J-WAVE SELECTION SMBC EARTH TALK

私たちと地球の未来に向けてのビジョンを語る 今月のラインナップ

2017/1/8 ゲスト 出雲充(ユーグレナ代表取締役)

『ミドリムシは「世界から栄養失調をなくす」!?』
出雲 充氏×竹村真一氏

第一部『地球の具合が悪くなればなるほど、ミドリムシの出番だなと思っています〜栄養素の宝庫ユーグレナ〜』

竹村
今回のゲストはユーグレナ代表取締役の出雲充さんです。ユーグレナと言えば理想的な食品、サプリメントとして利用されている方も多いと思います。
出雲さんの言葉を借りるとユーグレナは「栄養素の宝庫」です。ビタミン、アミノ酸、ミネラル、さらに注目の不飽和脂肪酸など、人間が必要とする栄養素、生活習慣病を予防する、そうした要素がたくさん含まれています。 それどころか最近ではバスやトラック、そしてジェット機までユーグレナから絞ったオイルで動かそうと、石油に代わる燃料としても期待されているわけです。小さな微生物ユーグレナは光合成によって有機物をつくりますが、これを、CO2を吸収しながら行いますからカーボンニュートラルだとも考えられています。
ポスト石油時代の理想的なエネルギーとして、そして食料問題を解決する地球的なプロジェクトとして、今後どのように展開していくかお聴きしていきたいと思います。
 そもそも「ミドリムシ」とは何なのか。有名な単語になりつつありますし、実際に多くの方が恩恵を受けていらっしゃいますが、「ユーグレナ」という単語と共に、よくわかっていない方も多いと思いますので、そこからお願いできますか。
出雲
ユーグレナはミドリムシの本当の名前、学名です。ミドリムシはユーグレナのあだ名、日本でしか通用しない和名でして、「ユーグレナ=ミドリムシ」です。
ミドリムシは「ムシ」という音に引っ張られて、「イモムシ」「ケムシ」「アオムシ」などを想像される方が多いのですが、これは大間違いで、ミドリムシはワカメ、コンブ、そうした海藻の仲間です。ただ0.1ミリと非常に小さいので顕微鏡でしか見られません。
竹村
藻類ですか。要するに光合成をする海の植物なのですね。海藻の仲間だけれども、実際には単細胞で小さくて、自分で泳ぐと聞いたのですが。
出雲
ミドリムシの健気でカワイイところは、自力で動くところです。皆さんの周りにいろいろな植物があると思いますが、ある日突然木が、ここは日当たりが悪いから暖かいところに移動しよう、と歩いたりしたら仰天しますよね。植物は動きません。けれどもミドリムシだけは、光合成をする植物なのに動物のように動くことができます。植物と動物と、両方のパワーを持ったミラクル微生物です。
竹村
アメーバのような原生動物に、植物の要素が加わったということでしょうか。
出雲
まさに単細胞真核生物で、動物で分類するときは原生動物、植物で部類するときは藻です。ミドリムシが凄いのは、進化の過程を経て最近登場した新人ではないところです。5億年前に原生動物の中に葉緑体を取り込んで、溶かしてしまわずに植物と動物の両方が仲良く暮らす共生を発明して、5億年間、絶滅せずに逞しく生き残ってきた大ベテランなのです。
竹村
5億年ですか。はるけき昔、と思われるかもしれませんが、この地球上に最初の多細胞生物が生まれてきた頃ですね。それまではほとんど単細胞生物ばかりの世界で、多細胞生物の、いわゆるカンブリア紀大進化のような奇妙奇天烈ないろいろな動物が出てきた、それくらいの頃だとイメージいただければ良いし、まだ海にしか生物がいなかった頃ですね。
出雲
そうなんです。
竹村
水中の生物で、なおかつそこに葉緑体を取り込んで消化せずに、テナントのように子飼いしたということでしょうか。
出雲
ミドリムシ本体が大家さんで、植物的な要素がテナントさんとして、デパートの中に入ってきたようなものです。それでミドリムシ・デパートは品揃え抜群なわけです。動物の栄養素を持っていますし、植物の栄養素を持っていますし、全ての栄養をミドリムシは用意している。
竹村
デパートと言いますが、ユーグレナの売りは何でしょう。
出雲
栄養の宝庫として、ありとあらゆる栄養素を微生物であるミドリムシが頑張ってつくってくれる、ここが頼りになるところで、ミネラルやビタミン、アミノ酸、食物繊維、さらにDHA・EPAといった不飽和脂肪酸等々、とにかく人間が生活するために必要な59種類もの栄養素が全てミドリムシの中に入っているんですね。
竹村
それだけのデパートって、余り生物界にはないわけですか。
出雲
植物は植物の良い栄養素をたくさんつくりますし、動物や魚も良い栄養素を持っていますが、ミドリムシは植物と動物の両方の良い栄養素を持つ究極の栄養のデパートです。
竹村
老化を防ぐアンチエイジング、要するに抗酸化作用を持った成分も含まれている。今は健康ブームですから、DHA・EPAなどにたくさん含まれる不飽和脂肪酸がユーグレナには含まれていて、皆さんがそういうことに注目されるのは当然のことだと思います。
同時に世界でも栄養不足、肥満を含めていろいろな健康問題がありますし、先進国、途上国の両方に恩恵を与えられる存在かもしれません。
出雲
元々、私を含めてミドリムシを研究している方は、途上国の栄養失調の問題を解決したい、そういう気持ちでミドリムシにたどり着いているのです。
 一方で、日本の皆さんは「あなたは栄養失調です」と言われると言下に否定します。
「いやいや私は栄養失調ではないですよ。昨日も、今日も、明日も、1日3食、栄養をたくさん摂っています」
でも栄養学的に調べてみると、食物繊維やカルシウム、DHAのようなオメガ3の多価不飽和脂肪酸は摂取量が非常に減ってきておりまして、日本の皆さんも栄養が偏っている、つまり軽い栄養失調状態なのです。ですから途上国の栄養不足の人だけではなく、栄養が偏っている日本やアメリカ、ヨーロッパなど先進国の方々にも、このミドリムシはぴったりです。
竹村
東京丸の内で働く女性を対象にして「健康に関する1000人アンケート」を実施したところによると、忙し過ぎてバランスの取れた食事が十分摂れない、それゆえに栄養状態に黄信号が点っているなど、いろいろな報告があります。そう考えると、飽食の時代と言われるけれども意外と落とし穴があったりするわけですよね。
出雲
とにかく現代人には2つ特徴があるのですが、1つは時間がなさ過ぎる。昔と比べて食事に当てる時間が余りに少ない。2つに、いろいろな種類の食べ物を自由に選ぶことができるのですが、好き嫌いがあって、どうしても好きなものばかりを食べてしまう傾向にありまして、まんべんなく栄養素を取ることが難しくなっています。この2つの現代人の問題を解決するためにも食育はとても大事だと思います。
竹村
アメリカの大都市などにも、「食の砂漠」と呼ばれて生鮮食品が買えない、手に入らない地域があります。そのため栄養のバランスが取れた食事を摂れない人たちが何百万人もいるとの報告があります。そう考えると先進国、途上国を問わず栄養の質の問題と、それから同時に、食料不足の問題も出てきます。
たとえば昨年のミラノ博では、2050年に向けて90〜100億人に達する人類をどう食べさせるのか、「Feeding the Planet(地球に食料を)」という大きな問いかけがされました。宣伝っぽくなっても困るのですが、ユーグレナのもうひとつの特徴は、こういう栄養素のデパートのような優れた食品を、農地を使わずに非常に省スペースで生産できる。これが凄いですよね。
出雲
大事なのは生産性で、たくさん食料をつくらねばならない。ミドリムシはシンプルな単細胞の生き物ですから、多細胞の構造の複雑な高等植物と違って、上手く環境を整えてあげるとどんどん増えるのです。1日で2倍に増えます。ということは毎日、倍々に増えて、1カ月もすると10億倍にも増えます。
目の前にイモを植えて、1カ月後に10億個のイモは収穫できません。今は当然、いろいろな葉っぱや茎や根っこの構造が高度に進化していますから、なかなか簡単に増えないのですが、ミドリムシはとてもシンプルで、単純な小さな可愛らしい生き物ですからどんどん増える。これから食料の増産を考えると、地球にとってもミドリムシはとてもメリットがあります。
竹村
つまり同じ光合成生物だけれども、他の植物は、イモを含めて自分を大きくし、自分の構造を保つために、つくった栄養を結構使ってしまうのだけれども、ユーグレナの場合は単純な構造なのでどんどん増えて、人間として食料生産を考えると効率が高いわけですね。
出雲
この生産性が根本的に違います。ミドリムシは普段、水の中でプカプカ浮かんでいるだけですから非常に構造はシンプルです。陸上の植物は重力に逆らって上に成長するため、硬い構造の幹をつくらなければいけない。そのためには膨大なエネルギーが必要なのですね。
竹村
実際にどのように培養されるのか、私は拝見していませんが、都市の中でもつくれるのでしょうか?都市で需給などはできるのでしょうか?
出雲
今、つくっているのは沖縄県の石垣島です。サスティナブルな都市をつくるために、砂漠や、閉鎖系の環境の中でミドリムシを培養して炭素を循環させる、そういう実験や研究は、ずい分長くいろいろな先生方が取り組んでいますし、ミドリムシを宇宙で使うと、そういう面白い研究もあります。
竹村
ほうほう。宇宙というと、当然大変な量の紫外線や宇宙線ですが、それから身を守るノウハウも、多分、太古から暮らしている微生物だったら持っているかもしれませんね。
出雲
5億年前の地球環境は今と違って甘くなく、放射線や紫外線のばく露の量が今よりも相当厳しかったでしょうから、そういう環境の中で5億年も修行を続けてきたミドリムシは、遺伝的には非常に安定度の高い微生物なんです。
ですからミドリムシを宇宙に連れて行って、宇宙線でミドリムシが病気になったり、変異してしまったりすると上手く使えないのですけれども、今のところは宇宙で安定して育つことがわかっています。
竹村
ということは、陸上植物が繁茂して地球がこれだけ安定した環境になる以前の厳しい地球で修業したミドリムシ、これは宇宙時代にも可能性がある。
出雲
厳しいところでミドリムシ本来のパワーを発揮できますから、地球環境問題の解決へのヒントが隠れているかもしれません。地球の具合が悪くなればなるほど、ミドリムシの出番だなと思っています。

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