J-WAVE SELECTION SMBC EARTH TALK

私たちと地球の未来に向けてのビジョンを語る 今月のラインナップ

2016/12/11 ゲスト 高島宏平(オイシックス株式会社代表取締役社長)

SMBC EARTH TALK、今回は、三井住友銀行東館ライジング・スクエア1階の アース・ガーデンで行われた、公開収録の模様を中心にお送りします。 食を通じた買い物難民支援や東日本被災者支援、 食とアートの融合など、様々なお話を伺います。

『食が切りひらくグローバルとローカルの未来像』
高島宏平氏×竹村真一氏

第一部『農家さんから最初は詐欺だから止めておけと言われたが最近では、オイシックスを紹介してくれと言われるようになった〜Oisix立ち上げ秘話〜』

竹村
今夜はオイシックス椛纒\取締役社長の高島宏平さんをお迎えしました。安心安全な無添加、有機野菜の通信販売を行っているオイシックスを運営しながら、NPO法人"TABLE FOR TWO(テーブルフォーツー)"の理事として世界の食料問題に関しても積極的な活動を行っています。
 食とは、直接私たちが地球と関わる営みです。私たちの食のあり方が地球の未来を決めていく、と言っても過言ではありません。同時に、食を漢字で書くと「人」を「良」くすると書きます。上手いことできていますが、果たして今の食は人を良くするものになっているのだろうか。これから、私たちが人を良くする食のあり方をどうデザインしていくかに関わっているのかもしれません。 高島さんにはまず、食に関わることになったきっかけから伺っていきます。そもそも、なぜ食を選んだのでしょうか。
高島
ぼくの場合、とても食に興味があったとか、食に対して問題意識があったとか、実家が農家だったからとか、そういう背景は全くありません。 この会社を立ち上げたのは2000年ですが、その前にサラリーマンをしていた頃からインターネットを使ったビジネスをしたい、と思っていました。しかしながら、ただインターネットを使うだけではなく、インターネットによって社会が良くなる方向のビジネスにしたいと考え、どの領域の問題が大きく、かつインターネットの力で解決できるのだろうか、といったところから対象を探しはじめました。
そこで、人が生活する上での基本である衣食住を見ると、特に食に大きな課題があると思いました。これをインターネットからのアプローチによって解決できるのではないか。 たとえば食は、サプライチェーンが異常に長いのです。その結果、つくる人と食べる人はお互いのことが全くわかっていない。ここをインターネットならば繋げることができるのではないか。あるいは本来、食とは非常にパーソナルなものですが、マスメディアで、「身体に良い」と報じられると皆がいっせいに買いに行く現象が起こります。けれども本当にパーソナルな、それぞれの人に合ったものは違うはずで、そうしたことはインターネットを通じたほうがより良い情報が提供できるのではないか。
こんなことを考えながら、やるならば食だろうと軽く思い、そうしてビジネスをはじめてから食の奥深さに段々と惹きつけられていきました。
竹村
インドや中国は、数千年の医学の歴史がありますけれども、病気になってから治す医学は二流の医学と言われ、一流の医学は病気になる前の未病を治すと言われます。それは医食同源、何よりも食が重要になってくるわけですね。
食は体質によって、あるいは体格によって、人によって良いものが違います。また季節によって違ってくる場合もあります。今何を食べると自身の身体に良いのか、というパーソナライズされた形のものは、元々アジアにはあったような感じがするのですが、インターネット時代はそうした感覚を取り戻すのに向いているのかもしれません。
高島
一人ひとりに合わせて提供できる食は、あると思います。私たちはまだしていませんし、他でも聞いたことがありませんが、未病の方に対して具体的に食のサービスを提供することは、今、遺伝子検査などで自分の体調や自分がかかるかもしれない病気のリスクがどんどんわかってくる中で、やれる余地はとてもあります。
竹村
本当にそうですね。いわゆるカスタマイズ医療、カスタマイズ食というのが、遺伝子時代にはまた新しい形で展開するでしょう。
高島
それから今の時代、安心と安全はとても遠くなってしまっていて、安全は科学的な話で、安心は心理的な話ですが、科学的に安全だといっても心理的には安心できないことが結構あります。
医学的に言えば、安全なものを不安な思いをしながら食べるのは非常に身体に悪いのですね。安心して食べられない、あるいは子どもたちに安心して食べさせられない、それが何より健康に関係するのであれば、安全を担保するのは当たり前だけれども、安心も同時に担保しなければなりません。
そのためにはインターネット情報のトレースアビリティ、情報のリッチさ、それらのものを提供することによって、一人ひとりに合わせた安全だけではなく、安心も同時に提供できると思っています。
竹村
科学的な数値、エビデンスの類もきちんと出されるけれど、もっとパーソナライズされたつくり手側の思いなど、そうしたところにも入っていくのですね。
高島
お客さま方から科学的なデータを求められるのですが、いざデータを羅列しても誰も読んでくれません。ですから、お客さまが受信できる情報量の中で、安全なことを安心感を持って伝えるためには、定量的な部分をしっかり押さえつつ、同時に定性的にわかりやすいメッセージを届けていくことが重要です。
竹村
高島さんの考えの中には、ネット社会に対する信頼、希望、そうしたものが原点にあるようですね。
高島
でも立ち上げの頃は全く信頼されなくて、当然、相手方からするとわれわれは得体が知れないわけです。ネットでニンジンやキュウリを販売するといっても、「この人たち誰だろう?」と疑われるだけなので、実在性を証明することは結構大事なことでした。
 ですから、「どこどこでマルシェをします」と実際に駅前などを借りてテントを立ててイベントを打つと、「あ、この人たちきちんと存在するんだ」と少しずつ理解されてきて、ネットでの販売が増えてきました。
竹村
マルシェやイベントなど、いろいろな催しを行って生産者と消費者がオフラインで顔を合わせる、そういうことも大事にされているのですか。
高島
そもそも立ち上げの頃は、そういうことをしないと信頼していただけなかったのです。私たちは生産者のところに行って一緒に畑で農作業をし、採れた農産物で一緒に料理をし、一緒に飲み食いし、思いを語り合うことによってお互いの信頼感もより増していきますけれども、これは誰にもできることではありません。
ですから私たちは必ずしもオフラインをしなければならないと思ってはいなくて、畑に行く時間がない方、遠いところに住む方などに疑似的に、簡単に同じような感覚を体験していただき、安心や美味しさ、豊かさを感じていただくための手段としてオンラインを使っています。
もちろん初期の頃は、農家さんにも信頼していただけなくて、われわれがインターネットで農産物を販売したい、と申し出てもインターネットが余り広く理解されていない時代でもありましたから、「何を言っているのかわからないから帰ってくれ」という農家さんばかりでした。
われわれが訪ねた農家さんは、どちらかと言えば有機農法をされる、農家さんの中ではチャレンジするタイプのところばかりでしたが、かつては有機農法をやっておられる農家さんは、どちらかというと搾取されてきた歴史があるのですね。ですから農業外の人間に対して保守的な態度を見せられるのは仕方なかったのです。
そんなところから信頼していただけるまでになったと思ったのは、ある農家さんのお話でした。しょっちゅう訪ねてお酒を飲みながらインターネットの未来を理解していただく努力を重ねていると、インターネットについてはどうも十分な理解はいただけなかったみたいですが、段々と同情されて、「若いのに気の毒だ」と、少しずつ農産物を卸していただくようになりました。 「最初に取引した頃は周りの農家から詐欺だから止めておけ、と言われたが最近では、オイシックスを紹介してくれ、と言われるようになった」
この事業を立ち上げて5〜6年、最高に嬉しかった言葉です。私たちが、お客さまはもちろんのこと生産者の方にとってもプラスの存在になってきたのだと感じました。
竹村
そこにいくまでに5〜6年かかったわけですか。
高島
そこまで不安定な状態でした。全く、こんなに大変だと最初にわかっていたら立ち上げなかったかもしれません(笑い)。私たちは余りに無知で、そもそも食品については賞味期限なんてものがあることすら、気づかずに生活していましたから。

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