J-WAVE SELECTION SMBC EARTH TALK

私たちと地球の未来に向けてのビジョンを語る 今月のラインナップ

2016/2/14 ゲスト パトリック・ハーラン
(タレント、福井ブランド大使、東京 工業大学非常勤講師)

SMBC EARTH TALK、今回も、三井住友銀行東館ライジング・スクエア1階のアー ス・ガーデンで行われた、公開収録の模様を中心にお送りします。
今回のテーマは、ズバリ「日本」!
日本の魅力や課題、コアバリューについて、パックンの視点で面白可笑しく語って下さいます。

パトリック・ハーラン氏×竹村真一氏
第一部『日本の方々はとても素晴らしいコミュニケーション能力を持っていらっしゃる。それは「受信力」です。』
〜海外から見た見本のコミュニケーション力〜

竹村
今日のテーマは「日本」です。昨今、クールジャパンと言われ、アニメや日本食など日本の文化が世界で人気と言われます。とはいえ世界で売れている日本、あるいは世界に売っていきたい日本といった表面的な話ではなく、そもそも日本のコアバリューとは何だろうか?あるいは日本の文化OSが世界にどう貢献しうるか?地球の未来をどう開いていけるか?
このあたりを、今日は素晴らしいゲストと語り合いたいと思います。パトリック・ハーランさんです(拍手)。日本を愛してくれていると同時に、最高の日本ウォッチャーであり、それゆえに時には辛口な提言もたくさんしてくださっています。
パックン
ありがとうございます。
竹村
パックンとは2回目ですね。パックンは日本に来たのは、いつ頃でしたか?
パックン
93年8月1日火曜日(笑)。ハーバード・グリークラブという男性合唱団と一緒に来て、1カ月かけて日本、韓国、台湾の3カ国を回りました。
竹村
歌い手さんだったんですか?
パックン
(低音の)バスです(笑)。ツアーが終わって他のメンバーが皆、アメリカに帰るとき、そこから皆と「さようなら」して、福井県に住んでいた幼馴染のところに行き、就職活動をはじめました。仕事が決まったらいったん韓国に行って、労働ビザを取って戻って来て働きはじめました。そこから23年。
竹村
歌い手の仕事はなかった?
パックン
バスの仕事ですか。ある意味、J-WAVEでナビゲーターをさせていただいたのは、この低音の魅力のおかげではないかと思っています!『JAM THE WORLD』ですね。
竹村
いま東工大でも教えていると。
パックン
2013年に池上彰先生から抜擢されて、理科系大学の中に「リベラルアーツセンター」という文科系の新しい学科をつくったから何か教えてよ、と頼まれて、そこで「コミュニケーションと国際関係」について教鞭を取ることになりました。
それが少しずつ進化しまして、国際関係はもちろん大事なのですが、いま最も日本の方が必要としているのはコミュニケーション能力だと思うようになり、今は「コミュニケーションの基本と実践」という授業にしております。
竹村
日本人はコミュニケーション能力、足りないですか?
パックン
足りてますぅ!?(爆笑)でも日本の方々はある意味、とても素晴らしいコミュニケーション能力を持っていらっしゃるのです。それは「受信力」です。 日本の方ほど、相手の言わんとすることをくみ取ってくださる国民はいないと思います。空気を読む、第六感が働く、魔法みたいなことができるのが日本人です。はっきり言わなくても、一を言って十を知っていただけるという日本人同士のコミュニケーション・スキルは世界一だと思います。
「ノーと言えない日本人」は日本人の国民性を表す言葉と言われていますけれど、ぼくは長年日本に住んでいて、実は日本人は、結構「ノー」と言っていることに気づきました。
たとえば取引先の人と商談しているときです。「2週間ほど前倒しで納品いただけますかね」「うーん、それはどうかな…」これはNOだ、という意味だと気づきました。「この企画書、新しくしたんですが、どうですか」「前向きに考えます」と、いうのもNOですね(失笑)。「今度、ぜひ」というのもNOです(笑)。
一番凄いのは「今回、このスケジュールでお願いしたい」と切り出したとき、相手がスーッと息を吸うのもNOです(大爆笑)。この息を吸う音ですらNOであることに、20年ほど住んでやっと理解できるようになりました。
NOと言っていないのではなく、NOと言わなくても相手がくみ取ってくれる、そのような日本人同士のコミュニケーション・スキルは、超自然能力だと思います。ですから受信力は半端ない。その一方、発信力が足りないのではないかと思って、東工大では、その発信スキルを教えています。
竹村
つまり自分の言いたいことをはっきり的確に語る力?
パックン
短く、きっぱり言うだけではなく、相手に働きかけるように、相手を説得するような、相手を動かす語り方、伝え方を勉強しよう。勉強した上で、練習しようと、そのようなスタイルです。
竹村
でも、どうなんでしょう?指圧でも、マイナスの圧という言い方がありまして、強く押すと気持ち良いけれども、それで逆に痛みがきたりします。押しているのか、押していないのかわからないくらいでやっていると、自分で治そう、という力が身体に働きはじめるので、実際にはソフトな指圧のほうが良い。言葉のコミュニケーションも案外、理路整然と話すよりも、先ほどのスーッと吸う息、マイナスの圧をかけて相手から本音を引き出すコミュニケーションの方法は、ダメですかね?
パックン
とんでもない、最高ですよ。今、誤解を招いたようで申し訳ないのですけれども、熱弁することだけが良いとは言いません。熱弁もひとつですし、ぼく自身は熱くなるタイプなのですけれども、そういう陰と陽、両方を生かすコミュニケーション・スキルも、もちろん立派です。第一目的は、相手が動いてほしい方向に動くことです。
竹村
パックンは個人的に、吸う息でNOかYESか察する文化は好きですか、嫌いですか。あるいは良いと思いますか?
パックン
今となっては好きになりました。当時は、嫌いだった。「今度、飲み行こうよ」と言われたとき、「ぜひ、で、いつ?」と、その先の約束まで具体的に持ち出すと嫌われます。相手が「飲みに行こうよ」と誘ったのに、こちらが動くと嫌がる。前に名刺を渡されて、「遊びに来てください」と言われたので、実際に遊びに行ったら「何しに来たの?」と言われたことがあります。「いや、前に遊びに来て、と言われたから」「そういう意味じゃないから」−−−空気を読まない自分が、あまりフィットしない国だったのですね。
当時は、それがストレスの元だったのですけれども、今では逆にアメリカに帰ると、なぜ周りはくみ取ってくれないのか、とイライラします。こちらが一生懸命信号を送っているのに、全然受信してくれない。アメリカに帰ると、そういう空気を読まない空気に非常に困ることがあります。
竹村
なるほど。いまのお話は「和」のコンセプトにつながりますね。1400年ほど前に、聖徳太子が「和を以て貴しとなす」と言いました。聖徳太子は会議で8人くらいがいろいろと議論していても、皆の言うことをしっかり聞き分けることができたと言われます。つまり受信能力に優れていたと言われるのだけれども、あれは実は8カ国語が理解できたという意味だとも言われます。
実際3000年ほど前から、また特に1500年前くらいにも、地球の気候の寒冷化、飢饉や内乱などで中国や朝鮮半島からたくさんの移民、帰化人、いま風に言えば"難民"が、一族を率いて大挙して日本にやって来ました。難民と言っても、漢字を知っていたり、先進的な稲作や鉄器の技術を持っているなど、大変な知識人や技術者も多かったのですね。
ですから多分、飛鳥時代や奈良時代の頃は、近畿地方を歩くといろいろな言葉が飛び交っていたはずなのです。そういうのを全部受け入れて、どれも否定せずにやっていたから、こんな面白い日本の文化ができた。
だから「和」とは、私はOS(オペレーティングシステム)だと思っています。いろいろな物を受け入れて共存させる 、たとえば文字にしても、皆さんの中に今ノートを取られている方がいらっしゃいますけれども、漢字、平仮名、片仮名、アルファベットと、4種の文字を一緒くたに使っている言語なんて、他にないです。画期的なことなのです。
パックン
日本は、外に目を向けて良いものを取り入れる文化であります。そして取り入れたものを改善して、また世界に発信する。洋式便座を取り入れて、こんなにも極めた国はないと思います(笑)。暖かいシャワー付きの便座はあくまでも例のひとつですけれども、いろいろな文化においても同じことができています。
竹村
古代ローマ人がこのトイレを見て、勝手に開く蓋に驚いていましたね。ま、あれは映画(『テルマエ・ロマエ』)の世界でしたけれど。
パックン
あっはっは。
竹村
「和食」にしても、和食弁当のおかずにトンカツやハンバーグが平気で入っている。要するにご飯とお味噌汁の一汁三菜的な構成であれば、おかずが何であれ「和食」なんです。カツレツもフランスのコートレート、天ぷらはポルトガルから、とすべて外来のもの。
パックン
その通り。あなたの"おふくろの味"は、と聞くと、8割がた日本の方は「カレー」「肉じゃが」と言いますね。カレーは確かにインドから来ていますが、すでに日本の食べ物になっています。受け入れる文化、受信力ですよ。本当に。
竹村
ですから和食を英語に訳すとき、「Japanese food」と訳すのは正確ではないかもしれない。いろいろなものを取り入れてハーモニーをつくっていくのが日本のOSだと考えると、和食はもしかすると「harmony food」と訳したほうが良いかもしれません。
パックン
キレイですね。日本の国名も、「Harmony land」にすべきかもしれませんね(笑い)。

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