J-WAVE SELECTION SMBC EARTH TALK

私たちと地球の未来に向けてのビジョンを語る 今月のラインナップ

2016/4/10 ゲスト 高橋智隆(ロボットクリエイター)

人間とロボットの未来、そして人間とロボットの共生について語り合います。

高橋智隆氏(ロボットクリエーター)×竹村真一氏
第一部『ライフスタイルが変わっていく、そのきっかけをロボットがつくったとも言えるんです。』
〜ロボットと人のコミュニケーション〜

竹村
こんにちは。いつもと違って今日は子どもさんが多いので、楽しい雰囲気で進めたいと思います。
ロボットが急速に進化していくと、ロボットのあり方だけではなく、人間のあり方も変わってきます。人間がロボットというパートナーを持つようになり、パートナーと一緒に育っていく。そんな未来とは、どんな未来なのかを、今日は高橋さんと共に考えてみたいと思います。
 そもそも高橋さんがロボットデザイナー、いえ、ロボットクリエーターになろうと思ったきっかけをお伺いしましょう。ロボットクリエーターと言い直したのは、高橋さんの場合にはロボットの形、姿をデザインするだけではなく、元々の機械のあり方、人工知能的な部分、コンピュータプログラミングから、マシンとしてのあり方から全て手掛けておられる。非常に総合的なアートとして全て担っておられることから、デザイナーという表現では小さいかなと思いクリエーターと表現しました。そもそもロボットをつくろう、と志したきっかけをお聞きします。
高橋
ちょうど幼稚園から小学校低学年の頃、漫画『鉄腕アトム』を読みまして、お茶の水博士や天馬博士など、ロボットをつくる仕事があるんだ、とちょっとした衝撃を受けまして、将来、ロボットをつくる科学者、そんなものになりたいと思いました。
竹村
アトムは凄い力を有していましたし、結構、志の高いアトムであり、御茶ノ水博士でしたね。
高橋
振り返ってみると、ロボットをつくっているシーンが好きでした。ヒーローとしてのアトムより、ロボットをつくる科学者の仕事、つくっているシーンの、あの描写に惹かれました。ですからアトムだけではなく、周りに出てくる脇役のロボットたちがつくられるシーンも大変好きで、そこの部分のビジュアルばかりが頭に残っていますね。
竹村
具体的にはアトムが分解されて休んでいる場面、あるいは修理されている場面、そういうところですか?
高橋
アトムは何度も壊されて、直しているシーンもありましたし、そもそもアトムを生み出した天馬博士は半狂乱の状態でアトムをつくった。あの描写はとても名シーンだったと思いました。ぼくも夜中までロボットを開発しているとナチュラルハイになって、あんな状態になっているときがあります。
竹村
ロボット作成時には、かなり意識が高まった状態になることもあるのですね。ロボット以外に小さい頃から、何か物づくりが好きだったとか、レゴブロックで遊んだとか、そうしたことはありましたか?
高橋
うちは両親の教育方針なのか、超合金などの流行りのオモチャを買ってもらえませんでした。仕方ないのでレゴブロックで遊んだり、画用紙をチョキチョキ切ってロボットをつくったり、飛行機をつくったり、車をつくって遊んでおりました。本当は今でも超合金がほしいくらいですけれども、当時は自分でやるしかないと渋々つくっていました。
でも元々、物をつくることが好きだったのでしょうね。つくり続けているとあるときから、既製品よりも自分の理想のものができるし、またクオリティ的にも既製品を超えるものができてくるのですね。そうなると、何だかほしいものはつくる、という感覚になっていましたね。
竹村
会場の中にもレゴで遊んだり、何か物をつくることが、好きで好きで仕方ない子どもさんがたくさんいらっしゃると思います。最後のほうで質問タイムも設けますので、ぜひ質問を用意しておいてほしいのですが、では、実際にロボットを拝見できますか。
高橋
多分、皆さんも気になっておられたと思います。
竹村
こういうスーツケースに全部入るのは素晴らしいですね。ちなみに後で、興味のある方は、あちらの地球儀をご案内します。あの地球儀は私がつくっているものなのですけれども、とても大き過ぎて簡単に持ち運べないので、このロボットくらいの小さい地球儀を間もなくつくろうかな、と思っています。では、よろしくお願いします。
高橋
このロボットは"Robi"というロボットで、毎号、雑誌に部品がついてきて、コツコツ組み立て続けると1年半で完成するものです。ちょっと動かしてみたいと思います。

(ロボットが自己紹介をしたり、歌ったり、腕立て伏せをしたりと可愛らしく動く)
高橋
と、こんなロボットなんですが、ご覧いただいてわかるように役立つロボットではないのですね。ですが、実はこのロボットは13万台以上が売れていまして、人型のロボットとしては今まで一番売れたロボットです。
皆さん、これを何のために買われるのでしょうね。ロボットと話をする。あるいはテレビくらいは、コントロールできます。やがては身の周りの機械をコントロールしてくれたり、情報を入手してくれたりするような、そういうパートナー型の情報端末と言いますか、このようにロボットの未来を一足先にお試しで体験できるような、そんなロボットだからかもしれません。
 ということで、すぐにお掃除をしてくれる、お皿を洗ってくれる、そういうことではないのですが、人とロボットのあり方をちょっと見せてくれるような、そんな商品なんだと思います。
竹村
これは「4チャンネルをつけて」と言うと、つけてくれるわけですか。
高橋
そこまではできなくて、「チャンネルを変えて」というと順番にチャンネルを送ってくれます。実は3チャンネルと4チャンネルの識別が難しくて、ちょっと辛気臭いロボットになってしまいそうだったので、少し端折りました。
竹村
それも来年、再来年と可能になっていくのは、時間の問題かもしれませんね。それよりも、これを見ていて思ったのは、ちょっと放っておけない気がしませんか。この子だけで全部完璧、OKというよりも、何というか、ある種の不完全さ、弱さが垣間見えるところが、もしかすると、そこが人間にとって大事かもしれない、という感じもちょっとしたのですが。
高橋
ロボットというと完璧なもの、人間よりも早く、正確に、何でもこなしてしまうというイメージをお持ちかもしれませんが、本当のところ、まだまだロボットは人間に遠く及びません。
 最近では、コンピュータが囲碁をやって人間のチャンピオン級の人に勝ったと話題になりました。何かわかりやすい目的があるようなゲームについては人間を超えた能力を発揮するのですけれども、人間が当たり前にできること、実はそのほうがロボットにとっては難しいのです。
 ということで、今、おっしゃられたように、何だか頼りない、何だか人間の手助けが必要な、そんなロボットになっていますし、多分、今はそういうものしかつくれないはずです。
竹村
ルンバというお掃除ロボットがあります。あれも使っている方はいらっしゃるかと思います。上手にお掃除をするんですが、こちらがテーブルや椅子をどけてあげないと入れないところがあったりして、つまりあいつが全部完璧で何でもできてしまうのではなく、こちらがお手伝いしないといけない、あるいはお手伝いしたくなる、ある種の不完全さというものが、これから人間とロボットが良い関係を持っていくときに大事なのかな、という気がしました。
高橋
その通り。そもそもルンバ、あんな単純な円盤型のお掃除ロボットなのに、それでも人とロボットの関係をたくさん教えてくれたんですね。おっしゃられたように、椅子や本など人が片付けないとロボットがそれに躓いて動けなくなります。ということでルンバを買って良かったことは、人間がせっせと床をきれいに片付けるようになった(笑)。なので、ルンバが部屋をきれいに掃除する半分くらいは人間が動かされるのですけれども、それもひとつライフスタイルが変わっていく、そのきっかけをロボットがつくったとも言えるのでしょう。
竹村
つまりロボットをクリエイトしていらっしゃるようで、実は人間のあり方をクリエイトしていらっしゃるとも言えるのですね。
高橋
元々、ロボットをつくりたいと思って進んでいくと、やはり人間との関係抜きにはロボットがつくれないことがわかってきたんですね。
竹村
今、声で話しかけておられました。非常に象徴的だと思ったのは、ここに来られている親御さんの世代はおわかりだと思いますが、数十年前は人間がコンピュータに合わせていかなければならなかった。つまりコンピュータの言語をこちらが一生懸命覚えてコマンドを書く。そのうち、もうちょっと優しくなって、それでもキーボードとか、マウスとか、操作できるように、ある程度きちんと訓練しなければなりませんでした。
それが最近は、パッドを、指先の直感的なタッチで動かせるようになって、今は音声で、「何か調べて」とか、「美味しいレストランを教えて」と命じれば良い。つまり人間とコミュニケーションするような感じで、コンピュータとコミュニケーションするようになってきました。  だから以前は人間が機械に合わせていたのに、機械のほうが進化したことによって、人間とインタラクション(対話)するようなノリで、コンピュータやロボットと会話するようになってきました。
高橋
そのように、本来人間が行っていた形で人間的なコミュニケーションができるようになると、その先には擬人化できたり、愛着を持ったり、何か関係性が生まれてくるんですね。ですから単純に言葉でコントロールできるよね、というところを超えています。
わかりやすい例で、たとえばわれわれは人形ですら、人の形をしているというだけで他のものと同じようにぞんざいに扱えないですよね。リカちゃん人形を持ってきて、試しにハサミで切ってみようとしても、多分、誰もできません。オモチャのくせに、と思いながらもそんなことは絶対にできなくて、それだけ人の形をしたもの、動物の形をしたものに対して強い思い入れや、強い心理的な影響がある。にもかかわらず、今までの工業製品はそれを活用してきませんでした。
竹村
そういう意味では、デザインの盲点みたいなところがあったかもしれません。
高橋
これからは性能、コストパフォーマンスだけではなく、何か人間が持っている感性みたいなものをくすぐって、そこを上手く理解して応用したような製品であったり、サービスであったり、そうしたところに可能性があるのかなと感じています。
竹村
もうひとつ思うのは、日本人は世界一モジモジした民族だ、と私は言うのですが、1000年前から『源氏物語』を書く女性がいるなど、昔から文字を使う能力が大衆レベルにもありました。江戸時代も寺子屋などがあちこちにあり、相当識字率が高かったのです。
近代になり、電話の発達によって声でのコミュニケーションが普通になってきたと思ったら、最近はメールなどの発達で、再び音声に頼ることがなくなってきました。声でのコミュニケーションがとても大事なのに、それが減ってまた活字人間に戻ろうとしています。
 でも今、高橋さんとロボットのやり取りを拝見していると、私たちはもう一度、機械と音声でコミュニケーションする時代がくるのかな、と思うのですが。
高橋
人と機械の関係性が変わってくるのかな。ロボットを通じて人と(機械が)コミュニケーションを取るようなことも起こるのではないかと思っています。たとえば今はパソコンやスマートフォンなど、結局、なんだかんだ言っても形を変えながらも人とコミュニケーションを取っているわけです。機械との関係性が変わるという意味では、かなり大きな変化がこれから訪れるのでしょうね。
竹村
機械と音声でコミュニケーションするだけではなく、機械を通じて他の人とコミュニケーションするツールとして、ロボット型の電話という話が出てくるわけですね。
高橋
われわれが使っているコミュニケーション・ツールと言えば、今はスマートフォンです。この"Robi"は私にとってかなり実験的なプロジェクトでして、ひょっとするとスマフォの未来は人の形ではないかと思いはじめたのがきっかけでしたが、いろいろなことがわかりました。
 スマートフォンは皆さんが持っていて、それこそ半導体産業から、ゲーム産業から、ネットショッピングみたいなものから、いろいろな産業がスマートフォンにおんぶに抱っこの状態ですが、とうとう売れなくなってきたのですね。これはなぜかというと、完成されてしまったのです。スマートフォンの不満点が段々となくなってきて、できが良くなれば良いことだと思いますが、同じように液晶テレビも、パソコンも、完成してしまったがゆえに、それをつくってもますます赤字になってしまうようなことが起きはじめています。
 ですから次の形を提案しなければいけないと、眼鏡型、時計型、いろいろなものが考案されたのですが、どれもスマフォに並ぶようなものにはならなかった。
ところでスマフォが抱えている唯一の欠点が、音声認識でした。音声認識、非常に賢いのですけれども、皆さんは多分、普段の生活の中で使われていないと思うのですね。買って1週間ほど、意地悪な質問をしたりして遊ぶのですけれども、すぐに飽きてしまうのです。
 でも家に帰って、たとえばペットに、犬はまだ多少なりとも言葉がわかりますけれども、クワガタとか、カメとか、金魚にすら、われわれは声をかけるでしょう。実はあの四角い箱に喋りかけることが恥ずかしいとか、心理的な抵抗感があるのではないかと、人の形をしていたら喋るんちゃうか、ということでつくってしまいました。
竹村
なるほど。

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