな状況であれ、秘めた愛というものは、激しく、美しく、そして哀しいものなのですね。

| 16:27 | カテゴリー:映画
2006年02月23日
「ナルニア国物語/第1章 ライオンと魔女」★★★☆☆
先月行った香港で、「今、一番人気の映画は何?」と知人に聞いてみた。完璧な日本語ではないけれど、会話には問題がないシンガポール生まれの彼は言った。「ナルニアだね。日本語で言うと、獅子と魔女と・・・箪笥?」 獅子と魔女と箪笥か・・・。 私「日本ではあんまり獅子って言わない。ライオンね。」 彼「えっ、ライオンは日本語で獅子でしょ。」 私「そうだけど、ライオンはそのままライオンって言うよ。獅子って言葉は獅子座のときくらいかなぁ、使うのは。あと、獅子舞とか。」 彼「変なの〜。」 私「だから、日本では“ナルニア国物語/第1章 ライオンと魔女”っていうタイトルなんだ。」 彼「あれ、ワードローブは?」 そうなのである。その時点で映画を見ていなかった私は、そんなに重要じゃないから取っちゃったんじゃない?なんて彼に言ってしまったのだが、映画を見てみたら…これがなかったら、ナルニア国に行けないじゃん!という重要なアイテムだった。

まぁ、タイトルが長くなっちゃうし、語呂が悪いかもしれないけど、タイトルには入れて欲しかったなワードローブ。だって、ワードローブ=衣装だんすはナルニア国に続く入口。たくさんの毛皮のコートの中を進むと、いつしか木の枝に包まれ、やっと出たと思ったら、そこは真っ白な銀色の世界。この映画を象徴するシーンなんですもの。

第二次世界大戦下のイギリスで、親元を離れ疎開したペベンシー家の4人の兄妹。彼らはひょんなことから衣装だんすを抜け、ナルニア国に入り込みます。偉大なる王アスランが作ったこの国は、白い魔女(ティルダ・スウィントン)によって100年もの間、長い冬に閉ざされていたのですが、4人の兄妹の登場によって変化してく。彼らは、ナルニアの住人達が待ち望んでいた救世主だったである。

昨今のファンタジー映画―「ロード・オブ・ザ・リング」「ハリー・ポッター」シリーズと比べると、一番明るい作品かも。ストーリーもわかり易いし。といっても、C.S.ルイスによる原作は第7章まであり、ナルニア国の2555年を描いているというから、この先、どうなるのかわかりませんが。最先端SFXも素晴らしく、末っ子ルーシーが出会うタムナスさん(下半身がロバです)、さらにCGで作り上げたというライオンの姿をした王、アスランが凄い。動きや毛並みなど、どこがCGなの?というくらい本物みたい。リーアム・ニーソンの声も、威厳ある王アスランにぴったりです。

子役で注目なのは、オーディションで受かったというルーシー役のジョージー・ヘンリーちゃん。クラッシック映画に出てくる子役のようなオーラがある。そして次男エドマンドを演じているスキャンダー・ケインズ。大人になったらカイル・マクラクランのようになりそうな美男子君です。

撮影に使われたニュージーランドの大自然の美しさにも、心奪われるこの映画。春休み、劇場は子供たちで一杯になることでしょう。子供の心を持つ大人の皆さんも、ぜひ。

| 16:53 | カテゴリー:映画
2006年02月16日
「クラッシュ」★★★★★
素晴らしい映画に出会った時、言葉を失うことがある。こんな経験は1年に1度あるかどうかなのだが、今年は早くもそんな映画に出会ってしまった。「クラッシュ」である。映画を見た後、何かが胸にズシッときて、その凄さに言葉が出なかった。自分の心が揺さぶられた数々のシーンが、何度も思い出される。

「クラッシュ」は、昨年「ミリオンダラー・ベイビー」でアカデミー賞脚色賞にノミネートされたポール・ハギス初監督作品である。もちろん脚本も彼が書いたもの。原作を持つ前作とは違い、今度はオリジナルのストーリーになっている。ロサンゼルスを舞台に描かれるのは、人種も職業も違う人々の日常。しかし、小さなきっかけから他人と他人が交錯していく。衝突事故を起こした相手同士の罵りあい。ペルシャ人店主はガンショップで、イラク人と間違えられる。黒人の二人組は、通りすがりのカップルが気に食わないと彼らの車を奪い、白人警官は自分の気に障るからと黒人夫婦の車を止める・・・。オープニングから否応なく続く人種差別的な言葉の応酬は気持ちの良いものではなく、人によっては嫌悪感を抱くかもしれない。先入観と偏見を持つ人と、もたれる人。けれども映画は次第に、人々の深い部分を映し出していく。表面だけでは計り知れない、本当の顔。良くも悪くも、自分が信じていることを貫こうとする姿。しかし、運命は彼らを翻弄し始める。ある人は救われ、ある人は悲しみに突き落とされる。そこには怒り孤独悲しみ、そして希望が見え隠れする。

この映画の凄いところは、まず脚本。私のように脚本というものに精通していなくても、そう感じずにはいられない。というのも、登場人物全てが皆、同じ重さで描かれているから。ざっと数えて、17人もの人が登場するのだが、全員が主人公になっているのである。人々の描き方も絶妙で、ちょっとした事柄からその人がどういう人物なのかということをすくいあげていく。エピソードの繋ぎ方もうまく、一人一人がどんな結末を迎えるのかと、最後まで緊張感が途絶えることはない。

そして俳優達も素晴らしい。この作品で人種差別主義者のベテラン刑事を演じたマット・ディロンアカデミー賞助演男優賞にノミネートされていて、「アウトサイダー」世代の私は驚いてしまったのだが、映画を見て納得。軽蔑されるべき男の真の姿に、心を打たれてしまった。でも、スター俳優でありながら、他の俳優と同じ温度で役を演じたサンドラ・ブロックブレンダン・フレイザー、「ホテル・ルワンダ」に続きすばらしい演技を見せるドン・チードル。その他の俳優達も含め、稀に見る素晴らしいアンサンブル。全員に賞をあげてもいいのでは、と思わずにはいられない。

舞台となるロサンジェルスは人種の坩堝と言われるけれど、実際、行ってみると、色んなコミュニティが島のように点在していて、移動に使われる車は、しいて言えば個室である。自分が望まないものは排除して生活できると言う場所だからこそ、「クラッシュ」の物語は成立するというのも痛感させられた。

アカデミー賞脚本賞は間違いなく受賞しそうな予感です。

| 16:33 | カテゴリー:映画
2006年02月09日
「美しき野獣」★★★☆☆
あなたは、クォン・サンウのどんなところが好きですか?私の回りのファンに質問をすると、まず返ってくるが「かわいい」という言葉。うーん、確かに。白くてスベスベなお肌に、つぶらな瞳。ドラマの印象も重なって、まっすぐで純粋なイメージです。そこに時折見せる、いたずら好きな表情が重なると、それがたまらなく「かわいい」になるのでしょう。ちなみに私の印象は、まず、勝手に犬に例えると、生まれたばかりの柴犬。もう一つは、万年学生でもいける唯一の俳優。というのも、クォン・サンウを初めて見た映画「火山高」から、「マルチュク青春通り」「恋する神父」と、いくつになっても学生服が似合う役者はそういないよなぁ、と思うんですよね。そんなクォン・サンウが、今までで一番愛する役柄を演じたという「美しき野獣」。さぁ、あなたはこの変身ぶりをどうみるのでしょう?

というのも、韓国コスメブランドのCMで見せる美しい顔はどこへやら。クォン・サンウが演じるチャン・ドヨン刑事は浅黒い肌にぼさぼさの長髪、そしてヘビースモーカー。犯人逮捕の為なら手段を選ばない、血気盛んな刑事。時にはそんな性格が災いして問題も起こしてしまうけど、正義感の強さは人一倍。ある日、チャン刑事は義理の弟をヤクザに殺されてしまい、犯人捜しに乗り出します。その途中、同じヤクザを捜査していた理性的な検事オ・ジヌ(ユ・ジテ)と出会い、二人は共に協力しながら犯人を追い詰めていきます。しかし、証拠が消されたり、容疑者に逃げられたりと、捜査はなかなかうまく進まないのです。

なぜなら、そこには法の力ではどうにも出来ない裏社会があって、その深い関係は、彼らの正義感だけでは太刀打ちできないのです。真っ向から悪に立ち向かうことが出来ないもどかしさ。チャン刑事とオ検事はどうなってしまうのか。

殆どスタントを使わずに撮影したという、クォン・サンウのアクション・シーンは今までの中で一番激しく、専門用語を自分のものにするのが大変だったというユ・ジテは、10キロのダイエットと持ち前の演技力で、頭の切れる検事を演じています。性格が正反対の2人が、巨大な悪と立ち向かう中で、お互いを必要としていく姿には胸が熱くなります。ただ、登場するキャラクターが多く(殆ど男性)、名前や服装が似ていて、気を張って見ていないと誰のことだかわからなくなってしまいますので、その点はご注意を。

映画のエンディングは賛否両論だったそうです。これが初長編映画となるキム・ソンス監督は記者会見で、「法が守られない韓国社会の現実を正直に描いたらこうなった」と話していたんですが、皆さんはどのように感じるのでしょうか?

新しいクォン・サンウの姿にもっとドキドキしてください!

| 17:25 | カテゴリー:映画
2006年02月02日
「ミュンヘン」★★★★★
先日、第78回アカデミー賞のノミネートが発表されました。作品賞には「ブロークバック・マウンテン」「クラッシュ」「カポーティ」「グッドナイト&グッドラック」そして「ミュンヘン」。うーん、渋いラインナップ。人間の暗部を描いたものや、ジャーナリスティックな作品で占められています。今の世の中を反映しているような気がしてなりませんね。ノミネート作品を全て見たわけじゃないけど、大本命はもちろん、ゴールデングローブ賞で作品賞を受賞した「ブロークバック・マウンテン」でしょう。そして、一番、受賞に遠いのは・・・もしかしたら、スティーブン・スピルバーグ監督の「ミュンヘン」かも知れません。イスラエルとパレスチナから痛烈な批判を受けているし、アメリカにとっても重要な中東問題とテロという題材を、様々なリスクを負ってまでアカデミー会員が選ぶかどうか。でも、この作品は多くの人が見るべき映画だと思うのです。世界の未来を考える為にも…。

1972年、世界を震撼させたミュンヘン・オリンピック事件(「ブラック・セプテンバー」と名乗るパレスチナ・ゲリラがイスラエル代表の選手とコーチを人質に取り、最終的に全員を殺害した事件)の後、イスラエル政府がテロリストたちへの報復として出した暗殺命令。「ミュンヘン」はその任務を受けた男たちの姿を描いています。映画が始まってすぐ、ミュンヘン・オリンピック事件が再現されるのですが、もう釘付け。このニュースがどのように報道されたのか、全く知らないに等しい私は、オリンピックという「平和の祭典」で起きた悲痛な事件を傍観者として体感することになりました。オリンピックに集まっていた世界各国のメディア、事件の首謀者であるパレスチナのテロリストと、イスラエル選手からの視点。固唾を呑んで報道を見守る両国の市民たち。実際のニュース映像などを盛り込んだこの再現シーンに、私の心は悲しみと痛みで一杯になり、思わず涙が溢れました。

でも、スピルバーグ監督が重点を置いたのは、悲惨な事件ではなく、テロリスト指導部11人を暗殺するという任務を受けた男たちの姿。人を殺したことなどない暗殺チームのリーダー、アブナー(エリック・バナ)は4人のスペシャリストと共に、愛国心を胸に任務を遂行していきますが、いつからか、狙う立場から狙われる立場へと変わっていきます。オフィシャルな存在ではない彼らを、国家が守ってくれるわけでもなく、男たちは見えない狂気と、「自分たちの行動は正しいのか?」という良心の狭間で揺れ動きます。標的となる人物の「日常」に触れることで、その葛藤はより激しいものになっていく。そんな姿がスリリングな映像と共に映し出されていくのです。

スピルバーグ監督がこの作品について、唯一、インタビューに答えた「TIME」誌によると、スピルバーグ監督はこの映画の製作を3度、断っており、彼は今まで一度も、世の中を良くするために映画を撮ったことはないと話します。そして「中東最大の敵は、互いの歩みよりがないこと」だとも。

今、この時にも、世界のどこかで戦いが起こり、愛するものを失う人々がいて、報復の連鎖は途切れず、世界はどんどん灰色の雲に覆われている。文明が進歩しても、平和をもたらす術はわからないまま。この映画は平和への祈りである、とスピルバーグ監督は言っていましたが、正直なところ、この映画から平和への光を見出すことは難しい。答えは、観客にゆだねられるのですから。だけど、この映画を見て、「どうにかしなくては…」と思う心があれば、変化が起こるのではないか。私はそう思います。

派手さはないけど素晴らしいキャスティング、しっかりした時代考証、そして2時間44分の止まらない緊張感は、スピルバーグならでは。こんな世界情勢の今だからこそ、考えさせられる作品です。

| 15:10 | カテゴリー:映画
2006年01月26日
「フライトプラン」★★★☆☆
私は飛行機に乗るのが大好き。ここ数年、仕事で海外(特にアジア)へ行くことが多くなり、飛行機に乗る回数もぐんと増えた。様々な国に行けるのはもちろんうれしいけど、1年に4、5回も飛行機に乗っていることが何よりも幸せ。もちろん、エコノミーですよ。ビジネスとかファーストクラスなんかにゃ、未だに縁がございません。いつか乗れるといいんだけど…。でも、所詮、庶民なんですねぇ、エコノミーの狭い空間でいかに快適に過ごすか、自分のテリトリーをどう満喫するかを考えるだけで、なぜかワクワクするんです。機内食をいかに美しく食べるか、とか、映画をどの順で見ていくか、とか、自分なりのスケジュールを立てて楽しむのがいいんだ。ちなみに窓側に座ったときは、映画「トワイライト・ゾーン」の話みたいに(ジョン・リスゴーが出ていたやつね)、翼に変な生き物がいないか探したりします。変ですか、私?

そんな私が、はまらないわけがない!という映画が「フライトプラン」。飛行機、それも機内を舞台にしたアクション・サスペンス。高度1万メートルの密室で、母親と一緒に乗っていたはずの少女が消えてしまう。乗客は少女など見ていないと言うし、挙げ句の果てに、少女の名は最初から搭乗リストになかったと乗務員に告げられる。本当に少女は乗っていたのか、それとも母親の幻想なのか…。

突然、事故死した夫の棺、そして幼い娘と共にベルリンからNYへと向かう主人公カイル。深い悲しみにくれる母親をオスカー女優、ジョディ・フォスターが熱演しているんですが、眉間にシワを寄せ、髪を振り乱し、娘を探し出す様がパワフル。自分の娘が消えてしまったんだから、探すのに必死なのは当たり前。でも、機内の観客は、どんどんエスカレートしていく彼女に迷惑気味。その内、見ているこっちまで同じような気持ちになり、娘は本当にいたのだろうか、と疑い始めるようになるんです。感情移入どころか、観客が疑惑を持ち始めるようしかけるところが、ジョディ・フォスターの演技の凄いところでしょう。普通ならば、彼女を応援したくなるけど、一旦、観客の気持ちを遠ざけてしまう。だから、話が面白くなっていくんですけどね。

舞台となる飛行機にも注目。2階建てのジャンボ機は、今年の秋に登場するエアバスをモデルにしているらしい。つまり、もうすぐこんな飛行機に乗れるかも知れないわけ。エコノミークラスはさほど変化はないけれど、2階はとってもラグジュアリーで、螺旋の階段を上がるとラウンジバーがあったりします。飛行機とは思えない空間、一度体験してみたいものですね。ちなみにカイルはこの飛行機の設計に携わったという設定で、機内の全てを知っている。娘を探し、飛行機の色んな場所に入っていくので、様々な発見があって面白い。

愛する子供の姿が突然、消えてしまったらという恐怖感に加え、人間の薄情さや9・11以降の不安感もさりげなく盛り込んだ作品。1時間40分のフライトをお楽しみください。

| 17:02 | カテゴリー:映画
2006年01月19日
「輪廻」★★★☆☆
悲鳴ってやっぱりホラー映画の命ですね。現在公開中の「輪廻」を見て、そう思った。視覚的にドキッとさせ身も凍るほどのこわ〜い話であっても、どっからそんな声出るのっ!てくらいの悲鳴がないとホラー作品ははじまらないような気がします。今でこそ、日本のホラー映画はハリウッドがリメイクするほど質は高くなったけど、出演者の悲鳴はまだまだ足りない。例えば「リング」と聞いて思い出すのは、日本版、松嶋菜々子の悲鳴よりも「ザ・リング」ナオミ・ワッツの悲鳴。声だけでなく、凄い顔も浮かんでしまう。どうも日本の女優さんは叫びも大和撫子なのか、美しすぎると思うわけ。そんな私をびっくりさせてくれたのが、「輪廻」で優香が聞かせる悲鳴。正直、あの可愛い優香ちゃんがこんな叫びっぷりを見せるなんて思ってもみなかった。これだけの声を出せば、そのまま失神しちゃうのも納得です。

優香が演じるのは映画のオーディションで選ばれた新人女優、渚。その映画というのが、35年前にあるホテルで起きた猟奇殺人事件をもとにしたもの。題材もさることながら、椎名桔平演じる映画監督の異常にも見える執着心から、何かが起きる予感大です。撮影前のお祓いも、効果なしと思われます。どんよりと負の空気が充満している感じです。案の定、渚には不気味な出来事が。自分が演じることになる少女の姿を目にするようになるのです。電車に乗っているとき、部屋にいるとき、ちらっと見える少女の影。何度も見る幻覚。果たして渚の運命は…キャーッッッ。

あっ、ちょっと早かったですね、悲鳴。だって、監督は「THE JUON/呪怨」で日本人としては初めて全米興行収入1位を記録した清水崇監督ですよ。そんな簡単な話じゃありません。ここに香理奈演じる女子大生の「不可解な夢」が絡んできて、最後は見事にシンクロしていくんです。今回のテーマは「輪廻転生」。占いのブームの昨今、前世に感心を持っている人は大勢いるけど、その前世が呪われたものだったら?というわけ。清水監督の捻りの効いたプロット、見ごたえたっぷり。詳しくは言えないけど、最後は想像もしていなかった本当の恐怖を思い知らされます。

寂れた観光地、和室の押入れ、人形など、「呪怨」にも通じる日本古来のじとっとした恐怖が一杯のこの作品。リメイクオファーが20社以上というのも、納得の出来。それにしても、迫力満点の優香の演技は、今だに続く志村けんとの共演による成果…でしょうか?

| 16:56 | カテゴリー:映画
2006年01月12日
スパングリッシュ 太陽の国から来たママのこと ★★★☆☆
家族とコミュニケーション、とれてますか?友人や同僚、恋人とはうまくやれるのに、一番身近な存在「家族」とはコミュニケーションできない、そんな時代になってしまったような気がします。両親の共働きとか、子供の受験や思春期など、妨げるものもたくさんある。だけど、やっぱりコミュニケーションって大切だなぁってことを「スパングリッシュ」は教えてくれます。もちろんそれが簡単なことのようで、実はとっても難しい、と言うことも…。

映画に登場するクラスキー家も、コミュニケーションがうまくいっていない家庭。豪華な家でリッチな生活をしているけど、蓋を開けてみると…なのです。夫ジェフは人気レストランのオーナーシェフだし、かわいい娘と息子に恵まれたけど(でもアルコール依存の母と同居)、専業主婦デボラは何をやっても満たされない。悪気はないけど無神経な彼女の性格も災いし、夫や子供たちとの関係もギクシャクしている。そんな家にやってきたのは、メキシコ出身のシングルマザー、フロール。娘クリスティーナのためにより良い職を求めてハウスキーパーになった。でも、彼女は英語が全く話せない。フロールは時に、言葉の壁や子供の育て方の違いのせいで、ジョンとデボラと衝突する。そんな中で、クラスキー家の問題が浮き彫りになっていく…。

ラテン社会と白人社会。リッチな生活と慎ましやかな生活。そして親として出来ることと出来ないこと。ユーモアと暖かさの中に、家族として、親として大切なことを気付かせてくれる映画。特に、母の優しさを持ちながら、父親のような厳しさで娘クリスティーナを教育しようとするフロールの姿。礼儀正しく美しいクリスティーナを気に入って、あちこち連れまわすデボラを、親としてきつく咎める姿に、いくら好意だとしても他人に干渉しすぎることは、時としてマナー違反だということを気付かせてくれる。

そのフロールを演じているのが、第二のペネロペ・クルスとの呼び声高いスペイン女優、パズ・ヴェガ。劇中のジョンもそうだけど、この美しさで怒られると男性はたまらないでしょうね(子供は怖いと思うけど)。対するデボラ役、ティア・レオーニも好演。喋り捲る、叫びまくる、泣きまくるの3拍子揃った演技、力が入ってます。監督は「恋愛小説家」のジェームズ・L・ブルックス

タイトルの「スパングリッシュ」とは、スペイン語訛りの英語のこと。フロールがクラスキー家とコミュニケートする為に学んだ英語が、まさにこれ。つまり、コミュニケーションの為には歩み寄ることが大切だって事なのです。

| 17:18 | カテゴリー:映画
2006年01月05日
「RIZE」★★★★☆

去年のクリスマス・イブ。ソウルで親友とクラジクァイ・プロジェクトのライブを見た後、パーティ好きなもう一人の親友に誘われ、パーティに出掛けた。場所はオシャレなW HOTEL。外は激寒だというのに、着飾ったオシャレな人たちでごった返すフロアは夏のような暑さ。ちょっと顔を出して帰るつもりが、気が付いたらDJブースの真ん中で踊っていた。最近は踊ることなんてすっかりご無沙汰だったのに、何かの拍子でポーンとはじけた。久々にすっごく楽しくて、すっごく気持ちよかった。

だけど、映画「RIZE」に登場するダンスはどうだろう。暴力と銃声が日常のLA・サウス・セントラルで踊る若者達の体から吐き出されるもの。それは、怒りであり、暴力から逃れようとする必死さであり、どん底の生活で掴んだ生き甲斐である。「映画の中のダンスは早回しではありません」と冒頭で付け加えなければならないほど、肉体の極限ともいえるスピードと激しい動きで見るものを圧倒するクランプ・ダンスは、彼らのルーツとも言えるアフリカン・ダンスと酷似している。それをベースに作ったというわけではないのに、彼らにはそのDNAが備わっているのである。内にあるものを吐き出し、ダンスを通じて昇華させるという術を。

クランプ・ダンスのベースは、トミー・ザ・クラウンのクラウン・ダンスである。過酷な状況にいる子供たちを勇気づける為、トミーがクラウン=ピエロの格好をして誕生会やパーティで披露するダンスは、体を開放するようなダンス。何かに打ち込むことを教えながら、彼のクラウン・ダンスはサウス・セントラルの若者の間に広がっていく。そこから生まれたのがクランプ・ダンス。クラウン・ダンスが子供たちを楽しませるものならば、クランプ・ダンスは怒りや悩みから精神を開放させるもの。ダンスと言えども、仲間同士で激しく体をぶつける姿はケンカのようにも見えるし、トランス状態になり倒れてしまうダンサーもいて、クランプ・ダンスの創始者タイト・アイズが高次元のダンスだというのもわかる気がする。ただ二つに共通するのは、エッジな生活を忘れ、人々を夢中にさせること。映画後半に登場するダンス大会バトル・ゾーンは圧巻である。ちなみに、圧倒的な勝利を収める女性ダンサー、ミス・プリッシーはマドンナのPV「Hung Up」に出演するほどまでになった。

監督は有名フォトグラファー、デヴィッド・ラシャペル。ポップでカラフル、時に毒気を持つ彼の写真は、私も大ファン。彼の監督デビュー作がドキュメンタリーだったというのは、ちょっと意外な感じもしたけど、死と背中合わせのリアルな生活の狭間で捉えるダンサー達の姿、特に青空の下で踊るエンディングは、ラシャペル節全開!である。

92年にロス暴動が起こったLAのサウス・セントラル地区。貧しく苦しい環境だからこそ生まれた芸術。彼らは今日もダンスを続ける。“We’re gonna rize. No matter what.”

| 16:43 | カテゴリー:映画
2005年12月29日
「風と共に去りぬ」★★★★★(これでは収まらん)

現在公開中の映画「キングコング」。アメリカではボックスオフィス1位を驀進中なんだけど、日本ではイマイチみたいですねぇ。3時間を越える作品なので、一日に3回くらいしか上映できないというデメリットもあるわけだけど、これぞ、年末年始に見る映画!ですよ。大きなスクリーンで楽しむ醍醐味を、思う存分味わせてくれます。ピーター・ジャクソン監督はやっぱり凄いね…。でも、今の若い人って、「キングコング」知らないらしい。私は子供の頃、ジェシカ・ラングがヒロインを演じていた「キングコング」を見たことがある。キングコングが、掌にいるジェシカ・ラングの服を指先で脱がそうとするシーンがあって、子供心にエッチなゴリラだなぁ、と思ったっけ。

ところで、リメイク映画が氾濫している昨今。「キングコング」は最新技術の恩恵を受けて作られるべき作品だったと思うけど、どんな技術を使ってもオリジナルを超えられないだろうなぁと思う作品があります。代表的なのが「風と共に去りぬ」。映画好きの母に、クラーク・ゲイブルとヴィヴィアン・リーの話をさんざん聞かされ、中学で原作を読破、その後レンタルビデオで鑑賞。こんな凄い作品を大きなスクリーンで見た母を羨ましいと思いました。私はスクリーンで見ることはないんだと…。ところが、なんとこの冬、「風と共に去りぬ」をスクリーンで見ることができるのです!

不朽の名作「風と共に去りぬ」は、南部の大富豪の娘スカーレット・オハラが愛や南北戦争に翻弄されながら力強く生きていく姿を描いた作品。1939年に製作され、アカデミー賞10部門を受賞。また、上映時間が3時間51分ととにかく長い為、初めてインターミッションが入った映画でもあります。でね、久しぶりに見てみたんだけど、やっぱり凄いわ。4時間近く見ても、全く飽きない!改めて、スカーレット・オハラって凄いキャラだと確認。美貌を利用して男を振り回し、戦争で全てを失なっても這い上がっていく女の強さ。数々の男を翻弄しながらも、メラニーの夫、アシュレーへの思いを立ち切れず、レット・バトラーへの愛に気付いた時には、もう手遅れだった女の悲しみ。“after all, tomorrow is another day!(明日に望みを託して!)”という名セリフが胸を打ちます。スカーレット役のヴィヴィアン・リーはとにかく美しく、彼女が身に纏うドレスの数々ため息が出るほど美しい。悪びれているようで、いざという時、頼もしいレット・バトラーは、今で言う「ちょい不良オヤジ」か!? 口ひげを蓄えたクラーク・ゲーブルの立ち振る舞いとセクシーな視線にしびれます。

とにかく全てが豪華で、66年経っても全くきらめきを失っていない作品。これがデジタル・ニューマスター版としてスクリーンで見ることができるんですから、このチャンスを逃さずに!

| 16:18 | カテゴリー:映画
2005年12月15日
「アメノナカノ青空」★★★☆☆
1年の終わりに、私が必ずすること。それは、スケジュール帳を見ながら、今年、見た映画を数える。今年の目標、100本まで、あともう少し。残り2週間で達成できるかな?いや、達成してみせるっ!それにしても、今年は色んな韓流イベントの仕事をしたなぁ、と、スケジュール帳を見ながらちょっと驚いた。コンサートや舞台挨拶の司会で会えたのは、イ・ビョンホンチェ・ジウチョ・スンウチョ・ハンソンムン・グニョンキム・レウォンetc。中でも、キム・レウォンは、「マイ・リトル・ウェンディング」と「アメノナカノ青空」の舞台挨拶で、2度も会うことに。告白しちゃうと、私はキム・レウォンのファン。“弟にしたい俳優NO.1”をキープし続けています(“恋人にしたい俳優NO.1”は記者会見で見たチョン・ウソンでしょ、やっぱり…)。そんなわけで、今年はとっても良い年〜

さて、現在渋谷シネクイントで公開中の映画「アメノナカノ青空」。12月4日の日曜、早朝から先行上映会がありまして、なんと朝9:30からキム・レウォンの舞台挨拶!控え室で簡単な進行説明をした時に、実は「マイ・リトル・ウェディング」でも司会をしたんですよ、と言ったんだけど、レウォン君、イマイチ覚えていなくてがっかり…。しかし、前回も彼についていたボディ・ガードのお兄ちゃんは、私のことを覚えていてくれました(笑)。

「アメノナカノ青空」は2003年に製作された映画。原題は「…ing」で、ちょうどキム・レウォンがドラマ「屋根部屋のネコ」のコミカルな演技でブレイクした後に出演した映画。ささやかだけれど、大切にしまっておきたい、柔らかな煌きを持つ作品です。

人生の殆どを病院で過ごしてきた、体の弱い高校生ミナ(イム・スジョン)は、念願の女子高生活にイマイチ馴染めず、自分の世界に生きている女の子。そんなある日、ミナの住むマンションの下の階に、ヨンジェ(キム・レウォン)という若い男が引っ越してくる。何かとちょっかいを出してくるヨンジェに冷たい態度を取りつつも、次第に心引かれていくミナ。しかし、それはヨンジェだけが知っている「仕組まれた出会い」だった…。

初めて見た時、とても女性らしさに溢れた映画だと思い監督をチェックしたら、案の定、イ・オニという女流監督だった(これが初監督作)。特に顕著に現われているのが、ミナと母ミスク(イ・ミスク)の親子の姿。体の弱い娘を大事に育ててきた母親と、母を唯一の女友達のように接してきた娘。この2人のやり取りに心が温まる。だからこそ、母がどんな思い出ミナを産んで育ててきたのかを知ったとき、ミナのように、私の目からも涙が溢れてきました。また、ヨンジェがミナに見せる優しさと、その優しさの中で少しずつ生きていると実感するミナの笑顔は、陽だまりにいるような心地よさ。これがベタにならずに済んだのは、ヨンジェ役キム・レウォンの爽やかさと、ミナ役イム・スジョンのピュアな魅力のおかげでしょう。共にナチュラル度が高い俳優なので、見た目の相性も凄く良い。ちなみにこの2人、韓国のファッションブランドclideで共にイメージ・キャラクターを務めていて、毎回、恋人のような設定で撮影された2人の写真がとっても素敵です。

大切な人の残された時間を、幸せなものにしようとする人々。切ないけれど、見る者の心を優しく包んでくれるラブ・ストーリーです。

| 16:52 | カテゴリー:映画
2005年12月08日
「プライドと偏見」★★★★☆
「ブリジット・ジョーンズの日記」の中で、主人公ブリジッドがこよなく愛する恋愛のバイブル、「高慢と偏見」。ブリジッドはドラマ版でダーシー役を演じていたコリン・ファースの大ファンという設定で、当のコリン・ファースは映画版「ブリジット・ジョーンズの日記」でブリジッドの相手役として登場。原作を読んだ人は思わずニンマリとする演出でした。その「高慢と偏見」を映画化したのが「プライドと偏見」。「ラブ・アクチュアリー」など良質の恋愛映画を手掛けてきたワーキング・タイトルが手掛けるとなれば、これはもう見るしかないわけで…。

舞台は18世紀末、イギリスの田舎町。女性に財産相続権がない時代、女性にとって「結婚」は人生の全てだった。ある日、娘ばかり5人のベネット家の隣に、大金持ちの独身男性ビングリーが引っ越してくる。このニュースに浮き足立つベネット家の5人姉妹。舞踏会の夜、姉妹の仲でも一番の美人である長女ジェーンにビングリーがダンスを申し込み、母親は有頂天になる。しかし、ビングリーの親友で、気難しくプライドの高いダーシーは、女たちを見下し誰にも感心を示さない。読書好きな次女エリザベスは、その態度に反感を抱く。そこに現われた青年将校ウィッカムの話から、ますますダーシーに嫌悪感を募らせるエリザベスだが、なぜかダーシーの存在が気になって仕方がない。そんな中、ベネット家の一番下の娘に、とんでもない事が起きる…。

パンフレットのイントロダクションにあるフレーズがいいんだな。“「愛してる」と認めるには、男のプライドは高すぎた。「愛してる」と応えるには、女の偏見が邪魔をする” 主人公エリザベスとダーシーを表す、パーフェクトな表現!もちろん映画の方もパーフェクト!でした。反発しあいながらも惹かれる気持ちって、ありますよね。そして反発が強いほど、結ばれた時の強度は高くなる。キーラ・ナイトレイが凛とした美しさと才気を併せ持つエリザベスを好演しています。ここ最近の演技では一番だと思う。そしてダーシーを演じているのが、日本では殆ど無名のマシュー・マクファディン。はっきり言って、登場した時はまったく魅力を感じないんだけど、気がつくと劇中のエリザベスと同様、少しずつ惹かれていってしまう。つまり、それくらい見事にダーシーを演じているんです。エリザベスを見つめる視線がどんどん変化していく様は、ちょっとドキッとします。さすが、英国舞台俳優。エリザベス以外の姉妹達も個性豊かで、彼女達が着ているドレスがとってもかわいい。5人姉妹の両親を演じるドナルド・サザーランドブレンダ・ブレッソンも素晴らしい演技。ブレンダ・ブレッソン演じるベネット夫人は、私達の周りにもいそうな、どこか憎めないおばちゃんキャラ。娘の結婚の為ならばなんだって、という言動に思わず笑ってしまう。それに対して、ドナルド・サザーランド演じるベネット氏は、いつも冷静に娘達と結婚を見つめているお父さん。こんなに若い娘を持つお父さんにしてはちょっと年をとりすぎているかな、とも思ったけど、渋いから許す(笑)。ベネットパパがね、最後にエリザベスに言う言葉が良い。もう、涙、涙なんですよ。結婚しろとうるさく言う親も、結婚を反対する親も、きっと本心はこうなんだろうな、と思った。そう考えると、やっぱり結婚って大切かな、と思ったりもして。

久々にサントラが欲しいと思ったクラシカルな音楽に、一度は行って見たいと思うイギリスの素晴らしい景色と豪華な屋敷の数々。自分の気持ちに素直になれない人にぜひ見て欲しい、上質な恋愛映画です。

それにしても、「いつか晴れた日に」や「エマ」そして「プライドと偏見」と、ジェーン・オースティンの原作を映画化した作品ははずれがない。

| 16:37 | カテゴリー:映画
2005年12月01日
「ビッグ・スウィンドル!」★★★★☆
今年、日本でも放送された韓国ドラマ「パリの恋人」。私が見た数々の韓国ドラマの中で、五本の指に入るお気に入りです。身分の違うヒロインに惹かれていく御曹司キジュを演じたパク・シニャンが良かった。甘いマスクで「お前は俺の心の中にいる」という名セリフを口にするイ・ドンゴンにもやられたけれど、何不自由なく生きてきた男が、愛に目覚め少しずつ変化していくパク・シニャンの方に、強くトキメキました(幅の広いネクタイと丈の長いパンツは、常に気になったけどね)。このドラマは昨年、韓国で放送され57.4%の視聴率を記録、女性達を虜にしたパク・シニャンはシンドロームを巻き起こしました。そんな彼が、映画「ビッグ・スウィンドル!」で新たな魅力を発揮。今回は二枚舌の詐欺師と、その兄で古本屋を営む男の一人二役。韓国で数々の映画賞に輝いたクライム・ムービーです。

出所したてのチャンヒョクが計画したビッグプロジェクト。それは、韓国銀行横領詐欺。成功すれば50億ウォンが手に入るというこの計画を、チャンヒョクは伝説の詐欺師キム先生にもちかける。緻密な筋書きの天才チャンヒョクと、裏社会のゴッドファーザーキム先生の元に集まったのは、博識で口先から生まれたような男オルメ、女相手の詐欺が得意なツバメ、そして職人技ともいえる偽造技術を持つガソリン。辣腕の5人の詐欺師たちによって作戦は実行され、成功したかに見えた。しかし、その後、5人はバラバラになり、奪った金は跡形もなく消えてしまった!完璧だったはずの計画に、一体、何が起こったのか。

というストーリーですが、冒頭に登場するのは、韓国銀行から50億ウォンが盗まれたというニュース。容疑者5人のうちチャンヒョクは遺体で発見、オルメは逃亡中に逮捕。残るキム先生、ツバメ、ガソリンは指名手配中であるという。それから一ヶ月後。チャンヒョクの兄で古本屋を営むチャンホに、キム先生の愛人だったというソ・インギョが登場、さらにはオルメやガソリンの供述から、観客は事の顛末を「逆推理」することになるのです。現在と過去が交錯し、浮かび上がる詐欺師5人の下心。バラバラだったはずのパズルのピースが、一つずつ繋がって明らかになる全貌。ちなみに原題は「犯罪の再構成」、思わず納得のタイトルです。「ユージュアル・サスペクツ」「レザボア・ドッグス」が好きな人にお薦め。緻密に入り組んだ脚本は面白いし、テンポもGOOD、演出もCOOL。

そして何より、登場する5人の詐欺師たちが魅力的。特に、パク・シニャン演じるチャンヒョクは、「パリの恋人」のキジュとは正反対のベクトルに向いた男だけれど、女心をくすぐる魅力を兼ね備えていてとても楽しい。反対に、兄チャンホ役では4時間もの特殊メイクを施していて、顔も性格も全く違うキャラクターを見事に演じています。そして、この映画の紅一点、イ・ソンギョンを演じるヨム・ジョンア。結構、好きなんですよね、この女優さん。すらっとした体に猫のような雰囲気、茶目っ気も兼ね備えていて、この役は彼女らしさが良く出ていると思う。

韓国の映画好きを魅了した韓国発のクライム・ムービー「ビッグ・スウィンドル!」を監督したのは、本作で初めてメガホンを取ったチェ・ドンフン。銀行から金を盗もうとした詐欺師5人が、結局、仲間内で騙し騙される面白さ。泣ける映画じゃないけれど、この痛快さは癖になります。

| 16:27 | カテゴリー:映画
2005年11月24日
「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」★★★★☆
「ハリーもロンもハーマイオニーも、大きくなったよなぁ…」。先日TBSで放送していた「ハリー・ポッターと賢者の石」を見ながらつぶやいてしまった。まるで、わが子を見る親のようだ。原作を読んだことはないし(映画がすべて公開されたら見るつもり)、作品をリピートして見るほどではないけれど、名前を覚えるのが苦手な私が、ハリポタに登場する色んなものの名前をそらで言えるんだから、知らぬ間に刷り込まれているんだなぁ。ハリポタ、恐るべし。

そして今年も、ハリポタの季節がやってきた。シリーズ第4作目「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」が遂に日本公開!アメリカでは公開から3日で120億円の興行収入を記録。シリーズの中でも過去最高のオープニング記録らしい。全7作で完結するストーリーもやっと中間地点を通過して、さらに面白くなって来た。魔法界で人気のクイディッチ・ワールドカップが開催され、危険だからと長い間、封印されていた三大魔法学校対抗試合が復活。今回のストーリーのキモはこの対抗試合なんだけど、ここで与えられる課題が生死に関わるほど、かなりきつい。スピード感たっぷりな映像で、ハラハラドキドキさせつつも、人間の命や友情のドラマもしっかりと見せる。さらに、対抗試合に合わせて開催されるダンス・パーティで、ハリー(ダニエル・ラドクリフ)、ロン(ルパート・グリント)、ハーマイオニー(エマ・ワトソン)の淡い恋模様も楽しめ、魔法学校版「ビバリーヒルズ高校生白書」か「ドーソンズ・クリーク」を見ているような気分になる(笑)。なんでも、今回、シリーズ初のイギリス人監督のなったマイク・ニューウェルは自らの体験を活かして、映画に登場する寄宿学校の描写にそうとう力を入れたらしい。だから、以前よりも学園ドラマ的な要素も強くなっているみたい。こんな風に書くと、何だかとっても楽しそうだけれど、この作品、前作よりも更にダークに仕上がっている。ハリーの悪夢から始まり、ワールドカップ会場の夜空に現われるドクロ模様。対抗試合の選手を決める炎のゴブレットが、出場資格のないハリーを指名し、謎は深まるばかり。そしてクライマックスには、ハリーを狙うヴォルテモード卿が遂に復活!なんですが、これが、結構、強烈。私、「ヘルレイザー」を思い出しちゃいました(笑)。泣いちゃう子供もいるかもしれない。ちなみに、演じるのはイギリスきっての演技派俳優レイフ・ファインズでございます。

ところで、「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」のもう一つの楽しみ方。キーワードはROCK。というのも、ハリーの親友ロン君と、彼の双子の兄弟のルックスがROCK。赤茶色のロン毛や衣装の着こなし方に、どこかUKロックに通じるものを感じます。さらに、今回の目玉とも言えるダンス・パーティに登場するバンドがROCK!ヴォーカルはPULPのジャーヴィスRADIOHEADフィル・セルウェイジョニー・グリンウッドである。びっくりして、思わず吹き出してしまったのは言うまでもありません。そして、セブルス・スネイプル先生役のアラン・リックマンROCK。ハリポタ見るたびに思うんだけど、髪が長かった頃のNINE INCH NAILSのトレント・レズナーに似てる…。

ちょっぴり大人になったハリー、ロン、ハーマイオニーのメイン3人に加え、サブキャラも個性的な今回の作品。魔法界というファンタジーの世界に、スリル、サスペンス、ホラー、ドラマ、そして学園ものと、色んな要素が凝縮された2時間37分はあっと言う間。だけど、映画を見るときのドリンクはキッズサイズでね(トイレに注意!)

最後に…ハリー・ポッター役のダニエル・ラドクリフ君の総収入は、シリーズ第1作から第5作まで含めると、46億円になるそうです。イギリス史上最も稼いだティーン・エイジャーだって。凄いね、全く。

| 16:33 | カテゴリー:映画
2005年11月17日
「欲望」★★★☆☆

以前、深夜番組「松紳」で面白い話をしていた。途中から見たので詳しいことはわからないのだけど、島田紳介が、なぜダウンタウンの松ちゃんはちゃんと恋愛できないのか、結婚できないのかということを、熱く語っていた。たしか、体を欲するということは、少なからず愛しいという気持ちがあるということなんじゃないか、なんて話だった。もちろん、それの言葉に松ちゃんは動じず、結構ヒートアップ…面白い。気がつけば、紳介さんの理路整然とした意見に、なるほど〜と頷いていた。でもね、世の中には、心と体は別だという人が確かにいる。愛情より快楽を優先してしまう人。愛という責任から逃げてしまう人。しかし、この映画「欲望」の登場人物たちは、望んでもいないのに愛情と快楽が別れてしまい、そのことでもがき苦しんでいる。恋愛において、肉体的欲望精神的欲望を満たすことの難しさ…。互いに愛していれば、簡単に手に入れられるはずなのに、それができない。だから苦しく辛い。そして、せつない。そんな男女の姿を官能的に描いたのが、映画「欲望」である。

学校図書館司書として働く類子(板谷由香)。彼女は穏やかな生活を送りながらも、肉体的な快楽を満たすために、妻子ある男と不倫をしていた。ある日、類子は偶然、中学時代の親友、阿佐緒(高岡早紀)に出会う。親ほども年の離れている男性と結婚するという阿佐緒は、類子を結婚パーティに招待する。そのパーティで、類子は正巳(村上淳)と再会する。正巳は類子の中学時代の同級生で、三島由紀夫に傾倒し、親友の阿佐緒に好意を寄せ続けていた。とても性的な好意を。そんな正巳に、類子はずっと憧れていた。結婚パーティをきっかけに、頻繁に会うようになる3人。しかし、正巳には類子しか知らない秘密があった。高校時代に巻き込まれた事故で、正巳は性的不能となってしまったのだ。そんな正巳への愛を、類子は止めることが出来ない。そして、正巳も類子を愛し始めていた。

性的不能だとしても「愛しているから抱きたい」と思う類子の気持ちと、「愛しているけど抱けない」という正巳の絶望感。初めて2人が交わろうとするシーンは、とても切ない。愛情から生まれた欲望が膨らんで行くけれども、それを解き放つことが出来ない辛さ。それでも類子は、そこから精神的な欲望を満たしていく。しかし、正巳の苦悩は…。

全体的にフランス映画のような印象を受けるこの映画の原作は、言わずと知れた小池真理子の「欲望」。70年代〜80年台初頭のどこか懐かしい雰囲気が漂う中で描かれる、男と女の官能シーンは激しさを伴いながらも美しく、どこか儚い。板谷由香さんの体当たり演技は、女性の共感を得るはず。また、ドキッとさせられるセリフが多いのも印象的。もしかすると行為そのものより、そっちのほうが官能的かもしれない。

欲望をめぐる苦悩の影に潜む「嫉妬」も、しっかりと描いている映画「欲望」。三島由紀夫の作品を読んでいれば、さらに深く味わえるはずです。

| 17:33 | カテゴリー:映画
2005年11月10日
「イントゥ・ザ・ブルー」★★★☆☆
この10年、私に縁がないもの…それは、海水浴である。湘南育ちなのに、である。最後に海で泳いだのは、いつだっけ?今じゃ、水着も持っていない。海が近くていいところだね、なんて良く言われるけれど、その恩恵を自ら放棄している。もちろん、海外で海水浴の経験も無く…。そんな私が、今月末、ケアンズに行くことになった。以前、頂いたオーストラリア行き航空券の有効期限が迫り、どうしても行かなきゃならない状況になったのである。行き先は指定された中から選べるようになっていて、ギリギリまで悩みに悩んだ(笑)。で、せっかくだから、普段の生活から縁遠いことをしてみようと思って…ケアンズ。グレート・バリア・リーフですよ。つまり、水着買っちゃおうかな〜、シュノーケリングとかしてみちゃおっかな〜、なんて思ってしまったのです。この映画「イントゥ・ザ・ブルー」の影響かなぁ?

15世紀から18世紀の間に、500隻以上のスペイン・ガリレオ船が沈没したと言われるカリブ海。当時の海賊達は、島々の洞窟に黄金を隠していたと言われ、今なお、世界中のトレジャー・ハンターを魅了してやまない。バハマでダイビングのインストラクターをするジャレッド(ポール・ウォーカー)も、そんな海賊時代の伝説を信じる青年。トレジャー・ハンターには程遠いけれど、恋人サム(ジェシカ・アルバ)と幸せに暮らしていた。嵐の去ったある日、ジャレッドはサム、そしてNYからやってきた幼馴染たちと4人でダイビングへ出かける。そこで彼らは遂に、金塊を積んでいるといわれる沈没船を発見。さらに、ハリケーンによって墜落した麻薬密輸飛行機まで発見してしまう。

目の前にある宝―沈没船と麻薬の詰まった飛行機。この二つの間で、彼らの欲望は渦巻く。そして、危険な方へと手を伸ばしたことから、4人はトラブルに巻き込まれることに。サスペンス、アクションにアドベンチャー。さらには、眩いばかりのナイスバディに、美しい海の世界。色んな要素がてんこ盛りだけど、特筆すべきは作品の半分を占める海中のシーンでしょう。登場するサメはみんな本物!水中のアクションやサメと絡むシーンも、できるだけスタントを使わず、出演者で撮影したというんだから凄い。フリー・ダイビングをする姿は、まるで人魚のような美しさで、うっとりです。特にビキニ姿のジェシカ・アルバは、上から下から、そして左右からの映像で楽しめ、男性にはたまらないでしょう。女性には、ポール・ウォーカー。「ワイルド・スピード」も良かったけど、カッコよさではこの映画が一番かも。腹筋もしっかり「王」の字になっています。

「ブルー・クラッシュ」で評価を得たジョン・ストックウェル監督、さすが、海中の撮りかたがうまい。美しく、時に恐ろしい海中の世界を、様々な方法で楽しませてくれる。後半は結構、痛いシーンがあったり、ダメなキャラに突っ込みを入れたくなるけど、目にもハートにも刺激を与えてくれる「イントゥ・ザ・ブルー」。見終わったら「海に行きたくなる」「筋トレに励みたくなる」かも(!?)知れません。

| 17:27 | カテゴリー:映画
2005年11月03日
「ミリオンズ」★★★★☆
突然ですが、質問です。もしも、空から大金が降ってきたら、あなたならどうしますか?私だったら、自分専用の車を買って、実家を改装して(母の切なる願いなのだ)、パッとキャッシュで、マノロの靴とケリーバッグを買ってみたい…。って、「年末ジャンボ宝くじが当たった時の計画」と、殆ど変わらないじゃないか。「当たる」のではなく、「空から降ってくる」というのに、ちっとも、夢がない。私が子供だったら、どうしたのだろう。もう少し、夢のあることを望んだのかな?そんなことを思いながら、「ミリオンズ」を見た。「トレインスポッティング」で名を馳せたダニー・ボイル監督が、「僕の子供たちに堂々と見せられる映画を…」と製作したこの映画。ここには、彼が今まで描いてきたもの―DRUGもBLOODもVIRUSも出てこない。澄んだ大空と輝く太陽、ピュアな心を持つ少年とその家族、そして現実とファンタジーが入り混じった心温まる物語なのです。

カニンガム家の兄弟、10歳のアンソニーと8歳の弟ダミアン。母親を亡くした一家は、父ロニーの提案で新しい町に引っ越してきた。イギリスはユーロ市場圏に加入直前。家の近くにある線路を、焼却炉行きのポンド紙幣と出番を待つユーロ紙幣を詰め込んだ列車が、忙しそうに行き来している。ある日、ダンボールで作った隠れ家でダミアンが遊んでいると、なんと空から大金の入ったバッグが降ってきた!中身の22万ポンドは12日後、ただの紙くずになってしまう。そこで、ダミアンとアンソニーはお金を使い切ることにした。実利主義者のアンソニーは、欲しいものを片っ端から買いまくり、挙句の果ては友達までもお金で買収。一方、信心深く、時々、自分だけに見える聖人とお話を楽しむダミアンは、貧しい人を助けようとするのだけれど、家の周辺には貧しい人が見当たらない。やがて、兄弟の周りには怪しい人影が。実はそのお金、列車強盗によるものだったのだ…。

この映画がユニークなのは、子供たちを主人公に「お金」について描いていること。子供がどうやってお金を使うのかだけではなく、現代社会の実態もしっかり描いているところが面白い。空からお金が降ってくるのはファンタジーだけど、使うという行為がいかに大変なことなのか、という部分にリアリティがあるんです。買い物に使おうとするアンソニーと、貧しい人にあげたいというダミアン。2人はなかなかお金を使い切ることが出来ないし、銀行にお金を貯金しようと思っても、子供だから自由に預けられない。そこから、現代社会の様々なルールが見えてくる。

その中で、笑いを誘うのがダミアンの行動。貧しい人を助ける為、お金を使うのに、なぜか問題が起きてしまう。「今時の子供」代表、兄アンソニーは、大金を拾ったことがばれないように使おうとするけれど、ダミアンはいいことだと思って、学校の寄付ボックスに大金をいれて大騒ぎになったり。このダミアン役のアレックス・エテル君が、めちゃくちゃかわいい〜。オーディションで大抜擢された全くの素人だというのが信じられないくらいの存在感。あの笑顔にやられること間違いなしです。兄アンソニー役のルイス・マクギボン君も素晴らしく、弟のことを邪魔扱いするけれど、心の奥にはダミアン同様、母を失った寂しさを隠している様子をしっかり演じています。

スピーディな展開に洗練された映像。イギリスの北西部が舞台だというのに、灰色が全く登場しない鮮やかな色彩。ダミアンの幻想に登場する聖人にタバコを吸わせたりと、大人向けのユーモアもいっぱい。「ミリオンズ」はインテリジェンスなファミリー映画ですね。

それにしても、恐怖を描いた「28日後…」の後は、「ミリオンズ」でこんな素敵な作品を作るなんて。ダニー・ボイル監督、完全復活ですな。

| 15:16 | カテゴリー:映画
2005年10月27日
「キャプテン・ウルフ」★★★☆☆
シュワルツェネッガー&スタローンの後を継ぐマッチョなアクション俳優と言えば、ヴィン・ディーゼル。「プライベート・ライアン」で涙を誘い、「ワイルド・スピード」「トリプルX」で若者の心をがっちり掴んだ彼が次に狙うのは、ファミリー。今までの固定されたイメージを変えるべく、ヴィン・ディーゼルが「キャプテン・ウルフ」でハートフルなコメディ映画に初挑戦です。

アメリカ海軍特殊部隊のエリート、キャプテン・ウルフ。彼が率いる精鋭チームは、誘拐された科学者、プラマー教授の救出に向かうがミッションに失敗。教授は殺害され、ウルフも敵の銃弾に倒れてしまう。それから、2ヶ月後。怪我から回復したウルフに課せられた新たな任務は、プラマー夫人がスイス銀行にある教授の貸し金庫のパスワードを模索する間、ハウスキーパーとしてプラマー家を警備する、というもの。しかし、この任務は困難を極めるものだった。なぜならば、この家にはトラブルメーカーな5人の子供がいたからである!

一体なぜ、プラマー教授が狙われたのか、とか、貸し金庫に何が隠されているとか、そんなことはある意味どうでもよくて、とにかく、この映画の見所はヴィン・ディーゼルと子供たちである。子役はそれぞれ個性的だし(特に次女のおませな子)、言うことを全く聞かない子供たちをコントロールする為、キャプテン・ウルフが悪戦苦闘する姿は、純粋に笑える。そして、様々なトラブルの克服し、一見、ミスマッチと思われる関係が、お互い心を通わせ、家族のような絆で結ばれていく様子には、ちょっぴりホロリとさせられる。これぞ、ファミリー映画!という感じ。

でも、私が思う意外な見所は、ヴィン・ディーゼルが喋る韓国語!ウルフがプラマー家に仕掛けた防犯ベルがなり、苦情を言うお隣の夫婦がなぜか韓国系。で、ディーゼルが、どうもスイマセン、みたいな事を韓国語で言うんだけど、聞き取るのが大変でした(笑)。なぜ韓国語なのか?というのは、最後に繋がるんだけどね…。

アクション俳優が子供相手に悪戦苦闘する映画というと、私はシュワルツェネッガーの「キンダガートン・コップ」を思い出してしまうんだけど、ヴィン・ディーゼルもシュワちゃんみたいになるのでしょうか?行く末は、どこかの州知事とか…。

| 15:05 | カテゴリー:映画
2005年10月20日
「ティム・バートンのコープス・ブライド」★★★★☆

日本でも大ヒット中の「チャーリーとチョコレート工場」に続き、新作「コープス・ブライド」と、短期間で立て続けにティム・バートン作品を見ることができるなんて、マニアにとってこんな幸せなことはないでしょう。しかも、2本とも主演はジョニー・デップという贅沢さ。また、「コープス・ブライド」は、アニメの芸術と呼ばれるストップモーション・アニメーション作品。93年製作の「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」に魅せられた人なら、「コープス・ブライド」は見逃せません。

そもそも、このストップモーション・アニメーション1、2秒撮影するのに作業時間は12時間いう、気の遠くなるようなコマ撮りを重ねて製作されます。アニメーターの作業は私達の想像を絶するもの。「コープス・ブライド」の77分という上映時間は、一般の映画に比べれば短いけれど、製作時間を考えると、それはもう、凄いことになっているわけです。そのことを考えるだけで、拍手を送りたくなるでしょう?

親同士の欲と見栄の為に結婚させられることになった、富豪の息子ヴィクター。相手は落ちぶれた貴族の娘ヴィクトリア。結婚式前日に初めて会った2人は、自然に惹かれあいます。ところが、結婚式のリハーサルがうまく行かず、森の中で一人、式の練習をしていたヴィクターが、小枝と間違えて、あの世で花婿を待ち続けている“コープス・ブライド=死体の花嫁”に結婚指輪をはめてしまったから、さぁ、大変。コープス・ブライドと婚姻の誓いを交わしてしまったヴィクターは、地中深くにある、死者の世界へと連れ去られてしまうのです。愛する人との結婚を夢見ながら、成し遂げられないまま死んでしまったコープス・ブライドの一途な想いに揺れるヴィクター。だけれども、自分を待つヴィクトリアの元へ、一刻も早く帰らなければ…。

バートン監督が知人から聞いたという、古い民話がモチーフとなったストーリーは、不気味さと楽しさと美しさが共存する「人形の世界」で描かれていきます。生者の世界はモノトーン、死者の世界はカラフルでポップに描かれていて、ガイコツ達の方がよっぽど楽しそう。死者の世界に登場するキャラクターも、皆、愛らしく、すきっぱ+出っ歯なウジ虫とか、死んだふりだけが出来ないガイコツの子犬とか、子供から大人までハマリそうなキモかわいいキャラもいっぱいです。

声優陣も豪華。「チャーリーとチョコレート工場」の撮影と掛け持ちで、ヴィクター役の声を担当したというジョニー・デップ。作業が大変だったそうですが、初めての声優を楽しそうにやっている姿が目に浮かびます。ギョロっとした目と細い体を持つヴィクターの人形、いやヴィクターというキャラにぴったりな、か細くておどおどした声から、芸達者ぶりが伺えます。その他、コープス・ブライド役のヘレナ・ボム・カーター、ヴィクトリア役のエミリー・ワトソン。さらにはアルバート・フィニークリストファー・リーという大御所までが声で出演しているのも、この映画の魅力の一つ。

どんな最先端の技術よりも、人間が少しずつ人形を動かして撮影するストップモーション・アニメーションが持つ味わいのほうが、人の心にストレートに伝わるものがあると感じた作品。コープス・ブライドのふわっとしたウェディング・ドレスとベールの美しさに感動、そして素晴らしい仕事をしたティム・バートンとスタッフに脱帽、です。

| 14:29 | カテゴリー:映画
2005年10月13日
「私の頭の中の消しゴム」★★★★☆

人から好きな恋愛映画は?と聞かれることがある。恋愛映画は、それこそ映画のジャンルで一番数多いものだし、私自身、数え切れないほどの映画を見ているから、その中から一番を選ぶのはなかなか大変なこと。でも、長い間、答えに迷うことで、どんどん自分の好きな映画が絞られてきた。今のところ、私の好きな作品は、メグ・ライアンとビリー・クリスタル共演の「恋人達の予感」。そして、ボー&ジェフ・ブリッジズ兄弟とミシェル・ファイファー共演の「恋のゆくえ ファビュラス・ベイカーボーイズ」の2本。ストーリーと役者の演技はもちろん、忘れられない名シーンと名セリフがあり、さらに音楽も素晴らしいというのが共通点。さらに、その時の気分にあわせて、心に残っている作品を一つ加え、常に好きな恋愛映画を3本答えるようにしている。今年で言うならば、その3本目の映画は間違いなく「私の頭の中の消しゴム」である。

昨年、韓国で公開された時から気になっていた「私の頭の中の消しゴム」。実は以前、韓国でこの作品のプロデューサーにインタビューをした時、次に手掛ける作品だと、台本を見せてもらった。オリジナルは日本のドラマ「pure soul」だと聞き、一体どんな作品に仕上がるのか、とても待ち遠しかった。その後、韓国で大ヒットというニュースが届き、さらに私の期待は高まった。そして、今年の初めに韓国へ行った時、DVDを購入し、やっと見ることができたその作品は、永遠に変わらぬ愛を丁寧に描いた、美しく、悲しく、そして優しい物語だった。

純粋でちょっぴりおっちょこちょいな社長令嬢スジン。許されぬ恋に破れたスジンは、失意の中、立ち寄ったコンビニで、工事現場で働く無愛想な大工チョルスに出会う。きっかけは、スジンの物忘れ…。その後、再び出会った二人は、あっと言う間に恋に落ちていく。これまで独りで生きてきたチョルスの固まった心を、少しずつ溶かしていくスジンの愛。人を愛すること、許すこと、そして信じることを知ったチョルスは、スジンと結婚をし、人もうらやむような幸せな夫婦生活をスタートさせる。しかし、スジンの物忘れはますます酷くなっていき、若年性アルツハイマーという病魔がスジンを蝕んでいく。

DVDで何度も見て、さらに日本公開前に試写会で一度見たけれども、いつも同じところで私の目から涙がとめどなく流れる。実の母を許せないチョルスに、スジンが「許すと言うことは、心にもう一つの部屋を空けてあげること」と話すシーン。そこから、私は毎回、ほとんど最後まで泣きっぱなしになる。韓国映画に(特に恋愛もの)涙は欠かせないもので、変な話、映画がつまらなくても泣けるシーンがある映画もあるくらい。でも、この映画で流す涙は純度100%。ただ純粋に涙が溢れてどうしようもなくなる。一つ一つのシーンが美しく、チョルスとスジンが付き合うことになる屋台でのシーンは、女性ならきっとドキドキするはずだし、スジンが若年性アルツハイマーに犯されていることを告白するバッティングセンターでのシーンは涙なくしては見られない。部屋のあちこちに張られたポストイットを見ながら、スジンが涙ながらにチョルスへの思いを綴るシーンは、もう…。

監督の演出力もさることながら、主人公二人の演技が素晴らしい。映画「4月の雪」でヨン様と共演しているソン・イェジンは、この映画のスジン役が女優としての大きな転機になったに違いない。そして、チョルス役のチョン・ウソン。この映画を見て、彼に惚れない女性はいないはず。ワイルドでぶっきらぼうな男が、たとえ、彼女の記憶から自分が消えてしまっても、最後まで愛し続けようとする姿。特に、涙を堪えながら、一生懸命、笑顔を作ろうとする表情が、胸を締め付ける。

生きながらにして、全ての記憶が一つずつ消え去ってしまうことは、死よりも辛いことなのかもしれない…。色んなことを気付かせてくれる、そんな映画です。

| 16:45 | カテゴリー:映画
2005年10月06日
「ブコウスキー:オールドパンク」★★★★☆
7年前、私は「死にたいほどの夜」という映画でビートニクを知った。その影響で、映画の主人公ニール・キャサディがモデルになった本、ケルアックの「路上」を買いに行ったのだが、その本屋でもう一冊、私の目に飛び込んで来た本があった。タイトルは「町でいちばんの美女」。バーカウンターで気怠そうにする女性が表紙になっていて、妙にその写真に惹かれたのを覚えている。悩んだ挙句、結局、次の機会にとあきらめたまま、読むことはなかった。その本が、チャールズ・ブコウスキーの作品ということを、この映画「ブコウスキー:オールドパンク」で知ることになる。 私はブコウスキーの作品を、今まで一度も読んだことがない。しかし映画の解説には、「町でいちばんの美女」の他にも、ブコウスキーに興味を抱くキーワードがいくつかあった。昔ミッキー・ロークが見たいだけで借りた映画「バーフライ」の脚本家。そして、ブコウスキーを語ると言うショーン・ペンとU2のボノ。この作品で私の知らないブコウスキー・ワールドが、また発見できそうだ。

映画は、冒頭から驚きの連続だった。私が初めて見る「動く」ブコウスキーは、サンフランシスコの朗読会で、ビール瓶の転がる机に肘をつき、もっと酒を持って来いと、野次を飛ばす。それを見る観客は、拍手喝さい。何、これ? このおやじ、強烈…。映画を見る限り、彼の傍らには、常に、お酒、煙草、もしくは女がいる。彼が書き続けてきた作品の如く。だけど、生前の貴重なインタビュー映像や、彼を取り巻く人々の言葉から、ブコウスキーの裏に隠された本当の姿が見えてくる。作品を読まなくとも、彼の破天荒な生き方は容易に知ることは出来る。だけど、生活の為に、そして、いつまでも書き続けていられるようにと、長年、郵便局で働いていたというのは意外だった。もちろん、勤務態度は褒められるものではなかったけど、局が度々行う「郵便物の仕分けテスト」の練習もしていたという真面目さも垣間見える。

幼い頃、ドイツ人の父に虐待を受けたことを「父は文学の師。俺に理不尽な痛みを教えてくれたから。」とクールにコメントしながらも、その頃、住んでいた家に足を踏み入れ、言葉すくなにハイネケンを飲む姿。一晩で6人の女を相手にしたと豪語する男が、自分の元を去っていった若い恋人を思い、自らの詩を読みながら咽び泣く。無骨な中に、時折、見え隠れするピュアな姿に、私の興味はさらに強くなっていった。

中でも、映画「バーフライ」にまつわる逸話の数々は、映画好きにはたまらない。映画のために脚本を書いたブコウスキーだが、ミッキー・ロークがミス・キャストだったということは、ブコウスキー自らセリフを言ってみせるシーンでよくわかる。なにより「バーフライ」の映画化にてこずっていたバーベット・シュローダー監督が、「バーフライ」撮影中に撮りためていたブコウスキーの映像のほうがよっぽど面白い。(映画には「RAY」のテイラー・ハックフォード監督の映像も登場する) さらには、「バーフライ」の脚本に夢中になり、主役をやりたいと申し出たものの、却下されたことから始まったショーン・ペンとブコウスキーの友情。年を重ねる度、ヒリヒリするような演技を見せるショーン・ペンに、ブコウスキーの影を感じずにはいられない。

酒とタバコと女を愛し、死ぬことよりも書けなくなることが怖いと言いながら、魂の自由を求めて叫び続けた男、チャールズ・ブコウスキー。映画の最後を飾る「青い鳥」の詩が、胸にしみる。

この秋は、ブコウスキーの本を読んでみよう。

| 16:32 | カテゴリー:映画
2005年09月29日
「真夜中のピアニスト」★★★☆☆
今年3月にフランスで公開され、「ここ10年の傑作!」と絶賛された映画「真夜中のピアニスト」。私がこの映画に興味を持ったのは、ポスターの中で今までとは違う表情を見せるロマン・デュリスのカッコ良さと、70年代フィルム・ノアールの傑作「マッド・フィンガーズ」のリメイクということだった。「マッド・フィンガーズ」と言えば、ハーヴェイ・カイテル!!「レザボア・ドッグス」や「ピアノレッスン」がきっかけで、一時期ハーヴェイ・カイテルにはまり、彼の出演作を見まくった時期があるのだけれど、「マッド・フィンガーズ」は見ることができなかった。だから、この映画を見れば少しはオリジナルの雰囲気がわかるのでは?と思って見ることにしたのだけれど…。

リメイクであるということを抜きにしても、見ごたえのある映画だった。というか、久しぶりに面白いと思えるフランス映画。舞台は現代のパリに置き換えられているけど、冒頭からヒリヒリした緊張感が伝わってくる。主人公は28歳の男、トマ。彼の職業は不動産ブローカー。といっても、決して人様に自慢できるようなものではない。手に入れた物件に住む不法住民を暴力で追い出しては、その物件を転がして金を稼ぐ。しかし、トマの人生は、偶然、恩師に出会ったことから変化していく。その恩師とは、ピアニストだった亡き母のコンサート・マネージャーであり、トマのピアニストとしての才能を買っていた人物だった。恩師との出会いは、トマが長年抱いていた、ピアニストになりたいという夢を呼び覚ます。そして、オーディションの機会を与えられたトマは、10年振りにピアノに向かう。しかし、彼を受け入れる音楽学校はない。トマを助けるのは、フランス語のわからない中国人女性ピアニストだけ。コミュニケーションがうまくできず、始めはイラつくトマだったが、いつしか2人はオーディションを目指し練習に励む。長い間、心に秘めていた、母と音楽への愛情を貪るように。そして、日陰の人生から逃れるために。しかし、彼が夢を叶えるには、多くの困難が立ちはだかっていた。

この映画は様々な「対比」で、トマの人生を見せてくれる。非常な手段で貧しい不法住人を追い出すブローカーが、心の静寂を保たなければならないピアニストになれるのか。アウトサイダー的な生き方をしてきた父と、ピアニストとして苦悩した母、どちらの行き方を選ぶのか。そして、仲間の妻との不倫と、言葉の通わない中国人女性とのささやかな時間。どちらがトマの心を満たすのか。主人公トマの視線で全てを映し出す手持ちカメラの映像が、無骨なブローカーの夢を、リアルなものへと昇華させていく。

特に、トマ役のロマン・デュリスの緊張感ある演技が冴え渡っていて、「スパニッシュ・アパートメント」の時の子供っぽさはどこへやら。ピアノがうまく弾けず苦悩するシーンや、エンディングで描かれる心の葛藤など、その表情、佇まいは強烈な印象を残し、それがこの作品を現代のフィルム・ノワールに仕上げている。

BLOC PARTYから、バッハの「トッカータ ホ短調」まで、劇中に流れる音楽の「対比」も面白く、個人的には映画の結末が好き。今年のフランス映画を語る上で、はずせない作品です。

| 15:26 | カテゴリー:映画
2005年09月15日
「理想の女」★★★★☆
きっと、多くの人は、自分の理想とする人物を、心のどこかに秘めて生きている。女性の場合、その理想に近づくため、ファッション、センス、マナー、インテリジェンスを磨く努力を惜しまない人も多い。満足できる自分である為の、いくつものステップ。だけど、この映画を見て思った。醸し出される成熟した女の魅力というものは、お金をかけただけでは物に出来ないと。どんな経験をし、どのように年を重ねてきたのか、これがとても重要。成功しても失敗しても、自分自身を貫く生き方。「コムスメに負けないファッション」よりも、「コムスメにできない人生」を経験した方が、遥かにカッコいい。そして、それは年を重ねていかなければ、成し得ないことでもある。

映画「理想の女」に登場するアーリン夫人は、まさにそんな女性。彼女は女という武器を使って、様々な男の愛人として生きてきた。しかし、周りの女性から見れば、大いなる敵。彼女が現われると、皆、鋭い視線を浴びせ、噂話をする。でも、アーリン夫人はひるまない。どんな時だって、堂々と振舞う。ウィットに富んだ会話は、上流を気取る女たちより、遥かに魅力的で、男が惹かれていくのも無理はない。そんな姿を見て、女たちはアーリンを悪女と決め付け、彼女の噂話をしてうっぷんを晴らす。

この対照的な女性の姿を見て、さて、自分は、どちらの女に属したいか、と考えた。もちろん、夫が他の女にうつつを抜かし、傷つけられた妻たちに同情する。だけど、生き方としては、周りに中傷されようとも、常に自分を貫き通すアーリン夫人のほうが断然良い。彼女は言う。「噂されるより悪いのは、噂されないこと」だと。こんなカッコいいセリフ、一度でいいから言ってみたい。

この奔放な恋愛遍歴を持つアーリン夫人が、南イタリアの避暑地アマルフィを訪れるところからストーリーは始まる。そこには、ニューヨーク社交界の華、若くて初々しいメグ・ウィンダミアが夫ロバートと共に来ていた。ある日、メグのプレゼントを探しに骨董屋を訪れたロバートは、アーリン夫人と出会う。アーリン夫人のアドバイスで豪華な扇を手に入れたロバート。それから2人は密会を重ねるようになり、噂は瞬く間に社交界に広がっていく。一途に愛していたロバートに裏切られ、傷つくメグ。しかし、そこには大きな秘密が隠されていた…。

映画の原作となった戯曲「ウィンダミア卿夫人の扇」を書いたオスカー・ワイルドは、こう記している。「魅力的な人には2種類ある。全てを知り尽くした人と、何も知らない人。」 言わずもがな、アーリン夫人は前者、そしてメグ・ウィンダミアは後者にあたるわけだが、ピュアでイノセントなメグが、アーリン夫人の出現によって、変化していく姿をスカーレット・ヨハンソンが瑞々しく演じている。しかし、今回、ヨハンソンよりも注目すべきはアーリン夫人を演じるヘレン・ハントである。オスカーを獲得した「恋愛小説家」など、演技はもちろんうまいと思っていたけど、個人的には彼女の顔に好感が持てなくて、お気に入りの女優リストには入っていなかった。でも「理想の女」を見て、初めてヘレン・ハントは素晴らしい女優だな、と感じた。世間的には悪女と言われるアーリンが、内に秘めているピュアな部分。これを見事に伝えていて、久々にいい女を見た気がした。さらに、アーリンに恋心を抱く中年紳士タピィ(トム・ウィルキンソン)も魅力的。年老いても忘れない茶目っ気とゆとり、そしてマナーを併せ持ち、男の場合も、ルックスより心意気が大切であることを教えてくれる。

今回、映画の舞台になったイタリア南部・アマルフィ(原作ではロンドン)は、各国のセレブが集うイタリアの隠れ家的リゾートで、景色の美しさはため息が出るほど。さらに、1930年という時代設定の中で描かれる、上流階級の人々が集うサロンの雰囲気、ウィットに富んだ会話、うっとりする贅沢な衣装、装飾品の数々。「目の保養」にもなる文芸ドラマです。

| 14:49 | カテゴリー:映画
2005年09月08日
「銀河ヒッチハイク・ガイド」★★★★☆
タオルの謎は、映画でね!
ヴォゴン人と一緒
う〜ん、笑える。実に、面白い。「宇宙戦争」や「スターウォーズ・エピソード?V」を見た後だから、なおさら可笑しい。全世界で1500万部も売り上げた伝説的カルトSF小説を映画化した「銀河ヒッチハイク・ガイド」は、スラップスティックな笑いが一杯、さらに宇宙の真理を発見できる!?(かも知れない)、SFコメディ映画である。

映画が始まってから数分で、地球があっけなく消滅してしまう。もう、びっくりである。なんでも、太陽系を走る銀河バイパスを建設するのに、地球が邪魔だったらしい(って、そんなぁ…)。しかし、地球消滅の危機を乗り越え、運良く生き延びた男がいた。彼の名はアーサー。15年来の友人で、実は異星人だった男フォードに「君は命の恩人だ。だから一緒に脱出しよう」と助けられ、二人で宇宙船をヒッチハイク。間一髪、地球を脱出した。実はフォードの職業と言うのが、宇宙で生き抜くサバイバル術とクールな風刺に満ちた、銀河系最大のベストセラー『銀河ヒッチハイク・ガイド』の編集調査員だったのだ。最後の地球人アーサーは、何故かタオルを握り締め、フォードとこの本を頼りに、果てしなく広い宇宙への旅に出るのだが…。

オープニングのイルカの歌から、私は大爆笑してしまった。地球で2番目に高等な知性を持つイルカは、ずいぶん前から地球消滅の危機を人間に伝えていたのに、メッセージは誤解され、人間は魚をくれるばかり。もう、どうしようもないから、“so long, and thanks for all the fish”というメッセージを最後に、早々と地球を去ってしまうのですよ。そして何も知らない人間が、のほほ〜んとしている間に、地球ごとなくなっちゃう!

アーサーと共に旅をする仲間も、ヘンテコなキャラばかり。銀河系大統領のゼイフォードは脳が二つあるイカレタ男だし、人間性をプログラムされたロボット乗組員マーヴィンはいつも鬱気味。最後の地球人女性トリリアンですら、ゼイフォードにナンパされて宇宙船に乗り込んでしまったという変わった女性。さらに、行く先々で体験する不可思議(でも、宇宙ではあたりまえ)な事柄は、超キテレツである。宇宙で2番目に優秀なコンピューター“ディープ・ソート”(このデザインがまたいい!)がはじき出した答えに大爆笑!空間移動をしたら毛糸になってる(結構かわいい)とか、考え事をすると顔をはたかれるハエ取りみたいな生物(?)とか…。あぁ、また、見たくなってきた(笑)。

ベースはいわゆるSFだけれども、ストーリー、キャラクター、全てにおいて着地点に捻りがあるこの映画。最後は哲学的思想にまで迫り、納得(するかなぁ…)。原作者のダグラス・アダムスは「モンティ・パイソン」のメンバーだった人。さらに、映画化不可能と言われた原作を見事、映像化したのは、FATBOYSLIM、BLURなどのミュージック・ビデオを手掛けてきたガース・ジェニングス監督。また、サム・ロックウェル、ジョン・マルコビッチや、声で出演のヘレン・ミレン、アラン・リックマンという演技派の怪演も楽しく、映像も音響も迫力十分。ただし、笑いは全編、ゆる〜いけどね。

理屈とか科学的根拠とか抜きで、構えず、スクリーンに突っ込みありで、楽しく見てください!

| 15:42 | カテゴリー:映画
2005年09月01日
「愛についてのキンゼイ・レポート」★★★★☆
学生時代、とある女性雑誌でSEX特集なるものが登場した時、びっくりした。「えっ、表紙にこんな堂々と書かないでよ〜」って。まぁ、その雑誌は社会的にも話題になり、カミングアウトしちゃうと、私もしっかり買ってしまった人です。(今更、恥ずかしいことでもあるまい、うん)。当時は買ったことすら自分だけの秘密…。それから、月日は過ぎ、今じゃ、そんな特集にびっくりしない世の中になったけど、この映画の主人公、キンゼイ博士の時代はそうではなかった。性に関することすべてがタブー視された40年代のアメリカ。保守的な人々、間違った知識。そんな世間に風穴を開けたのが、生物学者キンゼイ博士が1948年に出版した「キンゼイ・レポート(男性版)」。全米1万8千人に対して行った性に関するインタビューを、一冊の本にまとめた学術書である。

そんな時代に、どうやって膨大な数のインタビューをこなしたのか?それは、キンゼイ博士が練り上げたインタビュー術によるものである。相手が正直に話せるよう、心理学や暗号を駆使し、さらにインタビューする助手を徹底的に訓練する。映画の冒頭に登場するこのシーンから、興味をそそられる。そもそも、キンゼイ博士はタマバチの研究者だった。そんな彼が性について研究するきっかけとなったのは、妻クララとの新婚初夜の失敗だった。しかし前向きなキンゼイ博士は医師の指導を仰ぎ、問題を解決する。自信を持った博士に、性の悩みを相談する学生たち。そして、博士は気付く。世の中は、性に関してあまりにも無知であると。

それからキンゼイ博士は、性の研究にすべてを捧げるのだが、面白いのは博士のアプローチの仕方。彼は、性であろうが、タマバチであろうが、いつも変わらず生物学的見地から全てを解き明かそうとするのである。それに加えて、研究熱心な性格ゆえ、同性愛に好奇心を持てばバイセクシャルの助手と関係を持ち、変質者だって彼にとっては興味深い調査対象となってしまう。でも、普通の人からみれば、正直、変わり者である。研究にのめりこむあまり、知らないうちに妻や家族、同僚を傷つけることもしばしば。同性愛について知るために助手と関係を持った、なんて告白されても、困りますよ、奥さんは。まぁ、奥さんのその後の行動にも、びっくりさせられますが…。

でも、それだけで終らないのがこの映画の凄いところ。男性版の「キンゼイ・レポート」で一躍有名になり、5年後に出版された女性版で、大バッシングを受けるキンゼイ博士の明と暗をしっかりと描いている。険悪な仲だった父親へのインタビューで明らかになる、父親の過去。どん底まで落ちた博士が救われた、あるレズビアンの告白。そして、妻クララと森を歩く最後のシーンは忘れられない。キンゼイ博士を演じるリーアム・ニーソンは、さすがの演技を見せてくれるし(最近の映画では一番良い)、妻クララ役のローラ・リニーは今年のオスカーにノミネートされただけあって、見ごたえ十分。久々に登場した知的で大胆、かつ面白い作品である。

但し、結構、衝撃的な映像などもあるので、ちょっとだけ心構えをしておくこと。こんなこと言ったら、キンゼイ博士に「不純だ!」と怒られそうだけど…。

| 15:45 | カテゴリー:映画
2005年08月25日
「アビエイター DVD編 ★★★★☆」

先日、とある会報誌の取材を受けた。テーマは「ジュエリーが印象的だった映画」。これが意外と難しく、三作品を選ぶのに悩みに悩んだ。「アビエイター」を除いては…。「アビエイター」は今年見た映画の中で、監督、俳優、セット、衣装など全てにおいて、最もゴージャスな映画である。私がこの映画を「ジュエリーが印象的な映画」に選んだ理由は、まず映画の豪華絢爛な雰囲気と、主人公ハワード・ヒューズと深い関係にあった二人の女優、ケイト・ブランシェット演じるキャサリン・ヘプバーンと、ケイト・ベッキンセール演じるエヴァ・ガードナーの妖艶な姿。そして実在の彼女達が身につけていたものを再現した、豪華なジュエリーに釘付けだったからである。

さて、この「アビエイター」。スケールが大きく、いわば本当に映画らしい映画。私は試写で見たとき、レオナルド・ディカプリオ&マーティン・スコセッシは今度こそオスカーをゲットするだろうと、確信していた。蓋を開けてみれば「ミリオンダラー・ベイビー」にさらわれてしまったけど。でも、その後、大ヒット香港映画「インファナル・アフェア」を、レオ様(トニー・レオンの役)&スコセッシでリメイクするというニュースを聞いた時、この二人には何か、ハワード・ヒューズに通じるものがあるなぁと感じた(ちなみにアンディ・ラウ役はマット・デイモンらしい)。「ギャング・オブ・ニューヨーク」「アビエイター」と、オスカーに見放された真の主役。それでも、なお、コンビを組んで挑もうとするその姿は、どこか二人の意地を感じさせるからだ。

ところで「アビエイター」の主人公ハワード・ヒューズは本当に凄い人である。親の遺産を継ぎ若くして大富豪になった彼は、まず映画監督という仕事に全てを費やす。そのワンマンなやり方が凄い。しかも自ら危険な空中スタントもこなし、出来上がった「地獄の天使」が大成功。一躍ハリウッドセレブの仲間入りを果たした彼は、数多くの女優と浮名を流した末、キャサリン・ヘプバーンと恋に落ち、名実共にハリウッドの頂点を極める。そんな彼が次に取り組んだのが飛行機。飛行機会社を設立し、自ら操縦桿を握ってスピード記録を次々更新。しかし夢にのめりこみすぎた為に、何かが狂い始める。華やかな人生の裏に隠された、男の狂気と孤独。その全てを演じるレオナルド・ディカプリオは近年、稀に見る名演技。ハワード・ヒューズは、まさにはまり役だと思うと、なおさらオスカーを逃したのが残念でならない。

ただ、全ての人がハワード・ヒューズに感情移入できるか、というと、そうでもない。この人物について良く知らなかった私のような人間にとって、ハワード・ヒューズの言動は桁外れ。つまりスケールが大きすぎて、ピンと来なかったりする。できることなら、ハワード・ヒューズについて少しでも情報を入れて見たほうがいいと思う。

映画を見逃していた人、私のような感想を持った人は、特典映像満載のDVDでもう一度、見ることをお勧めする。部屋でくつろぎながら見れば、2時間49分の上映時間も気にならない(!?)かも知れないし…(笑)。

| 15:40 | カテゴリー:映画
2005年08月18日
「さよならCOLOR」★★★☆☆

8月も半ばを過ぎると、ひょんなことで切なさを覚えるようになる。夜風にふと、秋を感じる瞬間だったり、花火が夜空に散った後の空気だったり・・・。湘南育ちの(でも、今じゃ海には殆ど行かない)私は、この時期の夕方、小田急線に乗るとなぜか切なくなる。車内には、海水浴に出かけた人たちがいっぱい。こんがりいい色に焼けた肌と、遊び疲れて気持ちよさそうに熟睡している姿。そろそろ終わる夏の空気が、そこにはゆっくりと流れていて、私は訳もなく胸がキュン、としてしまうのである。この感覚を、映画「さよならCOLOR」で感じた。

音楽好きな人ならもうご存知だと思いますが、この映画のタイトルは2001年に発表されたSUPER BUTTER DOGの名曲。「さよならCOLOR」にインスパイアされた竹中直人監督が、当時、進行中だった主演映画の脚本を書き直し、監督を引き受けた形で出来上がった作品。もちろんその曲は、ホロリと哀しい、でも新しいスタートを感じさせる物語のエンディングを飾ります。

海を臨む病院で外科医をしている佐々木正平(竹中直人)。ある日、高校の同級生・笈川未知子(原田知世)が子宮ガンを患い入院してきた。実は、彼女こそ正平にとって20年来の憧れの女性。長年、独身を貫き、居酒屋の女将(中島唱子)や、女子高生と付き合ってはいるものの、ずっと未知子のことだけを思い続けてきたのだった。しかし、当の未知子は正平のことを全く覚えていない。自分のことを思い出してもらおうと必死の正平に、少々迷惑気味の未知子だったが、いつしか心を開いていく。そんな未知子の命を救う為に、正平は献身的に治療をしていくのだが・・・。

最後まで静かなトーンで描かれていくこの作品。結末は切なく哀しいけれど、どこかクスッと笑わせてくれるシーンがたくさんある。竹中直人のコミカルな演技はもちろん、数々のアーティスト達が俳優として登場するのも必見忌野清志郎を筆頭に、映画の音楽も担当した永積タカシ原田郁子ビッケ。その他、スチャダラパー田島貴男斉藤和義浜崎貴司などなど。ほんとにチョイ役だったりするから、できることなら巻き戻してもう一度見たい!と思う人も多いことでしょう。個人的には、女性執刀医役で登場する中島みゆきの演技が良かった。

でも、やっぱり一番はヒロイン役の原田知世。学生時代に彼女のファンだった男子は、きっとこの映画をみたら、改めてファンになるのでしょうね。男性がずっと心に秘めている、絵に書いたような「永遠の憧れ」的女性像が本当にぴったり。最初は、竹中さんの同級生って無理があるんじゃ…なんて思っていたけど、見ていくうちに違和感がなくなっていく。だから、竹中さんとのやりとりも絵になって、距離が近づいていく二人を見守りたくなる。竹中さんの本当の同窓生が多数出演しているという同窓会のシーンで、原田知世が忌野清志郎とも同い年、という設定にまたまたびっくりしたけど、病魔と闘っている未知子の挨拶の言葉にウルッときた。

主演のみならず、脇役も素晴らしいし、美しい鎌倉の風景や音楽は心に心地よい風を送ってくれる。色んなところから、作り手とこの映画に携わった人々の愛を感じる映画だった。ブロックバスター・ムービーに飽きたら、こんな映画で心をリセットしてみては?

| 17:28 | カテゴリー:映画
2005年08月11日
「ハッカビーズ」★★★☆☆
「人生のスーパーマーケットへようこそ。“幸せ”あります。」

ハッカビーズ」キャッチコピーを見て、てっきりスーパーマーケットを舞台に、豪華キャストがコミカルな演技を見せるコメディ映画だと思っていた。チラシもポスターも、キラキラしていてなんか楽しそうだし。しかし作品を見てみると・・・「実存主義」やら「how am I or myself?」なんて言葉が登場し、とっても哲学的なのである。む、むずかしい・・・。でも、「天才マックスの世界」で主役を演じたジェイソン・シュワルツマン(この映画の主役はこの人です)が、放送禁止用語を機関銃のように発しながら森から登場。自らが守った(この人は環境保護活動家です)大きな岩の隣で、その岩を題材にした詩を読む、というオープニングシーンに、「わけわからん!」と言いながら大笑いしてしまった私は、結局、この映画にはまっていたのであった。

ストーリーは・・・うーん、簡単に説明できないから、今回は割愛させていただきます(笑)!主要な登場人物は、何でもお手頃価格で販売するスーパーマーケット「ハッカビーズ」を目の敵にしている環境保護活動家(ジェイソン・シュワルツマン)と、自分自身を理解する為に彼が雇った<哲学探偵>夫婦(ダスティン・ホフマン&リリー・トムリン)。ハッカビーズの自信過剰のエリート社員(ジュード・ロウ)、その彼女で「ハッカビーズ」のキャンペーンモデル(ナオミ・ワッツ)。さらに、<哲学探偵>の宿敵であるフランス人女性(イザベル・ユペール)と、彼女の唱える説に入れ込むエコな消防士(マーク・ウォルバーグ)。他にもヒッチコックの「鳥」で有名なティッピ・ヘドレンや、カントリー・シンガーのシャナイア・トゥエインなども登場する。この映画の最大の見所はやはり、この豪華な出演者達。今まで見たことがないような、強烈キャラを楽しそうに演じている姿は一見の価値あり。私が一番好きなキャラはやはり<哲学探偵>の2人。何をやっても笑える。ダスティン・ホフマンがいけてないヘアスタイルで、悩めるジェイソン・シュワルツマンに「全ては一枚の毛布の中で繋がっている」と話すシーンは笑いを抑えることが出来なかった。あと、マーク・ウォルバーグが“無”を論じる姿も!これは絶対に、観客が「猿の惑星」を思い出すことを逆手にとった、監督の仕掛けにしか思えない。

結局、どんな映画なのかというと、目一杯噛み砕いて言えば「自分探し」をする人たちを描いた作品、でしょうか。でも、見る人によって感想は違うだろうなと思う。監督は「スリー・キングス」で絶賛を浴びたデヴィッド・O・ラッセル。監督曰く「僕の最大の狙いは、ただ楽しもうということ」らしいので、難しいことは考えずに楽しんだもの勝ちかも。愉快な幻想シーンや、量子理論に基づき演出された映像など視覚的にも面白い。

私の頭の中にはまだ、?マークが一杯だけどね(笑)。


| 16:22 | カテゴリー:映画
2005年08月04日
「ふたりの5つの分かれ路」★★★★☆
フランス人監督、フランソワ・オゾンは私の興味を強く掻き立てる。「まぼろし」「8人の女たち」そして、「スイミング・プール」。毎回、独特の語り口に心酔し、彼の描く女性像に強く惹かれてきた。そんなオゾン監督の最新作が「ふたりの5つの分かれ路」。「5×2」という原題に比べると結構、長い日本語タイトル。しかし、映画を見終り、思わず納得するのであった。

淡々と離婚の手続きをする夫婦、ジルマリオン。なぜか2人はその後、ホテルへと向かい、数年ぶりに触れ合う。しかし、その行為の虚しさに気付いたマリオンはジルを拒み、壊れてしまった関係が元に戻ることはなかった―。そこから時間は遡って行く。2人の信頼が途切れてしまったある夜のディナー、夫の立会いもない苦しみながらの出産、幸せに酔い小さな翳りを見逃した結婚式、そして、カリプソの海で恋に落ちた二人の出会い。

物語を逆から見ていくことによって、2人がどうして離婚に至ったのかが浮き彫りになっていくのだが、決定的な事柄ということではなく、小さな心のすれ違いが、少しずつ重なるように描かれていく。だから、人によっては心に引っかかるセリフや行動が違うかもしれない。結婚も恋愛も現在進行形の時は、そんなこと考えもしないから、まったくわからないけど、何かのきっかけで、心は離れてしまうもの。大きな出来事なのか、それとも何気ないことなのか。原因は人それぞれである。私には経験がないので結婚・離婚という視点からは説明できないけれど、昔、恋人と別れた時、いつから自分の心が離れていったのか、考えてみたことがあった。その最初の躓きは、私が髪を切ったことに不満を言い、昔の彼女と比べた時だった。きっと相手は些細なことだと思っていたに違いない。でも、私の心には小さな棘が刺さったままだった。

この映画は、男女の違いを気付かせてくれる映画でもある。私は最後の会話、つまり映画の冒頭に出てくるジルとマリオンの言葉が印象的だった。「君の勝ちだ」というジルに「勝ち負けじゃない、終っただけ」と答えるマリオン。そしてジルは最後に聞く。「やり直せないか?」・・・。感傷を引きずる男と、終わりを受け入れた女。これって、名シーン。

時間軸を遡るという手法を除いては、今まで以上にシンプルな印象を受けるオゾン作品。全体的にセリフの量は少なめ。だけど、主演2人の演技は、セリフにない何かをも伝えてくれる。特にマリオン役のヴァレリア・ブルーニ・テデスキがいい。撮影は映画の通り、現在から過去という順で撮っていったそうだけど、離婚で疲弊した表情から、夫と恋に落ちる前の初々しさまで見事に演じている。またオゾン監督といえば音楽にもこだわる人。今回は、暗くなりがちなシーンに、敢えて明るめのイタリアン・ポップスを取り入れるというセンス。サントラもお勧めである。

「ふたりの5つの分かれ路」は見れば見るほど、何かを気付かせてくれる、そんな作品。

| 16:19 | カテゴリー:映画
2005年07月28日
「ナチュラル・シティ」★★★☆☆
「オールド・ボーイ」で来日したユ・ジテと。サングラスが・・・(笑)
 
「宇宙戦争」「スターウォーズ エピソードIII」、そして「アイランド」。今夏はSFXやCGを使った大作が目白押し。映画好きにとっては楽しい夏であるけれども、見るとちょっぴり悲しくなる。やっぱり、この手の映画はハリウッド以外じゃ作れないのか・・・。技術ももちろんだけど、やっぱりお金のパワーを感じずにはいられない。

ここ数年、アジア映画の中で、最も勢いのある韓国から、最新技術を駆使したSF作品がいくつか登場している。私も数本見たことがある。でも、お世辞にも「凄い!」とは言えない。素人目からしても、まだまだ映像・技術的には成熟していないと感じる。ハリウッドのSF大作に慣れてしまっているだけに、なおさらである。もちろん、意欲的に製作し続けることに意義があると思う。しかし、韓国国内の興行収入だけでは莫大な制作費を取り戻すことはできず、それに加えて海外での興行収入も期待できないことから、無駄にお金を使うだけでは?と異を唱える映画関係者もいるみたい。でも、この「ナチュナル・シティ」には、その大きな壁を乗り越えていけそうなパワーを感じた。韓国SF映画の明るい未来を・・・。

時は2080年。ソウルは「メッカ・ライン・シティ」という名の巨大な都市に変貌し、人間とアンドロイドが共存している。しかし、脱走したアンドロイドの犯罪が横行し、有害なアンドロイドを除去する「メッカ・ライン・ポリスセンター」の任務は重要度を増していった。そんな中、特別捜査官R(ユ・ジテ)は様々なアンドロイドに接するうち、ショーガールとして作られたリア(ソ・リン)に出会い心を奪われる。しかし、リアの廃棄期限は刻々と迫っていた。彼女を人間にしたいという思いから、裏社会へ足を踏み入れるR。やがて、アンドロイドを不法に製造するジロ博士に接触したRは、博士に言われるがまま、シオン(イ・ジェウン)という女を探すのだが、そこには博士の恐ろしい計画が隠されていた…。

アンドロイドと人間の叶わぬ愛。冒頭のシーンから、思わず「ブレイド・ランナー」を思い出してしまった。だけど、やはりこれはアジア映画。SFというジャンルを借りながら、オリエンタルな情感いっぱいに、愛と孤独の物語が描かれていく。R役のユ・ジテが見せる、愛する女性を助けたいという思いと孤独感は、さすが韓国映画界の若手演技派だけあって説得力がある。儚さを兼ね備えたリア役のソ・リン、そして家族を亡くしながらも力強く生きていくシオン役、イ・ジェウンも個性が光っている。でも、何より目を奪われたのは、今までになくスムースな映像。一貫して同じ色調なのである。なんでも、この作品には膨大なCGが取り入れられていて、さらに、35mmフィルムで撮影された後、全編デジタル処理が施されているそう。つまり、韓国初、全編デジタル処理された映画なのである。詳しいことは良くわからないけれど、他の韓国SF映画を見たことのある人なら、映像のクオリティの高さを感じるはず。この点だけでも、この映画の価値があると思う。韓国の街角が、見事なまでに2080年の舞台になっている。

監督は、原子力潜水艦を描き、かつてないアクション映画と韓国で絶賛された「ユリョン」のミン・ビョンチョン監督。もともとSF映画が好きで、この作品は5年の歳月をかけて製作された。「ナチュラル・シティ」は韓国で2003年に公開され、2004年の大鐘賞映像技術賞を受賞。現在、36歳のミン監督、これから先、韓国のブロックバスター映画を担う人だと思う。

| 15:53 | カテゴリー:映画
2005年07月21日
「皇帝ペンギン」★★★★☆
どうも私は、ペンギン好きらしい。子供の頃はペンギンのぬいぐるみやキャラクターなど沢山持っていたし、水族館に行くと「ペンギン飼いたい〜!」と思う。JRのsuicaのCMを見るたびに、この大きなぬいぐるみでもいいんだけど・・・と思う。ペンギン君がプリントされているsuicaを見ると、羨ましいなぁと思ったりもする。だから、初めて「皇帝ペンギン」の予告編を映画館で見たとき、釘付けになった。ペンギンの雛、ふわふわだよ〜。もう、絶対、見るんだっ。

しかし、キュートでスウィートな映画だと思っていた私が馬鹿だった。皇帝ペンギンの生き様はとってもハードだった。マイナス40℃の氷の世界で、時速250kmのブリザードの中、120日間絶食して子供を育てるのである。数え切れないほどの数の皇帝ペンギンたちが、パートナーとの出会いのために100キロ近い距離を行進する姿。短い足で不器用に歩き、時には腹ばいになってすべるようにしながら目的の地を目指す姿。遠くから見た皇帝ペンギンの行進は、まるで人間が行進しているようでもある。やっと出会ったオスとメスは互いのくちばしを滑らせ、絵画のように美しい求愛のダンスをし、新しい命を宿す。そして卵を無事育てる為、産卵で痩せてしまったメスは餌を求め群れを離れ、残されたオス達は120日間に及ぶ絶食をしながら卵を守るのである。つま先を上げ足の甲で卵を抱えるようして・・・(すっ、すごい!)。

動物行動学者であるリュック・ジャケ監督が、極寒対応の特殊カメラで捕らえた映像はなんと8880時間。私達が知らない自然の驚異と神秘を捉え、地球上に生きるものたちの生命の強さ、そしてシンプルでいて絶大な愛を気付かせてくれる。ロマーヌ・ボーランジェやシャルル・ベリングによるポエティックなセリフも掻き消されてしまうくらい、映像の威力は凄い。

凍てついた世界に流れる、エミリー・シモンの音楽もGOOD。無事産まれてきた、ふわふわのかわいい雛の姿もたまりません。皇帝ペンギンと、映画を製作したスタッフの凄さに、ただただ感服するばかりです。

| 16:20 | カテゴリー:映画
2005年07月14日
「マリといた夏」★★★☆☆

韓流もここまで来たか・・・と、最初は思っていた。人気俳優が出演している映画が続々と公開される韓流ブームだから、この韓国アニメ「マリといた夏」もその波に乗ってやってきたのだと。でも、映画のオープニングから、その美しい映像にスーッと入り込んでしまった。ふわふわと雪が舞い降りる中、空を飛ぶ一羽のカモメ。やがて視線は空から地上へと緩やかに降りていく。そこはビル群が立ち並ぶソウルの街。グレーの寒空なのに、どこか柔らかく感じられる。なんて美しく、気持ちがいいんだろう

アニメと言えば日本が一番。それは海外に行っても感じること。だけど、ここ数年、視覚的な部分では目新しいことってあんまりないような気がする。あくまでも、私のような一般レベルの意見ですが・・・。そんな私に、アニメの新鮮さを感じさせてくれたのがこの作品。とにかく映像が綺麗なんです。全体的にパステルトーンで、まるで水彩画のよう。線の強さが特徴の日本のアニメに比べると、平面的だけど柔らか、そして繊細。ストーリーは、少年ナムの夏の日の思い出と、想像の中で出会った少女マリの話がメインなんだけど、現実とファンタジーが見事に融合していているのも、その映像のおかげだと思う。マリの不思議な世界に住む、真っ白で巨大な犬ビッグ・ドッグは、ふわふわで思わず触りたくなるほどです。

小さな漁村を舞台に描かれるナムの少年時代。拾ってきた野良猫、隠れ家のような灯台、キラキラしたビー球と、どこか懐かしさを感じさせるモチーフがいっぱい。海水浴のシーンの美しさには息を呑む。セリフは少ないものの、様々な場面が積み重なることによって、ストーリーに深みでいく演出もいい。そして社会人になったナムとジュンホの姿から、私たちは、大人になってから失ったものに気付くのである。

大人になったナムの声をイ・ビョンホン。そして、子供の頃、未亡人の母を思っていたおじさんの声をアン・ソンギが担当するなど、声優陣も話題ですが、一番のポイントはこの「マリのいた夏」が2002年にアニメ界のカンヌとも言われるアヌシー国際アニメーションフェスティバルでグランプリを受賞しているということ。イ・ソンガン監督が描く美しい映像の世界に浸ってください。

| 14:58 | カテゴリー:映画
2005年07月07日
「アルフィー」★★★☆☆
ハリウッドスターの中で本当にいい男だなぁ、と思う俳優はジュード・ロウである。もちろん他にも素敵な俳優は沢山いるけれども、スクリーンに登場した瞬間、私が思わずため息を漏らしてしまうのは、きっと彼だけ。どんな作品でも、どんな役柄でも…である。英国人らしい気品美しさフェロモンにやられてしまうのでしょう。わが子を連れて歩くプライベート写真さえも、映画のワンシーンのようですもの。映画「ガタカ」で始めてジュード・ロウを見た時、世の中にはこんなにきれいな男性もいるんだ…と感動し、それから出演作は欠かさず見ているんですけど、新作「アルフィー」ジュード・ロウ堪能度数200%。クールなファッションに身を包み、あらゆる女性を虜にしていく姿を見るだけで満足!な作品です。

主人公アルフィーはNYに住むイギリス人。リムジン運転手をしながら、様々な女性達と恋愛を楽しむセクシーなプレイボーイ。さらに上の生活を目指しながら、自分なりのセオリーで人生を謳歌してきたアルフィーだったが、やがて、自分の中にある孤独を知るようになる…。

ジュード・ロウが観客に話しかける形でストーリーは進んでいくので、なんだかアルフィーの生活を覗き見しているような感覚になります。アルフィー曰く、「世界中の美しい女性が集まるマンハッタン」のファッショナブルな雰囲気もワクワクさせられる。でも、そのすべて楽しいかというと、そうではない。だって、魅力的なプレイボーイにたぶらかされ、捨てられてしまうのは、私と同じ、女性達なのだから。もし自分も、魅力的な笑顔の裏で「誘うのは簡単、追い出すのが難しい」だなんて言われていたら…と思うとショックじゃない? でも女性達は、アルフィーと別れてもしっかり自分の道を選んでいく。その姿に女の強さを感じたりもするのです。シングルマザー(マリサ・トメイ)、人妻(ジェーン・クラコウスキー)、親友の彼女(ニア・ロング)、ブロンド美女(シエナ・ミラー)と様々なタイプの女性が登場するんですが、その中でも一番かっこいいのが、スーザン・サランドン演じる超リッチなビジネス・ウーマン。40代後半でありながらセクシーさとチャーミングさを兼ね備えていて、その女っぷりにはアルフィーも太刀打ちできない。他に相手が出来たのかと問い詰めるアルフィーに「あなたより若い人よ」と言ってのける余裕!とりあえず、この女性をお手本に生きていこうと思いました。(笑)。

プレイボーイに泣かされるのはゴメンだけど、ジョード・ロウが演じるセクシーなプレイボーイを見るのは、ほんと、目の保養。もちろん、アルフィーは上辺だけの快楽を楽しんだ代価を払わされ、自分の回りに誰もいなくなったことに気付くわけで、男性諸君にはそこんとこ、よーく勉強してもらいたいわけですけどね。

ファッション誌のグラビアのようなスタイリッシュな映像センスのいい音楽、そしてこの映画をきっかけにジュード・ロウの恋人になったシエナ・ミラーの魅力要チェック。この夏、一番、トレンディでお洒落な恋愛映画です。

| 16:53 | カテゴリー:映画
2005年07月06日
「電車男」★★★☆☆

今週のテレビアン・トレビアンは、新ドラマ「電車男」の特集と言うことで、番組を代表して映画版「電車男」を見てきました。ぶっちゃけ、私の<見なくちゃリスト>に入っていたなかったこの映画。チーフディレクターは「泣いたって人もいるらしいよ」と言うけど、本でも映画でもセカチューで泣けなかった私が「電車男」で泣くわけがない、と思ってた・・・しかし。

正直に言いましょう、クライマックスで泣きそうになりました。結構、楽しんでしまいました。いや、面白かったです。まず、主演の山田孝之君がうまいのね。こんなに演技が上手な人だとは思っていませんでした。元々、本を読んでいるから内容はわかっているし、それ以上のものが果たして映画で感じることが出来るだろうか、と心配していたんだけど、脚本と演出もうまい(絵文字の使い方とか・・・)。だから、本とはまた違う次元で楽しむことが出来るんですね。電車男を応援する仲間達にも、さりげなくそれぞれのドラマが盛り込まれるし。昨今の、ベストセラー書籍の映画化作品としては、私の中で始めて合格点をクリアした映画でした。

さぁ、今度はドラマチェックだ!

追伸・・・
それにしても、劇場の平均年齢、低かったなぁ。
その中にいる自分に、ちょっと恥ずかしさを感じていたら、前の席に40代後半の夫婦(?)らしき人が座った。
平均年齢を上げたのは、私ではない・・・よね。
ちなみに旦那さんのほうは、若人に負けないくらい大笑いしていた。

| 17:58 | カテゴリー:映画
2005年06月30日
「メトロで恋して」★★★☆☆

先日、同級生の親友と久しぶりに飲んだ。銀座にある沖縄料理で、泡盛を飲みながら、近況を報告。お互い長女で、他の兄弟は皆、結婚して子供もいるという、似たもの同士。気が付けば、二人して携帯電話で撮った、甥っ子、姪っ子の見せ合いをしていた。彼女に聞く。「で、彼氏は出来たの?」「うーん、気になる人はいるんだけどねぇ・・・」。いい兆候である。だって、会うたびに「誰かいい人いない?」と聞く親友グループを脱したわけだから。30代にもなると、恋したいけど、簡単に恋に落ちない自分に気付く。昔は、猪突猛進、当たって砕けろ、な感じだったのにねぇ・・・なんて、昔話に花を咲かせることもある。そんな彼女たちの「いい人紹介して〜」コールを受け、知人の男性に話してみると、「こっちがいい人だと思って紹介しても、自分の理想に合わなければだめなんでしょ」とチクリ。確かにそうである。キャリアもあるし、ある程度の収入もあるし、友達もいるし、趣味も充実している今の生活に欲しいのは、理想の全てを兼ね備えた男性、なわけだ。で、年を重ねるほど、その「理想の男性群」というのは、どんどん小さくなっていくもので・・・。

ところで、悩んでいるのは、世の「負け犬(女性)」だけではないらしい。小説や映画、ドラマを見ると、最近は、男性も恋に臆病であるという。この「メトロで恋して」も、恋に臆病な30代の男が主人公である。俳優をしているアントワーヌは、漠然と結婚したい、と思っている。仕事にも満足しているし、誕生日にはたくさんの友達が駆けつけてくれる。でも、心の中は満たされない。そんな彼が、メトロで乗りあわせた女性クララに一目ぼれをする。アントワーヌのユーモアのある誘いを受けるクララ。そして、デートをした二人はあっと言う間に恋に落ちていく。積極的に愛を語るクララに対し、どこか素直になれないアントワーヌ。だけど、長年、避けていた両親に会って、彼女を紹介したい思うほど、クララはアントワーヌの全てになっていった。しかし、皮肉にも、そんな幸せな二人に悲劇が訪れる。クララは不治の病だったのである・・・。

前半は、「恋の都」パリを舞台に恋に落ちた二人を、キラキラしたフレンチポップが彩る。こんなに音楽がキラキラしているフランス映画は久しぶり。夜のセーヌ川で初デートをする場面は、ミュージカル仕立てになっていて、大人の二人がはしゃぐ姿が微笑ましい。メトロの中で、アントワーヌが質問形式でクララにアプローチするくだりも、なんかお洒落。だけど、その恋愛ムードは徐々に変化してく。病気の彼女にどう接すればいいのかわからず、悩むアントワーヌ。大人になりきれていない男の姿に、女性の立場からは少しいらだちも感じるけれど、そのことをきっかけに、アントワーヌは自分の人生において、うやむやにしていたことに向き合おうとしていく。やっぱり、クララは彼にとって運命の人なのである。

余韻を残す終り方が、フランス映画らしい「メトロで恋して」。「愛している=すべてを受け入れる」ということを、難しく考えるようになってしまった大人の為の映画です。

| 17:14 | カテゴリー:映画
2005年06月22日
「リング2」★★☆☆☆・・・うーん、イマイチ

予告編見たときから、楽しみにしていた「リング2」。仕事の合間に見たんですけど・・・うーん、イマイチ。期待しすぎたかにゃ?あのビデオテープによって若者が死に、再び悪夢が主人公親子に忍び寄るのだけれど、気が付くとビデオテープはどうでもいい展開になっていました。予告編にも登場したバスタブのシーン。水が逆さまに落ちていくシーンは迫力があったけれど、私の体が一度もビクッとすることのなく終ってしまいました・・・。

ちょっと残念だったので、帰り際、ロビーにいたサマラと遊んできました。

| 04:39 | カテゴリー:映画
2005年06月16日
「大いなる休暇」★★★☆☆
私はまだ、カナダという国にいったことがない。でも、なんだか良い人がたくさんいそうだ、と勝手に思っている。マイケル・ムーア監督の「ボウリング・フォー・コロンバイン」で、家の鍵をかけなくても大丈夫と話すカナダ人の印象が強かったからかも?初めての海外旅行でカナダを訪れた我が母は、本当に素敵だったと喜んでいたし(ただし、お酒を自由に買えなかったことを除いて…)、なんといっても、あの大自然!「サウスパーク無修正版」では散々叩かれてたけど、きっと人の良さをひがんでのことに違いない、と私は勝手に解釈している。そして、私のカナダのイメージがさらに良くなっていくもう一つの理由は映画。ここ数年、「見て良かった〜」と思わせるような作品が多い。昨年はアカデミー賞外国語映画賞を取った「みなさん、さようなら」が一番だったけど、今年はきっとこの映画、「大いなる休暇」。昨年のサンダンス映画祭で観客賞を受賞した、なんとも可笑しくて、あったか〜い映画なのです。

舞台は人口わずか125人のサントマリ島。その昔、漁業で栄えたこの島は、今や島民のほとんどが失業保険のお世話になっているという状況である。そんなある日、この島に工場誘致の話が舞い込む。この話が決まれば、失業生活から逃れられると島民は意気揚々。しかし、島に医者が居なければならないという必須条件が。実は、サントマリ島には医者がいない。どうしたものかと悩んでいると、ひょんなことからこの島に医者(といっても、整形美容専門)が来ることになった。そこで島民は、この島を気に入ってもらい、ここに定住したいと医者に言わせるため、あの手この手のウソを繰り出していくのだが…。

盗聴をして医者の好みを調査したり、見たこともないクリケットをインターネットで調べてトライしたり。釣りが下手な医者のために、とんでもないアイデアを考え出したりするのだが、はっきり言って、医者である男がそんな嘘に引っかからないだろうと、ツッコミを入れたくなるときもある。けれど、医者は嘘に引っかかったというより、島民のあたたかい人柄にすっぽりはまってしまったのだろうなぁ、と思うのです。嘘は悪いことだけれど、島を愛するからこそついてしまった島民達の一世一代の嘘の数々は、私達を笑わせ、そして何だか幸せな気分にさせてしまう。登場人物にイケメンなんていません(医者もイケメンではない…と、思う)。それに加えて主役は中年臭いっぱいのおじちゃん達。日本で知られている俳優なんて殆どいないけど、この出演者達が、良い味出しているんですよ。しかも、この映画は笑いの陰で、高齢化や失業など、私達の生活にも通じる現代の様々な問題も取り上げていて、舞台は架空の島だけれど、切実な部分がリアルに伝わってくるんです。

この映画を見た後、以前、見た立川志の輔さんの落語を思い出しました。年末恒例のパルコ劇場で見た新作落語。人情溢れるお話に、大笑いしながらも、最後はいつも泣いてしまうんですけど、この映画を見た後、あの時と同じ気持ちになりました。「大いなる休暇」は、カナダからやってきた「人情」溢れる素敵な作品。疲れた心を休めて、ホッとした気分になりたい人にお勧めです。

| 15:46 | カテゴリー:映画
2005年06月09日
「モーターサイクル・ダイアリーズ DVD編」★★★★☆
年を重ねるごとに、旅をする機会が多くなっています。それも海外旅行。若いうちに色んなところにいっておかなきゃと思っていた10代、20代の頃に比べると、はるかに回数が多い。仕事や時間の問題で、さすがに長期の旅行は無理だから、ここのところアジア方面(特に韓国?)ばかりに行っているけども、確実に旅行の楽しみ方が変わってきなぁ、と感じます。というのも、以前はブランドとかコスメとか、物質的な満足がマストだったけれども、今は異国のカフェでくつろぐ時間とか、素敵なショップで流れていた見知らぬ音楽とか、タクシーのおじちゃんとの会話とか、そういうものが大切になってきた。それが積み重なっていけばいくほど、自分の中のページが増えていく。そんな気がするのです。

さて、今回ご紹介するのは「モーターサイクル・ダイアリーズ」。昨年10月に公開されロングランヒットしていたにもかかわらず、実は私、見逃していた(情けない・・・)。5月27日にリリースされたDVDをゲットし、やっと見ることができました。キューバの革命家、チェ・ゲバラ。本名、エルネスト・ゲバラがベネズエラの医大生だった頃、年上の友人アルベルトと共に、古びたバイクで南米を放浪する。お金も泊まるところもない。ただ、未知なる世界を旅するという好奇心と若さが、彼らの心を突き動かす。そしてこの旅が、二人の人生に大きな影響を及ぼしてく・・・。

エルネストとアルベルトがバイクに乗って、大自然の真ん中を颯爽と走る姿は本当に美しい。寒々とした雪のアンデス山脈や、途中に立ち寄るマチュピチュ、そして灼熱のアタカマ砂漠など、本当に映像がきれいです。クレジットを見たら、製作総指揮にロバート・レッドフォードの名前が。なるほど、納得・・・。後半からはエルネストが出会った貧しく苦しい人々姿が、時々、白黒で映し出されるのですが、まるで何かの写真集のような感じで、とても印象深かった。それと共に、エルネストの精神や考えが少しずつ変化していくのがわかるんですよね。ハンセン病患者や医師たちとの触れ合いにも、心打たれました。エルネスト役のガエル・ガルシア・ベルナルも素敵。彼の主演作で一番好きかも。笑顔はアイルトン・セナに似ていると思ったんですが、どうでしょう?相棒を演じたアルベルト役のロドリゴ・デラ・セルナも良い味出しています。

旅によって自分の中の何かが変わる。この映画を見ながら、ふと、99年にNYを旅したことを思い出しました。空港に向かうタクシーの運転手は、韓国からアメリカに渡って来た50代のおじさん。なにげなく始まった会話が、私の凝り固まったアイデンティティを解きほぐしてくれたこと…。

旅をする時は、心のドアをいつもよりちょっと大きく開けてみてください。

| 16:55 | カテゴリー:映画
2005年06月02日
「最後の恋のはじめ方」★★★☆☆

さわやかな季節になると、素敵なロマンティック・コメディが見たくなる。出来れば舞台はNYあたりがいい。俳優は男も女もおしゃれ、かつフレンドリー。お笑いも、ときめきもあって、音楽もCOOLだと言うことなし。まぁ、いわゆるデートムービーってやつですけど、最近、この手の映画で良質な作品がちょっと少なかったような・・・。そうお嘆きの人にお勧めしたいのが「最後の恋のはじめ方」です。

デート・コンサルタントとして活躍する主人公ヒッチ(ウィル・スミス)。恋愛下手の男性達が、憧れの女性とデートにこぎつけるよう、独自の基本ルールで彼らの幸せを導いてきた。そんな彼の新たなクライアントは会計士のアルバート。ちょっと(というか、だいぶ)太目のアルバートの憧れは、彼が担当しているコール財団のセレブ、アレグラ。ヒッチはアルバートに恋のノウハウを指南していく。そんな中、ヒッチはゴシップ女性記者サラ(エヴァ・メンデス)と出会う。しかし、彼お得意のスイートな演出は、どういうわけかサラには効かなくて・・・。

この映画、主役にウィル・スミスを起用したことが勝因の一つ。決して美男子ではないけど、どんなスタイルもCOOLにこなし、どこか知的な雰囲気も漂う。それでもって嫌味が全くないので、女性にも男性にも受けるという貴重な存在。コメディもヒューマンもSFもヒーローも恋愛も、みーんなこなせる黒人俳優って、やっぱり彼くらいでしょう。といっても、実はこの映画が、彼にとって初めてのロマンティック・コメディらしいです。意外だったなぁ・・・。ヒッチがサラにアプローチするシーンがニクイ。こんな風に言われてみたわぁ、と思ってしまった。あと、ヒッチがアルバートにダンスレッスンをするシーンは大爆笑でしたね。ウィル・スミスの相手役、エヴァ・メンデスも良いです。ナイスバディですっごいセクシーなのに、サバサバした雰囲気で女性が見てもかわいい。エディター風ファッションも素敵でした。個人的にはアンバー・バレッタがアレグロ役で登場するのがうれしかった。スーパーモデル全盛時代、お気に入りモデルの一人だったんですよね。シャネルなど有名ブランドの着こなしは、さすがです。

デート・コンサルタントという職業のアイデアが面白く、「how to本をそのまま実践するなんて、芸がなさ過ぎる」なんて言ってても、やっぱりそういう出会いや演出を求めている女性の心情をしっかり掴んでいるのがうまい。男性はこの映画を見て、その辺の女心を勉強してみては?但し、アプローチはスマートにお願いします。恋愛指南しているときの、ウィル・スミスの様に・・・ね。

| 12:45 | カテゴリー:映画
2005年05月26日
「ミリオンダラー・ベイビー」★★★★☆

クリント・イーストウッドはすごい監督だと思う。74歳にして、どんどん研ぎ澄まされて行くこの感じは何だろう。過去の栄光から逃れられないような、巨額の制作費をかけた大作を作り続ける監督が多い中、イーストウッドの作品の語り口はどんどんシンプルになっていく。無駄のない演出、確かな演技者。そしてイーストウッドは、人間の真の姿を写し出す。善人がいれば、悪人もいる。成功があれば、堕落がある。そんな人々の姿を、多くを語らずに見せるのです。


ボクシング・ジムを経営するトレーナー、フランキー(クリント・イーストウッド)の元に、31歳の女性マギー(ヒラリー・スワンク)がやってくる。13歳で家を出て、ウェイトレスの仕事をしながら生きている彼女が唯一できる事がボクシング。トレーナーになって欲しいというマギーの申し出を、女であり、しかも若くないという理由で拒み続けるフランキー。そんなマギーを見守ってきた雑用係のスクラップ(モーガン・フリーマン)がマギーをジムに迎え入れたことから、彼女のボクシングに賭ける情熱にほだされ、フランキーはトレーナーになることを受け入れる。フランキーの教えを守り、力をつけていくマギーは次々と試合に勝っていくのだが、頂点に手を伸ばした時、二人の運命は思いも寄らぬ方向へと向かっていく・・・。

映画を見終わったとき、切なすぎて誰もが言葉を失うことでしょう。やっとの思いで幸せを掴みかけたのに、どうしてこんな悲劇が起きるのかと。でも、その辛い状況の中で、私達はフランキーとマギーが、家族よりも大切な絆で結ばれていることに気付かされるのです。孤独を抱えていた二人が、短い間だったとしても幸せだったと言うことを…。そして、最後には人間の尊厳を考えさせられると同時に、果たして、私はフランキーのように行動することが出来るだろうか…と、悩んでしまいました。「人間の尊厳」という部分は、先日見た「海を飛ぶ夢」に通じるものがあって、実は、映画を見たとき、涙を流すことはなかったんです。でも、あれから一週間が過ぎても、「ミリオンダラー・ベイビー」の余韻が、ずっと胸に残ったまま。淡々とした語り口が、心に深く刻まれているようです。

できれば映画のことについて、あまり情報を得ないで見たほうがいいと思う映画です。クリント・イーストウッド、モーガン・フリーマン、ヒラリー・スワンクの演技はもちろん、脇役も素晴らしい。今年のアカデミー賞主要4部門を制覇した作品ですもの・・・。

| 15:37 | カテゴリー:映画
2005年05月19日
「クローサー」★★★☆☆


クローサー」を見た時、結局、私も「純愛ボケ」していたんだなぁと思った。「純愛」というジャンルを特に好んでいたわけではないけれど、知らぬ間に巷の純愛ブームにやられていたんだなぁ・・・と。恋愛は甘美なものばかりじゃないのよ、と頬をパシッとやられた感じ。この映画、自分の体験によって見方が変わると思います。「クローサー」がリアルな恋愛映画かどうか。自分で体験しなくても、知人がこんな体験をしてたことを聞いたことがある、でもいいでしょう。付き合いの浅い、ラブラブ〜でフレッシュな恋人同士で見るのはお勧めしません。できれば一人、もしくは女友達と一緒に。男性の場合は・・・うーん、どうかな。「男は汚い・・・」なんてセリフが出てきますしねぇ(笑)。

舞台はロンドン。ダミアン・ライスの「ブローワーズ・ドーター」の曲と共に映し出される雑踏の中、一組の男女が出会う。男は小説家希望のジャーナリスト、ダン(ジュード・ロウ)。女はニューヨークからやってきたストリッパー、アリス(ナタリー・ポートマン)。車にぶつかったアリスをダンが介抱したことがきっかけで、二人は恋に落ちる。それから1年半後・・・。アリスをモデルにした小説を出版することになったダンは、フォトグラファー、アンナ(ジュリア・ロバーツ)に写真を撮ってもらうのだが、アンナに一目ぼれ。強引にアンナを口説こうとする。アンナもダンに惹かれるのだが、アリスと同棲していることを知り、彼の思いを拒む。その後、ダンによるいたずらによって、医師ラリー(クライブ・オーウェン)と出会うアンナ。二組のカップルはアンナの写真展で顔をあわせることになるのだが・・・。

例えば、恋人がいながら他の人を好きになってしまった場合。人は時として身勝手ないいわけを、正論のように言い放つ。良く考えれば矛盾だらけなんだけれど、当人にはそれが最善の方法にしか思えない。でも、結局のところ、相手を思いやるという気持ちの裏には、自分が一番かわいいという思いがあって、それが理不尽な答えを導き出すのだと思うのですよ、私は。この映画「クローサー」は、時に残酷な恋愛というもの、じっくり見せてくれます。舞台劇の映画化ということで、ヒリヒリするようなセリフの応酬は凄い。赤裸々な言葉が飛び交います。ロマンティックのかけらもありません。そして、主人公4人の関係がねじれていく様を見ながら、愛にすがるそれぞれの姿に胸を痛めるのです・・・。

個人的な意見を言わせてもらうと、最悪なのがダン、強いなぁと思うのがアリス。安全な道を選ぼうとするアンナを、ずるいと思いながらもちょっと同情し、ダンに「男の戦い」をしかけるラリーは子供だな、と思いました。でも、みんな自分なりに必死なんですよね・・・。

オープニングとエンディングの映像と音楽がとっても印象に残り、ダミアン・ライスのアルバムを買いたくなるはずの「クローサー」。見終わったら、誰かと語り合うのもいいでしょう。


| 16:46 | カテゴリー:映画
2005年05月12日
「ライフ・アクアティック」★★★☆☆


ウェス・アンダーソン監督の新作「ライフ・アクアティック」を見に、恵比寿ガーデンシネマに出掛けた。この劇場に来るのは本当に久しぶり。この劇場の好きなところは、疲れない椅子とお洒落なパンフレット。今回も、劇中に登場する“クレヨン タツノオトシゴ”が表紙になった絵本のようなパンフレットを、上映前に購入する。実はこの映画には、ファンタジックな架空の海の生物が沢山出てくる。女の子だったらきっと欲しがる“キャンディガニ”とか、ビリンブリンなギャルにぴったりの“アオ ヒレ ラインストーン マグロ”とか、食用には向かないと思う“ペイズリー タコ”とか・・・。狙ったわけではないけど、今週のe−voteのテーマ「水族館の人気者」と繋がっていた。

で、この映画の主人公、海洋探検家にしてドキュメンタリー映画監督、スティーブ・ズィスー(ビル・マーレイ)が追い続けているのが“ジャガーザメ”。スティーブ率いる映画制作集団「チーム・ズィスー」の長老で彼の右腕だったエステバンが探検中、“ジャガーザメ”に食われてしまったからである。その様子を収めたドキュメンタリーが映画祭で上映されるが、肝心のサメが映ってないことで観客は半信半疑。しかも9年間ヒット作がなく、続編を撮りたいのに制作費もままならない。それでも、“ジャガーザメ”への復讐を誓うズィスー。チームの影のリーダーで妻のエレノア(アンジェリカ・ヒューストン)は、愛想を尽かし、夫婦生活も冷め切っていた。そんなズィスーの前に、突然、昔の恋人の息子だと名乗る青年ネッド(オーウェン・ウィルソン)が現れる。「母は死んだ」という告白と、本当に息子かも知れないという事実に動揺したズィスーだったが、ネッドを新しいメンバーに引き入れ、航海を再開する。航海には妊娠中(未婚)の雑誌記者ジェーン(ケイト・ブランシェット)も同行することになるのだが、様々なトラブルがチーム・ズィスーを待ち受けるているのであった・・・。

前作の「ロイヤル・テネンバウムス」同様、今回も登場人物がいっぱいです。しかも皆、どこか変な人たち。メンバー全員、Zのロゴが入ったブルーの半袖シャツを、男子は真っ赤なニット帽も着用。潜水服だって皆、同じデザイン。ちゃんとチームな感じがする。だけど、この統一された感じが、彼らのヘンテコ振りに輪をかける。しかも彼らが撮ってる探検映画は、日本の「川口探検隊シリーズ」みたい。船内のシーンで必ずブレーカーが落ちたりと、お約束がたくさんあるのはドリフターズのようでもあって、どこか、笑える・・・。イタリアのチネチッタ撮影所に立てられたチームの船“ベラフォンテ号”の断面セットは見もの。レトロな船内は、まるでアリの巣のようになっていて、俳優達はあちこちを同時に歩いているから見ていて楽しい。インテリア、ステーショナリーズ、デザイン、ロゴマーク。すべてにおいてセンスが良い。細かいところまで手抜きなし。なのに、どこか可笑しいんです。でも、「ライフ・アクアティック」は、ただのコメディ映画ではありません。クスクスっという笑いの中に、全てがうまくいかなくなってきたという焦りや、栄光のために今まで失ったものに気づく、主人公ズィスーの人生の航海も描かれているのです。主人公を演じたのがビル・マーレイというのも重要。彼だから、この映画はあり得たと思う。

「チーム・ズィスー」のメンバー、ペレが随所で弾き語るデヴィッド・ボウイのナンバー(しかも、ポルトガル語で!)のように、なぜか癖になる、そんな映画です。

| 16:39 | カテゴリー:映画
2005年05月05日
「ターミナル DVD編」★★★★★


先日リリースされた「ターミナル」の特典映像付きDVDを見る。以前、みんシネマで紹介したことがあるけど(星5つ!)、やっぱりいいね、この映画は。スピルバーグ監督が「空港」を舞台に描く物語。何度見ても、心が温まる。東ヨーロッパの架空の国クラコウジアから来たビクター・ナボルスキーを演じるトム・ハンクスの演技は、いまさら言うのもなんだけど本当にうまい。でも、DVDについていた特典映像で、ハンクスのアドリブがキャラクターを生き生きさせていることを見て、その想いは尊敬に変わりました。こういうところで、彼がコメディアン出身だということを気付かせられるのです。彼が大切にしている古いピーナッツの缶につまった宝物(まだ映画を見ていない人の為に、隠しておきましょう)については、音楽を担当したジョン・ウィリアムスのお話を参考にしてください。指揮をとるジョン・ウィリアムスは見た事があるけど、話している姿はレアなのでは?ジャズを選ぶなんて、ニクい演出ですよね。男性陣が喜びそうなキャサリン・ゼタ・ジョーンズのインタビューもあります。撮影現場で撮ったインタビューなんだけど、びっくりするのが、これでもかってくらいの照明とソフトフォーカスな映像。そうとう注文をつけたのかしら?なんて、ちょこっと意地悪な詮索をしてしまいました(笑)。ほんと、綺麗なんだけどね。そして注目は実際に作ってしまった空港のセット。企画段階から完成までを追っていて、いやぁ、ハリウッドって凄いよねの一言に尽きる。リアルなセットを見て、口が開きっぱなしいのトム・ハンクスがかわいい。成田空港や関西空港もモデルとして取り入れているそうなので、じっくり見ると面白いかもしれません。

GWはヴァケーションの人達でごった返したであろう「空港」という場所を舞台に繰り広げられる、素敵なストーリー。ぜひ1度、ご覧ください。

| 16:34 | カテゴリー:映画
2005年05月04日
「海を飛ぶ夢」★★★★☆

G・W中、私の休みは2日。その内の一日は、映画を見に行くことに決めました。まずは以前から見たいと思っていた「海を飛ぶ夢」。今年のアカデミー賞外国語映画賞を受賞した作品です。監督は「アザーズ」のアレハンドロ・アメナバールで、テーマは「尊厳死」。25歳の時に起こった海での事故によって、首から下が不随となってしまった男、ラモン・サンペドロと、彼を見守る人々を描いた、実話をベースにしたストーリー。ニュースなどで度々「尊厳死」という言葉を見聞きするものの、どこか、身近な問題のように感じられなかった。でも、この映画を見て、色々と考えさせられました・・・。特にこの映画が素晴らしいのは、「死」を願うラモンの視点だけでなく、彼を取り巻く人々の視点が一つ一つ丁寧に描かれていること。実在したラモンは体が動けなくても、決してユーモアを忘れないとても魅力的な男性。だからこそ、周りの人々は彼が望む「死」を、簡単に受け止められない。もし、自分だったらどうするのだろう。そんなことを考えさせてくれる作品です。そして主人公ラモンを演じたハビエル・バルデムの演技の素晴らしいこと!ベッドに寝たきり、しかも動くのは顔だけという状態で、ラモンという人物をなんとも魅力的に演じています。作品に登場する二人の女性が、彼に惹かれてしまうのもよくわかる。歩くことができないラモンが、イマジネーションを膨らませて部屋の窓から大好きな海辺へと飛んでいく映像は、思わず涙がこぼれました。

| 02:22 | カテゴリー:映画
2005年04月21日
「甘い人生」★★★★☆
日本の韓流好きが大注目している、韓国映画「甘い人生」。多くの女性たちはイ・ビョンホンに魅せられているわけだけど、正直に言うと、私がこの映画に惹かれる理由は、キム・ジウン監督作だから。「クワイエットファミリー」でブラックな笑い、「反則王」でプロレスを題材にした傑作コメディ、そしてハリウッドでリメイクが決定している「箪笥」では新感覚ホラー・・・。毎回、全く違うジャンルに挑みながら、クオリティの高い作品を作り続けている、私のお気に入りの監督です。以前、「箪笥」のPRで来日した時に、インタビューをしたんですが、次回作はノワール映画になると聞いて、ずっと楽しみにしていました。その時は、イ・ビョンホンが主演だとは、思いもよりませんでしたが…。

7年かけて、ホテルの総マネージャーにまで上り詰めた男、ソヌ(イ・ビョンホン)。冷酷で頭の切れるソヌは、ホテルの社長であり、裏社会でも絶大な力を持つボス、カン氏(キム・ヨンチョル)の信頼と寵愛を受ける存在である。ある日、ソヌはボスから、自分には若い愛人ヒス(シン・ミナ)がいることを打ち明けられる。そして、ヒスに他の男がいるか監視し、もし、裏切っているようならば始末するか、連絡をするよう命じるのであった。数日間の監視のあと、ヒスが他の男と密会する現場を押さえたソヌ。しかし、彼がそこでとった行動は、ボスの命令とは違っていた。自分なりに正しいと思い、下した決断。それが、ボスの逆鱗に触れ、かつての仲間、そして対立する勢力を巻き込んでの抗争へと発展していく・・・。

愛をしらない男ソヌの、ほんの一瞬の「心の揺らぎ」によって、完璧だった人生が崩れていく様は壮絶。映画の後半は、思わず目を背けたくなるシーンもいくつかあります。映画から滲み出るイ・ビョンホンの「本気」。黒いスーツを身にまとった颯爽とした姿からも、生き埋めになりながらどうにか地上に這い上がる姿からも、この映画にかける彼の思いが伝わってきます。そして、「これはイ・ビョンホンによる、イ・ビョンホンのための、イ・ビョンホンの映画だ」と言い切ったキム・ジウン監督は、相変わらず緻密な演出で、クールな映像を作り上げます。とかく、「いい男みたさの女性向け映画」ととらえられているようですが、実はこの映画、男性向けの映画だと思う。なぜなら、ハードなアクション、リアリティを出すために使われた本物の銃など、男性を意識したものだから。特に、ボスの愛人ヒスのシーンは、髪を耳にかける仕草や、美味しそうに食事をする姿など、完全に男目線。素朴そうな若い娘がボスの愛人だということも、妙に説得力があるし・・・。そして、イ・ビョンホンの脇を固める共演陣。皆さん、演技がうまいというのはもちろんなのだけど、キャラクターそれぞれに味があって、完璧。これが映画初出演という神話のメンバー、エリックもいいですぞ。

殆ど笑わないソヌが、たった一度見せる笑顔。いつもの「キラースマイル」が、とても切ない・・・。

| 15:23 | カテゴリー:映画
2005年04月20日
インファナル・アフェアIII★★★★☆
ここ数年、元気のなかった香港映画の中で、底力を見せつけた「インファナル・アフェア」シリーズが、遂に完結です!潜入捜査官ヤンと、警察に潜入したマフィア、ラウを描いたI。続くIIは、若かりし頃のヤンとラウ、そしてマフィアの大ボスへと成り上がっていったサムやウォン警部を描いた群像劇。そして今回の3は、ヤンの死後、警部として生きていく決心したラウのその後を描きながら、IとIIで残った謎を解き明かしていく・・・。

現在と過去を行き来しながら、ストーリーが進んでいくため、この作品を見る前にもう一度、IとIIを復習しておくことは必須。それでなくてもヤンとかシェンとかウォンとかクォンとか、名前が混乱しがちなのでね(笑)。映画のトーンをそのままに、IとIIのストーリーの「謎」という穴を埋めながら、ここまで重みのあるストーリーに仕上げた監督&製作陣の手腕に拍手。そして、ヤン(トニー・レオン)の死後、心の拠り所をなくしてしまったラウ(アンディ・ラウ)の最後に涙・・・。アンディ・ラウの熱演が光ります。潜入捜査を続ける中で自分を見失っていった?Tとは違い、少しでも幸せだった瞬間はあったのだと思わせる、トニー・レオンの笑顔も、胸を打つ。しかし・・・。残念なのは、ヤンの精神科医、リーを演じたケリー・チャン。登場するのは殆ど男性という中で、際立つ美しさは良いのだが、やはり、あれだけの演技派俳優達の中では、彼女の演技が弱すぎる。出演は?Tのくらいの分量が、ちょうど良いのかも。

完結するIIIを見終わった後で、またIから見直したいと思わせる「インファナル・アフェア」シリーズ。紛れもなく、21世紀を代表する香港映画である。

ちなみに、ハリウッドでリメイクが決定しているのですが、出演陣はレオナルド・ディカプリオ(トニー・レオン役?)、マット・デイモン(アンディ・ラウ役?)、ジャック・ニコルソン(マフィアのボス、サム役?)と超豪華。そして監督は、マーティン・スコセッシ!うーん、またもオスカーを逃しそう!?

| 04:33 | カテゴリー:映画
2005年04月14日
「愛の神、エロス」★★★☆☆
私たちの回りには「エロス」という言葉が溢れている。例えば電車に乗っている時、何気なく見る中吊り。「エロス」という言葉をよく目にするけど、うーん、あれは本当に「エロス」なのだろうか。もちろん、ヌードがエロスというカテゴリーにあるのは確かだけど、本来の意味はもっと深いはず。「エロス」という言葉が、安易に使われているような気がしてならないのは、私だけでしょうか?

そんなことを考える私のような人におすすめしたいのが「愛の神、エロス」。カンヌを制した3人の巨匠がそれぞれの視点で「エロス」をテーマに描いたオムニバス映画です。ロバート・ダウニー・Jr演じる男を悩ますエロティックな夢の謎を、スタイリッシュなモノクロ映像で描いたスティーブン・ソダーバーグ監督の「ペンローズの悩み」。エロスをキーワードに、人間の深層心理をユーモラスに描いた、なかなかユニークな作品です。そして、このプロジェクトの発起人で、現在92歳のミケランジェロ・アントニオーニ監督の「危険な道筋」。紀元前8世紀の「神統記」に記されたエロスをアーティスティックに捉え、エロスに宿る自然、そして自然と人の関係を描いています(私には、ちょっと難しかったかな…)。そしてアジア特有の「秘められたエロティシズム」を描いたのは、ウォン・カーウァイ監督の「若き仕立て屋の恋」。3作品の内、一つを選ぶとしたら・・・やっぱりこれが一番でしょうか。

「愛の神、エロス」のオ―プニングを飾る「若き仕立て屋の恋」の舞台は、「花様年華」「2046」などでお馴染みの1960年代の香港。インテリア、音楽、衣装、そこに流れる空気まで、これぞカーウァイ作品という感じです。たった1度の手の触れ合いによって、高級娼婦への一途な愛を見出す、若き仕立て屋の切ないラブストーリー。主人公の仕立て屋チャンを演じるのは、「2046」にも出演したチャン・チェン。そして、高級娼婦ホアを演じるのはコン・リー。冒頭、家にやってきたチャンの太ももを手で愛撫し、「女の身体を知らずに、どうやって仕立て屋になれるの?」と言い放つ、傲慢な感じがよく似合う。「2046」よりも魅力的だと思います。原題は「THE HAND」となっていて、はエロティシズムを感じさせるパーツの1つであることに気づく。よく、「男性にあった時、まず手を見る」という女性がいるけど、理由はそういうことなんだろうなぁ。この作品では、一人前になったチャンが、電話口で愛人と話し続けるホアの採寸をする繊細な手の動きが印象的。そこには、手にした針で愛しい人の身体を傷つけない様に、という思いもこめられているようで、愛おしさとエロティシズムを、同時に感じる瞬間である。やっぱり私は、このウォン・カーウァイが描く「秘めごと」が好きなようです。

ところで、この3作品の合間に流れる曲があります。ブラジルのアーティスト、カエターノ・ヴェローゾが巨匠ミケランジェロ・アントニオーニに捧げた曲、その名も「ミケランジェロ・アントニオーニ」。そしてその曲をBGMにスクリーンを彩るのはイタリアの画家、ロレンツォ・マットッティの絵。この2つがそれぞれの作品を繋げ、「愛の神、エロス」を引き立てます。

様々な形のエロティシズムを堪能したい方は、ぜひ。

| 16:22 | カテゴリー:映画
2005年04月07日
コーヒー&シガレッツ★★★★☆
コーヒー&シガレッツ
私は大のコーヒー好き。一日、必ず一杯は飲んでいる。例えばスタバに行った時。たまには別のものを・・・と思っていても、気づけば「今日のコーヒー、ショートで」と言っている。たまには紅茶でも飲もうかな、と入ったカフェで思わず「コーヒー」と言ってしまう。ちなみに小学6年から、コーヒーはブラック党である。

今回、紹介するのは「コーヒー&シガレッツ」。ジム・ジャームッシュが1986年から、18年かけて撮りためたコーヒーと煙草をモチーフとした11本の短編映画をまとめた作品である。思い起こせば、ジャームッシュの初期の作品「ストレンジャー・ザン・パラダイス」「ダウン・バイ・ロー」「ミステリー・トレイン」など、煙草を吸うシーンが印象的なものが多い。私は煙草を吸わないのだが、煙草を吸う仕草、くゆらす煙を映画で見るのが好きである。そしてコーヒー。コーヒーを飲むシーンが出ない映画はないと言っても過言ではない、と思う。さりげなく登場する時も、話のきっかけになることもある。

この作品ではそんなコーヒーと煙草が、各エピソードに登場する。たわいもない会話に登場するコーヒーは、美味しそうなものも、まずそうなものもある。そして煙草は、美味しく吸うのも、身体に悪いといやみを言われながら吸うものもある。でも、重要なのは、それらが会話の潤滑油の役割をしていることである。

イギー・ポップトム・ウェイツの出口の見えない会話の可笑しさ。イタリア訛りの英語で喋るロベルト・ベリーニ。短編ながら、さすがの演技力をケイト・ブランシェットに、最後のオチがニヤッとさせる、アルフレッド・モリーナスティーブ・クーガンのエピソード。ジャームッシュ作品ならではの個性的な面々による11のエピソードは、一人で、もしくは友人とコーヒー飲み、煙草を吸う時のように、ふっと力の抜けたものばかりである。そこに流れる音楽のセンスもグッド。撮影監督によって、明らかに撮り方が違うので、映画通の人はその辺りをチェックするのも良し。

劇場内では煙草は吸えないから、お気に入りのコーヒーを片手に、ゆったりとした気分で見てほしい作品である。そして映画を見終わったら、外で一服・・・で、どうでしょう。

| 16:05 | カテゴリー:映画
2005年03月31日
映画「ナショナル・トレジャー」★★★☆☆(ニコラスの増毛疑惑・・・)
ニコラス・ケイジの髪が…
基本的に、「宝探し」ものが好きな私です。「グーニーズ」や「インディ・ジョーンズ」シリーズなど、何度も見返すくらい好きな作品が、結構ある。そんなわけで、初めて「ナショナル・トレジャー」の予告を見た時は、ワクワクした。でも、2回目に見た時は「ダ・ヴィンチ・コードのパクリか?」と、ちょっと思った。見てみたら、フリーメイソンやらテンプル騎士団やら、共通のキーワードが登場する。でも、この映画の場合、そのキーワードについて、そんなに詳しくなくても、ついていけます。楽しめます。だってブラッカイマー印の映画だもの。映画に乗ってしまえば、あとはスピード感のあるアトラクションの如く。

何世代にもわたって秘宝の謎を追い続けてきたゲイツ家の末裔、天才歴史学者にして冒険家のベン・ゲイツ(ニコラス・ケイジ)が、秘宝へと導く手がかりを発見。それはなんと、「アメリカ合衆国独立宣言書」に隠されていた!秘宝の正体は?そこに隠された真実とは?巨大な敵、そしてFBIに追われながら、命をかけたトレジャー・ハントが始まる。

謎が解けるのが少々早すぎはしないか?という疑問が、時々、頭をよぎるものの、そのスピード感で最後まで一気に見せてくれるのはさすがです。1ドル札に描かれた「未完成のピラミッドと万物を見通す目」など、身近なアイテム(といっても、日本人には身近かどうか・・・)を、謎解きの一つに使って興味を惹きつけるあたりもうまいです。それに「トロイ」ではイマイチだったけど、この映画ではしっかり美しさをアピールしたダイアン・クルーガーや、「ロード・オブ・ザ・リング」のボロミア役でおなじみのショーン・ビーンの悪役も魅力的。しかし・・・

この映画を見て、私には「3つの謎」が生まれてしまった。その1「ニコラス・ケイジの増毛疑惑」。明らかに増えてる。絶対、増えてる。まちがいなく、増えてる・・・と、思う。その2「ニコラス・ケイジの父親役、ジョン・ボイトのリフトアップ疑惑」。66歳であの肌のハリは、どこか不自然。娘のアンジェリーナより、ピンとしているんじゃないかしらん?その3「FBI捜査官役、ハーヴェイ・カイテルの目バリ疑惑」。なんかねぇ、目の辺りが不自然、アンダーラインがすっごく濃くて。どこか修正したのかな?・・・と。いや、私、ハーヴェイ・カイテル好きなんで、久々に見てギョッとしたんですよね。

誰か、私の「3つの謎」を解き明かしてください。

| 17:05 | カテゴリー:映画
2005年03月18日
映画「オオカミの誘惑」★★★★☆
いよいよ、3月19日から公開される韓国映画「オオカミの誘惑」。先日、ブログでも書きましたが、私が、主演の2人、チョ・ハンソンとイ・チョンアの舞台挨拶付き試写会の司会をやった、あの映画です。 すっかりオオカミ・ラヴァ―の私、3月11日付け読売新聞の夕刊には、私のコメントも載っちゃいまして、ちょっとうれしい・・・。ということで、今週は「オオカミの誘惑」をご紹介しましょう。




まずは、次の問いにお答えください。
(1)トキメキってどんなものだったか、忘れてしまった。
(2)「キャンディ・キャンディ」ではアンソニー、またはテリーがお気に入りだった。
(3)「なかよし」「りぼん」「別冊マーガレット」など、少女漫画を読んでいた。
(4)竹内まりやの曲「けんかをやめて」が好きだ。
(4)自分のちょっぴりドジなところが、案外、好きだったりする。

さて、その結果は・・・?

以上の質問でYESが1つでもあれば、この映画にハマれること、間違いない(といっても…質問は全て女性向けですね)。つまり、はっきり言うと、「オオカミの誘惑」は圧倒的に女子向け映画なのです!

家の事情で、田舎からソウルへ出て来た女子高生ハンギョン。美人でもおしゃれでもない平凡な彼女が、二人のイケメンに愛されてしまいます。一人は同じ高校のリーダーで男気あふれるへウォン、もう一人は隣りの高校のカリスマ的存在、テソン。へウォンは、自分にまったく媚びない素朴な彼女にどんどん惹かれ、人懐っこいへウォンはハンギョンをお姉さんと呼び甘えてくる。二人の男子の間で揺れ動くハンギョン。しかし、彼らの間には隠された秘密があった…。

もう、オープニングからトキメキ指数100。へウォンとテソンのカッコいいケンカのシーンから、ハンギョンがへウォン、テソンそれぞれと出会うシークェンス。少女漫画の王道、女子はもう完璧にハートを鷲掴みにされます。そこからは映画に身を任せるのみ。ハンギョンとへウォンのキスシーンに、テソンの涙ながらの告白。少女漫画の絵空事に憧れていた、あの頃の自分に戻れるはず。もし「なんでこんな娘がもてるわけ?」と言うならば、あなたの気持ちは、劇中に登場する意地悪な女子が代弁してくれます。といっても、ハンギョンを陥れようとする姿に、いつしかイラつくはずですが…。ちなみにこのトキメキ指数、後半になると、号泣指数に変わりますからご注意を。「冬ソナ」顔負けのドラマティックな展開が、あなたを待ち受けています。

そんな「オオカミの誘惑」を面白くしているのが、絶妙なキャスティング。へウォン役のチョ・ハンソンとテソン役のカン・ドンウォン。どっちが好みかなんて、決められないくらい魅力的。そして、二人に好かれるという羨ましい設定のヒロイン、ハンギョン役のイ・チョンアがいい。「いかにも韓国女優」的じゃない風貌と、時におとぼけなナチュラルな演技は注目すべき。中には「美人じゃない」なんていう人もいるらしいけど、彼女だから私たちは感情移入できるわけですよ。ちなみに試写の後、舞台に登場した彼女を見て、会場からは「かわいい〜」の歓声が上がっていました。もう、肌なんてピチピチ、スベスベですもん。

ということで、ちょっと現実逃避してみたい時、この映画はお勧めです。

| 02:30 | カテゴリー:映画
2005年03月11日
映画「エターナル・サンシャイン」★★★★★(もっとあげたい!)
エターナル・サンシャインの缶バッヂを付けてお仕事中です
先日、映画「エターナル・サンシャイン」の話で友人と盛り上がった。まだ2005年は3ヶ月しか過ぎていないけど、私の今年のベストムービーの一つになることは間違いない作品。もし、アメリカでの公開時期が年末だったら、先日、行われたアカデミー賞をもっと賑わせていたはずだと思う。個人的には、この映画を理解できない人は、恋人にしたくない、と思ったりする…。それくらい「エターネル・サンシャイン」を溺愛していて、誰かとこの映画の良さを語り合いたいと思っていたら・・・やっと、その時が来た!

奇想天外ながら、人の心や行動をうまく捕らえたチャーリー・カウフマンの素晴らしい脚本、それをびっくりするほどのイマジネーションで映像化したミッシェル・ゴンドリー。そして素晴らしい演技で失恋の痛みを体現したジム・キャリー&ケイト・ウィンスレットや脇役のイライジャ・ウッド、キルステン・ダンストなどなど。無駄のないパーフェクトな映画だよね〜、あのシーンがさぁ、最後のセリフがさぁ、などと話していくうちに、こいつは私のベスト・フレンドだぁ、と心でつぶやいていた。

「エターナルサンシャイン」の素晴らしいところは、まず、奇抜な発想にある。
バレンタインデー間近のある日、ジョエル(ジム・キャリー)の元に「クレメンタインはあなたとの記憶を抹消したので、今後、彼女の過去について触れないように…」という手紙が届く。ジョエルの元彼女、クレメンタイン(ケイト・ウィンスレット)は、失恋の痛みを消してしまおうと、記憶除去を専門とするラクーナ医院で、自分との記憶を消してしまったのだった。ショックを受けたジョエルは、自分もラクーナ医院へ行き、クレメンタインとの思い出を消そうと決心する。しかし…。現在から過去へと、二人の日々を追体験していくうちに、頭の中の自分が疑問を抱く。忘れたいこともあるけど、こんな幸せだったことまで消していいのか?かくして頭の中のジョエルは、記憶を消されないために、自分の記憶の中のクレメンタインを、どこかへ隠してしまおうと奔走する…。

怪しい機械によって、記憶が消されて行く様を、ミッシェルゴンドリーは、ファンタジックな映像でみせてくれる。忘れられない美しいシーンがいっぱい。そして、胸に迫るセリフがいっぱい。途中で展開される医師たちのサイドストーリーも良いスパイスになっていて、思い出は共有されるもので、一人が消したところで、どうしようもないことを教えてくれる。それを、自分のいいように利用しようという輩もいたりする。

でも、ジョエルとクレメンタインの最後のセリフを聞いて思った。記憶を消したって、ときめきは完全に忘れることが出来ないのですよ。こんなに辛いのなら出会わなきゃよかったと思っても、きっと違う形で惹かれるはず。つまり運命。私も失恋して辛い思いをする度に、その事実を抹消したいと思うけど、全ては大切な自分の一部。それが増えることで、人は成長していくのかな…。

とにかく、絶対見て欲しい映画です。あ〜あ、また見たくなってきたよ〜。

| 09:04 | カテゴリー:映画
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