J-WAVE SELECTION SMBC EARTH TALK

私たちと地球の未来に向けてのビジョンを語る 今月のラインナップ

2016/6/12 ゲスト 藤沢 久美(シンクタンク・ソフィアバンク 代表)

資本主義の未来、ビジョナリーな経営者のあり方、AIとバリ島について語り合います。

藤沢久美氏(シンクタンク ソフィアバンク代表)×竹村真一氏
『グローバル化と女性が活躍する未来像』
第一章『悪い面を、いかに良い面に変えていくかという営みが経済であり、人間が生きていくためのパワー』〜金融経済と働く事の意義〜

竹村
今日は働き方、金融、そして女性、ワークライフバランス、そういう問題を巡るのに最高のゲストをお招きしました。では、藤沢久美さんをお招きしたいと思います。
藤沢
こんばんは。よろしくお願いいたします。
竹村
ようこそお越しくださいました。藤沢さんはよくご存じの方も多いと思いますが、国内外の投資運用会社勤務からはじまり、日本初の投資信託評価会社を起業され、現在、代表を務めておられるシンクタンク ソフィアバンクの設立にも参画され、インターネット・ラジオ番組『藤沢久美の社長Talk』などから1000社を超える企業のトップと対談されて、その成果をまとめた本をつい最近もお出しになった。
この本のタイトルが面白いですね。『最高のリーダーは何もしない』(Kindle版)という(笑い)、そんなんで良いのか!?
藤沢
ふっふっふ。言い訳みたいな。いえいえ、いろいろな経営者さんのお話を聞いてみて結論に至ったのは、やはり自ら動き過ぎる経営者は、会社を大きくできないな、と。
竹村
なるほど、耳が痛いですね。
藤沢
はい。いろいろな方から聞いたお話を書かせていただいて、私のチームのメンバーからは、藤沢さんは自分の言い訳のために書いたのではないか、と言われているのですが、中身は、やっていないようできちんとやっていますよ、という本でございます。
竹村
やはり藤沢さんも、自分がやったほうが早いと思ってやっちゃう?
藤沢
これは本当に、たくさんのマネジメントの方は同じ思いだと思いますけれども、自分でやったほうが早いことはたくさんあるけれども、そこで我慢することがマネージャーになるための修行だなと思っています。
竹村
ご自身が使われる側のほうだった頃はどうでしたか?
藤沢
そうですねえ…、私は比較的早くに起業したので、使われた時間がとても短くて、下っ端の時代しか歩んでおりませんから、いろいろと口出しされていた記憶しかありません。
竹村
ちなみに「働く」は「傍(はた)を楽にする」という考え方があります。なかなか傍を楽にすることにつながらない働き方が多いような気がします。
藤沢
ですから働くとは何だろうと、今一度考えたいなと思ったこともありました。実は、今回の本の隠れたタイトルは「visionaryな経営」なのです。つまり働くのは、ただお金を稼ぐために自分の時間と労力を切り売りするだけではなく、近くの人が良くなり、何かを皆で目指して世の中が少しでも良くなることを、未来が少しでもプラスの方向に変わることを、自分が今、関わっている仕事、会社が持っているいろいろなネットワークや技術、これでどう貢献できるかを考えて働くと楽しいかもよ、と思いました。
竹村
船の船長みたいなもので、目的地を明確にして、そこに至るプロセスを明確にして、しかしただ言うだけではダメで、その目的地と、それに向けての努力が自分事にならなければいけないわけですね。誰にとっても。
藤沢
まさに、自分事って大事ですよね。
竹村
だからそのためにやるのではなく自分のためにやるんだと、そこが言うは易し、ですけれどもなかなかできないですよね。
藤沢
そういうことを比較的上手くやっていらっしゃる経営者さんの話をまとめたのが、その本です。
竹村
中身はその本を読んでいただくとして、このトークの中でも折に触れてそのエッセンスを少しずつでも開陳していただければと思います。そもそも早く起業された、とおっしゃいました。起業されたきっかけ、動機は何でしょうか?
藤沢
私は関西出身でして、関西の大学に通っておりました。皆さんも就職活動をされたと思いますが、20数年前、当時はまだインターネットもない時代、興味のある企業に資料をいただきたい、と電話をするわけです。ところが、かなりの数の企業からこういう答えが戻ってきました。
「うちは女性を採用しません。しかも、あなたは関西に住んでいるんですよね。東京に家がない人は、東京の会社は雇わないんですよ」
世の中は女性を雇いたがらない、と思いました。働きたい女性が働ける場は、もしかすると余り世の中にないかもしれないので、では、ないんだったらつくってしまえ。ただ、何の実力も経験もありませんから、まずとりあえず就職して腕を磨いて、女性のひとつの壁は30歳だろうと勝手に思っていましたから、30歳になる前に、女性でも、男性でも、若くても、歳を取っていても、活躍できる会社を自分でつくろうと決めました。大学生のとき決意した、それがきっかけでしたね。
竹村
大学生のときのビジョンのまま起業できたのですね。
藤沢
お金を貯めたりいろいろなことをして、実際、27歳のときに起業をしたのですけれども、友人と起業して、いよいよ社員を雇うという段階で、大変な衝撃がありました。社員を雇って何人かと話をしていると、「別に活躍したいとは思いません。お給料がほしくて、ここで働くのです」と言われて、とても驚きました。
竹村
ショックですね。
藤沢
私は世の中の人は皆、活躍してリーダーになりたいと勝手に思っていたので、世の中にはいろいろな価値観の人がいるのだと初めて勉強しました。
竹村
起業された企業とソフィアバンクとの関係はどうなのですか?
藤沢
自分の会社を立ち上げて4年ほど運営したのですが、結果的に、いろいろな会社から買収したいというありがたいお声がけをいただいたので、会社は売却しました。その直後くらいに田坂広志さんのお話を聞く機会があり、この人は資本主義の未来を全て知っている人に違いない、この人からいろいろ学びたい、と思ったのがきっかけでした。ソフィアバンクを立ち上げるタイミングでしたから私も参加させてください、と、ちょうど会社を売った後だったので参画いたしました。
竹村
資本主義の未来とは、具体的にどういうポイントですか?
藤沢
私がそれまでずっと関わってきた世界は投資信託の世界で、まさに資本主義のど真ん中、投資をして利潤を生んで、レバレッジをかけていってみたいなことをやっている世界でした。どんどんM&Aなどが進んでいって、貨幣的なパワーを持っている人たちが大きくなっていく姿を見ていて、このままで世の中は幸せになるのだろうか、資本主義が行きつく先に一体何が起こるのだろうか、とても興味があって、実は会う人、会う人に聞いていたんです。本もいろいろと読みました。
 そして田坂さんの講演を聴いて、田坂さんに直接お会いできた機会に、「田坂さんは、資本主義の未来をどう考えていらっしゃいますか?」と質問をしたのです。
 そのときの答えは、「アメリカの西海岸を注目したら良いよ」というものでした。そこには禅の思想であるとか、東洋思想であるとか、そういうものが芽を出していて、あそこに資本主義の新しい未来のヒントがあるに違いない、というものでした。もう、強く思いました。
「あ、この人にはこれからいろいろと聞かなきゃ」
竹村
お金を持っている人がどんどん資本を大きくして、そうでない人との格差が開いていく時代と言われます。まさに昨年来、話題になっているピケティの不等式「R>G」があります。
私は経済の素人ですけれども、素人が解釈してもとても不条理な、つまりどんなに自分のアイデア、創意工夫で新しいものを起業しても、そこからつくり出す富よりも、最初からお金を持っている人の利ザヤで膨らんでいく富のほうが大きいとすると、これは人間社会のモチベーション構造としても不健全にならざるを得ないと思います。
ですから社会が全てそのように動いているわけではないにしても、あの不等式が象徴する世界はありますよね。自分の創意工夫でつくり出していく富というものに、投資できない構造をどうしていきましょうか。
藤沢
ピケティが語った世界は、インターネットがない時代の経済がつくってきた世界のような気がしていて、インターネットが生まれて、貨幣だけがいろいろなものの価値を測るツールではなくなる時代がやってきたのではないかと思っているのです。
 私自身も、インターネットが世の中に出はじめた頃に起業してビジネスをはじめたのですが、今までは大きな資本を持った人しか世の中を動かせなかったのに、お金を大して持っていない小さなベンチャー企業がネットの世界やそういうものを通じて共感を得たとき、お金の量と関係なく世の中が変化することを実感したのですね。
 ですからピケティが指摘していることはとても重要なことではあるのですが、新しい、貨幣経済ではない経済の世界が少しずつ生まれはじめているような気がします。
竹村
アメリカのIT系企業、フェイスブックやグーグル、その前のアップルを含めていろいろな新しい、それは既にパソコンやスマフォの世界を超えてどんどん進みつつあるのですけれども、あれは新しいインターネット経済の兆しとして評価しますか?
藤沢
評価するかしないか、と言えば、評価します。というのは、私は基本、変化は善と思っているのです。必ず、物事には良い面と悪い面があるので、悪い面ももちろんあると思うのですけれども、その悪い面を、いかに良い面に変えていくかという営みが経済であり、人間が生きていくためのひとつのパワーであるような気がします。
竹村
ということは、ピケティが注目されはじめた時代は、20世紀の状況が相当ひどい形でさらに悪化しているからであって、それを超えていくような構造は同時に、シンクロしながら進んでいるとおっしゃるのですね。
藤沢
そう思いませんか?
竹村
もちろん、思います。
藤沢
確実に起きているのです。ただ、まだ大きな光ではないので見えにくいだけなのです。

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